住宅ローンの支払いが遅れたらどうなる?どんなリスクがあるの?
あこがれのマイホームを手にしたものの、手に入れた後に月々の支払いに苦労をしている人もいるようです。
マイホームを購入するときに、念入りに返済額などを調べたつもりでも、一軒家に越したことにより、思いもよらない出費がかさみ生活が困窮するということはよく耳にします。
住宅ローンを払えないとき、また滞納するとどうなるのか見ていきましょう。
目次
住宅ローンの支払いが遅れてしまう理由とは?
滞納している、また支払いが困難になってしまったという人の理由について見ていきましょう。
ボーナスカット、又は給料の減少
会社の都合によっては、突然のボーナスカット、また毎月の給料の減少があると、途端に住宅ローンの支払いは困難になってしまうでしょう。
配偶者がパートなどで働きに出るか、自身がアルバイトなどで収入を増やすか、条件のよい職場に転職するなどしないと住宅ローンの支払いは厳しいものとなるでしょう。
会社の倒産、又はリストラによる収入の変化
ボーナスカットなどよりも深刻なのは、会社の倒産やリストラによる失業ではないでしょうか。
たとえ配偶者がパートなどで働いても支払いには到底足りないと思われます。
このようなときには、早急に再就職をするなどの素早い対策をしないと、あっという間に住宅ローンが滞納してしまうでしょう。
子供が増えたことによる教育費の増加
うれしい反面、「ひとり増えたぐらいでそれほど苦労しない」という考えは危険です。
子供ひとりを成人まで育てるのに、2,000~3,000万円かかるといわれています。
子供たちの年齢が近ければ近いほど、連続して費用がかかってしまうため、家計を苦しめる要因になってしまう可能性が高くなります。
病気や事故にあったことによる収入の減少
予想外の事態といえるのが、事故にあってしまった、又は長期の療養を必要とする病気になってしまったという場合でしょう。
事故にあってしまった場合は、事故の程度にもよりますが、仕事がしばらくできなくなってしまうという可能性もあります。
また、病気療養の場合も同じです。
入院などすると費用がかさむことも考えられます。
生命保険などの保障がどのぐらいなのかにもよりますが、配偶者がパートなどで補塡したとしても、住宅ローンの支払いは厳しいものとなるでしょう。
親の介護による介護費用の増加
覚悟はしていても、実際に見るとなると負担になるのが、親の介護による介護費用です。
有料老人ロームで月に20万円程度、特別養護老人ロームで月に10万円程度、また在宅介護でも月に6~7万円程度かかるといわれています。
突然、毎月その費用がプラスされると、家計への負担はかなりのものと思われます。
住宅ローンの資産計画に無理があった
住宅ローンを組むときに審査がありますが、審査には通過したけれど、月々の支払い計画に無理があるというケースです。
年収に対して高すぎる住宅を購入してしまった場合に起こる可能性が高くなります。
住宅ローンを組むときは、余裕を持った資金計画を立てることをおすすめします。
借入額が同じでも返済期間によって支払い額が変わる
住宅ローンの支払いが家計に与える負担は、決して小さくありません。
ここでは、同じ金額を同じ金利で契約した場合に返済期間の違いでどれだけ月々返済額が変わるのか、また総返済額がどれだけ違うかをシミュレーションし解説していきます。
以下の表をご覧ください。
申込金額:2,000万円 金利:1.50% ※全期間固定選択型とする
返済期間(年/回数) | 月々返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
15年間/180回 | 124,148円 | 22,346,748円 |
20年間/240回 | 96,509円 | 23,162,179円 |
25年間/300回 | 79,987円 | 23,996,179円 |
30年間/360回 | 69,024円 | 24,848,655円 |
35年間/420回 | 61,236円 | 25,719,492円 |
上記の表を見て分かるように、同じ金額を同じ金利で借りたとしても、返済期間が長い分だけ利息を多く支払うことになるために、長い期間借り入れすることは結果的に、総返済額が多くなり損をするのではないかと感じてしまいます。
しかし、損をしないために返済期間を短く設定したことで、毎月の支払いが窮屈になり返済ができなくなってしまっては健全な返済計画ではありません。
一方で、返済期間が長ければ長いほど月々の返済額が少なくなりますので、住宅ローンの返済が家計を圧迫することも少なく、貯蓄に回せるお金も出てくるのではないでしょうか。
支払いが滞納したら自宅を強制退去させられる?
住宅ローンの支払いが厳しくなり滞納をしてしまった場合でも、すぐに支払える場合には問題ありません。
では、何か月も滞納を続けた場合にはどうなるのか?を見ていきましょう。
住宅ローン滞納初期段階(1か月~3か月)
住宅ローンが払えなくなると、1か月程度で督促の電話がかかってきたり、自宅に催告書や督促状が届くようになったります。
そして支払日の翌日から、遅延損害金が発生します。
滞納が終わるまで遅延損害金は発生し続けます。
最初はそれほどかからない督促の電話も、1か月を過ぎると頻繁にかかるようになるでしょう。
ここでしてはいけないのが、面倒だと思って督促の電話に出ないことです。
できることなら、自分から金融機関に連絡するぐらいの誠意を見せなければならないところを、督促の電話を無視するということは金融機関にとって、非常に印象が悪いものとなります。
住宅ローン滞納中期段階(3か月~6か月)
住宅ローンの滞納が3か月を過ぎると、今までのような督促だけではなく、日常生活に影響が出始めます。
具体的にどのようなことが起こるのか、見ていきましょう。
信用情報が「ブラック」になる
住宅ローンの滞納が3か月滞納すると、信用情報に「異動」情報と記録されてしまいます。
通常の延滞では異動情報としては記録されませんが、長期の滞納になると「異動」と記録されます。
「異動」と記録されてしまうということは、いわゆる「ブラック」状態になったということになります。
信用情報がブラック状態になると、クレジットカードやカードローンなどの審査に通ることは難しくなるでしょう。
また、「異動」の記録は5年間消えません。
長期にわたって日常生活に影響をおよぼすことになります。
代位弁済予告通知が届く
住宅ローンを組むときに保証会社を利用している場合、滞納が3か月を過ぎると、代位弁済予告通知が届きます。
代位弁済予告通知とは、もし住宅ローンをこのまま支払えなくなった場合、保証会社が住宅ローンの残額を全額立替払をするというものです。
記載されている期日までに支払いがない場合は、保証会社による代位弁済が実行されます。
立替払をしてくれるなら助かると思う人もいるかも知れませんが、保証会社は立替えをしただけであって、支払いの義務がなくなった訳ではありません。
それどころか、代位弁済の後は、保証会社が立て替えた住宅ローンの残額に、遅延損害金をプラスしたものを一括返済しなければなりません。
そのような事態を防ぐためにも、代位弁済予告通知が届いた場合は早急に金融機関に連絡をして、少しでも滞納分の支払いをする努力をすることをおすすめします。
期限の利益の喪失通知が届く
住宅ローンの滞納が6か月程度になってくると、期限の利益の喪失通知が届きます。
期限の利益というのは、「お金を借りた人がすぐにお金を返さずに、返済期限まで返済しなくていい」という権利のことです。
期限の利益があることで分割払いも可能になります。
ただし、一定の条件によって期限の利益は喪失します。
期限の利益が喪失する条件とは、
- 返済日にお金を返さない
- 契約内容に違反した
- 自己破産の手続きをした
- 債務整理をした
などと色々なケースがあります。
お金を借りた人が返済日にお金を払わないなどで期限の利益を喪失した場合、金融機関などの貸主側は借金の一括返済を請求することができます。
住宅ローンでも例外ではなく、住宅ローンを何か月も滞納している状態が続くと、期限の利益の喪失通知が届き、住宅ローンの一括返済が求められます。
代位弁済通知が届く
期限の利益の喪失通知が来たのちに、代位弁済通知が届きます。
先にも話をしたように、住宅ローンの残金を保証会社が全額立替払を実行したという通知です。
これにより、債権者は金融機関から保証会社に移行します。
そして、保証会社が立替払をしたローン残金と、遅延損害金を一括で支払わなければならなくなりました。
住宅ローン滞納後期段階(6か月~12か月)
代位弁済まで完了してしまうと、いよいよ自宅が競売にかけられる段階になってきました。
競売にかけられる経緯を見ていきましょう。
競売開始決定通知書が届く
代位弁済を過ぎて、住宅ローンの一括返済ができない場合は、裁判所から競売開始決定通知書が届きます。
この通知が来ると自宅が差し押さえられたことになり、自由に売却することができません。
実際に競売の入札にかけられるまでには、半年ほど猶予があります。
物件の調査が開始される
裁判所から物件の現状調査をするという通知が届き、その後に裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅を訪れ、調査が開始されます。
周辺環境から内部写真の撮影、間取りの確認などが行われます。
拒否することはできません。
期間入札決定通知書が届く
物件調査の2か月~4か月後ぐらいに、入札決定通知書が届きます。
入札期間や開札期日などが記載されています。
また、これ以降、物件情報が新聞やインターネット上に公開されます。
入札が開始される
入札が開始され、最も高額の金額を申し出た人が落札者となります。
落札者が入金を済ませた後は、物件の所有権は落札者に移行します。
そのため、速やかに住宅を明渡ししなければなりません。
従わなければ、強制的に退去させられてしまいます。
競売が終わって家を退去したとしても、自宅売却後に残った残債を支払う義務は残っています。
大抵の場合は一括返済を求められますが、分割でも可能な場合もあります。
開札して買受人が決定する
開札期日がやってくると、入札期間中に入札した人の中で最高価額で入札した人が最高価額買受申出人となります。
その後、不動産の売却を許可するかどうかの審査をしたあと、売却許可決定が確定されます。
売却許可決定が確定したあと、買受人にあてて裁判所から代金納付期限通知書が送付されます。
納付期限までに買受人は代金を納付しなければなりません。
もし納付がなかった場合は、売却決定は取消しされます。
買受人が代金を納付すると、物件は買受人のものとなります。
登記移転は裁判所がしてくれるため、買受人自らが手続きをする必要はありません。
配当期日呼出し状が届く
その後、債権者と債務者あてに「当期日呼出状」が届きます。
なお、配当期日とは、物件を購入した人が代金を支払ったあとで、その代金を金融機関などに配分する日のことになります。
もしそのときに、余ったお金があれば、債務者にも配当されます。
住宅から強制退去させられる
住宅はもう買受人の所有物となったため、いつまでも住んでいることはできません。
引渡しをしない場合は不法占拠者となってしまいます。
そのため、迅速に住居の引渡しをしましょう。
引渡しのときに、立ち退き料や引っ越し費用は一切でません。
住宅ローンを滞納する前にできる対処法とは?
住宅ローンの支払いを滞納すると、競売にかけられるなどの大きなデメリットがあります。
滞納をする前にできる対処法とはなにかを紹介していきます。
金融機関にまずは相談をする
住宅ローンの支払いが遅れそうだと分かった時点で、早めに金融機関に相談をしましょう。
早めに相談をすることで、返済計画の見直しに応じてもらえる可能性が高くなります(詳細は次項で後述します)。
絶対にしてはならないのは、滞納をしていても一切督促の電話に出ないことです。
電話を無視し続けていると、競売までの時間が早くなってしまう可能性があります。
借り換えを検討する
住宅ローンを比較的高い金利で借りている場合には、住宅ローンの借り換えも検討する価値はあるでしょう。
場合によっては、借り換えによってかなり総支払額が減る場合もあります。
ただし、支払期間を今よりも長くとってしまうと、金利が低くても支払利息が今より高くなってしまう可能性があります。
借り換えをする場合は、先にシミュレーションをじっくりとしてみることをおすすめします。
親から借りて支払いをする
住宅ローンの支払いを滞納してしまうと、速やかに滞納を解消しなければ信用情報にも記録が残ってしまいます。
また、遅延損害金も発生し続けてしまいます。
それを一時的にでも解消するために、もし親が貸してくれるという場合には頼ってみましょう。
親であっても、きちんと返済をすることが大切です。
また、親から借りたお金で滞納を解消した後は、滞納を繰り返すことのないように対策を考えましょう。
徹底した生活費の削減をして、収入を増やす
住宅ローンの支払いがきつい場合、支出を減らして収入を増やすしかありません。
生活費の削減には、食費や光熱費の節約はもちろん、車は売却、生命保険の解約なども検討し、徹底した支出の削減をしましょう。
また、専業主婦の場合はパートに出ることを検討し、子供が高校生の場合はスマホ代金だけでもアルバイトなどで稼ぐようにさせるなど、収入面が少しでも上がるような方法を考えてみることをおすすめします。
利息のみの返済の申出
飽くまで短期間で支払いが厳しいという場合には、銀行に相談の上しばらくは金利のみの支払いにすることも可能です(最長3年)。
そうすれば毎月の返済金額も抑えることはできますし、特に自宅を競売にかけられるというようなこともありません。
しかしこれは期限付ですから、その後は今まで返済できていなかった元金を毎月の返済額にプラスして請求が入るようになります。
3年で今までの返済額より金額が大きくても、問題なく支払いができるという見通しが立っている場合は有効です。
しかし、現時点の支払いも厳しいのに3年後に、まだ金額が大きくなるなら無理だという人もいることでしょう。
しかし家族の状況によっては支払いが困難なのは一時的であり、なおかつ3年後に支払いが今よりも高くなったとしても収入の確保があるという場合であれば有効な方法です。
銀行に相談・交渉する
銀行にしても、返済がないことには利益につながりません。
ましてや事前に相談をしてきている人に対して、冷たい対応を取ることはありませんので、まずは交渉というよりも相談をしてみるという気持ちで連絡をするといいでしょう。
返済できない物的証拠を集める
住宅ローンを契約したときに、必ず担当の銀行員がついていたはずです。
電話で「返済の件で相談にのってもらいたい」と伝えると、あとは担当銀行員が話をすすめてくれます。
そのときに減額等の話を相手からしてくれたらいいのですが、そうではなさそうな雰囲気の場合には「一度伺ってご相談をしたい」と伝え、伺う日にちを決めて終わりましょう。
伺う日に準備するものは、なぜ支払いが厳しくなってきたのかという物的証拠を持参するといいでしょう。
例えば病気のため休業を余儀なくされたのであれば休業届、給与がダウンしたのであれば直近過去3か月分程度の給与明細などがあると話がスムーズです。
金利引下げは他行と比較した上で交渉を
交渉の末に住宅ローンの金利が引下げになることは、実はさほど珍しい話ではありません。
まず他行に借り換えをした場合、諸経費を含めいくらほど毎月の返済額が変わるのかを計算してみましょう。
借り換えの方がメリットはあると、明確な数字が出た上で、契約中の銀行との交渉に臨みます。
そこまでしないと単に「借り換えを検討しています」だけでは動いてもらえない可能性が高くなります。
具体的な数字を出すことで銀行も、「では〇%に引き下げるというのはいかがでしょうか」と案を出しやすくなります。
既に返済がとどこっている場合は難しい場合も
滞納を繰り替えしている状態で何を言っても、「では今回は金利のみで」などの一時的な解決策しか提示されません。
それで対応できるのであればいいのですが、根本的な解決策にいたらないケースが多いです。
相談するなら、滞納前に行うようにしましょう。
競売になる前に任意売却をしよう!
競売になってしまうと強制的に何もかもが決まっていくため、精神的なダメージが大きいものです。
しかし、競売になってしまう前に任意売却の手続きをするという選択肢をとることもできます。
任意売却ってなに?競売との違いは?
任意売却とは住宅ローンの返済が困難になった場合に、不動産会社の仲介により債権者と債務者で話合いを行い、市場で担保不動産を売却することをいいます。
任意売却と競売の違いは下記のとおりです。
項 目 | 任意売却 | 競 売 |
---|---|---|
売却価格 | 市場価格に近い金額で売却可能 | 市場の5割から7割程度の金額 |
残った債務の返済交渉 | 分割払をすることができる | 交渉は難しい |
引っ越し代 | 出る場合がある | 出ない |
住宅からの退去日 | 話合いで決めることができる | 一方的に決まる(話し合いできない) |
基本的に競売は一方的な決定ばかりで、債務者に決定権はありません。
任意売却のメリットとは?
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になってしまった場合に使われる方法です。
不動産業者が債務者と債権者の間に入って調整をし、例え不動産売買価格がローン残高を下回っても売却できるという不動産取引です。
任意売却をしたい場合、必ず債権者の合意が必要となります。
任意売却ができると、競売と違って通常の不動産売買と同じように売却ができるため、ある程度、債務者の都合を聞いてもらえます。
また競売では、市場価格よりもかなり低い金額で落札される可能性が高いですが、任意売却であれば市場価格の金額で売却することも可能です。
そして、売却した後のローンの残債は、分割払をすることができます。
その他にも、競売になってしまうとインターネットで物件が公開されてしまうので、近所や知人に事情を知られてしまう可能性がありますが、任意売却では通常の不動産取引のように売却することができます。
また、任意売却では交渉次第で、引っ越し代金を売却代金から融通してもらえる場合もあり、強制退去させられる競売よりもたくさんのメリットがあります。
任意売却すべきタイミングは?
任意売却はいつごろ手続きをすればいいかというと、債務者の状況にもよります。
どのようなときに任意売却をすべきか見ていきましょう。
住宅ローンの滞納が続いてしまった場合
住宅ローンを数か月滞納してしまい、滞納を解消することは困難だと感じた場合には、早急に手続きをしましょう。
滞納前に手続きはできませんが、滞納後からは手続きをすることができます。
代位弁済予告通知が届いた場合
住宅ローンの滞納が続き、このままでは代位弁済の上に一括返済を請求されてしまうという代位弁済予告通知が来た段階で、任意売却を考えてみましょう。
それでも、滞納を解消できる自信がある場合はいいですが、特に返済するあてもないという場合にはできるだけ早く任意売却の手続きを始めることをおすすめします。
任意売却は、入札開始までに手続きをすればよいとされていますが、実際には手続きに時間がかかるため、入札開始ぎりぎりに準備するのではなく、なるべく早い時期から手続き始めることをおすすめします。
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