住宅購入時の資金計画
住宅の購入を検討する際、最も重要なのが予算をいくらにするのかということ、つまり資金計画です。
住宅購入は人生の支出の中で最も大きいものと言われます。
現金一括で購入できる人もいるでしょうが、多くは住宅ローンを組んで資金を用意することになります。
中には、親からの援助を受けられる方もあるでしょうが、それで全額賄えるというケースは稀でしょう。
まずは資金の準備について、それぞれの特徴やメリット、デメリットをご紹介しましょう。
資金準備の方法
(現金)
現金、預金など、要するに手持ちの資金のことです。
手持ち資金の利用は、用途の制限もなく、費用なども掛かりませんので、その点がメリットと言えるでしょう。
一方、手持ち資金は住宅購入以外にも使うものです。
例えば、子供の教育費や自動車購入費、旅行などのレジャー費、さらには万一失業したり病気などで働けなくなったりした時の生活費として、最低限確保しておくべき資金もあります。
これらの資金とのバランスを考える必要がありますので、現金を減らしてしまうということがデメリットになる場合もあります。
(親からの援助)
住宅購入資金を親から援助してもらえるのであれば、それに甘えるのも一つの手でしょう。
これは家計としては臨時収入のようなものですので、メリットしかないと言えます。
注意すべきは、資金援助は贈与税の課税対象になるということです。
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度」を利用すれば、一定額までは非課税で贈与を受けられます(住宅の質や贈与のタイミングによって、非課税額は変わります)。
制度利用には各種要件がありますので、利用される際は贈与を受けるまでにしっかり内容を確認しておきましょう。
(住宅ローン)
「住宅購入=住宅ローン」とイメージされるかもしれませんが、実際多くの方が住宅ローンを利用されています。
住宅ローンを組むメリットは、手持ち資金で賄えない金額を用意できることでしょう。
また、返済中に万一死亡したとしても、残りのローン返済額は保険で支払われますので、残された家族にローン負担のない住宅を残すことができます。
この保険を「団体信用生命保険(団信)」と言いますが、基本的に住宅ローンには団信がセットで付いています。
フラット35など、団信が任意の住宅ローン商品もありますので、この場合は追加費用を払って加入しなければ保障は受けられません。
また、3大疾病や8大疾病に対応する団信などもありますので、住宅ローン商品選択の際の検討材料にして下さい。
さらに、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用すれば、所得税・住民税の還付を受けることができます。
この制度は購入物件によって利用の可否や控除額が変わりますので、物件選びの際の一つの検討材料になります。
一方、住宅ローンのデメリットは、金利がかかることです。
例えば、「3000万円を期間35年、金利0.875%、元利均等返済、ボーナス払い無し」で借り入れたとしましょう。
返済総額は34,838,486円となりますので、約484万円も利息として支払うことになります。
住宅ローン控除の恩恵を考えたとしても、現金購入の場合と比べると負担が多くなるのは否めません。
また、住宅ローン手数料や、住宅ローン保証料などの名目で初回に費用が掛かることもあります(金融機関によって異なります)。
借り入れ額の2%ほどの手数料が掛かることもありますが、上記の例で言うと60万円初回に必要になるということです。
住宅ローン商品を比較検討する場合、金利だけで判断するのではなく、こういった付帯費用もしっかり見比べなければなりません。
実際の資金計画はどう考える?
以上、資金準備の方法について概略をご紹介しましたが、実際はこの3つを組み合わせて考える必要があります。
例えば、下記の条件で考えてみましょう。
(購入者の状況)
本人(35歳会社員、年収500万円)
妻(専業主婦)、子2人(5歳、3歳)
(購入費用)
物件代金:3000万円
諸費用(仲介手数料・登記費用・印紙代・火災保険など):300万円
購入費用合計:3300万円
(資金の状況)
貯蓄:500万円
親からの援助:100万円
住宅ローンの利用を前提とする
(期間30年、金利0.875、元利均等返済、ボーナス払い無し)
①貯蓄から500万円、親から100万円、住宅ローン2700万円(返済月額85,301円)
②貯蓄から200万円、親から100万円、住宅ローン3000万円(返済月額94,779円)
③貯蓄から0万円、親から100万円、住宅ローン3200万円(返済月額101,097円)
返済月額を比べると、当然ながら借り入れ額の少ない①が一番負担が軽くなります。
しかし、①では貯蓄が0になってしまいますので、子供2人抱えた家計としては心許ないでしょう。
対照的に、③の場合は貯蓄に一切手をつけていません。
返済月額が無理のない金額だと判断できれば、このプランでもいいかもしれません。
ただし、物件価格よりも借り入れ額が多い(オーバーローン)ので、金融機関によってはここまでの融資をしてくれない可能性もありますし、融資条件として金利が少し上乗せされる可能性もあります。
手元にいくら残すべきか、返済月額をいくらに抑えるべきか、そしてそれを金融機関が許可するか、このバランスを考える必要があります。
住宅購入は家計について考える最大のチャンスです。
ご自身のライフプランにあった資金計画を立てるようにしましょう。
大峰FP事務所代表
田中裕晃
CFP®・1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士。
専門分野はライフプランニング、住宅ローン、不動産投資、相続対策、など。執筆、相談業務を中心に活動中。
住宅取得によって家計が破綻することのないよう、背伸びしない家計の構築を支援する。
不動産取引の実務経験や知識を活かし、住宅の取得、住宅ローンの組み方から、売却、買い替え、相続不動産の扱い、さらには不動産投資まで、不動産を中心とした問題を得意とする。
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