二重融資とはなに?銀行にバレたらどうなるの?
二重融資という言葉をご存知でしょうか?
二重融資とは同じ資金使途で複数の金融機関からお金を借りることです。
二重融資が銀行にばれてしまったら貸しているお金を返してくれという話になることもあります。
二重融資は何が問題なのでしょうか?
それは銀行の審査に大きく関係しています。
この記事では銀行審査の観点から二重融資がなぜ問題になるのかを考えていきたいと思います。
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
二重融資とは
そもそも二重融資とはどのような融資なのでしょうか?
同じ目的で2つの銀行で借りること
二重融資とは同じ目的で複数の銀行からお金を借りることを示します。
例えば、「運転資金で1,000万円必要」とA銀行へ申し込んだとします。
同じように、B銀行に対しても「運転資金として1,000万円必要」という申込みを行います。
A銀行もB銀行も双方にどの申込みがあるのかを知らないため、同時に申し込んだ場合には、どちらの銀行も他の銀行へ申し込みをしたということを知らないままに審査を行なってしまうことになります。
そのため、双方が「返済に問題ない」と審査に通して融資が実行されてしまうと、おなじ目的で二重に融資を受けることになってしまいます。
これが二重融資という状況です。
二重融資はなぜ問題なのか
同じ資金使徒で2つの銀行から借りてしまうことはなぜ問題なのでしょうか?
それは銀行の融資の基準と密接に関係しています。
銀行は必要なお金しか貸さない
銀行は企業にたいして、その企業の業況から必要と考えらる金額までしか融資を行いません。
運転資金であれば、運転資金を算出する計算式があり、その金額までしか融資をしないのが原則です。
「この企業の必要運転資金は1,000万円」と判断してして融資をしたとしても、別の銀行でも同じように判断して1,000万円融資をしてしまったとしたら、本来であれば1,000万円までしか借りることができない企業が、同じ目的で2,000万円借りることができてしまうことになります。
つまり二重融資は「必要資金しか融資しない」という銀行の融資の原則に反してしまっていることになるのです。
二重融資の返済で資金繰りが悪化
会社の資金繰りから判断して返済が可能と判断できる金額を超えるお金を融資してしまったら、貸したお金を返済できないことになってしまいます。
このため、銀行は返済できる範囲のお金しか融資しないのです。
毎月10万円までの返済なら耐えられると判断して融資をしたのに、同じ金額を他の銀行から借りてしまった場合には、毎月もう10万円の返済がのしかかることになります。
これでは銀行が「毎月10万円までの返済なら大丈夫」と判断して融資を行った意味が全くありません。
銀行は融資を実行した後の返済金の支払いも加味して資金繰りの予測を行うため、二重融資を行なってしまうと、銀行が安全であると判断した資金繰りの予測が全くずれてしまうことになるのです。
回収できない可能性
銀行は企業に対して、「この金額までなら返済には問題ない」という判断を下して融資を行なっています。
しかし、同金額を他の銀行から借りてしまった場合には、「返済には問題ない」と判断した前提が全て壊れてしまう可能性があります。
もしかしたら、毎月10万円の返済ならギリギリ大丈夫という判断をして融資を受けられた場合に、二重融資を受けてしまったら、毎月の返済額は倍の20万円になるため、この会社は2つの借り入れを返済するのは不可能なのです。
こうなってしまうと、双方の銀行ともに、貸したお金がデフォルトするリスクが非常に高くなってしまいます。
銀行は預金者から預かった大切な預金を融資に回しています。
二重融資によって債権がデフォルトして大切な預金を守ることができなくなる可能性が高くなってしまうのです。
銀行にばれた時
それでは、銀行にばれた時にはどのようなペナルティが銀行からくだるのでしょう?
対応は銀行によって異なりますが、よほど二重融資を受けても返済に問題がないような優良企業以外はそれなりに厳しい対応がとられてしまうことになります。
格付が低下する可能性
銀行は毎年、融資先の企業そのものの審査を行なっています。
安全か、成長しているかなどを審査して、その年の企業への融資方針や融資限度額や金利を決定します。
これを企業審査と言います。
二重融資が銀行にばれてしまった場合には、銀行が把握している当該企業の借入金の金額と実態が異なることになりますので、もう一度、企業の審査を正しい借入金残高になおして、審査をやり直すことになります。
この審査の結果、債務超過となっていることが発覚した場合などには、その企業の格付けは大きく下落して、場合によってはその後2度と融資を受けることができなくなる可能性があります。
どんな処分になるにしろ、二重融資が発覚した場合には必ず企業審査が行われることになります。
場合によっては一括返済も
後述しますが、二重融資を受けたい企業の中には計画倒産を画策して二重融資を希望するところも存在します。
二重融資が銀行へ発覚し、その企業が二重融資によって倒産の可能性大と銀行が判断した場合には、融資金の一括返済を迫られる可能性もあります。
一括返済を迫っても返済ができない場合には、裁判所へ強制執行手続きの申し立てを行い、資産の差し押さえ手続きなどがとられてしまう可能性があります。
この場合には、計画倒産よりも倒産が早まってしまう可能性があります。
個人ローンは二重融資がばれる
会社ではなく、個人が二重融資を受けることはほぼ不可能です。
申込時に信用情報へ記録される
個人がローンに申し込みを行うと、申し込んだという情報が審査に入った瞬間に信用情報へ記録されます。
このため、A銀行とB銀行に申し込んだとしても、どちらかの銀行の審査では必ず、他の銀行へも申し込んだことがわかってしまいます。
申込み段階でばれる
二重融資とは、2つの銀行が双方の銀行へ同じ申込みを行ったことを知らないからこそ起こってしまう問題です。
したがって、個人信用情報へ申込情報が記録される個人ローンにおいては、申込段階でどちらか一方の銀行が2社以上へ申込みをしているという事実を発覚することができるため、実質的に二重融資は不可能なのです。
カードローン審査において「2社同時申込はやめておいたほうがよい」と言われるのはこのためで、2社同時申込みは二重融資を疑われれる可能性が強くなるだけで、百害あって一利なしなのです。
事業資金で二重融資がばれる場合
個人ローンでは、二重融資がほぼ確実に申込段階でばれてしまうと説明しましたが、事業資金においても二重融資が申込段階からわかるような配慮がされています。
信用保証協会付融資
通常、銀行はよほど信頼できる企業以外には信用保証協会の保証をつけて融資を行います。
仮にA銀行とB銀行に同時申込みをしたとしても、両行ともに信用保証協会の保証をつけて融資すると決めた場合には、信用保証協会へはA銀行とB銀行から同じ案件の保証依頼が上がってくることになります。
この時点で、信用保証協会は二重融資の可能性に気づくため、A銀行とB銀行双方に「二重融資の可能性がある」という連絡を行います。
これによって、未然に二重融資を防ぐことができるようになっているのです。
つまり、二重融資ができるパターンとして以下のつのパターンだけです。
- プロパー資金とプロパー資金
- プロパー資金と信用保証協会付融資
基本的に、自分の方から「プロパーにしてくれ」とか「保証協会の保証をつけてくれ」などと言っても、銀行が要望通りに審査にあげてくれるわけではありません。
銀行は独自の判断でプロパーなのか、保証協会付なのかをきめていますので、やはり、事業資金であっても二重融資を防ぐことができるシステムが確立していると言えるでしょう。
なぜ二重融資を受けたがるのか
二重融資を受けても、返済に困窮し、その後困るのは銀行よりもむしろ二重融資を受けた企業の方です。
なぜ、企業は苦しくなることがわかっているにもかかわらず二重融資を受けたがるのでしょうか?
それは「倒産することが分かっており、倒産前に融資で資金を引き出し、逃げてしまうため」という理由が実はかなり多いのです。
どうせ倒産するのだから、その後の返済計画など関係ないと考えています。
このため、二重融資が発覚すると銀行は「融資金がデフォルトするかも」と考えて、一括返済を迫るような対応をとるのです。
まとめ
二重融資とは、同じ目的で2つの金融機関から融資を受けることです。
双方の金融機関に「このために〇〇円必要だからお金を貸してくれ」と迫り、銀行も審査の末に返済に問題ないと考えて融資をするのですから、実態は倍の金額を借りているという行為は銀行を騙すことになります。
二重融資が発覚すると、銀行内部での格付が下がりその後お金を借りることができなくなったり、最悪の場合には、一括返済を迫られて、倒産してしまこともあります。
申込情報が信用情報へ記録される個人ローンでは、二重申込は発覚してしまいますし、今は信用保証協会制度によって二重申込が銀行に通知されるような仕組みになっています。
このため、二重融資を画策して複数の金融機関へ同時に申し込むということはリスクしかないため、厳禁です。
また、二重融資をあっせんするブローカーも存在しますが、そのような人とは絶対に取引しないようにしましょう。
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