元銀行員が教える!銀行融資に失敗しない経歴書の記入方法
銀行から初めてお金を借りようとする場合、銀行は自社や自分のことを何も知らない状態ですので、まずは当方のことを知ってもらう必要があります。
事業実績が何もない状態で自社や自分のことを知ってもらうためには、まず経歴書という書類を提出する必要があります。
経歴書とは、個人が就職するにあたって会社へ提出する履歴書のような書類です。
この書類から経営者としての質や事業が成功するかどうか、銀行融資の際に大きな判断材料になります。
しかし、経歴書は履歴書のように単純に自分の職歴などを時系列で記載すればよいというものではありません。
これまでの自分の社会人経験からなぜ事業を始めるに至ったのか、成功するための合理性はどのような点にあるのかなどを説明できるような内容である必要があります。
銀行融資に失敗しないためには経歴書の記入でどのような点に注意すべきでしょうか?
この記事では、銀行融資で必要になる経歴書の記入のポイントについて詳しく解説していきます。
目次
創業資金には経歴書が必要
創業資金の融資を受ける際には、必ず経歴書が必要になります。
創業時には、事業資金融資の常識である決算書からの審査を行うことができないためです。
創業は事業実績が何もない
通常、事業資金の融資とは、決算書から過去の財務内容や収益状況を判断して、「返済に問題ないか」「財務内容は健全か」「今後会社は成長できるか」などと言うことを審査します。
しかし、創業というのは、これから事業を行うことです。
このため、審査の際に必ず必要になる決算書や確定申告書といった過去の事業実績がない状態です。
過去の事業実績がないため、経歴書などの経営者個人の過去の情報から審査を行うのです。
なお、創業後1年以内であれば創業資金融資を受けることもできますが、このような場合には、創業から現在までの試算表などの情報も加味して審査が行われることになります。
審査は事業計画と経歴書から判断
創業時というのは過去の事業実績が何もない状態です。
では、何によって審査を行うかと言えば、経営者個人の過去の経歴と事業計画です。
いくら立派な事業計画があっても、経営者が成功するに足る人物でなければ立派な創業計画は絵に描いた餅にすぎません。
このため、創業計画から将来のビジョンを、経歴書から過去のその人となりを判断し、過去の情報と将来の事業計画という過去と未来の2つの側面から、その創業が融資によって支援するに足りるのかということを判断しているのです。
経歴書は、創業時における数少ない過去を審査する情報ですので、創業資金での経歴書は非常に重要な役目を果たしています。
経歴書の記載内容
経歴書は創業資金の審査において非常に重要なものですが、どのような項目を記載しなければならないのでしょうか?
記載しなければならない項目はそれほど多くはありません。
むしろ個人が就職活動をする際も履歴書よりも少ない項目数と言えるでしょう。
日本政策金融公庫では創業計画書という紙の中に「経営者の略歴等」という欄があります。
ここが一般的な経歴書と同じになるため、日本政策金融公庫の書類に則って説明していきます。
職歴
社会人になってから創業に至るまでの職歴を全て記載しましょう。
ここでは、入社は〇〇年○月○日というように時系列で記載していく必要があります。
事業経験
これまで事業を営んだことがあるかどうかも申告する必要があります。
事業経験がある場合には、その事業内容も記載しましょう。
また、すでに事業を辞めている場合には、辞めた時期も明確に記載する必要があります。
事業を辞めて時間が経っていない場合には創業資金が融資されない可能性があるためです。
取得資格
取得した資格があるのであれば、それを全て記載しましょう。
なお、取得してある資格が、専門性が高く創業と関連するものであれば創業融資を受けることができる可能性は高くなります。
知的財産等
知的財産とは、特許や著作権のことです。
もしも創業前に特許を取得し、その特許に基づいて事業を始めたいのであれば、その内容も明記しておきましょう。
この場合には創業に合理性が非常に高いため、銀行融資を受けることができる可能性は高いと言えるでしょう。
経歴書記入のポイント
前述したように、経歴書に記載する項目自体は決して数が多いものではありません。
しかし、経歴書を書くにあたっては、単に書類に書かれている通りの内容を機械的に書けばよいというものではありません。
経歴書から審査担当者が「この人であれば創業が成功するかもしれない」と判断できるようなものである必要があるのです。
以下、審査で有利になる経歴書記入のポイントについて解説していきます。
創業前後をできる限り関連づける
創業資金の融資は創業前の仕事と創業後の仕事に関連性があった方がよいとされています。
例えば、「創業前には人気ラーメン店で10年間働いていたが、今回のれん分けで独立起業することになった」などの経歴であれば、10年間蓄積したノウハウもあるし、のれん分けによって人気店のブランドを継承できるため、成功する可能性が高いというような判断ができます。
しかし、「独立前は雑誌の編集者だったが、一念発起してラーメン店を開業することになった」などの経歴であれば、創業の前と後で何も関連性が生まれません。
「本当に創業して大丈夫?」とは銀行員でなくても誰もが思うものではないでしょうか?
このように創業の前後の職業に関連性がない場合には、なんとか創業後への関連性を見つけましょう。
例えば「雑誌の編集者としてこれまで1,000店舗以上のラーメン店を取材してきた。ラーメンの専門家のラーメン店というブランドで店を起業したい」というような流れであれば、多少は創業前後の関連性が生まれますし、普通のラーメン屋よりもそれなりの付加価値があるため創業の成功も期待できます。
創業後の仕事が創業前の仕事と関係がなくても、これまでの職歴から創業に至った背景には何か関係があるはずです。
できる限り、これまでの職歴から創業に至った関連性を説明できるようにしておきましょう。
また、原則的には創業前と創業後の職業に関連性が濃い方が審査には通過しやすくなります。
職歴だけでなくスキルも記入
経歴書には職歴だけでなくスキルも記入するようにしましょう。
「〇〇会社でプログラミングの技術を取得」とか「自社サイトを自分が立ち上げた」などの内容で、職歴だけでなく、「この人はどのようなことができるのか」ということも職歴書から分かるということも大事なポイントです。
専門的な部分は具体的に説明する
銀行員は意外に専門知識は持っていません。
特にITや技術系の知識は弱い分野です。
このため、自分の職歴やスキルを説明する際には、専門的な知識について詳しく説明するようにしましょう。
また、創業後のビジョンについても創業によってどのようなことが可能になり、社会にとってどのような影響を及ぼすのかということも、専門的な言葉を使っても伝わりません。
銀行員だからわざわざ説明しなくても分かるだろうとは考えず、できる限り丁寧に説明することを心がけてください。
嘘は絶対にNG
銀行融資の審査に落ちたくないというのは誰もが同じです。
しかし、自分をよく見せるために嘘をつくことは絶対にやめましょう。
例えば特許があるなどと嘘をついても審査の何処かの段階で、必ずその特許証などを銀行に提出するように求められます。
銀行は重要な情報については必ず裏を取るため、嘘をつけば後から嘘がばれ、心象を悪くして審査に落ちてしまうこともあります。
また、裏を取らない情報は銀行融資の審査にとってそれほど重要ではない情報で嘘をつくことに意味はありません。
このため、経歴書に嘘を記入することは絶対にやめるようにしましょう。
まとめ
事業実績が何もない創業時において、経営者の過去の経歴を表した経歴書は非常に重要です。
経歴書は単純に職歴を書くだけでなく、過去の職歴の中で自分がどのようなキャリアやスキルを積んできたのかが分かるような内容であることが重要です。
また、創業前と創業後の業種に関連性があった方が審査には通過しやすくなります。
できる限りわかりやすく、経営者としての自分像を書類から伝わるような経歴書を作成することが審査通過のポイントです。
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