銀行借入で求められる債務保証とは
事業主の方にとって銀行からの借入はとても重要です。まだ、借入していなくても、事業の成長などに合せて、必要となることもあります。
その時に求められる債務保証は、知らないととても危険なのです。しっかりと理解しましょう。
- 執筆者の情報
- 名前: 芦田春馬(39歳)
職歴: 銀行と消費者金融,計15年勤務
債務保証とはなにか?
債務保証について「なんとなく」は解っているつもりだけど、細かく考えたことがないという方は多いと思います。
銀行からの借入でも、通常求められるものなので、考えても仕方ないと思っていませんか。
まずは、債務保証がどういったものなのかについてご説明いたします。
債務保証とはどういったものか?
債務保証とは、金融機関などからの借入にあたり、債務者以外の第三者が保証を行うことです。
保証とは、簡単に言えば、債務者が支払いを行えなかった場合に、代わりに返済する義務を負うということです。
もし、保証人が債務者の代わりに弁済を行った場合には、求償権という権利を持つことになります。
求償権を持つと、債務者に対し、保証した金額を請求することが出来ます。
つまり、債務者は保証人が保証履行したからと言って、その分の債務が無くなる訳ではなく、返済しなければならない相手が貸し手から、保証人に代わることになるのです。
連帯保証は責任が重い
意外と知られていないこととして、債務保証には、保証と連帯保証の2種類があります。
この連帯がつくかどうかで、保証人としての責任は大きく異なります。
通常の保証の場合、金融機関などの貸し手から、保証人に返済(保証履行)を求められても、保証人としては、まず債務者へ請求しろ(催告の抗弁権)や、まず債務者の資産から回収しろ(検索の抗弁権)ということで、支払いを拒否することが出来ます。
しかし、連帯保証人に関しては、こういった権利が認められていません。
つまり、連帯保証人とは、借入を行った債務者と、ほぼ同一の責任を負うことになり、非常に責任が重くなっているのです。
金融機関としては、債務者の支払いが延滞となってしまった時点で、債務者の返済能力の有無に関わらず、すぐに連帯保証人に対して保証履行を請求することも可能となるのです。
そして、金融機関から債務保証を求められる際には、通常、この連帯保証人を指しています。
頼むのも頼まれるのも注意が必要!?
ご自身が誰かの借入に対して連帯保証人となる際に注意が必要なことは言うまでもありません。
借入を行うのと同じ責任を負うため、いつ貸し手から請求が来たとしても、対応する責任を負ってしまいます。
連帯保証人になったために、大きな負債を抱えてしまったという事例はたくさんあります。
しかし、ご自身が金融機関から借入するにあたって、経営者以外の第三者の保証を求められる時にも注意が必要です。
ご自身が債務者となる際に、経営者としての繋がりで、他の方に連帯保証を依頼すると、逆に、その方が借入をする時に連帯保証人となることを求められるといった、連帯保証の連鎖が生まれてしまうことがあります。
連帯保証で相互に繋がってしまうと、どちらかの借入返済に問題が発生してしまうと、保証債務の履行によって、2人とも状況が悪化するという可能性が出てしまうのです。
債務保証を求められる理由
金融機関が債務保証を求める第一の理由は、債務者だけでは十分でない信用力を、連帯保証人の信用力で補完するためです。
例えば、親子間の関係にある企業の場合、子会社としての信用力は低いが、親会社の信用力は高いということもあります。
しかし、子会社として必要な資金も全て、親会社で借入する訳ではなく、直接子会社で借入することもあります。
こういった際に、金融機関としては、親会社が連帯保証するなら、子会社への融資に応じるということがあります。
また、第二に債務者の借入に対する責任を、簡単に放棄させないようにするということがあります。
例えば、企業が借入をするにあたって、連帯保証人がいない場合、企業は事業が悪化して、返済が困難となった際に、容易に破産など、事業の停止・返済停止を行うということがあります。
経営者を含め、会社以外の誰かが借入に対しての責任を負っていない場合、事業の失敗が明らかとなった時点で、会社を清算してしまうこともできます。
一度清算してしまい、新たに別の会社を作った方が良いという判断もあり得ます。
会社としての負債と、経営者などの個人の負債は別であり、安易に会社を辞めてしまうということも考えられます。
金融機関としては、第三者の債務保証を求めることで、こういった責任放棄を牽制する目的もあるのです。
金融機関が行う債務保証
また、企業が借入するときの債務保証は、経営者や、経営者の家族、友人などの第三者保証だけではありません。
金融機関が行う債務保証というものもあります。
その一例として、中小企業基盤整備機構が行う債務保証制度についてご説明いたしましょう。
これは、特定の法律に基づく認定事業者や、法律に基づく事業に対し、企業が金融機関から借入を行う際に、中小企業基盤整備機構が債務保証を行い、資金調達を行いやすくするという制度です。
中小企業基盤整備機構の債務保証では、最大で50億円の資金調達に対応し、金融機関からの融資額の30~50%を保証します。
金融機関としては、信用力の高い中小企業基盤整備機構が融資の一定割合に対して、保証することにより、貸し倒れによるリスクが大きく減少するため、融資を行いやすくなります。
この債務保証に対して申込ができる資金の例としては、「規制緩和を受けて新事業に取組む」ための資金の他、「運転資金の必要なベンチャーファンド」、「事業再編のための資金」、「事業再生のためのつなぎ資金」、「経営力向上による本業の成長のための資金」といったものがあります。
政策的に支援する必要があると考える特定の目的を支援しているのです。
信用保証協会による債務保証
また、もっと身近な債務保証の制度として、信用保証協会による債務保証もあります。
既に借入を行っている事業主の方にとっては、よくご存じかもしれません。
中小企業の借入にとってとても重要な制度となります。
信用保証協会は、中小企業の円滑な資金調達を支援するための、政府系の機関となります。
中小企業が金融機関から借入を行う際に、金融機関に対して融資の一部(7~8割程度)を債務保証することで、金融機関が中小企業に対して、融資を行いやすくしています。
中小企業としては、金融機関に対して支払う利息以外に、信用保証協会に対して、保証料を支払う必要があります。
しかし、借入を行いやすくなること、及び金融機関からの借入利息が、リスクの低い融資であるためにその分低く抑えられているとも考えられます。
信用保証協会の保証制度が無いと、借入が困難となってしまう中小企業が増加すると考えられるため、非常に大切な制度であると言えます。
信用保証協会の保証制度は、幅広い中小企業で、かつ、銀行を窓口として申込が可能です。
銀行に対して融資相談を行うと、銀行の方から利用についてアドバイスを受けることが出来ます。
まとめ
金融機関から求められる債務保証は非常に責任が重いので注意が必要です。
ご自身が経営する企業のためであればともかく、他社のために債務保証を行うかは慎重に判断いたしましょう。
逆に、安易に経営者仲間などへ債務保証を依頼すると、相互に債務保証を行う必要が発生することもあり、非常に危険です。
信用保証協会だけでなく、中小企業基盤整備機構が行う債務保証の制度もあり、しっかりと理解して有効活用しましょう。
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