会社設立時や設立1年目に銀行融資は利用できる?
会社を経営していく上できっても切れない存在が金融機関。
一部上場の大企業と呼ばれる会社をはじめとして、日本企業全体の90%を占める中小零細企業もどこかしらの金融機関から事業資金融資を受けているのが実情です。
そして、その中でも経営者にとって特に身近なのが銀行。
事業資金融資の検討となれば、申し込み先に銀行を挙げる方は少なくないでしょう。
昨今は会社法の改正に伴い、法人会社設立に高額な資金が必要なくなったことにより、法人会社を起業する数は年々増加しています。
起業は何かと支出が多くなるため、事業資金融資への依存度は以前にも増して高くなっていることは確かです。
そこで重要になってくるのが会社設立を目指す起業家に対する銀行の対応。
起業を志す人、起業してまもなくの人に対して、銀行はどの程度資金的な援助をしてれるのでしょうか?
そこで今回は銀行は会社設立時の融資にどういう考えを持っているのかをひも解き、どうやって融資を工面するのがベストなのかを検証していきましょう。
- 執筆者の情報
- 名前:馬井実(49歳)
職歴:1992年~2008年まで地方銀行で貸付業務に従事
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「今回ご紹介するのは、以下の人におすすめの内容になります。
- 会社設立を考えている人
- 会社設立時の融資はどこの銀行を利用したらいいか知りたい人」
目次
会社設立前に融資を受けることはできるの?
それではまず銀行の起業資金融資への対応を見ていきましょう
銀行からの起業資金融資は可能なのでしょうか?
経営者にとっては一番身近な金融機関とも言える銀行ですが、残念ながら銀行は起業資金の融資には積極的でないのが実情です。
銀行が一番重要視するのが返済能力。
銀行は融資をしても大丈夫なだけの返済能力があるかどうかを、会社の決算書をベースに判断します。
銀行融資の合否の80%は決算書内容で決まるとも言われているほどですから、銀行が事業結果とも言える財務状態をいかに重要視しているかがお分かりいただけるでしょう。
しかし、実績のない会社に決算書の提出はできません。
つまり銀行は実績のない会社へ事業資金融資をする方針がなく、そのすべも持ち合わせていないのです。
まだ事業結果すら出ていない設立前の会社の場合、返済能力を判断する材料がありません。
通常の銀行融資に用いられている審査基準はあてにならず、融資実行を決定するのための判断基準がないというのが実情でしょう。
もちろん一部上場の大企業が100%出資の子会社を設立するというのならば話は別かもしれません。
しかし、一個人が起業する場合は、融資することはありえないというのが銀行の通常スタンスなのです。
保証がつかない、プロパー融資で銀行から起業資金を借りることかは不可能でしょう。
会社設立は公的融資がおススメ
それならば起業するには全ての資金を自己責任において用意しなければならないのでしょうか?
そんなことはありません。
それが条件ならば起業しようとする人の数は極端に減り、日本経済は一気に落ち込むことになるでしょう。
経済の成長なくして国家の展望は見込めません。
チャンと政府を中心とする公的機関が日本経済成長のカギを握る中小零細企業の支援を行っているのです。
経営者でもなければ知っている方は少ないかもしれませんが、事業資金融資は何も銀行の専売特許ではありません。
銀行よりも驚くほど好条件で、事業資金の融資を行う公的融資なるものが存在します。
公的融資とは国や地方自治体が中心となって中小零細企業や起業予定者の資金支援を目的とした融資制度です。
銀行のよう営利目的第一に融資をするわけではなく、あくまでも企業支援を目的としているので銀行よりも敷居が低く、安心して申し込むことができます。
その公的融資は国と地方自治体が行っている下記の2つがあります。
- 国による公庫融資
- 地方自治体による制度融資
この2つの融資制度には起業予定者向け支援を目的とした融資が用意されており、低金利かう無担保で申し込むことができます。
公的融資以外にもノンバンクのビジネスローンという手もありますが、金利が15%前後とカードローン並みの高金利な上、融資限度額も200~300万円と低く設定されているため、事業資金としての借り入れは正直おススメできません。
起業資金の融資は公的融資以外は難しいのが実情なのです。
会社設立時に公的融資をうけて起業するには?
それでは実際に公的融資を利用するにはどうすればいいのかを検証していきましょう。
会社を設立するためにオススメの融資として、日本政策金融公庫の融資と、地方自治体の制度資金があります。
どちらの融資制度も別々の枠でお金を借りることができますので、それぞれの融資制度の特徴やメリットとデメリットについて理解を深めておきましょう。
会社設立時の融資にはどちらの公的資金がおススメ?
先ほど申しましたように公的資金には「国による公庫融資」と「地方自治体による制度融資」の2つがあります。
双方ともこれから起業しようという経営者の支援を目的に融資を行っていますが、その融資条件には様々な違いがあるため、まずはその違いをよく理解した上でどちらをどちらにするかを決定しなかればなりません。
ここでは違いを理解していただく上で、双方の特徴を簡単に説明していきましょう。
制度融資とは?
制度融資は地方自治体が中心となって、地域にある金融機関と信用保証協会の3機関が協力して行う融資制度です。
財源は地方自治体が銀行などの金融機関に預けた預託金となり、信用保証協会の保証を受けて金融機関から融資が実行されます。
よって、申し込みから融資実行までの流れは下記のようになります。
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この流れを見ると実際に融資実行を行うのは銀行となっています。
「何で?」と不思議に思われた方も多いことでしょう。
基本的に起業融資を行わない銀行が何故、融資実行先となっているのでしょうか?
これには制度融資の持つ性質が大きく関係しています。
制度融資の財源となるのは地方自治体から金融機関に預けられた預託金である上、信用保証協会の保証が付いているので返済不能になった際は代位弁済が受けられるため、銀行はほとんどリスクを負う必要のない融資となっています。
これが制度融資の実態です。
突然地方自治体の窓口に行っても、もちろん制度資金の申込をすることはできます。
しかし、おすすめの方法は銀行の窓口に行くことです。
銀行へ起業資金の申込に行けば十中八九制度資金の紹介を受けます。
銀行は、リスクのない制度資金融資を実行したいと考えていますので、融資のために必要な地方自治体への申込、保証協会への申込、書類の作成等、全ての事務手続きをしてくれます。
地方自治体との面談にも同行してくれることもあり、融資を有利に、素早く進めることができますので、まずは銀行へ相談に行くことをおすすめします。
公庫融資とは?
公庫融資とは財務省が管轄する政府系金融機関の日本政策金融公庫を通じて行う事業資金融資です。
日本政策金融公庫はかつての国民金融公庫と中小企業金融公庫、国際協力銀行の3つが平成20年に統合されて誕生した中小企業を支援する役割をもつ金融機関です。
よって中小企業や個人事業主に対して融資業務のみを行い、上場企業には融資を行っていません。
本当に中小企業を支援するためだけに存在する金融機関なのです。日本政策金融公庫の融資実行までの流れは下記のとおりです。
- 日本政策金融公庫に融資の申し込み
- 担当者との面談
- 日本政策金融公庫内での審査
- 融資実行
制度融資と比べるとかなり簡略化された流れとなっていますが、日本政策金融公庫は無担保無保証で融資をすることができますので、制度資金融資のように、いくつもの機関に審査を受ける必要がなく、日本政策金融公庫内で審査が完結するというのが最大の理由です。
制度融資のメリットとデメリット
起業の際に銀行へ相談に行くと、ほぼ確実に制度資金を紹介されることになるでしょう。
その際には制度資金のメリットとデメリットをあらかじめ理解しておく必要があります。
メリット
制度資金融資のメリットとしては以下のようなことを考えることができます。
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最も大きなメリットが、地方自治体による、保証料補給や利子補給でしょう。
銀行の通常の事業資金融資でも、信用保証協会の保証を付けて融資を受けることが一般的です。
しかし、そのような場合には地方自治体から利子補給や保証料の補給を受けることはできません。
利子も保証料も定められた金額を全額自分たちで負担する必要があります。
制度資金は、地方自治体が地場の中小企業を支援することを目的とした制度ですので、地方自治体が審査に加わる制度資金だけが、利子や保証料に対する補助を税金から受けることができるのです。
補助の内容は地方自治体によってかなり変わりますが、場合によっては利息や保証料の半分から全額程度の補給を受けることができる場合があります。
また、そもそも金利も低く、起業向けの融資であれば1%台の低金利できることができるのが一般的です。
デメリット
制度資金融資にもデメリットがあります。
特に手続きの煩雑さはかなり面倒です。
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メリットだけ見れば起業家にとってはとても好条件のように見えますが、気になるのはデメリットの「銀行の審査が通らないこともある」という点です。
以前は返済不能なった場合は信用保証協会が100%リスクを負って、銀行へ残債全額が返済されていたため、銀行にとってとてはいい商売となっていました。
よって銀行審査が不通過となることはまずありませんでした。
しかし、現行のリスク負担は「信用保証協会 : 銀行 = 80% : 20%」となりノーリスクではなくなったため、条件によっては銀行審査が通らないケースも出てきました。
融資財源が地方自治体からの預託金であることを考えれば、めったにないケースとも言えるのですが、そんなことがあることは頭に入れておきましょう。
また、制度資金融資において、実は審査の鍵を握っているのは信用保証協会です。
いかに銀行が融資にも前向きでも、保証協会がノーと言えば絶対に融資を受けることはできません。
銀行、地方自治体、信用保証協会の3者がそれぞれ審査を行うので、審査には時間がかかり、1ヶ月以上の時間がかかってしまうことも珍しくありません。
また、通常の銀行融資よりも地方自治体に提出する書類が増えてしまいますので、書類の用意にも時間がかかかります。
会社設立の為に用意されている融資制度は?
それでは日本政策金融公庫で起業時に利用できる融資制度の内容を簡単に説明しておきましょう。
その融資は下記のとおりです。
- 新規開業資金
- 女性、若者、シニア起業家支援資金
- 再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)
- 創業支援貸付利率特例制度
- 新創業融資制度
新規開業資金
新たに起業する、もしくは開業後おおむね7年以内の方への融資制度です。
- 融資限度額 7,200万円(運転資金は4,800万円以内)
- 返済期間 運転資金7年以内、設備資金20年以内
- 返済据置期間 運転資金2年以内、設備資金2年以内
- 利率 基準金利
- 担保、保証人 要相談
女性、若者、シニア起業家支援資金
女性または30歳未満から55歳以上の方で新たに起業する、もしくは開業後おおむね7年以内の方への融資制度です。
- 融資限度額 7,200万円(運転資金は4,800万円以内)
- 返済期間 運転資金7年以内、設備資金20年以内
- 返済据置期間 運転資金2年以内、設備資金2年以内
- 利率 基準金利(資金使途によって特例の場合も有り)
- 担保、保証人 要相談
再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)
新たに起業する、もしくは開業後おおむね7年以内で廃業歴等があるの方への融資制度です。
- 融資限度額 7,200万円(運転資金は4,800万円以内)
- 返済期間 運転資金7年以内、設備資金20年以内
- 返済据置期間 運転資金2年以内、設備資金2年以内
- 利率 基準金利(資金使途によって特例の場合も有り)
- 担保、保証人 要相談
創業支援貸付利率特例制度
新たに起業する、もしくは開業後1年以内の方への融資制度です。
- 融資限度額 利用する各融資制度に定められた融資限度額
- 返済期間 利用する各融資制度に定められた返済期間内
- 返済据置期間 利用する各融資制度に定められた据置期間内
- 利率 利用する各融資制度に定められた利率の-0.2%(条件によっては-0.3%)
- 担保、保証人 要相談
創業支援貸付利率特例制度は上記3つの融資制度を低金利で利用できる特例制度です。
新創業融資制度
新創業融資制度は下記3つの条件をクリアした方への融資制度です。
- 新たに起業する、もしくは税務申告を2期終えていない
- 雇用創出等の要件(雇用の創出をともなう等)
- 総起業資金の10分の1以上の自己資金が用意できる
また融資条件は下記のとおりです。
- 融資限度額 3,000万円(運転資金は1,500万円以内)
- 返済期間 利用する各融資制度に定められた返済期間内
- 返済据置期間 利用する各融資制度に定められた据置期間内
- 利率 基準金利(融資条件によって変動)
- 担保、保証人 原則不要(代表者の連帯保証があれば利率を0.1%低減)
新創業融資制度は創業支援貸付利率特例制度と同様、3つの融資制度無担保・無保証で利用できる特例制度です。
ほかの融資制度は基本的には担保を必要としているため融資限度額は3,000万円と目減りしますが、自己資金の用意額も少なくて済み、尚且つ無担保・無保証で融資が受けられる点は
起業する方にとっては大きなメリットとなってくるでしょう。
日本政策金融公庫のメリットとデメリット
それでは日本政策金融公庫のメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
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日本政策金融公庫の創業資金融資も時間はかかりますが、制度資金よりも早くお金を借りることができる可能性があります。
また、必要な条件を満たしてある人であれば、比較的審査通過の可能性は高いと言えるでしょう。
デメリット
デメリットとしては、制度資金融資のように気軽に面談に行くことができないため、契約手続きが面倒という点などを挙げることができます。
- 提出書類が多い
- 店舗が近くにない場合には契約がかなり大変
- 税金の滞納があれば融資が受けられない
日本政策金融公庫は銀行のようにどこの地自体にもある訳ではありません。
地方都市になれば、大きな市に1つ支店があるかどうかというところです。
日本政策金融公庫の融資を受けるためには、日本政策金融公庫との面談が必要ですので、場合によっては2時間以上の時間をかけて、面談をしに行き、審査に通ったら再び契約手続きに赴くということになります。
制度資金であれば、近くの地銀や信金で申込手続きが可能ですが、近くに日本政策金融公庫がない場合には気軽に利用する事ができないケースが多々あります。
その他は制度資金と同じです。
やはり書類は多いですし、税金から運営されている金融機関ですので、税金の滞納がある場合には融資を受けることはできません。
なお、以上が日本政策金融公庫のメリットとデメリットになりますが、制度融資と比較すると起業融資を受けるには随分いい条件が揃っていることに気づきませんか?
まずデメリットが少ないこともそうですが、特に下記の点は見逃せません。
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日本政策金融公庫から融資を受けたからといって、制度融資を利用することができないわけではありません。
起業後に融資を受ける必要があれば制度融資に申し込むこともできるのです。
制度資金は信用保証協会の保証が付くため、制度資金資金を利用すると、信用保証協会の枠は借りた分だけ減少していまいます。
このため、信用保証協会の保証付融資を借りすぎると、いつか、信用保証協会の枠が埋まってしまい、銀行や信用金庫からお金を借りることができなくなります。
一方、信用保証協会の保証が付かない日本政策金融公庫からお金を借りれば、信用保証協会の枠を使わなわないで、取っておくことがきるのです。
となれば起業融資を受けるならば、まずは公庫融資である日本政策金融公庫へ申し込むのが得策と考えるのが妥当でしょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
それでは日本政策金融公庫の融資制度の中でも、一番有利な条件で融資の受けられる新創業融資制度について簡単に説明しておきましょう。
新創業融資制度の融資条件については先程説明しましたが、この融資制度の最大のメリットは下記の2つとなります。
- 無担保・保証人なしで借り入れできる
- 用意する自己資金が低い
最大3,000万円もの融資が無担保・無保証で受けられる例はどこを探しても他にはないので、この条件は事業者によって非常にメリットが高く有利な条件と言えます。
また制度融資はもとより、他の公庫融資でも新規開業資金の自己資金は融資額の2分の1が必要とされています。
よって、それを大きく下回る10分の1というのは、資金集めに苦労している方には見逃せないメリットとなってくるでしょう。
しかし、よく理解しておいてもらいたいのは、新創業融資制度は既存の融資制度を無担保・無保証で利用できる特例制度である点です。
あたかも1つの融資制度のように記述しているサイトが多く見受けられるため、勘違いしている方も多いのですが、日本政策金融公庫のHPでも「新創業融資制度は、次の各融資制度をご利用いただく場合にお取り扱いできる無担保・無保証人の特例措置です。」とチャンと記載されています。
単体での申込みはできない
新創業融資制度は下記の融資制度を利用する場合、取り扱える無担保・無保証人の特例措置です。
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つまり上記融資制度のどれかに申し込んだ際、融資総額は少なくなるが新創業融資制度の方がメリットがあると判断されれば、下記のように申し込んだ融資制度が新創業融資制度の条件で融資されることになるのです。
新規開業資金 | 新創業融資制度 | ||
---|---|---|---|
融資限度額 | 7,200万円 (運転資金は4,800万円以内) | → | 3,000万円 (運転資金は1,500万円以内) |
返済期間 | 運転資金7年以内、設備資金20年以内 | → | 運転資金7年以内、設備資金20年以内 |
返済据置期間 | 運転資金2年以内、設備資金2年以内 | → | 運転資金2年以内、設備資金2年以内 |
利率 | 基準金利 | → | 基準金利 |
担保、保証人 | 要相談 | → | 原則不要 |
自己資金 | 2分の1 | → | 10分の1 |
新創業融資制度は既存の融資制度をさらに好条件で利用するための特例制度である点をよく理解しておきましょう。
新創業融資制度を受けるために必要なこと
新創業融資制度を申請をするときには、融資を実行しやすくするためにはコツがあります。
何もプランがない状態で申込をしても、審査に通ることは難しくなります。
自分の事業計画をしっかりと準備し、その事業計画について担当者を納得させるということが非常に重要になります。
とにかくしっかりと準備すること!
創業資金融資について、最も重要なのは、事業計画です。
どの程度の売り上げを見込んでいるのか、経費はどのくらいか、創業からどのくらいで利益を出す見込みなのか、数年後には会社はどの程度の規模になっているのかなどを根拠をつけて、説明できなければなりません。
何も実績がない状態ですので、創業資金融資を受けるにはとにかくこの計画が重要です。
自分で計画を作り、審査に通過することはもちろん可能です。
しかし不安な方は、商工会議所のセミナーなどに参加しましょう。
コンサルタントや経営指導員が、創業に必要なもの、計画書の作成方法などについて教えてくれますので、そちらの方が審査通過の可能性は高まるでしょう。
担当者に成功を確信してもらうこと
審査担当者の印象も非常に重要です。
繰り返しになりますが、創業融資は数字から判断できる実績が何もないため、担当者が「この人なら事業に成功する」と判断するかどうかで審査の結果が左右されます。
印象をよくするためのポイントとしては以下のようなものがあります。
- 服装や髪型は清潔に
- なぜ創業に至ったのか明確にする
- 数年後までのビジョンを持っている
- 数字をしっかりと把握している
- 担当者が依頼する書類の提出には気持ちよく速やかに対応する
何となく創業をするのではなく、しっかりと夢とビジョンを持ちながら、現実的に数字をしっかりと把握することが大切です。
また、事業資金融資においては、当初依頼されていなかった書類の提出を、急遽求められることがあります。
このような時にも面倒な顔をせず、気持ちよく書類の提出に協力しましょう。
新創業融資の申請から融資実行まで
新創業融資の申込から、融資が実行されるまでの流れを確認しておきましょう。
まずは、政策金融公庫へ相談に行くことから始めましょう。
なお、相談は電話でも行うことができます。
必要書類を準備する
最初に必要になる書類は基本的には創業計画書だけです。
日本政策金融公庫のホームページには所定の計画書雛形が用意されていますので、そちらに記入をするのが最も簡単です。
この他、自分がメディアなどに取り上げられた実績があるのであれば、そのようなアピールするための書類も用意しましょう。
融資の申込みを行う
必要な書類がそろったら申込をすることになります。
申込までの間に電話でやり取りをしていれば、申込手続きも郵送などで行うことも可能です。
担当者と審査面談
申込が完了したら、必ず担当者と面談をしなければなりません。
先ほど述べたように、近くに日本政策金融公庫の支店がない場合には時間をかけてでも、日本政策金融公庫窓口に行く必要があります。
現地調査
基本的に融資の前には日本政策金融公庫の担当者が会社に赴き、事業の実態を調査します。
この際には、会社をしっかりと綺麗にしておきましょう。
担当者の中には「その会社がしっかりとしているかどうかはトイレを見れば分かる」ということまで言う人もいるくらいですので、モノや書類や設備の整理整頓はもちろん、細部まで綺麗にしておくようにして下さい。
融資の実行
審査が終了すると契約手続きになり、融資が実行されます。
契約の際には以下のような書類が必要になります。
- 会社と経営者の印鑑証明書
- 商業登記簿謄本
- 経営者の住民票
- 納税証明書など
これらの書類は一箇所では取得できず、市区町村役場、法務局、税務署なども行かなければならないことも少なくありません。
契約に必要な書類を事前に確認し、時間に余裕がある時に書類を用意しておきましょう。
1年目が難しい理由
よく、実績がない状態で融資を受けることが難しいと言われますが、この理由は簡単に言えば、審査材料がないためです。
なぜ実績がないと審査に通過することが難しいのでしょうか?
以下で詳しく理由を解説していきます。
決算書がない
まず、創業後1年以内というのは決算書がない状態です。
決算書というのは、会社の1年間の営業活動から発生した売上や経費や仕入れを示す損益計算書や会社の資産と負債の状況を示す貸借対照表などです。
これらの書類は銀行が事業資金審査を行うための基礎の基礎となる資料です。
この資料がないということは、銀行はその企業の情報を決算書がある企業に比べて詳細に知ることができないのです。
売上が少ない
創業して数ヶ月しか経っておらず、この時点で融資が必要ということは、一般的には創業から現在までの売上が計画通りに上がっていないということです。
このため、仮にお金を借りることができたとしても、その後の返済の根拠がないことになります。
このため、合理性のある計画書がなければ創業後1年以内に融資を受けることは難しくなってしまいます。
銀行の信用がない
創業後まもなくの会社ですので、銀行からの信用は全くない状態です。
また、後述しますが、創業後1年以内の融資ということは銀行から初めて融資を受けることになりますので、返済できるかどうかの見込みもない状態です。
このため、創業後1年以内の会社は、創業から1年以上経過している会社とは全く別の基準で審査が行われることになります。
創業後より創業前が借りやすい
創業後1年以内に融資を受けるよりも、創業前に融資を受けてしまったほうが融資は受けやすくなります。
創業前というのは、完全に実績というものがない状態ですので、審査の基準は事業計画のみになります。
一方、創業後になると、多少なりとも会社の経営実績があり、その点も審査の対象になります。
さらに、創業後1年以内に事業資金の融資を希望する人というのは、創業してから現在の経営がうまくいかないがために手元の資金が枯渇したというケースが多いため、創業前よりもマイナスポイントが多いということになります。
このため、創業後に融資を受けるくらいであれば、創業前にあらかじめ融資を受けておいたほうがよいでしょう。
創業1年目の審査
それでは、創業1年目の審査はどのような目線で行われるのでしょうか?
創業資金には欠かせない事業計画と、ここまでの数ヶ月間の実績両面から審査が行われることになります。
今後数年間の事業計画
創業資金の審査の際には「事業計画書」というものを提出します。
何を販売するのか、どこに販売するのか、どこから仕入れるのか、運営に必要な経費はいくらなのか、という内容を根拠をつけて説明します。
この際に、例えば「これまで中古自動車屋に10年勤務しており、自分個人の顧客が多いことから、創業後も勤務していた企業から顧客を持ってくることができ、月商〇〇万円の売上を期待できる」などという具体的な根拠があったほうが審査には有利になります。
そのため、創業前の仕事と創業後の仕事が全く関連性がないよりも、創業前と創業後の仕事に関連性があったほうが有利です。
今後数カ月の売上と経費の見込み、今後3年程度の売上と経費の見込みを記載しましょう。
この際、どうやって今後数年間で事業を拡大していくのかという根拠も記載するようにしましょう。
例えば「昨年、自分が勤務していた会社で自分が販売した車が1年後に車検を迎えるため、車検の際には自分から車を買い替える話ができている」などという理由です。
創業資金は創業前であろうと、創業後1年以内であろうと、まずはこの事業計画書が圧倒的に重要になります。
創業後から現在までの事業実績
創業前と創業後1年以内の審査でもっとも異なるのはこの点です。
創業後1年以内の人は、創業してから現在までの売上や経費の詳細も銀行へ提出する必要があります。
多くの場合、この数字はマイナスになっています。
これが、創業後1年以内の方が審査通過が難しい理由です。
しかし、マイナスになっていても焦る必要はありません。
創業から現在まで、少しずつ売上が伸びている場合には「あと3ヶ月後には収支がプラスになる」などと理由をつけて説明すればよいですし、検討している売上拡大の方法があるのであれば、それを申告して、実現可能性があると認められれば融資を受けることができる可能性は十分にあります。
創業資金融資は1度だけ
創業前に創業資金の融資を受けた人が、創業後1年以内に銀行から再び事業資金の借入をすることは、ほとんど不可能です。
基本的に創業資金は1度しか融資を受けることができませんし、創業後1年以内の企業は通常の事業資金融資を受けることは難しいためです。
「創業前から創業後1年以内の間にお金を借りるチャンスは1度だけ」と頭へ入れておきましょう。
このため、創業前に融資を受ける場合には、少なくとも1年間は会社の経営を回していけるようによく検討してお金を借りる必要があります。
起業後ならば銀行も可能?!
創業1年以上経過して、決算書ができた状態であれば、企業にとって、融資を受けるための選択肢はかなり広がります。
事業開始から1年以上経過した後はどのような点をチェックされるのでしょうか?
事業開始後によく調べられる3つの事
事業開始後に銀行からチェックされる内容は主に以下のようなことになります。
- 売上の状態はどうか
- 予定通りの利益が出ているか
- 資金繰りは上手くいっているか
創業してから今までに、順調に事業が進んでいるかどうかということが非常に重要になります。
創業してから利益が出ておらず、創業時に用意した資金をただ食いつぶしているだけの状態であれば、融資を受けることはかなり厳しくなると考えたほうがよいでしょう。
また、何のためにお金が必要なのかということも重要です。
創業から事業が順調に拡大し、設備投資のための資金が必要とか、増加運転資金が必要などという場合には融資を受けやすくなるでしょう。
しかし、利益が予定通りに上がらず、赤字を埋めるための資金が必要という場合には審査に通過することは難しくなります。
追加融資を受ける為に必要な条件
創業1年以上経過して、追加融資を受けたい場合には最低限、以下の条件は満たしておく必要があります。
- 業績が順調な推移を見せている
- 事業計画が明確である
- 資金繰りが困難な状況に陥っていない
- 今後の業績見通しが明確化されている
業績が上向き、「赤字でお金がないから融資を受けたい」という状況でないことが求めらます。
何にお金が必要で、今後その資金を元手に事業をどのように展開していくのか、ということを明確に説明できるようにしておかないと、融資を受けることは難しいでしょう。
お金がないから融資を受けたいと思うものですが、お金を貸す側にとってみれば、返す見込みのない事業者に追加融資をしてしまったら返済が危うくなってしまうのです。
貸したお金で事業を拡大することができる会社がお金を借りやすいのです。
創業1年以内は創業資金を利用
先ほど述べたように、創業後1年以内に事業資金の融資を受けることは、1年以上事業を営んでいる事業者と比較して、銀行が把握できない部分が少なくありません。
このため、創業1年以内の事業者は創業前の人と同じ括りになり、創業資金を利用して資金調達を行うことになります。
創業後1年以上は営業実績を評価する通常の事業資金の融資を行いますが、創業1年以内の場合には、計画を審査する創業資金で対応しているのです。
創業1年目はいくらまで借りられる?
では、創業1年目の融資はいくらまで借りることができるのでしょうか?
基本的には運転資金のみ
創業後1年以内の融資は基本的に運転資金しか借りることができません。
創業時に会社の経営に必要な設備が揃っていないとそもそも創業ができないはずですので、創業後1年以内に新たな設備が必要になるロジックが成り立たないためです。
しかし、創業してから新たに必要な設備があることが分かる場合もあります。
このような場合には、まずは銀行が分かるように理由をしっかりと説明しましょう。
なお、このような場合も創業資金の取り扱いになるため、すでに創業前に創業資金の融資を受けている場合にはお金を借りることは難しいでしょう。
毎月の運転資金+必要月数
例えば、毎月会社の経営をしていくのに50万円必要な会社が売上が足りずに30万円の入金しかない場合は、毎月20万円の赤字を埋めるための資金を借りない限りは会社を経営していくことはできません。
このような場合には、「何ヶ月先に収支がプラスになる見込みなのか」という根拠を銀行へ示す必要があります。
3ヶ月先には収支がプラスになることが見込めるのであれば、毎月赤字分20万円×3ヶ月=60万円程度の融資を受けることができます。
必要な資金以外は借りることは難しいため、毎月いくら必要で、何ヶ月必要なのかという説明を銀行が分かるようにすることが重要です。
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