闇金の仕事内容はどんな感じなの?【闇金勤務経験者が語る】
給料や待遇が良い仕事はないかと探していると意外と見つかるのが闇金の仕事です。もちろん就職サイトの仕事内容に「闇金の仕事です」とは書いてありません。仕事内容として書いてあるのはお金を貸す仕事です、とか電話でお金に関するアドバイスをする仕事です、のようになっていますね。
- 執筆者の情報
- 名前:梅星 飛雄馬(55歳)
職歴:地域密着の街金を30年経営
なお、記事後半では「闇金勤務経験者」にバトンタッチして、が知られざる本当の闇金融の世界をご紹介します。
目次
闇金の仕事は消費者金融とほぼ同じ?
闇金の仕事は特別なのか、と思うかもしれませんが仕事内容は消費者金融とほぼ同じです。
なぜなら闇金は登録していない貸金業者というだけで、お金を貸して利息を稼ぐ商売なのは正規の消費者金融と何も変わりはないからです。
新規の借入申込みが来れば貸し出しを行い、返済期日に遅れれば督促するのは当然です。
正規の消費者金融と闇金の違いにはっきり出るのは、金利と違法な取り立て行為、不当な個人情報の取り扱い、たまに担保を求めることや口座の売買に関わることくらいですかね。
これだけ違いがあれば完全にブラックな企業じゃないかとなりますが、そう言われれば確かにそうですね。
闇金からお金を借りてもきちんと返済していれば、優良なお客さんと見てくれますので丁寧な言葉遣いや態度で返すのは当たり前です。
正規の消費者金融だってきちんと返済しない顧客に対して、最終的には給料の差し押さえをするなどえげつないことするように、貸したお金はきちんと返済してもらいたい気持ちは闇金も同じです。
闇金の職場(事務所)は小ぎれい
闇金と言っても色々ありますから一概には言えませんが、闇金の職場は意外にも小ぎれいです。
まるで普通の営業規模の小さい街金のようにこざっぱりしていて、営業担当者もスーツ姿、女性事務員も事務服着用など一見すると闇金でないような雰囲気です。
チンピラ風の格好をしたヤクザが電話かけまくりとか、タバコの煙で室内が充満していることや事務所が汚い、というのはテレビドラマや映画の見過ぎです。
闇金の事務所は事務机とパソコン、観葉植物、耐火金庫、お客さんが来店しても奥が見えないように間仕切りがしてあり応接セットもしっかり完備です。
ちょっと変わった雰囲気があるとすれば固定電話がないくらいですかね。闇金の事務所には普通の会社にあるようなビジネスフォンはありません。
従業員一人ずつ携帯電話を持っており、外部からかかってくるのは全て携帯電話で受けていますので着信音は結構賑やかです。
闇金は元消費者金融?
闇金を営業している人はもともと闇金か、以前は正規の消費者金融だった人です。
元々闇金の人でも必ず消費者金融の経験者がおり、貸付のノウハウは全て元消費者金融が教えているのが普通です。
貸金業法改正によって金利が引き下げられ、これではとても消費者金融はやっていけない業者が闇金に鞍替えするパターンが割に多く、お客さんもまさか途中で闇金になったとは思ってもいません。
せいぜい思ったとしても金利がちょっと高いかな、と感じるくらいですね。それでもお金を借りたいときにはすぐに貸してくれますので、何の疑いもなく利用しているくらいです。
元消費者金融だけあって、仕事内容はまさに消費者金融時代と同じです。顧客管理はパソコンで、利息の計算もパソコンで自動的に行います。
領収書はさすがに発行しませんが、今回いくら入金して借入残高がいくら残っているのか明細書もパソコンから出力して渡します。
ヤクザ関係の闇金の仕事内容はちょっと違う
ヤクザ関係の本格的な闇金は事務所を持つことがなく、大抵の場合マンションの一室を借りて顧客専用のパソコンと銀行入出金用のパソコンが置いてあるだけです。
一応役割分担はしてあり、新規顧客受付係と顧客管理及び銀行の入出金の担当者、返済期日を確認する人と返済期日に遅れている督促担当者などです。
闇金の1日は次のような感じで流れていきます。
闇金は休みの日がありません。働いている人はシフト制で働き、闇金の仕事自体を休むことはほとんどありません。
毎日9時になると銀行の入出金担当者が顧客の入出金状況を確認し、顧客管理パソコンに入力していきます。入力時間は30分もあれば終わります。
そして返済期日に遅れている人のリストを印刷し、督促担当者に渡すのが9時30分くらいですね。
督促担当者はリストを見ながら、携帯電話で返済期日に遅れた人に連絡をします。この連絡が普通の消費者金融と違うところですね。
最初のうちは穏やかに「返済期日は昨日だったよね。どうしたのかな、あ?」と電話しますが、借主がすみません忘れていました、と素直に謝り今日中に銀行に振り込むといえば「んじゃよろしく!」で終わります。
しかしどうしてもお金が間に合わなくて入金できませんでした、と「お金がない」ことを一言でも言ってしまうと、「カネがないから払えない?そんなの言い訳にもならねーよ!」と豹変します。
そして「どっかからお金を借りてきて今日の昼までには入金しろよ。銀行確認するからな。もし入ってなかったら取り立てに行くぞ!」です。
携帯電話にかけても電話に出ないお客は、すぐに自宅に電話しそれでも電話に出なければ会社に電話します。
普通9時半過ぎに自宅にいることはありませんので、会社へ電話して「〇〇に電話つなげ!」と怒鳴り散らします。
会社の人はさぞかしびっくりしていることでしょうが、圧倒的な威圧感のため「どちら様でしょうか」なんて言えません。
本人が出たら仕事で忙しくても説教が始まり、すぐに入金しろ!です。
勤務先でも連絡がつかなければ、奥さんの勤務先や親兄弟親戚まで、聞き出してある電話番号に電話をかけまくり、本人がどこにいるのか教えろ!ですね。
明日返済期日のお客へ電話する
一通り督促電話が終わると、今度は明日の返済期日になっている顧客リストを担当者から受け取り、「明日返済期日だよな、わかっているよな!」です。
たとえ明日が銀行休業日でも、ゆうちょ銀行やジャパンネット銀行なら振り込みできますよね。闇金は返済期日が休日でも返済期日は期日として守るようにお客に迫ります。
明日返済期日なのにもう電話するのと思うかもしれませんが、普通の消費者金融でも事前メールで返済期日をお知らせしているわけですから、それを電話で行っているだけです。
15時を回って入金がないお客に再度督促
午前中に電話した昨日返済期日だったお客が15時までに入金されていないことがわかると、今度はさらに鬼の督促です。
「てめえこの野郎」から始まり、「約束したのに入金してねとはどういうことだ?これから集金に行くからカネ用意しておけ!」です。
闇金には横の繋がりがあって、借主が遠方に住んでいて近くの同業者にお願いして集金してもらうのです。
集金先は15時だとだいたい会社ですね。仕事の関係で自宅にいるなら自宅へ集金です。会社に押しかけ自宅に押しかけ、何が何でも返済を要求します。
どうしてもお金がない場合は、そのまま車に乗せて親兄弟親戚の所へ行かせ「カネ借りてこい」です。
新規受付担当者も忙しい
最近闇金の需要が増えたせいか、新規受付担当者もかなり忙しいようです。
電話で借りたいと申し込みがあれば、手順に従って本人確認書類の提出や勤務先情報、親兄弟の住所や電話番号、子供がどこの学校に通っているのかなどかなり細かいところまで聞き出します。
嘘の情報を言ってもすぐにバレます。
闇金は名簿業者から個人情報を買っていますので、借りパクしようと思ってもできません。闇金によっては消費者金融と繋がっており、個人信用情報も入手可能です。
入手した情報が本物なら、お昼までの申し込み分は前利息を差し引いた金額を振り込みます。
利息は10日サイクルで10%から50%程度で、3万円借りたいと言っても、前利息で3,000円から1万5,000円差し引いて振り込むのが普通です。
昼過ぎに新規顧客からの連絡が入れば、情報を確認した上で翌日朝一番に振り込みます。
闇金の1日の終わりは日付が変わる頃
1日の締め作業は19時から20時に行い、上部組織に連絡することになっています。
銀行預金の残高と1日の入出金をしっかり合わせて報告しなければなりませんので、1円でも違っていると仕事は終わりません。闇金の1日の終わりは日付が変わる頃です。
売上が悪ければ叱られるし滞納者が多くても叱られるため、翌日にはその腹いせでお客に当たり散らすのです。
闇金で働く場合の給料や待遇
闇金の仕事内容を見てきましたが、そこで働く人の給料や待遇はどんなものなのでしょうか?
決して良い給料ではない
闇金が簡単に儲けることができていた時には、手取りの給料以外に昼食費やカラオケなどの遊興費ももらえていたそうですが今は違っているようです。
回収が難しくなっていますので、もともとの利益が少ないことになります。
業者などによって差がありますので、目安となるような金額も存在はしないようです。
給料の額は回収できた金額によって変わるという事で、回収ができない場合には最悪給料はないことになります。
もちろん、回収が予定通りできた場合には多くの利益が出ていることになりますので月給が100万円を超えることもあるようです。
ただ、専門家への相談件数が増えていることによって回収率は低くなっていますので年収という面で考えると、一般的なアルバイトをしているのと同じと思った方が良いかもしれないです。
法律に準拠した待遇ではない
仕事自体が違法なものになりますので、そこで働く人の待遇が法律にのっとっているという事はないようです。
一般的に長時間の残業をさせられて、労働基準法に抵触するような企業をブラック企業としていますが、一応企業としての登録はしています。
闇金の場合には登録をしていませんので、正確には業者でも企業でもなく、ただの集まりにすぎません。
ですので、労働環境が整っている、法律に準拠した待遇であることは基本的に望めないことになります。
長く続けられる仕事ではない
働くことは生活をするのに必要なお金を稼ぐことが基本ですが、それ以外にも「やりがい」や「プライド」といったものも必要になってきます。
また、一緒に働いている仲間の存在も重要ですよね。
闇金で働くことになれば、確かに報酬は手にできるかもしれないですが、やりがいやプライドを持って働くことは難しいです。
それに、労働者として守られるべき権利もないですし、働けなくなった時に保証などはありません。
長く続けていける仕事ではないといえそうです。
闇金の見分け方
利用者として闇金を利用することは非常に困る結果を招くことになりますが、そこで働くのもいいこととは言えません。
そのためには、闇金で働くことの無いように闇金を見つけ出す事ができないといけません。
ここでは、勤務先が闇金かどうかの見分け方をご紹介します。
面接に気を付ける
闇金が求人を出していることもありますし、友人から紹介されることもあります。
そのような時に、まずは面接があるかどうかを判断材料にすることができます。
人手が足りないという事もあって、応募してきた人は誰でも採用する傾向にあります。
中には、面接といっても顔を合わせるだけで、業務内容とかの話をしないまま即採用されることもあります。
面接場所に関しても注意が必要です。
面接場所が勤務場所ではなく、喫茶店や車の中という事もあります。
面接内容や面接が実施される場所に不信を覚えた場合には、闇金である可能性が高いです。
所在地が不明確
勤務する場所が不明確な場合には、闇金である可能性が高くなります。
会社として登録をしているわけではありませんので、所在地が明確になっていない場合が多いです。
一週間ごとに勤務先が変わるとか、勤務場所を明確に提示してもらえない場合には気を付けた方が良いですね。
金融庁のページで確かめる
貸金業を営むには、届け出をして登録をしなければなりません。
金融庁のホームページでは、「登録貸金業者情報検索ページ」が用意されています。
ここで、連絡先の電話番号とか会社名、代表者の名前などで検索をして、登録されているのかを確認することができます。
検索の結果、登録されている情報と違う場合や、登録がされていない場合には闇金になります。
闇金で働いていた経験談
ここからは闇金で働いていた経験者にバトンタッチして、体験を語っていただきます。
- 執筆者の情報
- 名前:大野優子(仮)
年齢:30歳
職業:ライター
闇金勤務期間:6年
闇金融の世界へ
金融の仕事を始めたのは父親の紹介、いわゆるコネ入社で、求人募集は一切出しておらず、絶対に秘密を漏らさない信用のおける知り合いしか入社のできない会社でした。
社長は父の友人で、小さな頃から面識があり、あっさりと入社。
そうです、父はその地域を見張っていた暴力団員。
暴力団の後ろ立てがないと闇金融は出来ません。
一言で言えば、当時の私に何も怖いものはありませんでした。
しかし、父の顔に泥を塗るようなことは出来ない、簡単なようで難しい判断でした。
魅力的だった裏稼業
やはり、闇の世界には興味があり、大好きでした。
関連の映画や漫画は全て観ました。
親の仕事を知りたいという興味だけで。
闇金融に対しては、漫画や映画のような世界をイメージしていて、怖いお兄さん達が働いているというイメージを持ちつつも、闇金融という響きに魅力を感じ、当時は父しか頼る所がなく、
「私にもう怖いものは何もない。」
「頑張ってこの世界でのし上がって儲けてやる。」
そんなほんの軽い気持ちで入社しましたが、そこにはイメージとは全く違う世界に驚きました。
想像もできなかった現実
普通のマンションの一室に、にこやかな30~50代の男性従業員が4人。
その地域で知らない人はいないと言われるほど、20年以上も営業している老舗の闇金融。
家賃も相場より高く、管理人も暗黙の了解。
いわば、圧力で支配しているという感じでした。
20代と若く、女性唯一の従業員、父の顔もあり、もの凄く可愛がってもらいました。
どんな職場にもいじめは存在する
しかし、入社した当初、私を気に入らない社員がいました。
50代の元暴力団員のベテラン社員。
私はすぐに社長と父に、
「嫌がらせを受けている、一緒に仕事をするのは耐えられない」
というわがままを言うと、私の知らない間にその人は違う店舗に。
若かった私は、嫌いな人がどこかに行ってくれた、面倒な人がいなくなって嬉しいと思っていました。
いわゆる、天狗状態。
しかし、働いてるうちに仕事の厳しさを実感し、社長のお叱りも受け、人として日々成長していきました。
闇の世界を。
選択肢のない決断
そうして6年が過ぎたある日突然、社長から「もう店を閉める」という一言であっさりと退社を余儀なくされました。
暴力団との繋がりが、警察にバレるのを恐れた社長の判断だと瞬時にわかりました。
その地域では、暴力団との繋がりが特に重視される時期だったのです。
親の顔も関係なく、ただ目の前にある仕事だけを頑張って務めると決めた6年間だったのですが、自分の身を守る為にも退くことは避けられない判断でした。
仕事内容はたくさん
父の顔だとはいえ、お金を頂いている以上、仕事は仕事。
初めに紹介を受けた時、従業員は2店舗に2人ずつ。
新規顧客の身元審査、借用書の作成、受付や貸出金額の計算、暇があれば外回り、催促の電話、自宅確認の作業を教えられました。
独特な借用書
まず教えられたのは借用書の作成。
借用書の作成はパソコンさえあれば簡単に作成することができます。
コピーは厳禁。
肝心なのは、注意書き。
毎月注意書きは変わります。
たくさん書けば書くほど、相手は読むのが面倒になります。
目先のお金が欲しい人は長々と書かれた文章をまず読むことはありません。
その心理を利用し借用書には、
「困った時は、必ず相談すること。解決できるまで話し合います。」
と書いていました。
良心的と思わせ、逃げ道を作る
「もし本当に困った時は、返済も問わない」
と、物凄くちいさな文字を。
これも警察や弁護士がやってきた時の対処方法です。
ただ違法にお金を貸しているわけではなく、困った時は必ず相談に乗る、返済を追い詰めることはない、という逃げ口を作るのです。
一番大切な貸付業務
問題は貸出業務。
お金を扱いますから、間違いは厳禁。
1日1万に対し、100円の利息。
日割り計算、利息と手数料を引いたお金を渡します。
お客さんに、「金利が高い、足りない。手取りが少ない。」
と言われることもよくあります。
そのたびに、目の前で電卓をたたき、納得してもらえるまで毎度説明をしていました。
もちろん納得しない人もたくさんいました。
ですが、他の所でお金を借りることができない人が最終的に行きつくところ。
こちらも命がけの商売ですから。
誰にも文句は言わせません。
文句を言っていた人も納得して帰らざるを得ませんでした。
覚悟をしていた取り立て業務
「取り立てに行ったら自殺していた」
よく聞く話でした。
証拠を残さないように指紋は拭き取れ。
先輩の教えでした。
しかし、私はそういった場面に遭遇することはありませんでした。
私が行っていた取り立て業務は、自宅に行き、まずは心配していることを伝えます。
服装は必ず軽装。
目立つなという教訓です。
不在の場合は、電気メーターが動いていないかを確認し、出入りがあるかどうかを確かめるため、わからないようにドアの端にテープを貼り、爪楊枝のようなものをドアに挟んでからその場を去ります。
丁寧に優しく、を基本とする催促の電話
催促の電話も、穏便に。
いきなりお金の話はせず、相手の状況を心配することから始まります。
まず、電話に出てもらえたことに感謝をします。
相手は返済もせず、逃げようとしていますから。
電話だけで、どう相手を説得するかは実力が試される時間でもありました。
話す時間が欲しいと、こちらから懇願し会う機会を設ける。
今思うと女性だから成せる技だったかもしれません。
もちろん、金返せ!といったような強引な取り立てをすることは禁止です。
闇の世界で出回るブラックリスト
闇の世界の情報は全てお金です。
お金さえあれば情報は手に入ります。
名前、生年月日、住所、戸籍。
逐一、そのリストを手に入れ、日々の業務をこなします。
毎日そのような情報を見ていたので、当たり前のような流れ作業でしたね。
新規顧客を取ること
社長には「とにかく売上げをあげろ。新規を取りなさい」
と常に言われていました。
もちろんブラックリストに名前が載っていないことを前提に。
名前が載っていたら、返済が滞っている所へ連絡をして、
「そちらで飛んだ客が来ていますよ」
と伝えないといけません。
飛ぶという言葉は闇金の世界での隠語。
返済が滞り、逃げている顧客ということです。
その地域で生き残るためには必要不可欠です。
しかし、簡単に新規顧客を取れと言われても、紹介制です。
顧客の紹介と言っても、連帯保証人は必須です。
ただの保証人とはいえ、連帯がつけば全く意味が変わります。
連帯がつけば、もし逃げられた時に貴方に払う義務がある、問い詰めることができます、という意味です。
紹介者、新規顧客共に逃げられる危険もあります。
その見極めは、長年の勘も必須でした。
紹介してもらった顧客の身分証明書はもちろん、自宅に出向き本当にその場所で生活しているのかを確認する必要があります。
そして、密かに新規顧客の日常生活も瞬時に見極め、出没しそうなスポットを掴むこと、親しくしている人はいるのか、ギャンブル癖はあるかなどの細かな事を把握することも必須でした。
唯一の息抜き。外回りの楽しみ
一日中、事務所に缶詰。
8時から18時まで仕事。
食事中もお客さんは構わず来店します。
休憩時間なんて本当にないんです。
その時間から解放されるのが、外回り。
「パチンコ店を回ってきます。飛んだ人を探しに行ってきます。」
その口実で外出、いわゆるサボる時間。
もちろん外出すれば、お客さんに遭遇します。
コミュニケーションを取る振りをして、飛んだお客さんの情報を探る時間でもあります。
収穫がなくても、外回りを頑張ったという言い訳もできるのです。
一日2時間程でしたが、事務所で缶詰状態から解放される時間でした。
様々な事情を抱える顧客
顧客は主に30~80代の男性、約300人。
生活保護を受給し、消費者金融で借りることができない人がほとんどでした。
中には多重債務者もいます。
利息を払う為にお金を借りる。
自転車操業です。
そのような人達の借金が少しでも減るように一緒に考えるのも仕事です。
時には体調を心配し、親身になって相談に乗り、貸出限度額を超えている人には食料を配ったこともあります。
仕事としてではなく、一生懸命向き合うつもりでいました。
辛い時は支えたい。
一人の人間として大切に考えたい。
しかし、返済のめども立たず夜逃げをされたり、弁護士からの通知が来ることもあり、すごく悲しい思いをしたこともありますが、「助かった、ありがとう」と言葉をかけられた時は、とってもとっても嬉しいものでした。
問題視されている生活保護受給者の借金
顧客の8割は生活保護受給者。
地域によって違いますが、回収日といわれる一番多忙な日。
月末月始は死にもの狂いで働きました。
月末に口座に振り込まれたお金を持って返済する。
そして、返済したそのあとにすぐ借りる。
働いていた私にとっては当たり前の日常。
回収しては貸出す。
生活保護費を役所に取りに行かないといけない人は要注意。
問題がある人ですからね。
返済が滞っている人を捕まえるチャンスでした。
役所の前で待機し、声を掛け、お金を回収する。
仕事ですから、当たり前の業務でした。
稼いでいると思われがちだが
闇金融だからといって、高収入とは限りません。
最終的には月給25万円を貰えるようになりましたが、最初は時給800円。
歩合制ではなく、どれだけ売上げが上がったとしても、給料は変わりません。
売上げが下がれば、もちろん社長に怒られます。
保障といえば、万が一捕まった時の保釈金や罰金を払ってもらう約束だけでした。
クビになった社員の逆襲
このような商売ですから、精神的に辛くなり辞める人もたくさんいましたし、強引な仕事をし、クビになる人もいました。
今でも忘れない、年明けの事。
新年一発目だから、気合を入れよう!と出勤したところ、なにやらざわついている様子。
近づいてみると、事務所内に消火器が撒かれていました。
玄関のポストから消火器のホースが入れられていて、事務所の中は消火器の粉だらけ。
「消火器の粉って白じゃなくてピンクなんだ!」
と言って、呑気なこと言うなと怒られたのを覚えています。
その後も嫌がらせは続きました。
借りているマンションの壁一面に落書き。
事務所に包丁を持って乗り込まれる。
金槌を振り回して奇声をあげ暴れる。
嫌がらせの数を数えたらきりがありません。
この業界に慣れてる私とはいえ、さすがに男の人が大声をあげ、暴れられるのは本当に恐怖でした。
このまま弱気で働いていたら、いつか殺られる。
そんな覚悟を持たないといけないと、嫌がらせを受けながらも震えながら必死に働いていました。
いつしか、その元従業員は、ぱったり、いつのまにか来なくなりました。
不祥事を起こして捕まったのか、誰かに消されたのかは未だにわかっていません。
裏稼業ということをわすれてはいけない
楽しくお客さんと話し、和気あいあいとした会社ではありましたが、闇金融です。
消費者金融とは違い、利息は月2割以上、裏での暴力団との繋がりがあってできる稼業、やっていることは完全な違法、犯罪です。
警察に目をつけられるような行動はしない、返済ができず弁護士に相談した人への接近は一切禁止、お客さんが逆上し警察に走られないように強弱をつけることは大変でした。
また、証拠が残るようなメール、SNSには最大の注意を払っていました。
実際、私もLINE以外のSNSは出来ませんでした。
酔っぱらった勢いでつい口を滑らしてしまったとなれば終わりだと思っていたので。
従業員内での仕事のやり取りは一切禁止、許されるのは通話のみ。
そのくらい、この業界で働くことは厳しいのです。
周囲には最大の注意を
「近くで金融屋があると聞いて来た、お金を借してほしい」と飛び込みで来る人は特に要注意。
どこから情報を得たのか、鞄にカメラなどは付いていないか、警察のおとり捜査ではないかなど、常に疑いの目は持っていなさいという教育を受けていたので、人間不信になる人も多い世界なのです。
どこで情報が漏れ、内偵捜査を受けるかもわかりませんし、仲間が情報を売るかもしれません。
そのような危機感は常に持っていないといけないという状態でした。
「まず人は疑うものだ」
社長の言葉です。
私はこの6年間、洗脳されていたのかもしれません。
まとめ
闇金融で働いた私の経験です。
貴重な経験で刺激的な6年間でした。
常に危険と隣り合わせ、毎日覚悟を決め出勤する。
本音を言いますと、刺激的で楽しい日々でしたが毎日が怖く、もう関わりたくないのが本心です。
今でも、人を疑い瞬時に周囲の目を見逃さない、その癖は抜ません。
でも今は普通の日常を過ごせていることに満足しています。
この記事(後半)の筆者
大野優子(仮)
1987年生まれ
商業高校卒業後、フリーターに。
色々なアルバイトを転々とし、22歳で小さな町の闇金融会社に入社。
退職までの6年間は主に受付や貸付など様々な業務を行う。
現在は専業主婦の傍らライターとして活動中。
保有資格:ワープロ検定2級
タグ:借金・お金の悩み