結婚などで住宅ローンの名字変更をしない時のリスクと手続き方法
銀行などの民間企業の住宅ローンの借入中に結婚して苗字や住所が変わった場合、必ず氏名の変更届を出さなければいけません。変更しないと最悪の場合には一括返済を求められる場合もあります。
この記事ではそのリスクや手続き方法について解説します。
一括返済を求められる可能性もある
特に女性は結婚をすることで名字が変わることが多いです。
住宅ローンを借入している途中に結婚などで名字が変更となった場合には、必ず借入している銀行に名字変更手続きを行わなくてはなりません。
これは、住宅ローンの契約書にも記載されていることなのですが、銀行に届け出している情報に変更があった場合、債務者は速やかに債権者である銀行に届け出る義務があります。
契約書に記載されていることをきちんと履行しない場合には、最悪住宅ローン残債の一括返済を求められてしまう可能性があります。
ただし、実際には結婚によってただ名字が変わったというだけでは届け出をしなくても一括返済を求められることはありませんが、転居も伴う変更であれば一括返済を求められることがあります。
また、銀行取引に係わる重要な書類が旧姓で届くことになりますので、住宅ローンに限らずさまざまな手続きでスムーズにできなくなってしまいます。
なお、フラット35を取扱っている住宅金融支援機構では、事情に関わらず住所の変更を認めていますので、所定の手続きを行うことで一括返済を求められることはありません。
住宅ローン控除は住んでいないと利用できない
住宅ローン控除は、住宅ローンを借入してから10年間、年末残高の1%相当を所得税から控除することができる制度です。
住宅ローン控除を利用するためには確定申告または年末調整が必要となりますが、年末時点における住宅ローンの「残高証明書」が必要となります。
結婚などによって名字変更をしていない場合、残高証明書の契約者には旧姓で記載されることになりますので、名字変更をしていなければ提出書類にはなりません。
また、住所の変更がある場合には、そもそも住宅ローン控除を利用することができません。
というのも、住宅ローン控除を利用することができる要件には、「適用を受ける各年の12月31日まで引き続き居住している」というものがあります。
ですので、結婚によって転居した場合には、これまで利用できていた住宅ローンの控除を受けることができなくなってしまいます。
名字変更手続きの方法
住宅ローンの名字変更といっても、実際には返済に使用している通帳やキャッシュカードなども合わせて変更しなくてはなりません。
これらの変更をする場合には、銀行窓口へ行って手続きすることになります。
ただし、通帳などの名字変更の場合には同じ銀行であればどこの支店へ行っても手続きすることができますが、住宅ローンなどのローンがある場合には融資を受けている支店で手続きする必要があります。
住宅ローンの名字変更では、保証会社に対しても変更の手続きを行わなくてはならず、銀行を通して名字変更の手続きをすることになります。
住宅ローンは契約時にも多くの手続きが必要ですが、名字変更などの変更手続きにも多くの手続きが必要となります。
不動産登記の変更も必要
銀行で住宅ローンの名義変更を行うと、担保としている不動産の登記も変更することになります。
不動産登記の変更は、自分で司法書士に依頼することや銀行が取引をしている司法書士に依頼してもらうことでも変更することができます。
しかし、司法書士に依頼をすると、変更手続きに係わる報酬を支払わなければなりません。
できるだけ費用をかけずに変更したいという場合には、法務局に行って自分で変更手続きをすることができます。
法務局での変更は、所定の「登記申請書」を提出することで変更できます。
ただし、この場合も土地または建物1個につき1,000円の登録免許税がかかりますが、これは司法書士に依頼してもかかる費用となります。
なお、自分で法務局へ行って変更手続きをする際には、きちんと変更されたことを確認するために、変更後の登記簿謄本を求められることもあります。

名字手続きに必要な書類
名字変更に伴う手続きには、銀行が指定する書類が必要となります。
必要となる書類はどこの銀行で行う場合でもほぼ同じであり、以下の書類のいずれかが必要となります。
- 戸籍謄(抄)本
- 新・旧名義の記載のある顔写真付公的書類
- 新・旧名義の記載のある住民票
なお、顔写真付公的書類とは、運転免許証などの書類となり、運転免許証の場合には名義などを変更すると裏面に新しい情報が記載されます。
また、住所の変更もある場合にもこれらの書類で対応することができますが、住宅ローンのように実印を使用する契約の変更には「印鑑証明書」も併せて必要となります。
さらに、名字の変更をする場合には使用する印鑑も変更することが多く、この場合にはこれから使用する(改姓後の)印鑑も必要となります。
不動産登記の変更に必要な書類
不動産登記の変更をする場合にも、法務局に対して名義や住所が変更になることを証明する書類を提出しなければなりません。
変更手続きに必要となる書類は、
- 戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本)
- 本籍の記載のある住民票の写し
などを提出します。
また、上記の書類に変更前の住所および氏名が記載されていない場合には、上記書類と併せて以下の書類も提出しなければなりません。
- 変更の記載がある戸籍の附票の写し
- 除籍全部(個人)事項証明書(除籍謄抄本)
ブラックは名字変更しても借りれない
住宅ローンの名字変更について調べていると、変更しないことのリスクや変更手続きの方法の他に、名字を変更するとブラックでも住宅ローンを借りることができるというようなことを多く目にします。
ブラックとは、自己破産などの債務整理を行った、または代位弁済によって保証会社に肩代わりをしてもらった状態のことをいい、信用情報上でいうところの「ブラックリスト」に載っている状態です。
通常ブラックになると、5年~10年はヤミ金以外からは借りることができません。
では、なぜこのようなことを調べている人がいるのかというと、一昔前にブラックとなった人が名字変更をして他人になりすまし、新たにローンを組むことがあったからです。
信用情報は、その人を特定するための情報も登録されますが、名字が変わることで同一人物であると判断することができません。
しかし、このようなことをいつまでもできることはなく、銀行や保証会社も申込者の属性を厳しくチェックしています。
ですので、名字変更したとしても住宅ローンを借りることができるようになることはほぼありません。
旧姓の調査方法
銀行や保証会社では、どのようにしてブラックの人が他人になりすましているのかを調査するのかといいますと、それは運転免許証や住民票などの本人確認書類で確認します。
先ほどもお話ししましたように、運転免許証は変更をすると裏面に変更後の情報が記載されます。
ローンを申し込むためには、申込書に記載した住所と本人確認書類の住所や氏名が一致していなければなりませんので、免許証などは名字変更や住所変更をしなければなりません。
また、変更後に免許を更新し、変更前の住所や氏名の記載がなくなったとしても運転免許証番号を照会することで簡単にわかります。
運転免許証を保有している場合に番号を申込書に記載することはこのためです。
また、住民票も転居などをするとその記載がされますので、ブラックリストに載っている住所と名前、生年月日などから高い確率で同一人物であるかを確認することができます。
借りられたとしても一括返済を求められる
銀行や保証会社の審査も完璧ではありませんので、他人になりすました人を100%見抜けるわけではありません。
ですので、他人になりすまして借りること自体は、確率は低いかもしれませんが可能となります。
しかし、返済中なにかの拍子で実はブラックであったということが判明した場合には、銀行から一括返済を求まられます。
まとめ
住宅ローンを借入中に結婚などで名字が変更となった場合には、速やかに銀行に対して変更手続きすることをおすすめします。
また、住所変更も伴うものになると、銀行によって対応が異なりますので、まずは銀行に相談することをおすすめします。
特に住宅ローンは、さまざまな条件を満たしたうえで、非常に低金利で高額な融資を可能としているローンですので、返済中に条件から外れた場合には銀行も対処しなくてはなりません。
届け出が遅れると契約不履行などでどうしても不利な状況となってしまいますので、本人確認書類などの変更が済み次第、銀行に対しても変更手続きするようにしましょう。
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