プロパー融資の金利相場は?
銀行融資を受ける場合、一番重要となってくるのが貸出金利です。
事業資金ともなれば高額借り入れとなるケースも多々あるため、できるだけ低金利で融資を受けたいと考えるのは当然のことでしょう。
現在、中小企業が銀行融資を受ける場合の、貸出金利は0.9~3.5%が相場と言われています。
しかし、0.9%と3.5%で1,000万円の融資を受けるとでは、その利息差は年間で26万円にも上るので雲泥の差が出てきます。
したがって、できるだけ低金利で銀行融資を受けるためには、相場を知るだけでなく、どうやって金利設定が行われるのかを理解しておく必要があるのです。
そこで今回は銀行の貸付金利がどのように、決定されているのかを詳しく検証して行きましょう。
- 執筆者の情報
- 名前:馬井実
年齢:49歳
性別:男性
職歴:1992年~2008年まで地方銀行で貸付業務に従事
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- プロパー融資について知りたい人
- 貸付金利がどのように決まるか理解したい人
目次
金利差が生まれる原因は?
銀行の融資金利は0.9~3.5%が相場と言われており、金利幅には大きな開きが生まれています。
2016年に行われた独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の入札による資金調達では、農林中央金庫によって貸出金利0%という、もはや融資とは呼べないような金利落札が行われました。
それでは何故、この開きが生まれているのでしょう?
銀行は返済能力が高い優良企業には低金利設定して、できるだけ高額融資をしたいと考えています。
したがって、融資申込先への銀行評価が大きく関係していることは、容易に想像がつきますが、実は金利決定に影響しているのはそれだけではありません。
なお、貸出金利が0%と言うのは、金融政策でマイナス金利が実施されたことに伴い、現実されたもので、実際の顧客である事業所や個人が0%で借りられることはありません。
銀行の貸出金利に差が生まれるのは、下記4つの要因が大きく影響しているのです。
- 企業の体力
- 銀行種類
- 固定金利か変動金利か
- 融資方法
プロパー融資とは?
プロパー融資とは、保証協会を利用せずに銀行が、直接行う融資のことを言います。
銀行が取り扱っている融資には、保証協会の保証が付いた「保証付き融資」と、プロパー融資の2つがあります。
保証協会の保証が付いていれば銀行は貸倒れリスクがありませんが、プロパー融資は自社の資金を自社がリスクを負担して貸し出すため審査が厳しくなります。
では、プロパー融資の審査では、どのような点が審査されるのか、詳しく見て行きましょう。
プロパー融資の判断基準
法人や個人事業主の借入の金利は、借入の種類と格付によって決定します。
銀行から事業資金の融資を受けようと思った場合には、まずは銀行に決算書(確定申告書)を最低3期分提出します。
申込者としてはまずは自分(自社)が、お金を借りられるか、否かを知りたいところです。
しかし、銀行と初めて取引を行おうとする事業者は、ローンの案件審査の前に、会社の内容そのものについての審査を行い、銀行にとっての当該企業への融資方針や評価の決定を待たなければなりません。
銀行は決算書から当該企業の安全性、収益性、成長性等の審査を行います。
ここで優良企業であると判断されれば格付が上位になりますし、融資できるような状況ではないと判断されれば、その後のローン案件は審査の話にはすすめません。
事業資金の金利は格付によっても変動しますが、この格付を決定するための審査を案件審査の前にまずは行わなければ融資案件の金利はおろか、融資そのものの話にもすすむことはできません。
プロパー融資の判断基準は、決算内容の他に、前出4つの項目の分析を行った上で決定されます。
では、それぞれの項目について詳しく説明して行きます。
1.企業の体力
銀行が返済能力を測る上で重要視するのが企業体力です。
財務状態が良ければ良いほど、体力があると判断されます。
しかし、一口に企業体力と言っても、銀行はどのように評価付けしているのでしょうか?
融資のときには決算書等の提出が求められ、あらゆる角度から企業状態が評価されます。
その中でも融資条件に大きく影響してくるのが銀行格付です。
銀行格付は銀行による企業の成績表とも言えるもので、たとえ取引がなくとも公表されている情報を元に実施されています。
したがって、この銀行格付による評価が高ければ、融資のときには下記のようなメリットのある融資を受けることも可能になるのです。
- 希望額の融資を受けやすくなる
- より低金利で融資を受けられる
- 融資実行が迅速に受けられる
銀行格付の評価方法
それでは銀行がどのように、格付を行っているのかを簡単に説明しておきましょう。
銀行格付は下記2つの評価結果の総合評価によって決定されます。
- 定量評価
- 定性評価
定量評価での分析
定量評価は決算書等から、下記4つの項目に分類して財務指数を評価に換算します。
- 安全性
- 収益性
- 成長性
- 返済能力
安全性
安全性で評価される項目は下記のとおりです。
- 自己資本比率
自己資本比率は総資本に対して自己資本がどれくらいの割合かを数値化したもので、下記の計算値で求めらます。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
自己資本比率が高いことは他人資本の影響が低く、借入金の少ない体力がある企業であることを示します。
40%を超えると潰れにくい企業と判断され、一般的には黒字企業で30%、優良企業で50%、赤字企業で-5%ほどと言われており、高ければ高いほど評価は高くなってきます。
- ギアリング比率
ギアリング比率は自己資本の何倍の借り入れを行っているのかを数値化したもので、下記の計算式によって求められます。
ギアリング比率 = (短期・長期借入金 + 社債 ) ÷ 自己資本 × 100
求められた数値が100%以下だと健全な財務状態だと考えられますが、これが200%や300%と大きな数値となると、過分な借り入れが行われていると判断され評価は低くなります。
- 固定長期適合率
固定長期適合率は固定資本入手のときに、どれくらいが長期資金で賄われているのかを数値化したもので、下記の計算式によって求められます。
固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (固定負債 + 自己資本) × 100
固定資産は長期にわたって使用する高額なものが多いため、返済が長期ローンや返済義務のない自己資本で賄われていないと、すぐに資金繰りに苦しむことになります。
この数値が100%以下だと固定資産への返済は健全な状態であると判断されますが、100%を超えるようだと、返済に余裕がなく資金繰りが危うい状態と判断され評価が低くなります。
- 流動比率
流動比率は支払い能力を判断するひとつの指標で、1年以内に現金化できる流動資産が、どれだけ1年以内に返済する負債を上回っているのかを数値化したものです。
流動比率は下記の計算式によって求められます。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
100%を超えていれば支払い能力のある企業だと判断され、高ければ高いほど評価は高くなります。
収益性
収益性で評価される項目は下記のとおりです。
- 売上高経常利益率
売上高経常利益率とは総売上に対して、どれくらいの経常利益を上げているのかを数値化したもので、下記の計算式によって求められます。
売上高経常利益率 = 経常利益÷当期売上高 × 100
いくら売上が上がっていても、利益が上がっていないでは、経営は順調とは言えません。
そこで企業すべての営業活動によって得られた利益である経常利益が、総売上の何%に当たるのかを見て、どれだけもうかっているのかを売上高経常利益率によって判断します。
一般的には5%を超えると優良企業とされ、1~3%くらいが標準値とされており、高ければ高いほど評価は高くなります。
- 総資本経常利益率
総資本経常利益率は銀行が企業評価をするときの一番ポピュラーな指数で、下記の計算式によって求められます。
総資本経常利益率 = 経常利益 ÷ 総資産 ×100
調達した資本でどれくらいの利益を上げているのかを判断でき、高かければ高いほど効率よく資本を運用して、もうけを出していると評価されます。
- 収益フロー
決算書から収益フローを確認して、何期続けて黒字を出しているのかで評価されます。
当然、黒字決算が続いているほど評価は高くなります。
成長性
成長性で評価される項目は下記のとおりです。
- 経常利益増加率
経常利益増加率は前期に比べて当期利益が、どれくらいの成長をしているのかを示す指標で、下記の計算式によって求められます。
経常利益増加率 =(当期経常利益 - 前期経常利益)÷ 前期経常利益 × 100
もちろん数値が高いことが高い評価につながるのですが、経常利益増加率は売上高との関係性が高く、次に説明する売上高と合わせて内容判断が下されます。
- 売上高
もうけを出すのに必要不可欠なのが売上ですが、この売上高の成長力を見るための指標が売上高伸び率で、下記の計算式によって求められます。
売上高伸び率 = (当期売上高 - 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100
この数値がプラスであれば売上高が成長していることを示し、高ければ高いほど評価は高くなります。
しかし、売上高だけでの判断は危険で、売上高が成長しているのに、経常利益増加率が伸びていない、もしくは下がっている場合は、無理に販売価格を下げて販売していることいることも考えられます。
したがって、経常利益増加率と売上高伸び率は、下記のように共にセットとして評価が下されることになるのです。
- 売上UP・経常利益UP → 共に順調に拡大して増収増益
- 売上DOWN・経常利益UP → 売上は落ちたものの経営効率化により減収増益
- 売上DOWN・経常利益DOWN → 経営不振で共に減少し減収減益
- 売上UP・経常利益DOWN → 売上拡大したが販売コストが高くなり増収減益
返済能力
返済能力で評価される項目は下記のとおりです。
- 債務償還年数
債務償還年数は現在のもうけた利益を用いて借入総額を、何年で返済できるのかを指標化したものです。
財務上の実力を的確に表しているため、返済能力を測る上で最も重要視され、下記の計算式によって求められます。
債務償還年数 = 要償還債務 ÷ 営業キャッシュフロー
一般的にはこの数値が10年以下であれば銀行審査には影響ありませんが、営業キャッシュフロー(純利益)が少なければ、当然、債務償還年数は短くなります。
銀行が融資条件として担保を求めてくるときには、債務償還年数に見合う営業キャッシュフロー(純利益)が生み出されていない証とも言えるでしょう。
したがって、借り入れ希望額に対して債務償還年数が短ければ短いほど、多くの利益を生み出している返済能力のある企業と評価されます。
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオとは企業が生み出す利益が支払利息をどれくらい上回っているかを示す指数で、下記の計算式によって求められます。
インタレスト・カバレッジ・レシオ =(営業利益+受取利息及び配当金)÷ 支払利息 × 100
この数値が100%の場合は利益と支払利息が同じであることを意味し、100%を切るようなら返済さえままならない状態であると判断できます。
したがって、企業の財務状態の健全性を判断する上で重要視され、指数が高いほど高い財務力を有し、支払い能力が高い企業と評価されます。
- キャッシュフロー額
キャッシュフロー額とは期初にあったお金が期末時点でいくらあるかを示す指標で、すべての企業活動において期内の現金がどれくらい増加したかが分かり、下記の計算式によって求められます。
キャッシュフロー額 = 営業利益 + 当期減価償却額
返済という観点においては現金がモノを言うことになるため、銀行は黒字決算よりもキャッシュフロー額、つまりどれだけの現金を持っているのかで返済能力を判断します。
よって黒字決算であっても、キャッシュフロー額がマイナスであれば資金繰りに苦しんでいると判断し、評価は悪くなってしまいます。
定性評価での分析
定量評価は数値によって明確化されたデータによる判断となりますが、定性評価は担当営業による下記ポイントの独自判断によって評価されます。
- 市場動向
- 経営者の資質
- 経営状態
- 営業基盤
- 同業種との競合状態
担当営業による主観が評価結果に大きく影響するため、都市銀行のように100%定量評価による格付を行っている銀行もありますが、他の銀行では下記のように定性評価が大きく影響しています。
- 都市銀行 → 定量評価70%・定性評価30%
- 信用金庫 → 定量評価60%・定性評価40%
したがって、都市銀行ではなく、地方銀行や信用金庫からの融資が多い中小企業の経営者は、定性評価も格付を行う上で欠かすことのできない大きな要因であることをよく理解しておきましょう。
2.銀行種類
実はどの銀行に融資申込をするのかによって、金利には差が生まれます。
一般的には、金利は銀行の規模が大きければ大きいほど低金利となり、各銀行の金利差は下記のようになっています。
都市銀行 > 地方銀行 > 信用金庫
これは金融機関がお金の貸し借り時に、適用される市場金利が大きく影響しています。
銀行は常に融資するに十分な資金を持ち合わせているところばかりではありませんし、逆に資金が潤沢で遊んでいるところもあります。
このお金を銀行間で貸し借りする場が金融市場であり、そのときに適用されるのが市場金利です。
この市場金利も多額のお金を借入するほど低金利となるので、借入額の大きい大規模銀行の方が低金利が適用され、それがそのまま融資申込者の金利に影響してくるのです。
事業資金の金利
事業融資は格付が決定したら、個別の融資案件の審査に入りますが、何にお金を使うか、どのような融資種類か、担保ローンであるかによっても融資利率はさらに変動します。
運転資金や設備資金
銀行から運転資金や設備資金を借りるときには、格付や当該資金が企業にどのような影響を及ぼすかによって、金利が変わってきます。
運転資金の場合には、例えば建設業者前払の工事代金を支払うための引当金の融資を受けるようなときには、当該資金によって工事を完成させられれば、売上の入金は確実ですので、格付に応じた比較的低い金利で融資を受けられます。
当該資金によって仕事を完遂するということは、企業の成長にもつながるためです。
一方、資金繰りが厳しい会社の運転資金を融資するような場合には、当該資金を注入しても会社の延命にはなるかも知れませんが、必ずしも成長には直結しません。
このような場合には、金利が高くなる場合もあります。
また、ただ会社を延命させるだけで、会社の再建そのものが見込めない場合には、融資を断られてしまう場合もあります。
設備資金の場合には、当該設備の導入によって、どの程度の収益の上昇が見込めるかなどを算定して、高収益が望める場合には低利での融資に応じてくれる場合があるようです。
とはいえ、後述しますが、一般的に運転資金や設備資金は信用保証協会の保証を付けて、融資を行うことが一般的ですので、そこまでの高金利となることは少ないようです。
1%後半~4%程度というのが相場でしょう。
ただし、会社の業況によって、信用保証協会に支払う保証料も変動します。
割引手形
手持ちの受取手形を期日前に現金化する手形の割引は、持っている手形の、振出先企業の業況や規模と、自社の業況という2つのファクターによって変動します。
手形割引は銀行に手持ちの受取手形を担保として差し出し、手形の期日になったら銀行が当該手形の取立てを行い返済するものです。
このため、手形振出先の企業の業況が健全であれば銀行にとってリスクは低くなります。
審査のときには手形振出先企業の業況についての審査も行い、ここでリスクの低い企業であれば金利が低くなることがあります。
また、企業によっては毎月継続的に手形割引を銀行で行っている企業あります。
このような企業は「いくらまで手形を割り引ける」という極度枠というものを持っています。
銀行は当該企業の業況を元に当該極度枠の金利を決定します。
ここでは自社の業況が悪ければ高金利が適用され、業況が良ければ低金利が適用されます。
銀行は月末や期末の融資量を確保するために、手形の割引など必要ない財務的に健全な超優良企業に手形の割引を頼みに行くことがありますが、このような企業は銀行都合で手形割引極度枠を作成しているため、1%を切るような超低金利で枠を作成していることも珍しくありません。
一般的には2%~5%程度の金利が適用される場合が多いようです。
当座貸越
当座貸越とは、企業版のカードローンであると考えると分かりやすいかと思います。
「いくらまで借りられる」という枠を事前に作成しておいて、この枠の範囲内で実質的な審査なしで、借入を行えるという商品です。
この枠の金利は当該企業の業況によって決定し、財務的に健全な企業ほど金利は低くなります。
個人版のカードローンと同じく、枠を作成した後は、何にお金を使っても銀行は関与できないため、業況の悪い会社ほど金利は高くなります。
3%~8%程度が相場といったところです。
最近では民間の保証会社を付けて個人向けカードローンと全く同じスキームの、事業者版というような商品も登場していますが、そのような商品は民間保証会社の保証料が高いことも関係して、14%程度の金利が課せられることも珍しくありません。
なお、手形割引と同じく銀行都合で超優良企業に当座貸越枠から、お金を借りてくれと銀行が月末や期末に融資を頼みに行くという実態がありますが、このような超優良企業の当座貸越金利は、1%を切る超低金利であることがあります。
3.固定金利か変動金利か
金利には固定金利と変動金利の2つがあり、下記のような特徴を持ちます。
- 固定金利 借入期間内に金利の変動がない
- 変動金利 借入期間内に金利の変動がある
銀行においては定期預金や債権クーポン、カードローンなどに固定金利、住宅ローンや自動車ローンに変動金利が適用されています。
金利は市場相場や日銀による政策によって変動するため、いつ上がるか分からないため、返済方式が固定金利のものは銀行にとってリスクを伴うことになります。
したがって、リスク回避のために固定金利は変動金利よりも0.2~2ポイントほど高く設定されているのが一般的で、銀行の事業資金のプロパー融資は変動金利、制度融資には固定金利が適用されています。
つまりは申し込む融資方法によって金利差が生まれてくるというわけです。
銀行の金利設定メカニズム
それでは銀行融資で金利差が生まれる理由が分かったところで、実際に銀行はどのように金利設定を行っているのかを説明して行きましょう。
銀行の金利は下記の要素によって決定されます。
- 銀行の調達金利
- 銀行の経費
- 損失リスク(引当金)
- 利益
したがって、金利は下記計算式によって求められます。
金利 = 銀行の調達金利 + 銀行の経費 + 損失リスク(引当金) + 利益
銀行金利は決して個人の裁量で決められているのではなく、これら要素をひとつひとつ積み重ねて算出されているのです。
それではこれら各要素がどう影響しているのかを詳しく説明して行きましょう。
銀行の調達金利
銀行が融資に用いる資金の大半は自己資金ではありません。
預金者による預金や金融市場からの借り入れ、そして日本銀行等からの融資を元としています。
したがって、融資時に貸し出すお金自体にも支払わなければならない利息が発生するのです。
この調達コストのことを調達金利と呼び、金利決定を行う場合のベースとなります。
銀行の経費
銀行を運営して行くには下記のように様々な経費が発生します。
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これら経費も利息から支払わなければならないのです。
特に銀行は自己資本比率が悪くなれば金融庁から指導が入ることとなるため、自己資金を削るような、利益の少ない経営を嫌います。
したがって、経費率が高くなることを避けるためにも、これら経費が支払えるだけの金利設定を求めます。
損失リスク(引当金)
銀行は細心の注意を払って審査をすすめますが、すべての融資をキレイに回収できるとは限りません。
中には貸倒れとなって損失を被ることもあるのです。
銀行は期末に取り立て不能となる予測損失率を計算して、損失に対する備えとして貸倒引当金を積立していますが、これも利息による支払いとなります。
優良企業であれば低い金利設定、そうでなければ高い金利設定と、融資先によって金利設定を変えているのもこのリスクに備えてのことなのです。
利益
銀行の一番の収益源となるのが、金利が生む利息です。
調達金利や経費、損失リスクは銀行融資にかかる総経費となりますが、健全な経営を行って行くためには、これを上回る利益を生み出す必要があります。
利益 > (調達金利 + 経費 + 損失リスク)
したがって、その利益を生み出すために、各銀行はそれぞれこれだけの金利は欲しいと設定している目標金利があるのです。
目標金利は下記の計算で決定されます。
目標金利 = 調達金利 + 経費率 + 予想損失率 + 目標収益率
4.融資方法
銀行格付の評価が高い企業ならば、何の保証期間も付かない銀行独自のプロパー融資で1%代や1%を切るような金利設定が行われることもあります。
しかし、一般的には銀行融資が厳しく、格付の低い企業へのプロパー融資は、政府や自治体支援による保証付き融資や制度融資の低金利にはかなわないのが実情です。
したがって、銀行融資を受けるにしても、低金利が望める保証付き融資や制度融資の利用がおすすめです。
銀行融資の80~90%は政府や自治体支援による、保証付き融資や制度融資と言われていることからも、高い格付を誇る優良企業以外はプロパー融資の利用はおすすめできません。
しかも自治体の制度融資には、金利の一部を負担してくれる利子補給や、無利息貸付を行っているものもあり、かなりの低金利で融資を受けることも可能です。
これら自治体による政策は都道府県や市町村で個別に行われており、その内容も違ってきます。
銀行員と親しくなっていれば銀行側からすすめてくれる場合もありますが、自治体のホームページで紹介もされているので、融資を検討している経営者はアンテナを張っておく必要があります。
制度資金は金利が一律に低い傾向
地方自治体の中小企業に対しての、補助事業のひとつとして、制度資金というものがあります。
これは、地域金融機関、信用保証協会、地方自治体の3者が「このような制度資金を用意しましょう」と相談の上、制度の内容が毎年決定し、地方自治体が利息や保証料の全額もしくは1部を補助するというものです。
制度資金の金利や保証料は商品によって、あらかじめ決まったパッケージ商品となっていますので、会社の業況によって金利は左右されません。
融資を受けられる企業は業況がどうであろうと、同じ制度資金を利用すれば同じ金利や保証料が適用されます。
制度資金の金利は商品によって異なるものの、一律に低い傾向にあり、1%前半から1%後半となるのが一般的です。
条件に該当すれば運転資金でも設備資金にも利用でき、金利的にもかなり有利な融資を受けられますので、まずは地方自治体か金融機関、または日本政策金融公庫に相談してみましょう。
プロパー融資のメリット・デメリット
ではここで、プロパー融資のメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
メリット
プロパー融資のメリットとして、次のものが挙げられます。
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プロパー融資は保証付き融資に比べて、金利が低い傾向にあります。
また、「プロパー融資を受けられた」という実績により、他の企業や銀行からの評価が高くなります。
さらに、保証協会を介さないため保証料がかかりませんし、審査は銀行のみとなるため審査日数が短くなります。
デメリット
一方で、プロパー融資には、次のようなデメリットがあります。
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プロパー融資の審査は銀行側の貸倒れリスクなどを考慮して、保証付き融資に比べて厳しくなっています。
また、その貸倒れリスクのため返済期間が短くなるのが一般的で、その分月々の返済額が大きくなる点にも注意が必要です。
さらに、「プロパー融資を利用したい」と希望することはできても、実際に利用できるかどうかは銀行が決めるので希望通りに行かないこともあります。
まとめ
中小企業が銀行からの融資を受ける場合の貸出金利は0.9~3.5%が相場となっています。
金利には幅が持たせてありますが、実際の貸付金利は、企業の体力、銀行種類、固定金利か変動金利か、融資方法の4つの項目によって決められます。
融資を受ける場合は必ず利息も支払わなければなりませんが、金利が決まる要因を理解した上で支払うようにしたいですね。
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※₁お申込み時間や審査状況によりご希望にそえない場合があります。
※お借入れ総額により収入証明書(源泉徴収票等)が必要です。