ゆうちょ銀行から法人融資を受けることはできる?
ゆうちょ銀行は日本全国に支店がある日本最大手の銀行です。
近くで相談しやすい銀行でもあるため、事業資金の融資で相談したいという経営者もいるでしょう。
法人がゆうちょ銀行から融資を受けられるのかを解説します。
目次
法人向け融資は出来ない
最初に「ゆうちょ銀行」についてのご説明です。
ゆうちょ銀行とは?
ゆうちょ銀行と聞くと、「郵便局のこと?」と思われる方はまだまだ多いと思います。
実際、郵便局と無縁の銀行というわけではありません。
2006年に郵政民営化が行われたことから、日本郵政公社から郵便貯金事業などを承継して発足したのがゆうちょ銀行です(当初は「㈱ゆうちょ」、2007年に商号変更)。
元々、郵便貯金事業を引き継いでいるだけあり、ゆうちょ銀行の総資産は211兆円(2018年3月末時点)もあり、資産規模は日本最大の銀行となっています。
さらに、日本の家計部門の預貯金のうち、ゆうちょ銀行が預かっている割合は全体の約20%と言われており、まさしく銀行の中でも存在感が大きいと言えるでしょう。
また、ゆうちょ銀行の店舗数は、日本全国で24,019店舗にものぼります(2018年3月末時点)。
それも、北海道から沖縄まで、日本全国を網羅するように店舗が置かれていますので、一般的な民間銀行のように地域的な偏りが少なく、幅広い地域に対応できます。
なお、大手都市銀行である三菱UFJ銀行の国内店舗数は、法人・個人向けを合計しても1,046店舗(2017年3月末現在)であり、ゆうちょ銀行店舗数が圧倒的に多いことは明らかです。
法人取引は行っている?
ゆうちょ銀行は、2018年7月現在、法人向けの融資業務を行っていません。
元々、ゆうちょ銀行が郵便貯金事業を承継することで発足した銀行ということもあり、ゆうちょ銀行には、法人向け融資を行う機能は有していません。
但し、法人の口座開設については取り扱っています。
融資の取り扱いはありませんが、「決済サービス」としての法人取引は行っていますので、法人が事業用口座を開設するにあたり、店舗数が多く、全国的に利用可能なゆうちょ銀行は利便性の高い銀行となるでしょう。
将来的な可能性はある
なお、ゆうちょ銀行は、元々、法人融資に関する事業を行いたいという希望は持っていました。
郵政民営化後の2012年に、ゆうちょ銀行は法人融資業務への新規参入を金融庁に申請した経緯があります。
但し、巨大なゆうちょ銀行が法人融資業務に参入することへの銀行業界からの懸念や、そもそも、ゆうちょ銀行に融資業務に関する機能や、ノウハウがないということで申請は認められませんでした。
実際、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、全国銀行協会などの協会や、農林中央金庫などからも、ゆうちょ銀行の融資業務参入に対する反対意見も公表されています。
こういった反対意見が多いなか、一旦は融資業務への参入を見送ることとなっていますが、大規模な資産を保有するゆうちょ銀行だけに、今後、あらためて融資業務への参入を希望する可能性はあると言えるでしょう。
融資不要ならおすすめ
なお、現状でも、融資を受ける必要がなく、決済サービスだけ利用出来れば良いという法人には、ゆうちょ銀行は大変おすすめです。
一般的な民間銀行、特に店舗網や、ネットバンクの機能が充実している大手都市銀行などの場合、法人が口座開設するのは容易ではありません。
必要書類だけ提出して申込すれば、どの法人も口座を開設できるというものではないのです。
銀行は法人から口座開設の希望を受けると、その銀行で口座を開設するのに適した法人かどうかを審査します。
口座を使用してどういった目的に利用するのか、当座取引であれば決済に不安がないかなども確認されます。
特に、近年は銀行口座を不正に使用して詐欺行為に利用したり、マネーロンダリングに使用されるなど、口座開設に対する審査基準はさらに厳しくなっています。
そして、場合によっては口座開設を断るということもあります。
口座開設に関する審査はゆうちょ銀行でも行われますが、一般的な民間銀行に比べると基準はかなり緩いと言えます。
ゆうちょ銀行は民営化されたとは言え、公的な金融機関でしたので、不正使用などの疑わしい問題点がなければ、開設は認められやすくなっています。
そして、近年は多数の銀行がネットバンクのサービスを用意しています。
ネットバンクを利用すると、銀行の窓口に行かなくても、スピーディーに決済や入出金情報などの照会が行えます。
ゆうちょ銀行のネットバンクは基本料金が無料で利用できるため、他の銀行に比べてお得に活用することができます。
おすすめの法人融資
ゆうちょ銀行なら融資してもらえると期待されていた経営者の方には、一部の銀行が取り扱っているビジネスローンがおすすめです。
通常の銀行融資の場合、相談から融資実行まで、順調に進んでも数週間~1ヶ月程度かかります。
保証協会を利用する融資など、もっと時間がかかることもあります。
さらに、銀行融資は審査基準が厳しいので、業歴の浅い法人など借入できないことも多くあります。
しかし、ビジネスローンは、金利は高めですが、自動化された審査により、素早く、そしてかなり幅広い法人が融資を受けやすくなっています。
東京スター銀行
法人向けビジネスローンとしては、東京スター銀行の「スタービジネスカードローン」がおすすめです。
スタービジネスローンは、事業性資金としての使用を目的とした融資商品ですが、契約するのは法人経営者や、個人事業主などの個人となります。
スタービジネスカードローンでは、適用金利が年6.5%~14.5%の範囲内で、50万円~500万円までの借入が可能です。
一般的な銀行融資に比べて金利は高めですが、一度契約しておくと、好きな時にいつでも借入ができる融資商品になります。
個人向けの融資であるカードローンを、事業用資金でも使えるようにしているのがメリットです。
なお、スタービジネスカードローンに、申込できる方の条件として、「営業年数1年超」が設けられています。
そのため、創業後間もない方の利用は出来ません。
新創業融資制度
次に、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」をご紹介します。
新創業融資制度はビジネスローンではありませんが、設立間もない法人や、これから創業しようという方におすすめの融資です。
一般的な銀行融資は、創業から1~2年経過して、事業の実績が決算書などの数値で確認できるようにならないと利用できません。
そのため、創業時の資金需要には対応できないというデメリットがあります。
しかし、新創業融資制度では、「これから創業する方」も申込の対象となります。
なお、新創業融資制度を利用できる方として、以下の要件が設けられており、全て満たす必要がありますのでご注意下さい。
①これから事業を始める、もしくは事業開始後、税務申告を2期終えていない法人や個人事業主であること。
②以下のうち1つを満たすこと。
- 雇用の創出を伴う事業を始める方
- 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
但し、融資必要額が1,000万円以内の方は、こちらの要件は不要です。
③必要な開業資金総額のうち、10分の1以上の自己資金を確認できる方
ただし、こちらにも例外があります。
「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める方」であれば、3つ目の要件も充足済みとして扱われます。
新創業融資制度では、最大3,000万円までの融資を受けることができます(運転資金の場合は1,500万円まで)。
さらに、無担保・無保証人で借入可能であり、代表者の個人保証も不要ですが、他の融資に比べて利用しやすいのが特徴です。
まとめ
ゆうちょ銀行は支店数、営業エリア、資産規模などで日本の金融業界のトップクラスに位置する巨大金融機関です。
これだけの金融機関ですので、ゆうちょ銀行からの法人融資を希望するという経営者も多いでしょう。
しかし、残念ながら、現在はゆうちょ銀行からの法人融資を行っていません。
そのため、ゆうちょ銀行は法人にとって、口座開設と決済サービスの利用のみに限定されます。
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