短コロとはどのような借入?
- 執筆者の情報
- 名前:馬沢結愛(30歳)
職歴:平成18年4月より信用金庫勤務
目次
短コロとは短期継続融資のこと
短コロとは、一般的に「短期継続融資」と呼ばれるものであり、中小企業や個人事業主に多く融資されているものです。
金融機関において短期となる期間は、契約から返済までの期間が1年以内となる融資契約のことです。
短コロは融資金を1年以内に一括返済するものを継続(コロガシ)して借りることからそう呼ばれています。
では、なぜ短期間で返済する期限が到来する融資を継続的に行う必要があるのでしょうか?
短コロは資金繰りを安定させる
短コロは期限が来ると一括返済をすることが建前です。
しかし、実際には返済期限が到来しても元金を返済することなく、利息を返済するだけとなっています。
利息を返済し、また1年以内の期限の手形貸付に借り換えるのです。
元金分を返済しなくても良いですので、短コロが疑似的な資本となり、資金繰りを安定させる効果があります。
また、資金繰りが安定すると、経営自体も安定しますので、資金繰りが悪化しやすい中小企業や個人事業主にとって有利な借入となります。
反復融資ともいう
私も金融機関に勤務していた時には中小企業や個人事業主に短コロをよくしていました。
私がいた金融機関での実務は、期日が来ると一旦元金を返済してもらい、すぐに同額の融資を行っていました。
これを「反復」と呼んでおり、反復の利用だけを目的として私がいた金融機関と取引をしていた事業者もいました。
それほど短コロは中小企業や個人事業主にとっては重要な融資であり、資金繰りを安定させるためによく利用している融資だといえます。
短コロの銀行借入の種類
短コロは短期資金調達の資金を転がすことですが、短期資金と一口に言っても様々な方法で融資が行われています。
短コロで利用される銀行借入にはどのような種類があるのか見ていきましょう。
手形貸付や当座貸越で行われる
短コロ行う際の融資形態には「手形貸付」と「当座貸越」があります。
手形貸付は、貸付先から約束手形を徴求してその額面を融資するものであり、主に短期の運転資金を借入する際に利用される融資形態です。
当座貸越とは、借りることができる極度額(限度額)を設定し、その範囲内であれば借入することができる融資形態です。
当座貸越は資金に余裕がある時にまとめて返済することもできますので、非常に自由度の高いローンであり、個人だとカードローンがこの融資形態で借入しています。
短コロは主にこれらの形態で転がして運転資金を借入し続けることになります。
手形の場合も当座貸越の場合にも期限が到来したら、一度元金を全て返済し、また新たに融資をし直すか、そのまま書き換えてしまうかのいずれかの方法で資金を転がしていくのです。
資金使途は運転資金となる
短コロの資金使途は原則として運転資金となり、中小企業や個人事業主の経常運転資金として借入します。
経常運転資金とは、事業をし続けている限り必要となる資金のことであり、商売上の裏付けがある資金のことをいいます。
短コロは、経常運転資金となる買掛金や支払手形の決済資金として利用することになり、これを売掛金の回収や受取手形などで返済することになります。
実際には疑似資本のようなものになっていますので、これらの資金以外にも利用されていますが、原則として短コロは経常運転資金を資金使途して融資契約しています。
期限が到来したら、会社の運転資金はなくなってしまいますが、短コロは回収を行うことなく融資を継続し続けるので、融資をした分だけは資本金のように会社の資金繰りの安定性の向上には大きく寄与することができるのです。
手形貸付の短コロ
手形貸付は、融資実行(融資金の入金)時に元金を基に計算された利息を元金から差し引きます。
利息が差し引かれたて入金された部分が実際に利用することができる部分であり、期日が到来すると手形の額面分を一括で返済することになります。
また、金融機関によっては一括で返済を受けるのではなく、手形を書替して利息だけを返済してもらう方法を取っているところもあります。
どちらの方法で行われたとしても、実質的には元金部分を継続的に借りている状態となります。
例えば、手形の額面が1,000万円で利息部分が20万円である場合、融資実行において入金される金額は980万円となります。
これを1年後の期日とすると、期日となった場合には1,000万円を銀行に返済します。
短コロはここでまた同じ金額の1,000万円を手形貸付で借り、同じように利息を差し引かれて借りるということを続けていきます。
手形貸付は主に建設業などの売上が工事完了後に一括で融資される業種に行われる融資ですが、この他の業種でも短コロを利用することによって恒常的に資金繰りを安定させることができるのです。
期日に返済できない事業者もいる
短コロは売上などを返済財源としますが、中には資金繰りが悪化したことで資本化した短コロまでも食いつぶしてしまっている中小企業や個人事業主もいます。
事実、私もそのような状態となっている個人事業主とやり取りをしたことがあります。
その時は期日ギリギリとなって返済することができないと相談され、期日を1ヶ月延長してなんとか返済されました。
私のいた金融機関では、手形期日の書替はしていませんでしたので、契約上の期日が守られなかったことを理由にその後の手形貸付はできなくなってしまいました。
短コロができなくなってしまえば、資本を失うことと同じようなことになってしまいますので、資金繰りが悪化している個人事業主にとっては正に最悪の状態となってしまいました。
基本的にはずっと借り続けることができるのが短コロですが、期日になって一時的に返済する資金がない企業や、銀行が急に方針転換をして短コロを回収する貸し剥がしを行うような場合には、短コロを借りていることによって倒産に追い込まれてしまう可能性もあります。
短コロは擬似資本ですが、あくまでも借入金ですので、ずっと借り続けていることができると当たり前のように考え、本当の自社の資本のような無計画に使ってしまうことは避けた方がよいでしょう。
当座貸越の短コロ
当座貸越による短コロには、「特定当座貸越」と「一般当座貸越」の2種類があります。
特定当座貸越は、個人のカードローンのように専用のキャッシュカードでATMからいつでも借りることができます。
また、ATMでは対応できない高額な借入が必要な時は、貸越伝票を使用して窓口でも借りることができます。
一般貸越は、当座預金が残高不足となった場合に、自動的に貸越となるというように当座預金と連動しています。
個人でいえば、定期預金を通帳にセットする形でその90%までを借りることができる総合口座のようなものであり、事業資金を主に当座預金で決済している中小企業や個人事業主が利用します。
一般当座貸越で不渡りを防げる
一般当座貸越を利用する最大のメリットは、振り出した手形を不渡りしにくくさせることです。
一般当座貸越の性質上、当座預金の残高が支払手形の額面金額より少なくても決済することができます。
例えば、一般当座貸越の極度額を1,000万円で契約していたとして、当座預金の残高が100万円しかなくても、1,100万円の支払手形を決済することができるということです。
手形の不渡りは事業をしていくうえで絶対に避けなくてはならないことです。
手形が不渡りになると銀行取引停止処分となってしまい実質的に事業の継続は不可能になってしまいます。
しかし一般当座貸越で短コロをしていると、手形の不渡りを防ぐこともできます。
ただし、普段から借入しているような状況であれば、支払手形を決済できる金額も限られてきますので、絶対に不渡りを出すことはないというわけではありません。
最近は長期貸付が主流となっている
最近の金融機関は、短コロよりも信用保証協会の保証付き融資である「保証協会保証付融資」で長期貸付にシフトさせる傾向があります。
短期貸付が1年以内に返済するものであることに対し、長期貸付は1年を超える返済で、基本的に毎月返済していくことになります。
これまで短コロで資本のように利用してきた中小企業や個人事業主にとって、コロがすことができない長期借入は資金繰りを悪化させてしまう原因となっています。
それでも金融機関では長期貸付を主流にして融資をしており、元々資金調達が難しい事業者は悩まされています。
長期貸付によって資金繰りが悪化した中小企業や個人事業主は、さらなる長期資金によって借入金額がおおくなり、毎月の返済額も増えてさらに資金繰りが悪化してしまいます。
それでもこれまでのように短コロで事業者を支援している金融機関もありますが、事業としてあまり実りがない短コロを敬遠し、金融機関にとってリスクの少ない信用保証制度へと切り替える金融機関は増えています。
また、一時期は短コロのようなプロパー融資は「不良債権化するリスクが高い」という理由から金融庁が厳しい目線を送っていました。
金融機関は監督官庁の金融庁の方針は絶対ですので、金融庁から睨まれないためにも短コロから長期資金への切り替えを
短コロのメリット・デメリット
ここまで、短コロについて説明してきましたが、改めて短コロのメリットとデメリットをご紹介していきたいと思います。
短コロのメリット
短コロのメリットは以下の通りです。
- 利息のみの支払いで返済の不要がなく借り続けることができる
- 事業者にとっては実質的に資本と同じで資金繰りは安定化する
短コロのメリットは借入元金の返済の必要性がないので、やはり資金繰りが安定化するというのが最大の特徴です。
返済の必要がないお金というのは実質的には自己資本と同じですので、会社の資本力は大きく強化されることになるのです。
短コロのデメリット
短コロのデメリットとしては以下の点をあげることができます。
- 借入金が増えるので財務分析状の自己資本比率は下がる
- 担保を要求されることが多い
- 長期資金への借り換えや一括返済を突然要求されるリスクがある
短コロがいくら基本的に返済の必要性がないと言っても、やはり借入金であることには変わりありませんので、決算書には借入金として表示されます。
実質的には自己資本のようなお金でも借入金である限りは財務分析で当該短期借入金が「負債」としてカウントされ、自社の評価が下がってしまう可能性があります。
また、短コロで借りている金額に相当する担保を銀行が要求することが多いのが一般的ですので、不動産などの担保がない場合には利用することができない可能性があります。
さらに前述したように今は短コロではなく、保証協会付の長期資金が主流となっていますので、銀行から急に長期資金への借り換えを要求され、長期資金は返済が伴うので返済金の分だけは資金繰りが苦しくなってしまう可能性があります。
一括返済を要求される可能性もありますので、その場合にはさらに資金繰りが苦しくなってしまいます。
Q&A:短コロに関する質問
短コロに関してよくある質問をまとめてみました。
①金融庁の金融検査マニュアルの短コロへの影響は?
金融庁が銀行を検査する際のマニュアルが金融検査マニュアルです。
金融検査マニュアルはとにかく銀行の不良債権を無くしていくということが基本ですので、金融庁検査では短コロを見つけると金融庁の検査官が「この融資は何ですか?ずっと塩漬けになっている不良債権ではないですか?」と銀行を厳しく追求することは珍しくありませんでした。
一方、銀行にとって100%が保証される信用保証協会付き融資であれば、銀行の債権が不良債権化するリスクはないので、金融庁もうるさくありません。
このため、金融検査マニュアルに則って金融庁が銀行を検査していた時代は、銀行は金融庁からの追求を恐れて短コロを保証協会付きの長期資金に借り換えてしまうという事例は珍しくありませんでした。
金融庁の金融検査マニュアルは確実に銀行の短コロ融資に影響を及ぼし、短コロは著しく減少しましたが、金融検査マニュアルは今は廃止され、短コロの有用性も再び指摘され始めています。
今後は再び短コロも増えていくかもしれません。
②短コロは銀行にとっては不良債権?
返済されずに融資をしているからと言って短コロは不良債権ではありません。
不良債権と判断されないために、一度現金で回収してすぐに融資を行うという形で転がしているのです。
企業の正常運転資金として必要な資金であり、期日になれば一度返済することができている限りは、その後転がしたとしても不良債権ではありません。
③短コロはプロパー融資?
基本的に短コロは担保をとって、プロパー融資で行われます。
信用保証協会の保証をつけて保証料を払って、短期資金を転がすということは基本的に行われません。
④短コロの地域金融への影響は
短コロがあることによって、地域の中小事業者の資金繰りは安定します。
また、手形の期日になると必ず銀行員は企業に対して訪問をして、経営状態などの話し合いを行うので、地域金融機関が企業の業況を把握することにも寄与しているという側面があります。
その一方、企業の経営が悪化すると返済できずに不良債権になってしまう可能性もあるので、銀行にとってリスクがないとは言えないでしょう。
いずれにせよ、あと少しの資本力さえあれば、資金繰りを安定化させることができる企業にとって短コロが有用であることは間違いありません。
まとめ
短コロは実質的に利息だけを返済するだけで常に同じ金額を融資してもらうことができ、資金繰りが安定しにくい中小企業や個人事業主にとっては非常に助かる融資です。
しかし、金融機関としては融資残高が伸びない短コロをなるべくせず、長期貸付によって融資残高と利息収入を確保する動きを見せていますし、信用保証協会の保証をつけて100%保証の融資を行えば、融資金の不良債権化も防ぐことができます。
これからはさらに短コロに対する金融機関の意識は薄れていくと思われ、資金調達が難しい中小企業や個人事業主にとってはさらに悪影響を及ぼす可能性があります。
それでも、信用金庫のように地域に密着した金融機関であれば短コロをしているところもありますので、そういった金融機関と取引しておくことをおすすめします。
短コロで企業を支援するかどうか銀行の方針によって大きく異なりますので、できる限り地域企業の面倒見がよい金融機関を探すのがよいでしょう。
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