NPO法人への融資審査を徹底解説
NPO法人とは非営利法人です。
本体銀行とは、営利企業に対して融資を行い、その融資金でさらに収益を拡大し、地域経済が発展し雇用の創出につながることを社会的使命としています。
このため、長らく非営利活動を行うNPO法人は銀行融資の対象とされてきませんでした。
しかし、NPO法人でも事業を営んでいくためには資金が必要ですし、その資金を自己資金や善意の寄付や補助金だけに頼っていることにも限界があります。
このような背景から、NPO法人に対しても2015年から実質的に銀行から融資を受けることが可能になっています。
しかし、そもそも営利を目的としていないNPO法人に対してはどのような審査が行われるのでしょうか?
この記事ではNPO法人への融資審査について徹底解説を行っていきます。
目次
2015年から銀行で実質解禁
2015年から実質的にNPO法人への融資が実質的に解禁されました。
これまでNPO法人へ融資を行ってきたのは、一部の信用金庫と日本政策金融公庫だけでした。
民間の銀行がNPO法人への融資を行ってこなかったことからNPO法人は資金調達が極めて難しい法人形態とされてきましたが、今後はNPO法人でも資金調達が容易になる可能性があります。
これまでは信金と政策公庫だけ
これまでNPO法人を支援してきたのは、ソーシャルビジネスを支援してきた一部の信用金庫と、ソーシャルビジネス支援資金という資金制度を設けてきた日本政策金融公庫だけでした。
しかし、信用金庫の融資限度額は数百万円程度の少額が限度でしたし、全ての信用金庫がNPO法人への融資を行ってきたわけではないため、借入によって資金調達を行っているNPO法人は極めて数が少ないというのが現状でした。
信用保証協会で保証対象に
2015年5月、信用保証協会の業務内容を規定する中小企業信用保険法が改正されました。
この改正によって、信用保証協会の保証対象としてNPO法人が加わりました。
つまり、今後は信用保証協会はNPO法人に対しても保証を行うことができるようになったのです。
2015年から実質解禁
銀行は初めて取引を行う事業者に対しては保証なしにはほぼ確実に融資をしません。
つまり、信用保証協会が保証をしない融資は銀行も融資をしないのです。
2015年の法改正によって信用保証協会の保証対象にNPO法人が加わったことによって信用保証協会がNPO法人に対して保証を行えば銀行も融資ができるようになったということです。
つまり、これまでは一部の信用金庫や日本政策金融公庫からしか借入ができなかったNPO法人は銀行からもお金を借りることができるようになったということです。
保証協会の保証内容
では、銀行融資の鍵を握る信用保証協会はどのようなNPO法人に対して保証を行うのでしょうか?
全てのNPO法人が信用保証協会の保証対象というわけではなく、ある程度の条件を満たしている必要があるようです。
中小事業者の振興に資するNPO
信用保証協会の保証対象となるNPO法人は「中小事業者の振興に資するNPO法人」である必要があるとされるようです。
以下の条件を満たしているNPO法人が中小事業者の振興に資するNPO法人ということになるようです。
①中小企業者と連携して事業を行うNPO法人
②中小企業者の支援を行うNPO法人
③中小企業者の支援を行うために中小企業者が主体となって設立したNPO法人(社員総会における決権の2分の1以上を中小企業者が有しているNPO法人)
④新たな市場の創出を通じて、中小企業の市場拡大にも資する事業活動を行うNPO法人であって、有給職員を雇用するNPO法人※NPO会計道より引用
つまり、中小企業と連携・支援などを行うNPO法人か、議決権の半分以上を中小企業者が担っているNPO法人で、さらに有給の職員を雇用しているNPO法人ということになります。
事業型NPO
さらに、信用保証協会の保証対象となるのは、事業を営んでいる事業型のNPO法人であるということも条件になるようです。
事業型のNPO法人とは以下のようなNPO法人です。
①特定非営利活動で継続した収益事業(課税事業かつ自主事業)を行っていること。
②の収益事業からの収益により雇用を創出していること。
③多様な主体と連携し、地域の課題解決や活性化に繋がる活動を行っていること。
④市場の競争において有利となる税制上の恩典を有していないこと。※経産省の【NPOなど新たな事業・雇用の担い手に関する研究会】中間論点整理より引用
特定非営利活動を継続的に行っており、継続的に収益があり、そこから雇用を行っているということが条件になるようです。
審査の基準は?
では上記の条件を満たしているNPO法人への審査ではどのような点に着目されて審査が行われるのでしょうか?
事業収益があるか?
NPO法人といえども特定非営利活動の中から事業収益があることが必要になります。
事業型NPO法人しか保証の対象とされないことを鑑みればこの点は当然といえば当然と言えるでしょう。
返済能力があるか?
事業収益から融資金の返済ができるだけの原資がなければなりません。
NPO法人であろうとなかろうと、お金は返済しなければならないため、この点は当然と言えば当然でしょう。
雇用の創出があるか?
さらに、有給の職員を雇用しているという実績と、事業規模を拡大する場合には拡大によってどの程度の雇用の創出を望むことができるのかということも審査の対象となりそうです。
審査の際に必要になる書類
NPO法人が融資を受ける際にはどのような書類が必要になるのでしょうか?
NPO会計基準の財務諸表
2010年にNPO法人会計基準というものが公表されています。
しかし、この会計基準を守るかどうかは任意となっています。
銀行融資を受けるのであれば、この会計基準に合致した財務諸表を提出する必要があるでしょう。
NPO法人の会計は基準を守らなくても罰則がないため、曖昧なものになっているのが実態ですが、銀行からお金を借りるのであれば、しっかりと規則を守った正しい財務諸表が必要になります。
資金繰り表
NPO法人は営利を追求しない事業だからこそ、お金を貸す側にとっては「返済できるかどうかが重要になります。
銀行や信用保証協会に「返済に問題ない」と思わせるためには、資金繰り表の提出が必要になります。
資金繰り表とは、毎月の現金の入りと支出を全て記入し、毎月どの程度の現金が残るのかということを示す書類です。
ここで、返済金以上の現金が残らないようであれば返済は難しいと判断されてしまいます。
逆に言えば、資金繰り表から算出される現金以上の返済になる借入に申し込みをしたとしても審査に通過することは難しいでしょう。
雇用の実績表
NPO法人が信用保証協会の保証を得るためには「どれだけの雇用を創出しているのか」ということも審査の鍵になります。
有給の従業員の数は給与の支払実績などを一覧にしておくとこの点がわかりやすいでしょう。
さらに、事業を拡大する場合には、事業拡大によってどの程度の雇用が創出できるのかという点も審査では重視されるでしょう。
中小事業者との具体的な連携実績等
信用保証の対象となるNPO法人のキーワードが中小事業者との連携や中小事業者への貢献度です。
つまり、地域の民間経済にどの程度寄与しているのかということも重要になります。
本来、地域の中小企業を支援するのが信用保証協会の目的ですので、NPO法人を支援することによって間接的に中小事業者を支援できる型が望ましいのです。
民間事業者とどの程度連携しているのか、具体的に民間事業者をどのような形で支援しているのかという説明ができるような資料も用意しておいたほうがよいでしょう。
さらにマスコミなどに取り上げられた実績があるのであれば、その新聞や雑誌の切り抜きも用意しておいた方が審査ではプラスになるでしょう。
まとめ
2015年から信用保証協会の保証対象としてNPO法人が解禁されました。
これによって実質的にNPO法人への銀行融資も解禁されたと言えるでしょう。
しかし、筆者の知る限りはまだNPO法人への融資実績は少ないというのが現実です。
今後、NPO法人が増え、社会にさらに定着していけばNPO法人への融資は増えるかもしれません。
しかし、今でも銀行は融資を行うことは可能ですので、銀行融資によってNPO法人の事業を拡大したいなどと考えている事業者の方は、まずは銀行や信用保証協会へ相談してみてはいかがでしょうか?
タグ:その他金融業者