離婚をなめるな!裁判で勝ち得た2万円の養育費はもらえるのか?
「円満に離婚しました!離婚届を手をつないで提出してきました!」記者会見やブログでこんな記事を見かけます。
…はい?何それ?円満なら離婚しないわ。手をつなげる愛情あるなら離婚しなくていいじゃない。
そう思うのは私だけでしょうか。
ファイナンシャルプランナーとしてご相談を受けていると離婚にまつわるお話になることもよくあります。
今回は、「綺麗に離婚しましたアピール」をする人に離婚をなめるなよと言いたくなる、「裁判までした離婚で勝ち得たにもかかわらず養育費をもらえない」事例を紹介します。
目次
離婚は簡単にできる?
離婚は夫婦と証人二人の署名・捺印をした離婚届を市区役所・町村役場に提出すれば成立します。
証人は必ず必要で、夫婦当人以外にサインをもらうというワンアクションがあることで感情的に離婚届を出すことを抑制したり、夫か妻どちらか一方に勝手に離婚手続きをされないようにする目的もあるといえます。
証人は誰でもよく、親や兄弟姉妹、友人などが多いようですが、どうしても頼める人がいなかったり秘密にしたい場合は1万円ほどで業者に代行記入してもらうこともできます。
手続き自体は簡単ともいえますが一緒にしてきた生活を別々にするには、お金や住まいのこと、子どもがいれば親権のことなど、そう簡単に進められることではありません。
離婚の種類
離婚は手続きにより4種類あります。
①協議離婚(約97%)…お互いの話し合いで決め離婚届を提出する。
②調停離婚(約10%)…①でまとまらなかった場合、家庭裁判所に申し出て調停員に入ってもらい離婚条件を話し合う。
③審判離婚(約0.1%)…②が不調になった場合裁判所の審判により離婚条件が決められるものだがあまり採用されていない。
④裁判離婚(約3%)…②で不調になるとこちらに移行して裁判になるケース。費用も時間もかかる。
②③④で決まったことは強制力があり強制執行も可能ですが、強制力があるといっても相手次第では養育費や財産分与をもらえないケースが多いのが現状です。
裁判離婚ってどういうもの?
お互いでの話が整わず調停になってももめたまま…となると調停が流れる「不調」となり裁判になります。
調停は裁判所に行き、相手の顔を見ることなく時間をずらし一人ずつ調停員と離婚の話し合いをすすめていきますが、裁判は、提起→口頭弁論・尋問(お互いの言い分を主張&反論を数回)→和解勧告(裁判官からお互いそのような主張であればこのような条件で決めてはどうか?と提案)→それでお互いに納得するのであれば和解調書が作成され(強制力あり)作成から10日以内に離婚届けを提出すれば離婚成立になります。
納得がいかなければ最終的にテレビでみる「法廷」に出廷し裁判官による判決を待つことになります。申し出た側は原告、相手方は被告と呼ばれ、法廷では「真実のみを話します」と宣誓させられます。
真知子さんのケース
では、あまり多くないケース「裁判離婚」までいき判決を受けた真知子さん(仮名)のケースで養育費の支払いはどうなったのか説明しましょう。(個人を特定できないよう内容はアレンジしています)
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モラハラと度重なる浮気でうつ病に
真知子さんは29歳でバツイチだった夫と結婚。2人の子どもを授かりましたが夫のモラハラと度重なる浮気で激やせ。
見かねた友人が病院に連れて行ったところうつ病の診断を受けました。仕事ができないほどの症状でなかったのは幸いでした。
収入もあるし離婚してもやっていけると覚悟し、離婚したいことを夫に伝えるとモラハラ夫は逆上し、真知子さんにケガを負わせ警察沙汰に。
真知子さんは逃げるように子どもを連れて遠く離れた他県の実家に身を寄せました。
夫は離婚に応じようとせず、他県の真知子さんの実家の玄関で土下座して謝るなど反省したようでいったん離婚は思いとどまりました。
子どもと自宅に戻ると夫は以前よりエスカレートして怒鳴ったりするようになりました。
なかなか電話に出ない真知子さんを心配した実父が家に来たときにはまともに家計費も渡されず仕事もやめている状態。
もはや自分で判断できる精神状態ではなくなっており、子どもと真知子さんを実家に連れて帰ったのです。
実家に帰った真知子さんは徐々に体調を取り戻し、離婚のために仕事を見つけ動き出しました。調停は3か月に1回のペースで3回行われましたが、条件が整わず不調に終わり裁判に。
その間夫は自営業であることを武器に虎視眈々と準備を進めていたのです。
離婚裁判を起こした時の夫の収入は月わずか25万円、そして前妻の18歳の子どもはまだ自立していないので養育費を払っていると裁判で証言。
前妻の養育費を受け取っているという署名も提出。
養育費2万円と親権は真知子さんで離婚という判決
裁判の判決は、養育費2万円と親権は真知子さんで離婚というもの。
養育費は夫婦の収入と子供の総数から算定されるため真知子さんへ支払われる養育費はわずか2万円となったのです。
夫はそれを承知で自分の役員報酬を少なく調整し養育費算定が少なくなるよう仕組んでいたのです。
仕事を持ち問題なく2人の子どもを育てていたため親権は真知子さんとなったのはせめてもの救いでした。
その後、毎月末この口座に振り込むようにと書類の取り交わしをしたにもかかわらず夫はいっこうに養育費を振り込みません。
判決は、「債権」として相手に請求できますが取り立ては自分で行う必要があります。
一般のサラリーマンであれば勤務先に「給与差し押さえ」を請求できますが、真知子さんの夫は自分で会社を経営する自営業。
「給与差し押さえ」する側でもあるのでそれを行ったところで効果があるはずもありません。
使っていた預金口座に差し押さえ請求をかけても、他の金融機関に移してしまっている場合は空振りに終わるだけ。そんなことの繰り返しに真知子さんは疲れてしまいました。
裁判の時に「真実を話す」と宣誓したにも関わらず…。
その後、結婚していた土地での友達に聞いた話では、養育費を支払っていると主張していた当時18歳の子どもは高校卒業後地元企業に就職し給料をもらって今も務めているとのこと。
自分の収入を調整したあげく前妻の子どもへの仕送りも嘘だったのです。
夫自身の2人の子どもへの養育費を裁判で嘘をついてたった2万円判決にもちこみ、そのわずかな養育費も支払わず、自分は趣味の高級バイクなどの趣味に明け暮れているという噂を聞いた真知子さん。
やはり離婚してよかったと思ったそうです。たかが2万円くらい稼げるわ!と副業を探して頑張っているそうです。
まとめ
一度は一生この人と添い遂げようと思って結婚するでしょうから、できれば離婚はしたくないと思うはず。
一生懸命考え、もがき苦しみやむを得ず離婚という選択をした方々のご相談にのっていると「円満アピール」している離婚報道を快く聞くことができません。
いろいろな選択がありそれぞれの考え方があるのはもちろんですが、このように数年にわたって離婚するために頑張っても報われない人もいることを少し知っていただけたらと思います。
円満じゃない離婚がほとんどです。離婚は自分のために前向きな選択になることもあります。
離婚は自分が決めたことだし後ろめたいこと…と自分を押し殺して一人で悩まず弁護士さんやFPにも相談してみてくださいね。
ファイナンシャルプランナー(CFP)
稲村 優貴子
タグ:お金の知識
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