傷病手当の支給が遅い理由は？支給日までにお金が必要なときの対処法

病気やけがをして仕事を休む場合、長期間に及べば収入が減り、生活に支障をきたすことがあります。そんな時に使えるのが傷病手当の支給です。

しかし、傷病手当が支給されるタイミングが遅いと、生活費が足りなくなるかもしれません。このため傷病手当てがいつ振り込まれるのかは、受け取る人にとって重要な問題です。

今回は傷病手当の支給が遅れる理由と、支給までの生活費の対処法について紹介します。

傷病手当とは？どんな条件の人が受けられる？

傷病手当は職務上や通勤災害によらない病気やけがにより、職務不能になった場合に適用される保険です。加入している健康保険へ申請をすることにより支給されます。支給されるためには4つの条件を全て満たさなくてはなりません。

傷病手当とはどのような人が対象で、どういった特徴があるのか見ていきましょう。

傷病手当金とは？

傷病手当とは、業務外の病気やけがで仕事を長期間休まなければならない場合に、加入している保険会社から支払われるお金です。

条件さえ満たせば、最高で毎月受け取っている給料の3分の2程度の給付金が受け取れます。また退職後2年以内であれば、傷病手当を申請することができるのも助かります。

企業が加入する健康保険に入っていれば、正社員だけでなく、パートやアルバイトでも申請可能です。

ただし、自営業やフリーランスが加入する国民健康保険には含まれないので、注意が必要です。

傷病手当を受給できる条件について確認しよう

傷病手当を申請できる人は次の条件の人です。

・業務外でのけがや病気療養のために休業すること

傷病手当が申請できるのは、仕事中や通勤途中以外での病気やけがに限られます。病気とみなされないものや、美容整形は対象ではありません。

仕事中のけがの場合は、「労災」という別の手当てがあります。

・仕事に就くことができない状態であること
仕事に就くことができるかどうかの判断は、医者や医療関係者の意見をもとに判断されます。

・3日連続で4日以上仕事に就けなかったこと
これは「待機3日間」といい、3日は連続で会社を休まなければ対象となりません。2日休んで3日目に出勤するともらえないのでご注意ください。

待機期間には、土・日・祝日も含まれ得るため、給料が出たかどうかは関係ありません。

・休んだ期間に給料の支払いがないこと

業務以外の病気やけがについて手当をもらう制度であるため、休みの間に給料が支払われている場合は、対象とはなりません。

ただし受け取っている給料が、傷病手当の支給額よりも少ない場合は、差額がもらえます。また、保険を任意継続している人は対象ではないので、注意しましょう。

連続して3日以上の欠勤しなければならないため、例えば2日欠勤し3日目に出勤、4日目にまた欠勤という場合も傷病手当は認められません。

意外な盲点ですが、欠勤理由には大きなけがや病気でなく、インフルエンザでも対象となります。さらに、2年までなら遡って申請することも可能です。

社会保険に加入していれば雇用形態に関係なく受給資格があり、正社員だけでなく契約社員や派遣社員、パートも対象となります。

申請に当たってのポイントは、欠勤した時に給与が支払われていないことです。傷病手当は支払われない給与を補うものなので、給与を支払われている場合は申請できません。

申請先は加入している保険機関となりますが、加入先によっては土・日・祝日が対象外となることもあるので注意しましょう。

土・日・祝日や年末年始は対象になることもある

傷病手当の申請先は、「私学共済」もしくは「協会けんぽ」です。

私学共済は土・日・祝日は傷病手当支給の対象となりませんが、協会けんぽの場合は土・日・祝日も対象となります。

私学共済

私立学校の教職員を対象とした社会保障制度です。

私学共済の傷病手当の支給額と支給期間を以下の表にまとめましたので、参考にしてください。

なお、標準報酬日額は標準報酬月額の22分の1です。

協会けんぽ（全国健康保険協会）

会社員や自営業者などが加入している保険制度です。私学共済とは全く別のものなので、注意してください。

私学共済との違いは、土・日・祝日に対しても対象となる点です。

傷病手当が支給されるタイミング

傷病手当の支給されるのがいつになるのかは、もらう側としては重要です。そのため、いつ振り込まれるのか知りたい人もいるでしょう。

申請書を加入している健康保険組合に提出して審査に通ると、支給決定通知書が送られてきます。支給決定通知書がなかなか送られてこないときは、健康保険組合に問い合わせることもできます。

振込されるのはいつになる？

通常、傷病手当の振込日は、申込後に送られてくる支給決定通知書に記載されています。

申請書を提出、審査がスムーズに行われれば早くて2週間ほど、長くても2ヶ月後までに振り込みされます。

支給日の問い合わせ方法

審査が長引いて、支給日がいつになるのか分からない人は、協会けんぽや私学共済に問い合わせみましょう。

◆私学共済

短期給付課現金給付第一係
TEL:03-3813-5321（代表）

◆協会けんぽ

協会けんぽ問い合わせ先は、各都道府県支部となります。ホームページに各支部の連絡先が掲載されているので、確認してください。

電話受付時間：月曜日から金曜日　午前8時30分～午後5時15分
※国民の祝日および年末年始（12月29日から1月3日）を除く

傷病手当を受け取るまでの流れ

ここでは、傷病手当を申請してから支給されるまでの流れを確認していきます。

傷病手当は申請をしなければもらえません。正しい申請の手順を知り、しっかりと受け取りましょう。

なお、医師に先に記入してもらった後、会社側で記入が終わったら、そのまま健康保険組合に提出してもらう方法もあります。

申請から支給額が振込されるまでの流れ

傷病手当の申請をしたら、どのくらいで振り込まれるのか見ていきましょう。

申請書を提出した後、審査に2週間～2ヶ月ほど必要なため、振り込まれるまでに時間がかかります。

必要な書類とは

傷病手当を申請する書類を事前にそろえて、スムーズに手続きができるようにしましょう。

必要書類は以下の通りです。

◇私学共済

◇協会けんぽ

傷病手当申請には主治医のサインが必要

必要な書類や申請までの流れでも説明しましたが、主治医の意見欄の記入とサインが必要です。

申請書を渡した日に記入してもらえればいいのですが、忙しい場合は次の診察日以降という場合があります。そうなると、申請書を提出することが遅くなり、支給額の振り込みも遅れます。

傷病手当の支給を早める方法は？

傷病手当を意図的に早める方法はありません。保険会社に電話などで「早くしてください」とお願いをしても、特別急いでくれることはないです。少しでも早く傷病手当を受け取りたいと思うなら、書類を間違えずに早く出すことに限ります。

担当医の意見書は、大きな病院だと届くまでに時間がかかるため、早めの申請が必要です。もし書類に不備があった場合には、再提出などでさらに時間がかかります。

もし書類不備で返送されてしまった場合、それだけでさらに日数がかかります。そのため「記入する書類は間違えないこと」「早くそろえて提出すること」を心がけましょう。

記入する書類は漏れがあると受理されないので、提出までに何度も確認しましょう。

支給されるのが遅くなる原因は？

傷病手当が支給されるまでの流れをまとめてきましたが、次は遅くなる原因を見ていきます。

遅くなる原因を避けることで、支給時期を少しでも早められます。

• 申請書をもらうのが遅かった
• 書類不備があった
• 医師や人事担当者に依頼するのが遅かった
• 提出書類を準備するのに時間がかかった

遅れる理由として、申請書を提出するまでに時間がかかる場合と、申請書を提出した後の審査に時間がかかるケースが考えられます。

なるべく早く受給できるよう、必要な書類をしっかりと用意することはもちろん、医師や人事担当者に急いでいることを伝えるといいでしょう。

また、会社から必要書類を用意してもらうために、あらかじめ何が必要かを自分でも把握しておくことも大事です。

傷病手当の申請期限はいつまで？

傷病手当の申請期限は、支給開始から最長で1年6ヶ月です。もし途中で復職した場合もカウントに含まれるので注意が必要です。

申請期限は「病気やけがにより支給されることが確定した時」の翌日を起算日とし、2年で時効を迎えます。傷病手当は、「働けない日」に対して加算されているため、支給を受ける受けないは関係なく時効は進むのです。

期限を1日でも過ぎると給付が受けられないので、注意してください。

傷病手当だけでは生活できないときの対処法

傷病手当ての支給までに時間がかかっている場合や、傷病手当だけでは生活にできないときには、国の制度などを上手に利用しましょう。

高額療養費制度

高額療養費制度とは医療費の家計負担が重くならないようにと、医療機関や薬局で支払った一ヶ月分の医療費一定金額を超えた分を支給してもらう制度です。

一定金額を超えた分を申請し、後から払い戻してもらう方法もありますが、あらかじめ申請しておけば、窓口で一定金額以上は払わなくて済みます。

治療が高額になることが前もって分かっているのであれば、勤め先（国民健康保険の場合は市役所）へ行き、「限度額適用認定証」を発行してもらいましょう。支払い時に病院に提出することで、医療費を抑えられます。

勤務先に申請することで発行してもらえるこもあります。国民健康保険であれば、市役所の国保年金課で申請してください。その場で発行されます。
負担額は所得によって違いますが、目安としては、年収370万円で5万7,600円です。

なお、所得に応じた高額療養費は全国保険健康協会で簡易試算できます。おおよその負担金額を知っておけば安心でしょう。

生活福祉資金貸付制度

低所得者や障害者、高齢者世帯に対して支援と社会参加への助けとなるよう、無利子又は低利子での貸付を行う制度です。

生活保護

能力や資産を活用しても生活に困る世帯に、程度に応じて最低限の生活保障をし、自立を助ける制度です。

上記の制度の対象となるかは、各都道府県や市町村などに問い合わせて確認しましょう。法テラスや市町村役場でも相談できるので、参考にしてください。

傷病手当に関するみんなの疑問

①1月1日から3月4日まで仕事を休職していました。
有給休暇と会社の給料締め日の関係で、1/28〜2/10の13日間、2/11〜3/4の24日間の傷病手当金の申請を会社にしたのですが、支給額はそれぞれ8.2万円、8.5万円でした。

日数が倍近くあるのに金額が変わらないものなのですか？

②ちなみに基本給22万円、住宅手当など含めて約26万円が毎月の額面でした。半月ならまだしも、ほぼ1ヶ月の休職でこんなに安いものなのでしょうか？

A. 傷病手当は、医師が「仕事に就けない」と判断した日からカウントが始まります。そのため質問者が申請した時期と医師が判断した時期に差異があったのではないかと考えらます。

あくまでも支給は医師の判断で行うため、2/11〜3/4の支給時は金額が減ったと考えられます。

また有給休暇が「収入あり」とみなされたため、その分を差し引いて計算されたのかもしれません。

まとめ

傷病手当の支給が遅れる要因は、申請書の提出に時間がかかった場合と、審査に時間がかかったケースがあります。そのため、少しでも早く受け取るために必要な書類を把握して早めに申請書を作成するようにしましょう。

また、審査に時間がかからないように申請書や書類に不備がないようにすることも大切です。

支給が遅れて生活に困ったときは、国の制度を上手に利用して、支給日まで支援してもらうといいかもしれません。

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