銀行融資と定款の関係性
銀行から融資を受けることができるかどうかに定款の内容が影響する場合があるということをご存知でしょうか?
定款とは会社の基本的なルールを定めたものですが、あまりにも正直に書きすぎると融資を受けることができなくなることもあります。
このため、会社設立前にはしっかりと融資を受けることができる内容の定款を作成する必要があります。
定款にはどのような内容を記載すべきなのか、また、銀行融資に関係する部分は定款のどこなのかについて徹底解説を行います。
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
法人設立には定款が必要
法人を設立するためには、会社の基本的なルールなどを定めた定款が必要になります。
法人設立手続きを行う方法は簡単にいえば以下の2つの手続きが必要になります。
①公証人役場で定款の認証手続きを受ける
②法務局で法人の設立登記を行う
定款を作成し、公証人に認証してもらう手続きには手数料がかかり定款認証手数料は50,000円となっています。
ちなみに、このほかに登録免許税などが必要になり、会社設立に伴う手数料は20万円〜25万円程度必要になります。
初めての銀行融資で必要な書類
銀行から初めて融資を受ける場合には、決算書のほかに必ず以下の書類が必要になります。
商業登記簿謄本
商業登記簿謄本とは、会社が確かに登記されているという証明です。
法務局に行き取得することができます。
定款
会社の基本ルールを示したものである定款の写しも銀行へ提出する必要があります。
なお、電子定款を作成している場合には、定款の謄本を取得する必要があるため、この謄本取得費用に2,000円必要になります。
初めて取引を行う企業が、そもそも本当に会社として法的に存在する会社なのか、また、どのような内容に会社なのか、本社はどこか、代表者は誰なのか、などの確認を商業登記簿謄本と定款の提出を受けることによって行います。
どこの会社なのか、本当に存在しているかどうかわからない会社なのかに顧客から預かっている大切な預金を貸すわけにはいかないため、融資取引開始前のこの手続きはある意味当然と言えば当然です。
しかし、銀行が定款の提出を求める理由は、ただの確認作業のためだけではありません。
定款には何を記載するの?
そもそも定款には何を記載するものなのでしょうか?
目的
会社の目的を記載します。
「自動車の販売」「出版物の製作」など自社の事業内容を記載しましょう。
現在行っていない事業でも、将来的に展開しようと考えている事業があれば記載した方がよいでしょう。
基本的に定款に記載してはいけない業種はありません。
むしろ、将来的に事業展開を行う場合に、定款にない事業を行う場合には定款の変更手続きを行う必要が生じてしまいます。
変更手続きには再び費用と手間と時間がかかるため、ここでは現在の事業、将来の事業も記載した方がよいでしょう。
また、後述しますが、融資において影響を与える定款の項目とは、この「目的欄」になります。
商号
商号とは、会社の名前です。
株式会社〇〇などの名前ですが、会社の顔となるものですので、後悔しないように慎重に検討しましょう。
本店の所在地
本店の所在地です。
基本的には会社の所在地か自宅で事業を営む場合には自宅の住所ということになるでしょう。
設立に際して出資される財産の価額
設立に際して出資される財産の価格とは、要するに資本金のことです。
現在は0円から会社を設立することができますが、資本金は1,000万円未満の方が、設立後2年目までは消費税が減免されるためお得です。
発起人の氏名又は名称及び住所
会社の発起人とは、簡単に言えばお金を出して会社を作る人です。
発起人は出資して必ず会社の株式を1株以上保有する必要があるため、要するに株主ということになります。
中小企業においては本人や知人や家族などでお金を出して会社を発起設立するケースが一般的となっています。
簡単に言えば、会社設立時の株主の住所と氏名を定款に記載する必要があります。
その他
上記5つの事項は定款に必ず記載しなければならない、「絶対的記載事項」と呼ばれるものです。
そのほかにも、「相対的記載事項」と呼ばれる、株主総会や、株式譲渡制限に関する定めを記載しなければなりません。
また、「任意的記載事項」と呼ばれる、例えば株主総会の企業に関する定めや、株主名簿の基準日の定めなども記載することができます。
定款がなぜ融資に関係するのか?
ここまで、会社設立に関する定款の役割と、手続きとその記載内容に関して説明してきました。
ではなぜ、銀行へ提出した定款が融資に関係するのでしょうか?
ただの確認だけではない
先ほど述べたように、銀行が定款を確認する理由は、単に法的に問題ない会社かどうかの確認だけではありません。
銀行が融資の際にチェックしているのは「目的」です。
目的によって融資を受けられない
目的によっては融資を受けることができない場合があります。
例えば、銀行は風俗業や宿泊業などには融資を行いません。
また、パチンコなども同様です。
定款に記載されている目的がこのような銀行が融資を行わない業種であった場合には融資ができないため、チェックしているのです。
また、そもそも銀行が「融資が必要ない」と判断してしまう目的もあります。
例えば「出版物の製作」だけが目的であった場合には、出版物の製作だけであれば在庫を抱える必要がなく、必要なのはパソコン1台になってしまいます。
例え、この会社が自社で製作した出版物の販売までを手がけることになり、多額の運転資金が必要になった場合でも、定款には製作としか書いていないため融資を受けることができない場合があります。
実際に、黒字で決算書の内容は全く問題がないような会社であっても、定款に運転資金が必要になる目的が記載されていないという理由で融資を受けることができないということが稀にあります。
定款には必ず「販売」を
定款には必ず「販売」という2文字を入れておくことをお勧めします。
販売には必ず仕入れや在庫がつきまとうため、運転資金の必要性が生じるためです。
逆の「販売」の2文字がない場合には、運転資金の必要性がないと銀行から判断されて、それを理由に融資を断られてしまうこともあります。
このため、定款には、「販売」の2文字を必ず入れるようにしましょう。
「自動車の販売」「食品の販売」「出版物の販売」「システムの販売」など、業種は何でも良いのですが、必ず販売の文字を入れることを忘れないようにしましょう。
現在、販売業務を行っていなくても、「販売」という2文字は将来のために必ず入れておくようにしましょう。
正直に現況だけを書いてしまうと、後になって困ることになります。
まとめ
定款は会社の憲法とも言える、会社の基本ルールを定めたものです。
銀行は、初めて融資取引を行う企業に対しては、定款の提出を要求し、この定款を見て、どのような業務を行っているのか、何の業種なのかを判断するため、ここで不備があると会社の実態がどうであれ、銀行の会社への解釈は実態の会社とは異なるものになってしまうこともあります。
創業時に定款の作成に失敗してしまうと、その後の変更で再び時間と費用がかかってしまいます。
このため、創業時の定款の作成には十分注意して、できれば司法書士や弁護士などのプロに依頼したほうがよいでしょう。
いずれにせよ、創業時に失敗しない定款作りはかなり重要です。
また、審査的にみると、会社の目的欄には必ず「販売」という文字を入れておくことで、運転資金の融資が受けやすくなるというメリットがあります。
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