納税資金のためにお金を借りることは可能?
一般納税でも決して気軽な支払いといえないのが税金です。
会社員の方であれば、毎月の給料から税金は源泉徴収されるので、納税の心配はそれほどないかもしれませんが、会社員以外の人は税金の支払分のお金を手元にとっておく必要があり、いざ納税時期になると本来とってあるべき納税資金が手元にないということも珍しいことではありません。
特に個人事業主や投資家は、高額な税金を一括で支払う必要があります。
また、手元に納税分に相当するお金が現金があっても、それは運転資金分としてキャッシュフローを安定させる目的として保有している資金であれば、そのお金を使ってしまったら会社を回していくことはできません。
手元に税金を支払う資金がない場合に納税を目的としてお金を借りることはできるかどうかを見ていきましょう。
この記事はこんなひとにおすすめ
この記事は以下のような人におすすめの記事になります。
- 納税するためのお金がない人
- 納税資金を借りる方法を知りたい人
- 納税資金を借りる際の審査基準を知りたい人
納税資金を借りる方法について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
目次
納税資金が足りない!どうすればいい?
毎年の決算の後にやってくるのが納税です。
個人事業主の方であれば確定申告の際に税金を納めなければなりません。
黒字を出している企業などであればその額も大きくなってきます。
しかし帳簿上で黒字決算だったとしても、売掛金を回収するタイミングなどもありますので、必ずしも利益分が純粋に利用できる現金として手元にある訳ではありません。
納税の支払い分についてお金がない場合には、借金をして納税するという方法をとっている人が多いのが現実です。
お金を借りるというと、経営に行き詰まっているようなイメージですが通常の借入れとは異なり納税分での借入れであれば、マイナスのイメージを持たずに金融機関に借入れの申込みをすることができます。
本決済納税だけでなく中間納税でも借入OK
中間納税とは、事業年度開始から6ヶ月のところで申告し納税を行う方法です。
年に1回の納税の場合には、納税額が大きくなりすぎてしまう場合があるので、納税者の負担軽減を目的として中間納税は行われます。
年に1回どかっと税金を払うよりも、半年の決算分で税金を払った方が企業の資金繰りがしやすくなるのです。
税金支払資金を銀行などから借りる場合には、本決済納税だけでなく中間納税支払資金を借りることも可能です。
納税資金を借入できるところとは
納税時期がある程度分かっていて、なお且つ時間に余裕があるのならば銀行からお金を借りるのが基本です。
銀行では「納税資金融資」を取り扱っているところがありますので、そのような金融機関にローンの申し込みを行うといいでしょう。
時間的に余裕がない場合には、ノンバンクでの「ビジネスローン」でも活用可能です。
なお、銀行から納税資金を借りる場合には、納税の期日に遅れる前に必ず申し込むようにしてください。
詳しくは後述しますが、期日をすぎてしまうと、銀行の納税資金の審査は通過することができなくなってしまいます。
それではそれぞれの方法について詳しく解説していきます。
銀行の納税資金融資
納税資金融資とは、銀行が取り扱っている商品のひとつで、主に個人事業主や投資家が納税資金として支払うための融資サービスになっています。
ふつうに考えて融資を申し込みするとなると、「企業経営が厳しいから申込みをしていると思われるのではないか」と二の足を踏んでしまいますが、あくまで目的は納税のためなので意外と気銀行側にはポジティブな印象を与えるのです。
納税する分だけ黒字決算になっているという証拠でもありますので、企業経営の悪化を勘繰られるということはありません。
納税資金融資は通常の貸付けと異なり、手形貸付けになりますので返済期間は6か月と短期間なのが特徴です。
そのため申込み前に一度資金繰り表で、現金で支払った場合と納税資金融資を活用した場合の2パターン計算をして、どちらがより負担が少ないのかを確認しておくといいでしょう。
目的がハッキリしている分、審査が比較的とおりやすいというメリットもあります。
なお、銀行融資の際には納税証明書の提出が必要になることが一般的です。
納税資金を申込む時にすでに納税の機嫌がすぎてしまっていると、納税証明書が発行できません。
納税証明書が発行できないと銀行から事業資金融資を受けることは著しく困難になってしまいます。
税金を払うためのお金を借りるのであれば、期日前に審査を受けるということだけは絶対に覚えておくようにしましょう。
ノンバンクのビジネスローン
ビジネスローンとはその名のとおり、事業者向けのローンになります。
納税や事業拡大資金調達まで、幅広くサポートをしています。
ビジネスローンは銀行やノンバンクまで販売が展開していますが、通常の借入れよりも少し金利が高めに設定されているのが特徴です。
しかし融資審査までの期間が短くなっていますから、急ぎ必要である場合には便利なサービスです。
ノンバンクのビジネスローン は事業資金であれば基本的には使い道が自由です。
そのため借りたお金を納税目的でも使用することができます。
金利は15%〜18%と高金利になっていますので、長期間借りることはおすすめできませんが、納税資金のような短期間の利用であれば使用してもそれほど問題ではありません。
金利が高い分、銀行の審査よりもかなり審査基準はゆるくなっていますので、銀行融資の審査に落ちた場合や、銀行の融資を待っていたら時間的に間に合わない場合に活用するとよいでしょう。
なお、ノンバンクのビジネスローンはほとんどの場合で銀行融資のような納税証明書の提出が不要です。
このため納税期限をすぎてしまった場合でも、ノンバンクのビジネスローンであれば問題なく納税資金を借りることができる可能性があります。
納税資金の借入のポイント
納税資金を借りる場合には、銀行の審査担当者などを納得させるためのポイントがいくつかあります。
- 申込のタイミング
- 借入額
- 返済期間
これらの借入のポイントをよく理解した上で申込をするようにしてください。
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
納税資金の借入タイミング
前述したように、納税資金の審査は納税期限がすぎてしまったら非常に審査に通過しにくくなってしまいます。
申込をするタイミングは金額が確定してからできる限り早い方がよいでしょう。
納税資金として借りられる額
銀行融資というのは申込時に申告した目的以外には使用することはできません。
資金使途が「納税」なのであれば、借りることができる金額は消費税や法人税などの納税金額のみとなります。
銀行は確かに融資金が納税に使われたかどうかの確認のために納税の領収書の提出まで要求してくることもありますので、必要以外のお金は絶対に借りずに借りたお金は全額納税に利用するようにしてください。
納税資金の返済期間
納税資金の返済期間は、次の税金の支払期限が到来するまでです。
半年に1回の中間納税であれば、次の納税時期が到来する6ヶ月以内の融資となりますし、1年に1回の納税であれば1年以内の融資となります。
これ以上長い期限になってしまうと、次の納税期には昨年分の納税資金の返済金と今年の納税資金が必要になってしまい、返済原資がなくなり企業の資金繰りがおかしくなってしまう可能性があります。
このため、納税資金の返済期間は当該税金の翌期分の支払期限が到来するまでの間となります。
なお、ノンバンクのビジネスローンで借りる場合には使い道は自由ですので、借入金額も返済期間も自由に設定することができますが、翌年分の税金の支払いのことまで考慮して計画的に借入をするようにしてください。
相続税の納税資金に困ったときの対処法
多額の納税が必要になるのは何も法人だけの話ではありません。
通常確定申告を行わないサラリーマン世帯にも必要になってくる場面が現れます。
その多くは親などの遺産を相続した場合です。
相続した金額が大きければ大きいほど、納税の金額も上がってきます。
また相続税は相続して10か月以内に一括で支払わなくてはなりません。
相続税の非課税枠は3,000万円+(600万円×法定相続人の数)になりますので、奥さんと子供1人を残して亡くなった場合には、4,200万円しか非課税枠がありません。
このため、少し高額な不動産を残して亡くなった場合には、非課税枠を超えた分が相続税の課税対象になってしまうことは決して珍しい話ではありません。
不動産を相続した場合には、現金ではありませんので、相続税として支払う現金はどこかから用意しなければなりません。
相続税の納税が発生した場合には、一体どうしたらいいのかを見ていきましょう。
所有している不動産を売却
相続した財産の中に不動産が含まれ、活用の予定もない場合ですと不動産を担保にして納税資金を借入れするケースがあります。
ただし不動産を担保にした場合、定期預金など金額が流動しない担保とは異なりますので、どうしても金利が高くなったりや返済期間が短く設定されてしまうというデメリットも存在します。
不動産の場合ですと、必ず期間内に希望金額で売却されるとも限りませんし、何らかの拍子で土地の値段が暴落するかもしれないというリスクを抱えているためです。
そのため不動産を担保にして貸付を希望する場合には注意が必要になってきます。
また、不動産担保ローンで担保として取り扱うことができる不動産は、首都圏の不動産のみとなっている場合が多く、流動性が低い地方の不動産ではそもそも不動産担保ローンを利用することができない可能性もあります。
不動産を担保にしてお金を借りることができない場合には、相続人が相続した不動産を売却し売却金の中から相続税を払うという方法もあります。
ただし、今は地方部などは著しく不動産の流動性が低いので、不動産を売却しようとしても、相続税の支払期限である相続から10ヶ月以内に本当に売却することができるかどうかは非常に不透明ということができるでしょう。
相続税支援ローンも検討
不動産担保ローンや不動産の売却によって相続税の資金を用意することができない場合には、銀行の「相続税支援ローン」という商品を活用するという方法もあります。
すべての銀行で対応している訳ではありませんが、不動産を担保に入れたくない、または担保としての価値がない、しかし相続税の支払いが厳しいという場合であれば、「相続税支援ローン」と銘打っている相続税向けの融資サービスを行っているところも存在します。
相続税支援ローンは無担保ローンですので、不動産を担保に入れたくない人や担保価値の不動産を所有していない人でも相続税の納税資金を借りることができてしまいます。
この商品を活用すれば、最長で約20年間でのローン契約が可能ですので毎月無理のない金額を返済していくことができますし、相続登記などの司法書士費用や税理士費用も併せて借りることが可能になります。
安定した収入があることが、申込み条件になっている場合は多いのですが、相続した人が高齢で既に定年をしているのであれば、連帯保証人をつけての審査申込みになる可能性もあります。
申込み前に一度条件や詳細を、銀行に確認しておくことをおすすめします。
この他、使い道自由なカードローンやフリーローンでも相続税の支払いのための資金を借りることもできますが、カードローンやフリーローンで借りることができる金額は100万円〜200万円程度が限度ですので、高額な相続税の支払いには対応できない場合もあります。
納税資金の借入に関するQ&A
納税資金に関してよくある質問をまとめてみました。
①日本政策金融公庫でも納税資金は借入できる?
日本政策金融公庫には納税専用の資金はありません。
ただし、一般の運転資金を借りれば、運転資金から納税のための資金として利用することも可能です。
②個人事業主でも税金支払いのための融資は受けられる?
税金支払いのための短期資金を受けることは個人事業主でも可能です。
また、通常の運転資金やビジネスローン などでも税金を支払うことができますし、銀行のビジネスローンに関しては個人事業主専用の資金となっている場合も多いので、法人よりも個人事業主の方が納税資金を借りる方法は多いと言えるかもしれません。
③不動産担保ローンは納税資金として使える?
不動産担保ローンは担保不動産の評価額の範囲内で借りたお金であれば基本的に借りたお金を何に使用しても自由なローンです。
したがって、不動産担保ローンで借りたお金は納税資金として利用することも可能です。
④信用保証協会の保証付き融資で納税資金か借りられる?
納税のための資金をどのような形で融資をするのかは銀行の方針や企業の経営状態によって異なります。
「プロパーで融資しても問題ない」と銀行が判断するのであれば、信用保証協会の保証をつけずにプロパーで融資をする場合もありますし、銀行の判断によっては信用保証協会の保証をつけることもあります。
一般的に納税資金は、極度内手形貸付という方法で融資されます。
極度内手形貸付とは、限度額の範囲内で自由に手形貸付を借りることができるという方法で、納税資金はこの極度内(限度額の範囲内)で融資されることが一般的です。
そして、この極度(限度額)に対して信用保証協会の保証をつけることはよくあり、一度枠を作成してしまえば、枠の期限内はいつでも信用保証協会の保証付融資を受けることができます。
⑤社長が市民税を滞納していても納税のための銀行融資は受けられる?
経営者が「所得税」や「市県民税」などの税金を滞納している場合に融資を受けることができるかどうかはケースバイケースと言えるでしょう。
法人融資においては経営者が連帯保証人になるのが一般的です。
しかし、連帯保証人の納税証明書の提出まで求めるかどうかは銀行の方針や融資を受ける商品によっても異なります。
経営者の納税証明書の提出が必要なローンにおいては社長が納税を滞納していた場合には融資を受けることはできません。
しかし、経営者の納税証明書の提出までは必要ないローンにおいては法人さえしっかりと納税していれば融資を受けることは可能です。
心配な方は事前に銀行に「申込時に必要な書類を教えて欲しい」と確認しておきましょう。
まとめ
事業主が利益を出した場合や大きな相続を受けた場合には、多額の金額を納税しなくてはなりません。
もし期限内に税金を納めることができないと、追徴課税や場合によっては差押えの対象にもなってしまいます。
そのためあらかじめ、いくら納税をする必要があるのかを確認し、お金の工面をしていくことをおすすめします。
特に銀行からの借入によって納税資金の調達をする場合には、納税期限をすぎてしまったらお金を借りる方法は著しく少なくなってしまいますので、納税資金が手元にない場合には、できる限り早めに申し込むようにしてください。
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