いざというとき慌てない!知っておきたい介護の費用
親が高齢になると、介護のことが気になります。
だれが介護するのか、どこで介護するのか、仕事は続けられるのか・・・。介護にかかる費用も心配です。
後ほど説明しますが、介護は思った以上にお金がかかります。
途中で資金不足となって、介護サービスを受けられなくなると大変。
ここでは、いざというときに慌てないよう、介護の費用と賢い節約方法について、知っておきたいポイントを紹介します。
介護サービスの利用例と費用
読者の多くは、介護未経験の方でしょう。
「介護って、何にお金がかかるのだろう?」と思われるのではないでしょうか。
具体的なイメージを持っていただくために、事例を紹介します。
「Aさんは80歳男性、妻に先立たれ、現在はマンションで一人暮らしです。 47歳になる会社員の息子は離れて暮らしていて、Aさん宅までは2時間程度かかります。 Aさんは、昨年、病気が原因で手術し3週間入院しました。 退院後は車椅子が必要となり、要介護3の認定を受けました。」 |
要介護3は、立ち上がりや歩行、トイレ、入浴、着替えなどで介助が必要な段階です。
まずAさんには福祉用具が必要です。主要な用具はレンタル可能。
レンタル料金ですが、厚生労働省が用具別に上限金額を定めています。
Aさんは、3つの福祉用具をレンタルしました。
金額は月当たりのレンタル料金例です。
- 介護ベッド・付属品: 12,000円
- 車椅子・付属品: 8,000円
- 歩行器: 4,000円
土曜日は息子が世話をしに来ますが、日曜~金曜は介護サービス事業者に訪問介護をお願いする必要があります。
掃除・洗濯や買い物の生活支援でホームヘルパーを週2回、トイレや着替え、散歩などの身体介助で介護福祉士に日曜~金曜の毎日、うち2日は清拭(タオルで体を拭いてもらう)、1日は入浴もお願いすることにしました。
また、健康状態や手術後チェックのため、医師に週1回の訪問看護をお願いします。
これらのサービスは、単価が厚生労働省によって決められています。
地域で差がありますが、ここでは標準地域の料金を使います。(東京や大阪などの都市地域では1割強高くなります)
- 生活支援(掃除・洗濯・買い物等): 2,230円(1回45分)×週2回
- 身体介助(食事・排泄等): 3,940円(1回60分)×週6回
- 身体介助(入浴): 12,500円(1回)×週1回
- 身体介助(清拭): 8,750円(1回)×週2回
- 訪問看護(健康チェック):4,670円(1回30分)×週1回
合計額は1カ月当たり275,080円です。大きな額で驚きましたか?
安心してください。
介護保険により、全額を負担するわけではありません。
介護保険は、要介護度別に1カ月当たりの支給限度額が決められていて、この範囲内の利用であれば負担額は原則1割か2割です。
負担割合は本人の所得によって決まります。
現役世代と同程度の所得がある場合は、3割負担となるケースもあります。
Aさんは要介護3なので、上限金額は269,310円。これを超えた分は全額自己負担です。
Aさんの負担割合が2割とすると、53,862円+(275,080円-269,310円)=59,632円が実際の負担額となります。
長期化すると負担は高額に
公益財団法人生命保険文化センタ-の調査によると、毎月の介護費用の平均は78,000円とされています。
Aさんの例で見た介護保険が利用できるサービスの他に、実際には、訪問理容や配食サービスなどの介護保険が利用出来ないサービス、おむつや各種ケア用品の購入なども必要となるためです。
これらは全額自己負担となります。
ところで、介護はどのくらいの期間続くのでしょうか?
同センターの調査によれば、平均の介護期間は4年7カ月とのことです。
仮に、毎月の費用が78,000円として、介護が4年7カ月つづくとしましょう。
総額は429万円にもなります。
高齢者向け施設の費用
さて、Aさんに戻りましょう。
「訪問介護を利用して自宅介護をしばらく続けていましたが、息子の心配は無くならず、毎週末の訪問も負担大きいということで、Aさんとも相談し、施設に入ることにしました。 まず公的な施設を調べましたが、入居待ち人数も多く入れる時期が分からない、とのことだったので、民間の介護付き有料老人ホームを検討することにしました。」 |
施設に入る場合、いくらかかるのでしょうか?
一口に高齢者向け施設といっても、様々なタイプがあります。
代表的なタイプについて、1名で入居する場合の料金の目安を示しておきます。
入居時費用は、家賃の前払いです。
一定期間分を全額前払いすることで、終身にわたって居住することができる施設もあります(終身前払方式)。
月額費用は、家賃(終身前払方式の場合は不要)、管理サービス費、食費などです。
月額費用に、介護サービスの費用が含まれている施設と、含まれていない施設があるので注意が必要です。
含まれている場合は、要介護度が同じ限りは入居期間中の月額費用は原則変わらない、と考えて構いません。
含まれていない施設の場合は、介護が必要になると、介護サービス事業者と個別に契約して必要なサービスを利用することになります。表の月額費用に加えて、利用した分の自己負担が追加でかかります。Aさんが現在自宅で介護サービスを利用しているのと同じです。
公的施設の多くや介護付き有料老人ホームは含まれている施設ですが、それ以外の、サービス付高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームは含まれていない施設です。
介護の費用を節約する方法
介護には、お金がかかることが理解いただけたと思います。特に長期化すると何百万円になる可能性があり、少しでも節約したいものです。
介護の費用を節約する方法を2つご紹介します。
一つ目は、介護保険を「出来るだけ早く」利用開始することです。
これまでの説明で、介護保険の利用が、費用負担を軽くする鍵であることはお分かりいただけたと思います。
では、介護保険はどうやって利用するのでしょうか?介護が必要と思ったら、すぐに利用できるのでしょうか?
介護保険を利用するには、要介護認定を受けていることが条件です。
市区町村の役所に介護認定申請書を提出し、所定の調査や審査を経て初めて認定がされます。最低でも1カ月程度かかります。
さらに、ケアマネージャーにケアプラン(介護計画書)を作成してもらって、初めて介護保険が利用できます。
それまでは、原則として全額自己負担です。
親に介護の不安が出てきたら、要介護認定の申請を出来るだけ早く行ってください。
二つ目は、市区町村の福祉サービスを賢く利用することです。
介護保険では対象外のサービスを、市区町村が独自に提供していることがあります。おむつ費用補助や杖支給の他、訪問理容サービスや配食サービスの低価格での提供などです。
こういったサービスを賢く利用することで、毎月の介護費用を節約することができます。
ここで紹介したいのが「地域包括支援センター」です。
高齢者の暮らしをサポートするために市区町村が運営する施設で、介護認定申請の手続きや、市区町村独自の福祉サービスの紹介もしてくれる頼りになる存在です。
親の住所地を担当する「地域包括支援センター」を是非確認しておいてください。
親の経済状態を確認しよう
介護で、最も辛くて難しいことは「先が見えない」ことです。
数カ月なのか、1年なのか、3年なのか、もっと長くなるのか。
長期化すると、精神的にも体力的にも消耗します。費用も大きな負担となる可能性があります。
まだまだ元気なうちに、資産や年金、加入している保険内容を親から確認しておくことをお勧めします。
資金不足になったからといって、途中でやめることは出来ません。長期化する可能性も考えて、計画的にサービスを利用するためにも、親の経済状態を知っておくことは大事です。
とはいえ、子供からすると「遺産目当てみたいで聞きづらい」という方も多いですし、「まだ元気なのに、そんな話はしたくない」という親が多いことも事実です。
親戚の法事、お盆や年末年始などで家族が集まる時は、話をする良い機会かもしれません。終活セミナーや相続セミナーも最近は頻繁に行われています。そういった話題もきっかけになるかもしれません。
ファイナンシャル・プランナーの活用も一つです。
老後資金についての相談ということで、介護費用や施設の費用などを含めて説明を受け、その中で、「万が一に備えて、資産や収入、保険などを家族で共有しておいてください」と親に伝えてもらう。専門家からの話であれば、親も受け入れやすいかもしれません。
いわかみFP事務所代表
(東京都新宿区)
岩上 敏秀
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。
金融機関とコンサルティング会社に合計30年在籍後、FPとして独立。
40代・50代のミドル世代と60代以降のシニア世代に向けた、「(親の)老人ホームえらびサポート」、「リタイアメント/セカンドライフ・プランニング相談」、「一人一人に適した資産運用アドバイス」を得意とする。
特に「老人ホームえらび」では、自身の親の老人ホーム入居・介護経験を踏まえ、資金計画から候補施設選び、契約や入居サポートまでの全てを、特定の施設と繋がりのない中立・公正な立場から、一貫してサポートしている。
タグ:お金の知識
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