給料差し押さえ中に転職したらどうなる?
「返済ができなくなると最終的には給料を差押えられる」という話を、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
これは脅しでもなく、実際に給料が差押えされますが、差押え中に転職し、なおかつ新しい転職先を借りている人に知らせなかった場合にはどうなるのでしょうか。
そのまま逃げ切れるのか見てみましょう。
給料が差し押さえられるってどんなとき?
給料が差押えられてしまうと、単純に手元に入る予定の給料が大幅に減額しますから生活がますます苦しくなってしまいます。
そして、何より勤務先にも差押えの事実がバレてしまいますので、非常に仕事もやりにくくなってしまいます。
できる限り避けておきたいものですが、そもそもどんなことをしたら給料差押えまでに発展してしまうのか見ていきましょう。
カードの支払いやローンの返済を長期間延滞した
長期の延滞をしたときに、金融機関が取る最もポピュラーな手段が、借金返済未払での給料差押えです。
もちろん1回程度の延滞では、そこまでの事態にはなりません。
ポイントは長期延滞であることです。
どこまでを長期とみなすのかは借りていた金融機関にもよりますが、早いところだと延滞後2か月程度で訴訟に踏み切る金融機関も存在します。
つまり2回連続延滞した時点で、裁判所に訴えられるということです。
長期延滞という響きから、年単位での延滞なのかと勘違いしてしまう人が多いのですが、早ければ2か月後から給料差押えの手続きが開始されてしまいます。
税金や社会保険料を払わなかった
次に多いのが税金未納です。
年金や社会保険料などが対象ですが、社会保険料に関しては個人というよりも事業主が未払だったケースです。
「別に事業主ではない」という人には、差ほど関係ありませんので安心してください。
ただし現在勤務している会社を退職し、社会保険証を任意継続にしている場合には、社会保険料を未納になれば督促よりも、単純に資格を喪失し無保険の状態になってしまうので注意が必要です。
給料が差し押さえされるまでの流れ
借金や税金未納で給料が本当に差し押さえになってしまうことは、理解いただけたと思います。
このような事態になってしまうと、気になってくるのが、「じゃいつどのタイミングで給料差し押さえになってしまうのか」ということではないでしょうか。
また懐事情によって、「借金も税金もどちらも滞納している」という人もいることでしょう。
実は同じ給料差押えであっても、どの返済が遅れているのかで、差し押さえられる内容が変わってきます。
そのためまずは、差し押さえられるまでの流れと、どの財産部分をいくら差し押さえられるのかを、ある程度事前に把握できていれば回避できる可能性が残っています。
それでは、給料が差し押さえられるまでの流れ、そして差押え対象になるものは何なのかを詳しく見てみましょう。
ローンの返済延滞の場合
ローン返済を延滞していた場合ですが、まず従来の返済日に入金がなかったら金融機関から電話連絡もしくはコンビニ払い票が自宅に届きます。
この時点ではまだ「ついうっかり」の未払である可能性も高いので、金融機関からの督促もソフトな感じでされます。
しかし返済予定日を過ぎても連絡が付かない、再振替やコンビニ払い期限にも応じない、というときにはどんどん自宅に届く書面も重々しいものに変わっていきます。
そして先に話したように、早いところで滞納から2か月程度で「もう裁判所に訴えます」という旨の書面が届くようになり、それでも放置していた場合には裁判所からの通知が届く、というのが一般的な流れです。
金融機関によって多少内容は前後しますが、多くはこのような流れで裁判まで発展します。
そのため「いや裁判とか脅しでしょ」と放置することは、絶対にやめておきましょう。
差し押さえの範囲(民事執行法)
ローン返済滞納での給与差押えは、給与全額ではありません。
給料の4分の1までとなります(民事執行法第152条)。
例えば給料手取りが20万円であったならば、差押えられる金額は5万円ということです。
「まあ苦しいけれどもその程度ならなんとか…」と、思う人もいるかもしれません。
しかし、そもそもの給料が高い人は差押えに発展するまでに、何らかのアクションが取れていた可能性が高いです。
そのアクションすら起こすことができない人というのは、支払う気持ちはあるものの、どうしても月の給料が少なく支払いが困難である場合が多いでしょう。
月の給料がいくらであっても必ず4分の1は引かれてしまうので、中には「満額をもらっても、生活できないのにこれ以上引かれたら…」という人も珍しくはありません。
余りにも生活ができない程度の金額しか残らないときには、「差押え禁止の拡張(民事執行法153条)」が適用できる可能性があります。
ただしこの適用は必ず、自分自身で行わなくてはいけません。
誰かが自然に手を差し伸べてくれる訳ではありませんので、必ず自身で行動を起こしましょう。
税金滞納の場合
税金や国民年金、国保の未払の流れですが、まずローンと同じく支払日から1日でも過ぎれば立派な滞納扱いになります。
その後自宅に督促状が届きますが、目安として本来の支払日から20日程度で届くようになっています。
ローンは結構すぐに督促状を出しますが、税金は督促状が手元に届くまでに時間がかかります。
また電話連絡なども入りますが、ローン会社の督促と比較すれば、緩やかなものです。
そのため「え?案外何も言ってこないな」と、そのまま放置してしまうこともあるでしょう。
しかし法律上では督促状を送付した10日後から、差押えしてもOKとなっています。
そのため水面下では、財産調査などが着々と行われています。
そしてある日突然自宅に調査員がきて、財産になるものを次々と差し押さえていきます。
給料に関しては銀行振込である場合が多いので、既に銀行へ預金口座凍結、差押えの準備に入るのもこのころです。
その後差し押さえられた財産は競売にかけられ、税金未納分に充てられます。
どのタイミングで差押えまで執行されるのかも、居住する市区町村で変わってきますが、執行前に郵送される「差押え予告書」に記載されている期限までに支払わなければ、いつ執行されてもおかしくありませんので注意をしてください。
そのため税金に関しても年単位ではなく月単位での滞納で、差押えまで発展してしまいます。
差し押さえの範囲(国税徴収法)
税金未納での差押えの範囲ですが、ローン同様に給料ですと4分の1までです。
ただし預貯金に関しては全額差し押さえの対象になるので、口座が凍結、差し押さえになることも十分に考えられます。
また給料の他、車や不動産、高額な家電を所有しているのであれば、それも差押えの対象です。
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給料差し押さえされるデメリットは?
給料差し押さえになると、人間は誰でも自暴自棄になってしまうものです。
「もういいよ、手取り金額が減るだけでしょ」と中には開き直る人もいますが、給料を差押えられることで生じるデメリットはこれだけではありません。
それでは、給料を差し押さえられることで、生じるデメリットは何かを見てみましょう。
会社に借金などがバレて信用がなくなる
最大のデメリットは、「会社バレしてしまう」ということです。
何も金融機関や市役所などが、わざわざ会社に電話して「そちらの従業員の○○さんが、滞納しているので差押えしますよ」など連絡が入る訳ではありません。
給料差押えまでの流れを見て分かるように、必ず裁判所を介しています。
裁判所が認めた差押えなのです。
したがって、裁判所から勤務先の総務もしくは、経理担当者に通知が届くようになっています。
従業員の給料差押えの経理処理なんて、しょっちゅうあるものではないので、多くの人は上司に確認を求めます。
そこで噂が広まり、結果会社での勤務環境が悪くなってしまうのです。
まだ大企業であればさほど噂も立ちにくいかもしれませんが、従業員が少ない会社だと針のむしろになる覚悟は必要でしょう。
差し押さえを理由に解雇はできない
差押えを理由に解雇してもらえれば会社都合扱いで、もらえる失業保険の日数や金額も変わってくるのですが、残念ながら差押えだけが理由で解雇にはなりません。
そのため「ふだんから素行が悪かったからこれを機に解雇だ」という判断もできませんので、特に事業主は注意が必要です。
次の就職先も見つからない状態ですと無職になり、いよいよ生活が苦しくなってしまうのは明らかですので、どんなに噂が立って職場にいづらくなっても解雇にはなりませんので、自分の意思で今後もその会社に勤務するのかどうかを決めなくてはいけません。
給料が減って生活が苦しくなる
先に話したように、差押えは額面からの4分の1ではなく、手取り金額からの4分の1です。
そのため元々給料がさほど高くはない人にとっては、死活問題となってしまいます。
支払いができないからと新たに借入を行ったとしても、現在の信用情報は長期滞納である事実が記されていますので、正規の金融機関で貸付を行ってくれるところは、皆無と言えるでしょう。
給料差し押さえ中に転職するとどうなるの?
差押えは手取りの4分の1ですので、1回2回ですべて完済できるような金額ではありません。
人によっては長期にわたることもあるので、その期間内に転職をすることも可能性として考えられます。
しかし、もし給料差押えのさなかに転職をした場合は、退職金や失業保険、新たな転職先でも差押えは継続してしまうのか疑問に思う人もいるでしょう。
転職した事実を誰にも告げなければ、うまく差押えを回避することは可能なのかも併せて見てみましょう。
退職金も差し押さえ対象になる
現在勤務している会社を退職するときに、退職金が出た場合には、この退職金も残念ながら差押えの対象になってしまいます。
差し押さえられる退職金の金額は、月額の給料と同じく手取りからの4分の1です(民事執行法152条2項)。
例えば退職金が100万円だとしたら25万円差押えられるので、手元にくる退職金は75万円ということになります。
ただし勤務先が中小企業退職金共済に加盟し、この中小企業退職金共済で退職金を渡すのであれば、ローン返済分の差押えは逃れられます。
ただし国税滞納などの差押えは、対象となるので注意しておきましょう。(中小企業退職金共済法20条)
失業保険は差し押さえできない
退職し、しばらく失業保険をもらうことになれば、その失業保険に対しては差押えができないようになっています。
ただし失業保険は手渡しではなく、銀行口座に振込をされます。
例えば差押えられた理由が、税金であったのであれば失業保険が口座に振り込まれた時点で、失業保険から預金と扱いが変わります。
失業保険を差し押さえることは禁じられていますが預金はOKですので、実質失業保険を全額差押えられるという事態も考えられますので気を付けてください。
転職先でも差し押さえされるの?
転職先でも前職同様に差し押さえが発生するのか、非常に不安なところですが、結論から言うと差し押さえられます。
相手が金融機関であれば、しばらくはどうにかごまかせる可能性が出てきますが、遅かれ早かれ新しい勤務先はバレます。
そこで再度強制執行の手続きを取られ、新しい勤務先でも給料差押えになります。
税金滞納での差押えであれば、新しい勤務先が源泉徴収票や給料支払い報告書などを作りますから、そこから判明しすぐに差し押さえが再開されます。
面接時に給料差押えの事実を伝えなかった場合には、やはり新しい職場でも居心地は悪くなってしまうものです。
給料差し押さえを回避するには?
一度給料差押えの手続きを取られると、金銭面だけではなく精神的負担も大きくなってしまいます。
特に税金関係での差押えですと、預金口座まで自由に出し入れできなくなるので、非常に厄介です。
そのためできる限り、差押えになる手前で対処していくことが重要になってくるのです。
払えないほど滞納する前に対策を採る
ローンにしても税金にしても、「このままじゃ支払い困難だな」という予兆は必ずあると思います。
払えなくなる前に事前に相談を行いましょう。
まだ滞納をしていない状態ですから、事情を説明し、いくらなら支払いが可能なのかも併せて伝えるといいでしょう。
事前に相談にくる人に対し、無下に扱うところはありません。
まず必ず行うことは相談、そしてこまめな連絡です。
個人再生か自己破産手続きをする
特に給料が少額な人であれば、法的に借金を整理する方法を考えていきましょう。
給料を差押えられてしまったあと、本当に生活ができるのか、仮に生活ができたとしても他社への返済は可能なのかなどよく考えてみるといいでしょう。
「どうしても家や車は手放したくない」ということならば、自己破産ではなく個人再生を適用すれば住宅や車は引き続き所有できます。
ただし税金滞納分は、仮に自己破産をしても引き続き請求が入ります。
免除されることはありませんので心してください。
そのためローンと税金ダブルで滞納している人ならばまず借金をクリアにし、今まで借金返済に充てていたお金を、税金支払いに充当させるという方法が有効ではないでしょうか。
まとめ
給料差押え中に転職をしたとしても、引き続き新しい職場でも差押えの手続きに入られてしまいます。
この情報社会で逃げ切れる可能性は、ゼロに近しいと思っておいた方が賢明です。
ローンも税金も滞納している状態だと、ほぼ手取りの給料はなくなってしまいますので、まず借金問題から解決していくことをおすすめします。
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