車の名義貸しで起こりうるリスクを徹底解説!
友人などが車を購入する場合に、名義貸しをお願いされるケースがあります。
「お金は負担しなくて良い」、「自動車ローンの返済は自分でするから名義だけ」などと言われ、断りにくいからと、安易に承諾するのにはリスクがあります。
車購入を例として、名義貸しのリスクを解説します。
目次
名義貸しとは?
そもそもですが、名義貸しがどういったものかを良く理解されていますか。
最初に名義貸しの意味から説明しておきましょう。
名義貸しとはその名称の通り、「名義」を他人に貸すことです。
車購入時の名義貸しであれば、本来、購入しようとしている方の代わりに所有者として、また、購入のための自動車ローンの借入人として名義を貸すことを指します。
あくまで名義だけですので、車を実際に使用するのも、ローンの返済を行うのも、名義貸しを依頼してきた方がご自身で行うことになります。
名義貸しは「名前を貸すだけ」と言われると、大きな問題は無いようにも感じます。
しかし、契約の当事者になることには注意が必要です。
名義貸しについてもう少し詳しく解説しましょう。
名義貸しが利用されるケース
名義貸しの目的は、本来、車を購入しようとしている友人などがご自身では審査に通らないため、審査の通りそうな他人に名義人になってもらうことにあります。
例えば、過去にクレジットカードやカードローンの返済が出来ず、ブラックリストになってしまっている方などは新規の融資を受けるのが非常に困難です。
こういった方は銀行などの自動車ローンだけでなく、自動車販売店のローンにも通りにくく、自己資金が無いと自力で車が買えません。
そのため、審査に通りそうな友人などに代わりにローンに申込してもらい、単独で借入が出来ない方の代わりになってもらうのが名義貸しということになります。
ただし、ここで注意しておきたいのは、名義貸しを依頼してくる友人が本当に信用できる方なのかということです。
そもそも、名義貸しが必要になるということは、過去に金融事故を起こすなど、金銭支払いの能力が相当に低い可能性があります。
さらに、悪質な方であれば、最初から自分で借入を返済するつもりが無いにもかかわらず名義貸しを依頼することもあります。
つまり、名義貸しだと言って自動車ローンを借りさせ、購入した車だけ持って逃げるようなことを考えているかもしれません。
口頭では、あくまで名義貸しであって、借金返済は自分で間違いなく行うと言われても、本当にその能力や意思があるのかは注意しておく必要があります。
車の名義貸しリスク
それでは今回のメインテーマでもある車購入のために名義貸しするリスクを確認していきましょう。
名前を貸すだけなどと簡単に考えていると、後で大失敗することもありますので注意が必要です。
借金を負うリスク
最初に考えられる大きなリスクは、多額の借金を負ってしまうリスクです。
自動車ローンなどを名義貸しで契約した場合、名義貸しした人と貸してもらった人との間でどのような約束が行われていたとしても、あくまで契約の当事者は名義貸しした人になります。
そのため、ご自身ではお金を借りているという認識が無くても、名義貸しによって借金を背負っていることになります。
その分、ご自身の事情で住宅ローンや、カードローンなどの新規借入を申込する場合、既存借入があるものとして扱われますので、審査にも悪影響を与える可能性があります。
加えて、名義貸しをお願いした方が借金返済をできなくなってしまって延滞になると、金融機関からの請求は名義貸しした方に対して行われます。
契約の当事者は名義貸しした人になりますので、ご自身に関係ないと断ることはできません。
さらに、毎月の借金返済を名義貸しした相手に任せていた場合、延滞となっていることに気づくのが遅れてしまう可能性もあります。
知らない間に2、3ヶ月も延滞となっていたなんてことになると、ブラックリストになる可能性があります。
一旦、ブラックリストになれば、その後延滞を解消しても、そこから数年は借入だけでなく、クレジットカードを作ることすら困難になってしまいます。
名義貸しにはご自身に関係の無い借金を負わされたり、知らない間にブラックリストになってしまうリスクがあることに注意が必要です。
事故などの責任
名義貸しによって車を購入して、車の所有者があなたになっている場合には別のリスクも存在します。
それは、対象となる車によって、名義貸しを受けた相手の方が事故を起こす場合です。
交通事故が起きたとき、運転者に責任があるのはもちろんですが、車の所有者にまで責任が及ぶ可能性もあります。
例えば、対象となる車の運行支配があるケースや、車から利益を享受していると認められると「運行供用者責任」を負う可能性があるのです。
なお、運行支配とは自動車の運転や走行をコントロールできる立場にある人のことを言います。
そのため、名義貸しによって、車の所有者があなたになっており、その車を友人や親族などに貸し付けていると見なされてしまうと、その車が起こした事故への責任を負う危険性があります。
特に、事故を起こした方が賠償責任などを果たせない場合、その責任全てを名義貸ししたあなたに押し付けてしまうことが懸念されます。
罪になる可能性
そもそもで言えば、名義貸し自体が罪になる可能性もあります。
本来、友人や知人、もしくは親族の方が車の所有者になるはずなのに、あなたが名義貸ししたことによって、事実でない名義が自動車登録や車検証などに記載されることになります。
このこと自体が罪になる可能性があります。
刑法第157条に「公正証書原本不実記載等」というものがあり、公務員に対して不実の申し立てを行って、誤った内容を記録・記載させた場合には、「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」になる可能性があります。
名義貸しは多額の借金を背負う可能性だけでなく、事故の責任や、そもそも名義貸し自体が違法であるなど、多数のリスクを抱える危険な行為であると覚えておきましょう。
借金は取り戻せる?
名義貸しによって自動車ローンなどを借入した場合で、貸した相手が支払いできないケースを考えてみましょう。
この時、自動車ローンの契約者自体は名義貸しを行った方となっていますので、銀行などの債権者は「名義貸し」という経緯に関わらず、契約者に請求します。
そもそも、名義貸し自体が違法行為ですので、名義貸しを理由に拒否することはできず、名義貸しした人は銀行へ返済せざるを得ません。
それでは、名義貸しを行った方は、代わりに借金返済を行って、損するしかないのでしょうか。
結論を言えば、名義貸しで負った借金は、本来の借入人(名義貸しした相手方)に請求できます。
こういった権利を求償権といい、他人の借金を代わりに返済した時に、後からその返済金額を請求することができる権利が発生します。
但し、請求は可能ですが、本当に回収できる可能性は低いと思った方が良いでしょう。
そもそも、名義貸しを依頼する人は資金的な余裕がなく、過去に借金を返済できずにブラックリストになっている可能性も高い方です。
さらに、名義貸しで車を購入しているにも関わらず、既に借金返済ができずに延滞させてしまっている状況となれば、いくら請求してもお金が無く、返済する資力が無いと想像されます。
そのため、現実的に請求できたとしても、「無い袖は振れない」ので、お金を返してもらえる可能性は低いと言えます。
まとめ
友人・知人や親族の方が車を購入する際に名義貸しするリスクについて解説しました。
「迷惑はかけない」などと言われ、安易に名義貸しすることは非常に危険なことです。
名義貸しをお願いする方とは、過去にも借金返済が出来なかった方である可能性が高く、信用力はかなり低いと考えられます。
さらに、名義貸ししていると、車購入時の借金を負担させられたり、車で起こした事故の責任まで押し付けられる可能性があります。
名義貸しは非常に危険な行為ですので、余程の事情が無いかぎり断りたいものです。
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