日本大使館で緊急事態発生でもお金を借りることはできない
海外留学や仕事の関係で海外に滞在する日本人が増えています。
しかし、国によっては治安が悪く犯罪や事故、金銭トラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。
このような場合に頼りになるのが日本大使館です。
日本大使館は自己の努力だけでは対応できない、かつ緊急な場合に適切な処置を行なってくれるところで、邦人の身の安全を確保してくれる存在です。
しかし海外でお金を盗まれた、これでは日本へ帰国する旅費がないという場合にお金を借りることはできるのでしょうか。
- 執筆者の情報
- 名前:梅星 飛雄馬(55歳)
職歴:地域密着の街金を30年経営
この記事はこんなひとにおすすめ
今回の記事は以下の人におすすめの内容です。
- 日本大使館でお金を借りられるといううわさは本当か気になる
- 海外で無一文になったときの対処法が知りたい
- 日本大使館で行ってくれることと行ってくれないことの内容が気になる
目次
日本大使館でお金を借りることはできない
インターネットの口コミ情報やブログでは、海外で金銭盗難の被害にあってしまい帰国する旅費まで失ってしまったときに、日本大使館に行ったらお金を貸してくれた、というような噂が流れています。
まるで日本大使館でお金を借りることができるかのような論調ですが、結論からご説明すると邦人が海外で金銭盗難にあっても、日本大使館が公的にお金を貸すことはありません。
日本大使館の仕事にはできることとできないことがあり、できないことのひとつとして宿泊費や滞在費を立て替えること、旅費を立て替えることはできないと公表しています。
さらに海外で事故に遭い病院に入院する場合の治療費、その他費用も一切立て替えることはできないのです。
「大使館で借りれる」の噂の真相
旅費などの立て替えができないのに、なぜ日本大使館でお金を貸してくれたという情報があるのか、それは大使館に勤める事務員が個人的にお金を貸してくれたという情報が、あたかも日本大使館でお金を借りられた、と拡大解釈されてしまったようです。
ちょうど帰りの電車賃がないとして交番に行ったらお金を貸してくれた、というのと同じです。
日本大使館は邦人の身の安全を確保する手助けをするのが仕事です。
お金がなくなったら日本大使館に行けば借りられるということはありません。
日本大使館は役に立たないなと思うかもしれませんが、それはあまりにも身勝手な考えですね。
冷たいようですが、海外でのトラブルは全て自己責任です。
そもそもお金については自己管理しなければならないもので、海外旅行で多額の現金を持ち歩いたために盗難被害に遭うのはリスク管理ができていません。
そのような現金の盗難を避けるためにも、クレジットカードや海外でも利用できるプリペイド型のVISAデビットカードなどがあるわけです。
海外旅行や留学では、常に現金や所持品の盗難のリスクを考えながら、仮に盗難にあったとしても対応できるようなリスク管理をしてください。
大使館でお金を借りれなくても適切に対応してくれる
日本大使館でお金を借りられないとしても、助けを求めに来た邦人を放置することはありません。
事件や事故の被害に遭った場合で、緊急を要すると判断されれば適切な対応によって関係各所への連絡、日本国内にいる家族や親族への連絡、または本人の要請によっては友人や知人への連絡方法についてどうすれば良いのか援助やアドバイスをもらうことが可能です。
お金をなくしてしまったという場合でも、邦人が自助努力によって日本国内にいる家族と連絡が取れないという場合、お金がないために食べるものも買えないという場合も、こちらの事情を考えてもらえます。
状況によって対応は異なりますが、日本大使館内にいる領事館が直接連絡を取ることや、外務省を通して家族や親族、友人や知人への連絡や送金、航空チケットの手配、金銭的な援助の要請を適切に処理してくれます。
海外でとくに困るのが病気やケガですね。
クレジットカードに海外傷害保険が付帯されていればクレジットカード会社と連絡することによって、入院費や治療費を支払ってくれることはありますが、海外傷害保険が付帯されていないと、一週間病気で入院しただけで300万円もかかってしまったという笑えない話もあります。
海外での治療費は日本の保険が使えないため、全ての費用において自己負担となりその額は半端なものではありません。
このような場合でも日本大使館は外務省を通じて家族や親族、友人や知人に通報するとともに現地の医師から病状の聴取を行なってくれます。
日本大使館は役に立たないなと思っている人でも、海外で誰にも相談できずに途方に暮れているよりはよほど心強い味方ですね。
大使館がない場合はどうする?
海外旅行中のいざというときに対応してもらえる日本大使館ですが、残念ながら国交が通じている国の中にも日本大使館がない国があります。
このような国に海外旅行や滞在をした場合、パスポートの紛失などをしても日本大使館が仲介して対応をしてもらえません。
もしも、大使館がない国でけがや病気、現金の盗難にあったとしても、自力で日本国内にいる家族や知人に連絡を取り、解決策を見つけなければなりません。
パスポートの紛失など家族や知人を通じて解決できない場合には、近隣国の日本大使館を頼ることになりますが、出国ができないため郵便などで連絡を取らなければならないので、日本大使館のない国に渡航するときには、特に注意してください。
大使館が仕事としてできないこと
日本大使館が邦人に対してなんでもしてくれる、なんでも助けてくれると思ったら大きな間違いです。
先ほども簡単に紹介しましたが、日本大使館は旅行費や治療費に関して直接貸付をしていません。
もちろん救助を求めて大使館に来た人を追い払うことはありませんが、お金が絡む事案でできないこととして次の仕事があります。
①お金をなくしても探してくれない
たとえお金でなくてもクレジットカードやVISAデビットカードなどの遺失物については探してくれません。
落とし物については現地警察に依頼するしかないのです。
可能性が全く無いとは言い切れませんが、海外で落としものが返ってくることは期待できないでしょう。
②個人的費用を立て替えること
これは前項でもご説明してある通り、たとえ金銭の盗難被害にあったとしても、自助努力では警察に被害届が出せないという場合、日本大使館は現地警察と連絡を取りながら適切なアドバイスをしてくれます。
しかし盗難被害によってお金を失ってしまったとしても、個人的な費用は立て替えてくれません。
それがたとえ航空チケット代、ホテルの宿泊費、病院の入院や治療費だとしても立て替えてをしてくれません。
③お金を盗んだ犯罪者の捜索
金銭盗難の被害に遭い、犯人を追いかけた結果住んでいる場所がわかったとして日本大使館に連絡しても、お金を盗んだ犯罪者の身柄を拘束することはできません。
当然ながら盗んだお金を返せ、ということも言えません。
日本大使館は警察ではありませんので犯罪被害については現地警察に依頼するしかないのです。
④民事上の金銭トラブルの相談
邦人が滞在先の国外で現地人との金銭トラブルによって、お金を騙し取られたとしてもそれを解決するための業務を行うことはできません。
日本大使館は業務として民事上の問題を解決する機関ではありませんから、日本大使館の領事に対して何とかしてくれよ、日本大使館だろうと泣きを入れても解決までしてくれることはありません。
ただし、どうすれば解決できるのかについての適切な連絡先についての相談は可能です。
同様に旅行代理店とのトラブルによって、帰国するための航空チケットが手元に届かないという場合や、航空会社自体が何らかの理由で帰国する便を欠航したとしても、その支払いを日本大使館が保証してくれることはできません。
⑤逮捕、拘禁された場合の通訳や弁護士費用など
邦人が海外で犯罪を犯し、現地の警察に逮捕されてしまった場合の弁護士費用や保釈金の支払い、通訳そのものをすることはできません。
これは直接日本大使館が個人的な費用を立て替えることができないということであって、決して放置してしまうものではありませんので、外務省を通じて適切な処置を行うことや直接日本大使館が日本国内にいる家族や親戚、友人や知人に連絡を取ることは可能です。
日本大使館は銀行や警察、病院ではないとの認識が必要
日本大使館の仕事は、海外にいる邦人への援助や適切な保護です。
現地でテロが発生したという場合は直ちに邦人の安否確認をするとともに、海外にいる法人の安否情報を国内にいる家族や親戚に外務省を通じて通報を行います。
このため、日本大使館はお金がなくなったときの銀行の役割を負っているわけではありません。
また金銭盗難の被害にあっても警察ではありませんし、体調が悪いからといって日本大使館で医療行為を行ってくれるわけでもありません。
日本国内に住んでいると何か困ったら役所や警察、その他機関に相談することは可能ですが、海外では全てにおいて自己責任が問われます。
日本人は何かと犯罪に巻き込まれやすく、金銭盗難やスリ、ひったくりの被害に遭いやすいと言います。
外務省ではホームページ上で海外渡航の注意喚起について情報を提供していますので、治安が悪いような海外に行く場合は、身の安全は自分で守るという覚悟で渡航することが重要です。
海外でお金を借りるには
「海外で現金を盗まれてしまった」「お金を使い過ぎて帰りの旅費が足りない」と言った事態になってしまっても、日本大使館では直接お金を貸してもらえません。
しかし、海外旅行時にお金が必要になった場合に借りる手段が全くないわけではありません。
ここでは、海外でいざというときにお金を貸してもらうための方法を解説します。
家族に送金してもらう
お金を借りるときにすぐに思いつく方法として、家族から送金してもらう方法がありますが、家族から借りる場合には銀行口座を通じて送金してもらう方法が取れます。
空港内などATMが設置しているような公的施設であれば、日本の金融機関にも対応しているATMもあるため、自分の普段使っている口座に向けて送金してもらうだけで大丈夫です。
しかし、海外のATMには対応していない金融機関も中にはありますが、このような銀行口座しか持っていない場合には、海外送金サービスの利用がおすすめです。
海外送金サービスでは、日本国内の店舗に送金分のお金を預けることで、海外の店舗がある国で送金されたお金を受け取れます。
海外送金サービスの対象国であれば素早く送金ができるシステムであるため、おすすめの送金方法ですが、手数料が割高な点など注意点もあるため気を付けましょう。
クレジットカードがあればキャッシングする
JCBやVISA、Masterなど国際ブランドのクレジットカードにキャッシング機能を付けているのであれば、海外のATMを通じてキャッシングをするのもひとつの手です。
海外に設置しているATMの中で、自分の所持している国際ブランドのマークが付いているものであれば、キャッシング機能の利用ができます。
しかし、キャッシング機能を利用するためには、クレジットカード申し込み時点でキャッシング枠の設定をしておかなければなりません。
海外旅行や海外に長期滞在を検討している人は、事前にキャッシング枠を設定しておいた方がいざというときに利用できるので安心です。
そして、稀に設定ミスで使えない場合もあるので、クレジットカードが届いたら出国前に一度使えるか試してみるとよいでしょう。
海外の金銭トラブルに関するQ&A
海外での金銭トラブルの解決方法について、いくつかの方法を紹介してきましたが、まだまだ伝えきれていない情報も幾つかあります。
ここでは、紹介しきれていない情報の中で、特に質問の多い内容についてQ&A形式でまとめているので参考にしてください。
海外で一文無しになったら日本大使館に相談を
海外滞在中にお金がなくなってしまう危険性は、国内にいるよりも格段に高いです。
できる限りお金が盗難に遭わない様な対策をすることが大切ですが、実際に一文無しになってしまった場合には、取りあえず日本大使館に行ってこれから取るべき方法を相談して決めましょう。
日本大使館は直接お金を貸してもらえませんが、国内の家族への連絡を取る手伝いなどは行ってもらえるので、緊急時には積極的に活用してください。
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