自己破産などの債務整理直前の消費者金融からの借入は免責不許可?

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自己破産前に消費者金融から追加借入などを行うと自己破産はできても借金の免責が認められないケースがあることをご存じですか?

追加借入だけではなく新規借り入れも同じです。自己破産することを前提とした借入は破産法に触れる部分もあり、返済不能と知りながら借りたとして裁判官の心証を害することがあります。

執筆者の情報
名前:梅星 飛雄馬(55歳)
職歴:地域密着の街金を30年経営

自己破産の目的は免責の決定にある

自己破産の目的は免責許可決定にあると言っても過言ではありません。

破産と免責は別々に手続きを行うもので、破産とは借金の支払いが本人の財産を処分してもできない、または処分する財産がないため破産裁判所に認めてもらうことです。

一方免責とは破産する人の財産処分したとしても借金を支払うことができない、及び処分する財産がないために借金の支払いを免除してもらうことです。

当然ながら破産手続きだけでは借金の支払い義務が残ってしまうため、債務整理のために自己破産を申立てても意味がありません。

何らかの理由で免責許可決定が出なければ破産者が持っている財産を全て処分し、しかも残った借金は支払い義務が生じると言う悲惨なことになってしまいます。

つまり自己破産は免責の決定が目的であり破産手続きだけでは意味をなさないのです。

破産法第252条には免責不許可事由とする要件が記載されています。

具体例を挙げると財産を隠して自己破産手続きを行うことや、浪費やギャンブルなどで財産を減少させた、または多額の借金を抱えてしまった場合、並びに破産手続きにおいて裁判所に対して虚偽の説明を行った場合は破産はできても免責が認められません。

◆衆議院 破産法

自己破産前に消費者金融から借りると?

自己破産するなら自己破産しても大丈夫なように生活費くらいか借りておこうと、考えるのが人というものです。

しかし借金がチャラになることを前提に、消費者金融に限らず銀行やクレジットカードでのキャッシングなど借入を行ってしまうのはとても危険な行為です。

破産法第252条1項5号にあるように、既に返済不能の状態になりつつあることを知りながら破産手続きを行う1年前から破産開始手続きまでの間に、金融機関を騙してお金を借りた場合は免責不許可事由に相当します。

しかしながら上記の定めを一律に裁判所が認めてしまうと、多くの自己破産申立てによる免責決定は認められないでしょう。

自己破産直前にお金を借りたというのであればまた話は違うかもしれませんが、自己破産申立てから1年前にお金を借りたという場合、なんとかお金をやりくりすることによって生活再建を果たすことができるのではないか、と努力している場合でも免責不許可事由となってしまうからです。

結局破産法第252条1項5号は、すでに返済不能となっていることを知っていることな条件となりますので、結果的に詐欺的行為となったとしても、お金を借りた時点で詐欺行為を働いたことを証明できなければ詐欺罪になることはないのです。

浪費家ギャンブルなどによって作った借金でも、本来であれば免責不許可事由となりますが裁判官の裁量によって免責が認められています。

1年も前に消費者金融などからお金を借り、自己破産だけは免れようとしても結果的として自己破産をせざるを得なかったという場合、自己破産を目的として消費者金融からお金を借りたと証明することは不可能です。

ただし破産手続きにおいて裁判所が行う調査をごまかすことや説明を怠った場合は、虚偽申告とみなされ免責が認められない場合もありますので、たとえ自己破産直前の借入だったとしても正しく申告しなければなりません。

免責不許可事由となるその他の条件

通常の自己破産は破産申立人が持っている財産が20万円未満の場合は、自己破産の申立をしても債権者に対して配当を出すだけの能力がないとして破産手続きを廃止し、すぐに免責の審尋を行います。

免責不許可事由となる点がなければそのまま免責許可決定となり、債権者に支払う借金返済の義務がなくなります。

しかし自己破産を申立てるについて裁判所に対して虚偽の申告を行う、この場合は自己破産直前に消費者金融からお金を借りた場合を言いますが、それを隠して自己破産手続きを行うとバレた場合に自己破産の手続きは管財人事件となってしまいます。

管財人事件とは自己破産申立人の持っている不動産や自動車、現金や預金、生命保険の解約返戻金など20万円以上の場合、裁判所へ予納金として20万円と官報に載せる費用など22万円程度納めなければなりません。

自己破産申立てをする直前に消費者金融から借りた現金があることは、破産管財人として裁判所から委任された弁護士によって調査され、自己破産直前にお金を借りた理由や一度も返済していない理由などを説明しなければなりません。

自己破産は特定の金融機関だけを外して申立てることができません。

破産管財人が自己破産をする本人と面接を数回行い、また郵便物も破産管財人に強制的に転送されてしまいます。

自己破産を申立てるくらいですから、当然直前に借り入れをした消費者金融に対しても返済することができません。

督促状が送られてくると督促状は破産管財人に転送され財産を隠したことがバレてしまうため、「困ったことになった」となるケースもないわけではありません。

それよりも20万円以上の財産を持っていた場合債権者へ配当しなければなりません。

なお裁判所が認めた場合は現金99万円までは自由財産として手元に置いておくことが可能です。

明らかに財産を隠した、虚偽の申告を行ったとなってしまった場合は裁判所へ提出する財産処分案を作成し直さなければならないなど、管財人に対しても心証を害することになりますので絶対虚偽申告だけはやめておきましょう。

◆裁判所 自己破産の申立てを考えている方へ

債権者集会の開催

自己破産直前に消費者金融から借入を行ったことが破産管財人にわかってしまった場合で債権者に配当する財産が十分にあることがわかった場合は、裁判所は免責決定を行う前に債権者集会を開きます。

債権者集会とは自己破産を申立人に財産があり、裁判所へ納める予納金よりも多額の現金や財産を持っている場合に債権者が貸し付けている金額の割合に応じて、財産を配分するために行います。

今回のケースでは自己破産直前に多額の現金を借り、免責不許可事由にあたる財産の隠匿や虚偽申告の可能性があるため、免責が認められないのではないかとの期待もあるわけです。

裁判官は債権者集会においてなぜ自己破産を申立てる直前にお金を消費者金融から借りたのか説明を求めてきます。

はっきりとした説明を行うことができないと免責が認められません。

万が一債権者集会を開くことになった場合は、生活が困窮していたためやむを得ず消費者金融からお金を借りなくてはならなかった、公共料金を支払うために借りなくてはならなかったなど正当な理由述べましょう。

債務整理直前の借入は債権者の心象を悪くする

そもそも債務整理は返済する見込みがない、または返済できなくなる可能性が極めて強い場合に行う借金の整理です。

返済する見込みがないのに債務整理直前に借入するのは、絶対やってはいけないことではありませんが明らかに債権者の心象を悪くするでしょう。

お金を貸すかどうかの審査は金融機関が行いますので、借入申込者が返済する見込みがない、返済できなくなる可能性が強いと知っていても、審査に通してしまえばお金を借りれてしまいます。

これから債務整理をするのに借入をするのは、実際に債務整理手続きを始めた場合に債権者となる金融機関の心証を害することは明白です。

お金を貸した数日後に裁判所や弁護士、司法書士から債務整理を行う「債務に関する調査書」や「受任通知」を受け取ったらどう思うでしょうか。

銀行や消費者金融、クレジットカード会社の法務担当部署は、裁判所や法律の専門家からの書類を受け取り、取引履歴を見てみたら債務整理直前に借入しているではないか。これはけしからん事態だと思うことでしょう。

たとえ借金返済のために生活を立て直そうと、何とか頑張って借金返済の滞納だけは防ぎたいと考えての借入だとしても、金融機関は借主の気持ちを理解することはできませんよね。

債務整理の対象となる銀行や消費者金融から借入することや、新規に金融機関から借入して一度も返済していないのに、債務整理をするのはどういうわけなのか? と借主に対して悪いイメージを持ってしまうことは無理もありません。

よくある債務整理直前の借入「まわし返済」

借主に悪意がない場合でも、よくあるのが複数借入している多重債務者が行なってしまう「まわし返済」は債務整理直前の借入です。

A社から借金してB社へ返済する、C社から借金してA社に返済する、B社から借入してC社に返済するような状態を「まわし返済」と言います。

つまり借金を借金で返すことを繰り返しているのです。これは決して借主に悪意がある行為とは言えません。

たとえ自転車操業状態になっていても、親や親戚から資金の援助を受けることができるのではないか、それまでの間は何とか頑張っていこうとしているのかもしれませんよね。

しかし銀行や消費者金融などの金融機関から見れば、まわし返済を続けながら債務整理をするのはとんでもない、となるでしょう。

任意整理で債務整理する場合に交渉決裂となることもある

債務整理直前でまだ債務整理を行っていないのであれば、基本的に借入しても問題はありません。

なぜならお金を貸すかどうかは金融機関が判断することであって、返済不能の状況が見えているのにお金を貸すのは金融機関側に責任が問われるからです。

しかし債務整理開始した後に借入するのは、法的に違法とはならなくても社会常識から考えれば「それはないよね」となるのが普通です。

とくに任意整理は裁判所を通すことなく民間での借金の整理です。

弁護士や司法書士が借主と債権者との間に入り、借主は返済不能の状態にある、または返済不能になりつつにあることを条件に、借金の減額や利息のカットを求めるものです。

借金の減額や利息のカットは交渉がまとまらなければ手続きを進めていくことができません。

それに民間での債務整理は銀行や消費者金融でも企業によって対応間違い、必ずしも借主にとって良い条件で話し合いがまとまるわけでもないのです。

法律の専門家に任意整理を依頼すると、カードローンやクレジットカードを全部提出してくださいと言われます。

これは債務整理後に借入されてしまうと借金の金額を確定することができないこと、及び債権者との交渉をスムーズに進めていくための手段なのです。

債権者にとってまわし返済は、金融機関側の審査ミスとある程度納得できるかもしれませんが、新規に借入をして一度も返済していないのは、返済するつもりがないのに計画的な借入をしたのではないかと疑われても仕方ありません。

交渉がまとまらなければ借金の減額、及び利息のカットは望めません。

金融問題の交渉に強い法律の専門家になると、このままでは自己破産するしかありませんがそれでも良いのですか?のように揺さぶりをかけてきますので、仕方なく交渉をせざるを得ないとなる場合もあります。

強硬的な金融機関になると「それなら裁判で決着をつけましょう」と交渉決裂することもあるのです。

金融機関は返済するつもりがないのに借入をしたとして、詐欺的行為を働いてお金を搾取したと裁判所に提訴するのですね。

裁判所に提訴したところで、資金的に余裕がない借主は弱者として見られることが多く、金融機関が勝てる見込みは少ないです。

それでも金融機関は意地でも借金減額の交渉には応じない姿勢を見せる場合があるのです。

十分に反省していれば裁量で免責決定となる

消費者金融からお金を借りたことがやむを得ない事情があった場合や、明らかに自己破産申立人が反省をしている場合は裁判官の裁量によって免責が認められることが一般的です。

ただし免責許可決定された後でも債権者から2週間以内に即時抗告を行われた場合は免責が取り消される場合もありますので安心はできません。