国民年金が残高不足で引き落としできず滞納になったらどうなる?
国民年金保険料の支払い方法として口座振替を選択している人も多いでしょう。
万が一、口座残高が不足してしまい、引き落としが実施できなかったときはどうなるのでしょうか。
口座振替で引き落としができなかったときに起こることについて、詳細に解説いたします!
記事の目次
- 1 国民年金保険料の支払い方法
- 2 国民年金保険料の引き落とし日は?
- 3 国民年金保険料の引き落とし時間は?
- 4 引き落としできなかった場合は?
- 5 年金を滞納するとどうなる?
- 6 滞納金はいつから発生する?金利はいくら?
- 7 滞納したときの相談先
- 8 払えない場合の対処法
- 9 年金滞納の時効
- 10 滞納していると家族に影響がある?
- 11 国民年金滞納のまま社会保険・厚生年金に加入できる?
- 12 年金の滞納は社会問題
- 13 会社が厚生年金を滞納した場合の影響
- 14 年金を滞納すると社会生活に影響が出る?
- 15 年金の未納は審査に影響しない
- 16 税金の未納は審査に影響する
- 17 年金を滞納していると引越できない?
- 18 年金が高いと感じる理由とは
- 19 クレカでの支払いに注意
- 20 国民年金の納付は国民の義務!
国民年金保険料の支払い方法
国民年金保険料は、毎年4月に送付されてくる振替用紙を使ってコンビニや金融機関の窓口で支払う方法と口座振替によって支払う方法、クレジットカードによって支払う方法の3つの支払い方法があります。
尚、国民年金保険料は1ヶ月ごとに発生しますが、その月分の保険料の支払い期限は翌月末日に設定されています。
例えば、2018年4月分の国民年金保険料は、2018年5月31日までに納めなくてはいけません。
国民年金保険料を当月末(2018年4月分なら2018年4月30日)までに納めることを「前納」と呼び、通常の納期までに納めるのと比べて若干保険料が割り引かれます。
<口座振替による引き落とし>
支払方法 | 1回の支払い額 | 翌月末払いと比べた割引額 | 引き落とし日 |
---|---|---|---|
翌月末払い | 16,490円 | - | 翌月末日 |
当月末払い | 16,440円 | 50円 | 当月末日 |
6ヶ月払い | 97,820円 | 1,120円 | 4月末日、10月末日 |
1年払い | 193,730円 | 4,150円 | 4月末日 |
2年払い | 378,320円 | 15,640円 | 1年目の4月末日 |
※金額は変動します。上記の表は2017年のものです。
※引き落とし日が土日祝日に当たるときは、金融機関の翌営業日に引き落とされます。
<振替用紙もしくはクレジットカードによる支払い>
支払方法 | 1回の支払い額 | 翌月末払いと比べた割引額 | 支払い期限 |
---|---|---|---|
翌月末払い | 16,490円 | - | 翌月末 |
当月末払い | 16,440円 | 50円 | 翌月末 |
6ヶ月払い | 97,820円 | 1,120円 | 4月末、10月末 |
1年払い | 193,730円 | 4,150円 | 4月末 |
※金額は変動します。上記の表は2017年のものです。
※支払い期限が土日祝日に当たるときは、金融機関の翌営業日に延長されます。
国民年金保険料の引き落とし日は?
国民年金保険料の引き落とし日は、上記の表に記載されている日となります。
翌月末払いに指定している人は翌月末日、当月末払いに指定している人は当月末日、6ヶ月・1年・2年払いに指定している人は4月末日あるいは10月末日に引き落とされます。
尚、当月末払いを指定している場合は、初回(5月末)引き落としのみ、4月分と5月分の2ヶ月分が引き落とされます。
4月分の保険料に関しては「翌月末払い」扱いになってしまいますので、50円が割り引かれず、5月分以降の保険料から「当月末払い」扱いとして月額50円割り引かれます。
つまり、5月末の引き落としは32,930円(16,490円+16,440円)となるのです。
引き落とし日は変更不可!
引き落とし日の変更は不可能です。
かならず、月末までに入金しておくようにしましょう。
引き落とし口座の変更可能だが…
引き落としの口座を変更することはできます。
ただし、支払い方法によって口座変更期限か決まっていますので、期限を過ぎると次回の支払いから新口座での引き落としが実施されます。
また、ほとんどの銀行や信用金庫の口座を振替口座として登録することができますが、一部のネット銀行は登録できませんのでご注意ください。
支払方法 | 口座変更申込期限 |
---|---|
翌月末払い | 特になし |
当月末払い | 特になし |
6ヶ月払い | 前期分は2月末まで、後期分は8月末まで |
1年払い | 2月末まで |
2年払い | 初年の2月末まで |
引き落としが土日祝日のときは?
引き落とし日(毎月払いなら月末日)が土日や祝日に該当するときは、翌営業日に引き落としが実施されます。
通常、金融機関では、年始は1月3日まで休業していますので、12月末の引き落としは1月4日以降の最初の営業日に引き落としが実施されます。
国民年金保険料の引き落とし時間は?
保険料が引き落とされるタイミングは、振替口座として登録した金融機関によって異なります。
振替日当日の早朝に実施されることもありますので、かならず前日までには入金するようにして下さい。
引き落としできなかった場合は?
振替口座の残高が不足していていると、国民年金保険料は引き落とせません。
引き落とせないときは再引き落としが実施されるのか、また、年金事務所等から電話やハガキで連絡が来るのか、そして、未払い分の保険料をどのように支払うのかについて解説いたします。
尚、次の記事では、国民年金などの保険料が引き落とせないときの一般的な流れをまとめています。
国民年金の毎月払いは再引き落とし可能!
国民年金保険料は、再引き落とし制度があります。
ただし、適用されるのは毎月払い(当月末払いと翌月末払い)のときだけです。
口座残高不足などの理由により指定された日に引き落としが実施できないと、翌月末に2ヶ月分がまとめて引き落とされます。
再引き落とし制度によって支払うときは、例え「当月末払い」を指定していたとしても、50円の割引は適用されず、翌月末払いと同様に割引なしの保険料を支払うことになります。
6ヶ月・1年・2年払いのときは自動的に「翌月末払い」に
6ヶ月払いや1年払い、2年払いの方式に申し込んでおいたとしても、指定された日に引き落としが実施できないときは、自動的に「翌月末払い」が適用されてしまいます。
受けられるはずの割引(2017年度の場合は最大15,640円)が受けられないことになってしまいますので、かならず引き落とし日までに保険料を入金して下さい。
次の記事もぜひご覧になって下さい。
再引き落としができないときは納付書が届く
毎月払い(当月末払いと翌月末払い)の再引き落としが実施できないときは、年金事務所から納付書が届きます。
また、6ヶ月払い・1年払い・2年払いを指定したにも関わらず、口座残高が不足して引き落としが実施できず、しかも、翌月末も引き落としが実施できなかったときも、年金事務所から納付書が届きます。
納付書に記載されている納付期限までに、金融機関やコンビニの窓口で指定された金額を支払いましょう。
口座振替が中止になることもある!
口座残高不足で引き落としが実施されないときは、翌月末に再引き落とし(もしくは翌月末に「翌月末払い」として引き落とし)されます。
しかしながら、口座振替が実施できない理由が「残高不足」以外の理由であるときは、口座振替の契約自体が解消されてしまいます。
つまり、翌月からは納付書で支払わなくてはならなくなってしまいますので、手間が増えることにもなってしまうのです。
尚、残高不足以外の口座振替が実施できない理由としては、主に次の2つを挙げることができます。
- 税金や健康保険等を滞納しているため、口座が差し押さえられている
- 民間ローンやクレジットカードを滞納しているため、裁判所を通して口座が差し押さえられている
支払い期限に遅れると延滞金が発生する!
国民年金保険料の支払いに遅れると、当初の支払い期限の翌日(2018年4月分の保険料なら6月1日。
5月31日が土日祝日に該当するときはその翌々営業日)から滞納した保険料を清算する日までの日数分、延滞金が請求されます。
2018年1月分~12月分までの延滞金は、以下の計算方法に基づいて算出されます。
- 納付期限の翌日~3ヶ月以内の延滞金は年利2.6%で計算する
- 納付期限から3ヶ月を超えたものの延滞金は年利8.9%で計算する
- 延滞金に1,000円未満の端数があるときは、切り捨てる
引き落としできなくてもブラックリストとは無関係
民間の金融機関で支払いを滞納すると「個人信用情報機関」に滞納情報が登録されますが、国民年金保険料を滞納しても、個人信用情報機関には何の情報も登録されません。
つまり、いわゆるブラックリストに載るような事態にはならないのです。
では、「国民年金保険料を滞納することは民間の支払いを滞納することよりも滞納者自身が受けるダメージが少ないか?」というと、そうではありません。
民間の金融機関やクレジットカード会社が、滞納者の財産を差し押さる等の強硬な取立てを実施するためには裁判所の許可が必要ですが、国民年金保険料や税金等の国民の義務に関わる支払いに関しては、裁判所の許可を待たずにいきなり差し押さえを実施することができるからです。
次の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧になって下さい。
国民年金の取立ては年々厳しくなっている
国民年金保険料の取立ては、年々厳しくなっています。
例えば、2016年度は国民年金保険料の未納の取立ては「年間所得350万円以上かつ7ヶ月以上滞納している」人を対象に実施されていましたが、2017年度は「年間所得300万円以上かつ13ヶ月以上滞納している人」、2018年度は「年間所得300万円以上かつ7ヶ月以上滞納している人」と、どんどん取立て枠を広げているのです。
財産や給料を差し押さえられてしまう前に、かならず未納分を支払うようにしてください。
年金を滞納するとどうなる?
会社に勤務している人は給料から厚生年金保険料が天引きされますので、特別な事情がない限り年金を滞納してしまうことにはなりません。
しかしながら、自営業の人や個人事業主、学生などの「国民年金」を納める対象者は、自発的に年金を納めないと滞納することになってしまいます。
日本に居住する、厚生年金支払い者とその扶養配偶者を除くすべての20歳以上60歳未満の人が納める義務を持つ「国民年金」。
支払わないと、どのような流れでどのような結果になってしまうのか解説します。
第一段階:納付奨励のための電話・訪問・文書
年金を滞納していると、年金事務所から電話もしくは文書(催告状)で支払いを促す連絡が来ます。
自宅まで職員が訪問してくることもありますし、「来所通知書」によって日時や場所の指定を受けることもあります。
尚、いずれの方法で奨励される場合でも、一度だけではなく何度か連絡を受けることになります。
第二段階:最終催告状
再三の納付奨励を無視し続けると、「最終催告状」と呼ばれる文書が届きます。
これは、滞納者に自主的な納付を促す最終的な通知であり、平成28年度(平成28年4月~29年3月)には、全国で85,342通の最終催告状が発送されました。
第三段階:督促状
自主的な納付を促す最終催告状を受け取っても、滞納している年金保険料を納付しない人には、「督促状」と呼ばれる文書が送付されます。
日本年金機構では平成29年度においては、控除後の所得が年350万円以上かつ滞納月数が7ヶ月以上、もしくは控除後所得が年300万円以上かつ滞納月数13ヶ月以上の滞納者に督促を実施しています。
尚、この所得とは「世帯所得」のことで、本人の所得だけでなく世帯主の所得と配偶者の所得が合算されます。
因みに、平成28年度は、全国で50,423通の督促状が発送されました。
第四段階:差し押さえ予告
督促状を受け取っても年金納付をしない場合、もしくは年金事務所に来所して何らかの対策を講じない場合は、財産調査をした上で「差し押さえ予告」が送付されます。
つまり、差し押さえ予告が送付される時点ですでに財産調査は終了していますので、年金事務所側では滞納者を「払える状況にあるのに払っていない」と判断しているということでもあります。
この差し押さえ予告書は赤い封筒に入っていることがあるため、「赤紙」と呼ばれることもあります。
第五段階:財産差し押さえ
差し押さえ予告書には「最終納付期限」が記されており、差し押さえ予告書を受け取ってからでも滞納金を支払うか年金事務所に行って適切な手続きを行えば、財産の差し押さえを免れることは可能です。
しかしながら、差し押さえ予告書も放置し、最終納付期限を過ぎて差し押さえ実施日になると、財産の差し押さえが実施されます。
因みに、平成28年度は全国で13,962件の差し押さえが実施されました。
財産差し押さえとなる滞納者の条件
平成29年の時点では、年金滞納により財産差し押さえになるのは、以下のいずれかの条件を満たす滞納者です。
尚、各種控除を差し引いた所得で計算しますので、控除額が大きい世帯では世帯年収が500万円を超えても財産差し押さえの対象とならないことがあります。
- 控除後の所得が年350万円以上かつ滞納月数が7ヶ月以上
- 控除後の所得が年300万円以上かつ滞納月数が13ヶ月以上
差し押さえの対象となる財産
年金保険料の強制徴収のための差し押さえ対象となるのは、次のものです。
- 本人名義の預貯金口座
- 連帯納付者(世帯主・配偶者)がいる場合は連帯納付者の預貯金口座
- 個人事業主などの場合は売掛金
- 給料
- 生計維持に不可欠なもの以外の動産・不動産
財産差し押さえの期間
差し押さえた財産から滞納金徴収の強制執行を実施すると、財産差し押さえの強制執行は解除されます。
生計維持に不可欠と判断される動産や不動産が滞納処分される可能性もありますので、遅くとも督促状を受け取ったらすぐに年金事務所に連絡を取り、支払う意思があることやどうしても支払えない理由があることを説明しましょう。
年金の滞納に罰則はない
尚、年金保険料を納めることは国民の義務ですので、滞納すると、最悪の場合は財産差し押さえによる強制徴収が実施されます。
ただし、年金を納めないこと自体は犯罪ではありませんので、禁固刑や罰金等の罰則が科せられることはありません。
ローンは期限の利益が喪失に
差し押さえになると、真っ先に行われることが銀行口座の凍結です。
しかし、銀行口座が凍結されることそのものでは、信用情報には登録されません。
しかし、銀行口座が凍結されると、差し押さえが行われたという事実を銀行が知ることになります。
通常、銀行は口座が凍結されると、銀行が当該顧客に融資している債権について期限の利益を喪失させます、
期限の利益喪失とは、貸しているお金を一括で全て払ってくださいという手続きです。
期限の利益喪失後は、銀行は保証会社に対して代位弁済請求を行います。
差し押さえそのものでは、信用情報には影響しませんが、差し押さえを受けて銀行がこのような手続きを行うことで、信用情報に悪影響することになるのです。
信用情報はブラックに
差し押さえを受けて、銀行が融資残高の代位弁済請求を行うと、信用情報には代位弁代の情報が記録されます。
代位弁済は事故情報ですので、信用情報はブラックになります。
借入は不可能
一度代位弁済を受けて、信用情報に代位弁済の情報が登録されてしまうと、その情報は5年間は信用情報に記録されます。
また、代位弁済や差し押さえの結果として自己破産まで至ってしまった場合には、自己破産の情報は10年間記録されます。
この場合は10年間は借入が不可能になります。
滞納金はいつから発生する?金利はいくら?
「国民年金を滞納すると年利14.6%もの高額な延滞料が発生する」といった誤解がネットで出回っていますが、実際にはそのような高金利の利息は発生しません。
また、「国民年金保険料は2年以内ならいつ支払っても無利息」といった誤解も出回っていますが、それも事実とは反します。
今回、年金事務所で詳しく調査しましたので、滞納金と金利についての正しい情報をお伝えいたします。
督促状に記された納付期限を超えると延滞金が発生する!
国民年金保険料を滞納し、督促状に記された最終納付期限までに年金保険料を納付しないと、加算金(年利2.7%で計算する。いわゆる延滞金のこと)が発生します。
財産差し押さえを解除する際には、この加算金を本来の年金保険料に加えた滞納金を支払わなくてはなりません。
つまり、滞納し始めてから7ヶ月後に督促状を受け取った人は、ごくわずかながらも加算金が請求されることになります。
しかしながら、滞納しているのに督促状を受け取っていない人なら、2年後であっても加算金不要で国民年金保険料を納めることができるのです。
後納・追納制度を利用するときも延滞金が発生する!
また、後納制度や追納制度を利用して国民年金保険料を支払うときも、加算金を加えた金額を支払わなくてはなりません。
尚、後納制度や滞納制度を利用するときの加算金は、元々の年金保険料と支払いを延滞していた期間によって金利・金額が異なりますので、かならず最寄りの年金事務所で尋ねて下さい。
もちろん、差し押さえ解除のときと同様、延滞金の金利は年2.7%程度に低く設定されていますので、1ヶ月当たりの年金保険料に数十円~数百円の延滞金がプラスされるだけです。
滞納したときの相談先
年金を滞納しているときや納付期限までに支払えないため滞納しそうなときは、年金事務所に出かけて相談してみましょう。
年金事務所まで出かけることが難しい場合は、電話で相談することも可能です。
日祝日と第二以外の土曜日、年末年始は電話相談を実施していませんが、それ以外の日なら日中電話を受け付けていますので、滞納金を支払ったり財産差し押さえを実施されたりする前に、気軽に相談してみましょう。
尚、個人的な相談をするときは基礎年金番号や年金証書番号が必要になります。
年金手帳や年金納付書、督促状を準備してから、電話をかけるようにして下さい。
払えない場合の対処法
年金を支払えないとき、ただ何の手も打たずに滞納を続けてしまうのは非常にもったいないことです。
滞納すると延滞金が発生するだけでなく、滞納期間は将来もらえる年金の金額に反映されませんので、将来的に考えると滞納した年金保険料の何倍もの損失になることがあるのです。
例えば、金銭的に厳しい状況のために年金を支払えないことを説明し、公的に「年金免除」が認められると、年金免除の期間中も半額は年金を納めたものとして将来の年金額を計算してもらえます。
40年間のうち、30年間は年金を期間内に納付し、残りの10年間は「免除」された場合の老齢基礎年金の年額(平成29年度価格)は次のように計算できます。
779,300円×{360ヶ月(納付月数)+120ヶ月(免除月数)×1/2}÷480
=681,888円
一方、40年間のうち、30年間は年金を期間内に納付したものの、残りの10年間は滞納した場合の老齢基礎年金の年額は、次のように計算できます。
779,300円×360ヶ月(納付月数)÷480
=584,475円
連絡を怠って滞納するだけで、年間約10万円も年金受給額が減額されてしまうのです!
65歳~84歳まで年金を受け取るとするなら約200万円もの差が出ることになりますので、年金保険料を支払えない場合でも、かならず年金事務所に相談し、「免除」や「猶予」「減額」等の措置を受けるようにしてください!
年金保険料免除・猶予になる条件
前年の所得(本人と配偶者、世帯主を合算)が、次の金額以下の場合は、年金保険料が全額免除もしくは全額猶予されます。
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
尚、所得が増加したら、免除・猶予分の年金保険料を10年分に限り追納することが可能(免除・猶予を受けていない場合は平成30年9月までなら5年分のみ追納が可能)です。
積極的に追納して、将来受け取る年金額を増やしましょう。
◆日本年金機構公式サイト:「保険料を納めることが、経済的に難しいとき」
学生納付特例制度
20歳以上の学生は、本人の収入が次の基準以下のときは「学生納付特例制度」が適用され、年金保険料の支払い猶予が認められます。
118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除額等
尚、この特例制度の適用は、親などの保護者の所得は一切関係がありません。
保護者が高所得者であっても、学生本人の収入が低い場合は「学生納付特例制度」を活用して、収入が増えてから年金保険料を追納することが可能です。
学生納付特例制度の手続きもしくは国民年金保険料納付のいずれかを実施しないと、20歳を超えていたら例え学生であっても「滞納」したことになりますのでご注意ください。
年金保険料減額になる条件
前年の所得(本人と配偶者、世帯主を合算)によって、4分の3免除、2分の1免除、4分の1免除が適用されます。
4分の3免除
前年の所得(本人と配偶者、世帯主を合算)が、次の金額以下の場合、納める年金保険料の4分の3が免除されます。
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等(源泉徴収票や確定申告控で要確認)
2分の1免除
前年の所得(本人と配偶者、世帯主を合算)が、次の金額以下の場合、納める年金保険料の半額が免除されます。
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等(源泉徴収票や確定申告控で要確認)
4分の1免除
前年の所得(本人と配偶者、世帯主を合算)が、次の金額以下の場合、納める年金保険料の4分の1が免除されます。
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等(源泉徴収票や確定申告控で要確認)
無職は払わなくて良い?
失業して無職になった場合も、申請すると年金の免除や猶予を受けられることがあります。
放置して滞納すると、将来的に支給される年金額が減ってしまいますので、かならず申請して下さい。
免除・猶予の基準
学生が免除・猶予を受けるのとは異なり、失業によって免除・猶予の申請を行う場合は、本人の前年所得だけでなく、世帯主の前年所得と配偶者の前年所得も考慮されます。
つまり、本人の収入が著しく減った場合でも、世帯主や配偶者に一定以上の収入があれば年金保険料の免除・猶予を受けることができないのです。
世帯主や配偶者の収入が一定以上あるけれども年金保険料の免除・猶予を受けたい人は、住民課で「世帯分離」の手続きを行ってから、年金課で「厚生年金から国民年金への切り替え」と「失業による保険料免除・納付猶予」の申請を行うことも可能です。
ただし、分離後はあなた自身が世帯主となりますので、自己責任で行うようにしてください。
アルバイトも年金保険料の滞納はNG!
アルバイトのために収入が低い場合も、世帯主や配偶者に一定以上の収入があるときは国民年金保険料を納付しなくてはなりません。
単身世帯の場合は、年金保険料免除や猶予の対象になることもありますので、収入が分かる書類を持って年金事務所に相談に行きましょう。
年金滞納の時効
免除制度や特例制度を利用しているのではない限り、年金保険料の納付時期から2年が過ぎると、時効が成立して滞納金を納付することができなくなってしまいます。(国民年金法第102条第4項)
尚、平成30年9月までは納付期限を過ぎてから5年間は追納することができます。
◆厚生労働省公式サイト:「国民年金保険料の徴収時効(2年)の見直しについて」
年金受給にも時効がある!
もらえるはずの年金でも、受け取らないまま一定の期間が過ぎてしまうと、時効が成立して受給できなくなってしまうことがあります。
老齢年金や障害年金、遺族年金は5年、死亡一時金と脱退一時金は2年が過ぎると時効成立してしまいますのでご注意ください。
滞納していると家族に影響がある?
国民年金法第88条では、国民年金の納付義務は本人だけにあるのではなく、世帯主と配偶者にも連帯義務があると定められています。
そのため、年金を滞納している本人に給料や預金等がない場合、世帯主や配偶者などの家族の財産が差し押さえられる可能性もあるのです。
妻が滞納していた場合は払わなければならないのか
扶養しているかどうかに関わらず、妻もしくは夫が滞納している場合は、配偶者は年金保険料納付の責務を負います。
ただし、婚姻前に妻が滞納している年金保険料に関しては、そのときの世帯主もしくは配偶者が年金保険料納付の責務を負います。
国民年金滞納のまま社会保険・厚生年金に加入できる?
国民年金を滞納したまま、会社に就職し、社会保険や厚生年金に加入することは可能です。
ただし、滞納分の国民年金がある場合は、催告状や督促状が自宅に郵送される可能性がありますし、年金事務所に連絡をしないまま滞納すると財産差し押さえになることもあります。
滞納分を分割して支払うことも可能ですので、まずは年金事務所に連絡して見ましょう。
年金保険料は社会保険料控除対象
国民年金保険料は社会保険料控除の対象となります。
当然ですが滞納分は社会保険料控除の対象となりませんので、控除額を増やすためにも未納分がある人は年内に納付するようにしてください。
◆政府広報オンライン公式サイト:「国民年金保険料は、全額、社会保険料控除の対象です」
年金の滞納は社会問題
国民年金の納付率は63.2%(平成29年2月末時点)と、約3人に2人しか支払っていないのが現状です。
納付率の低さは年金の財源確保の難しさにも直結しますので、少子高齢化のためにますます年金受給者が増える現在日本において「年金滞納」は大きな社会問題だとも言えるでしょう。
もちろん、年金滞納者への対応も厳しくなっています。
財産差し押さえの対象所得を引き下げるだけでなく、滞納してから差し押さえ通知までの日数も減少させています。
差し押さえの基準がさらに低くなることも予想されますので、「私は所得が低いから差し押さえとか関係ない」と楽観視するのではなく、できる限り納付するか、どうしても納付が難しいときは免除や猶予の手続きをするようにしてください。
◆厚生労働省公式サイト:「平成29年2月末現在 国民年金保険料の納付率」
年金を滞納する理由
平成26年国民年金被保険者実態調査によりますと、滞納する主な理由として「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」であることを挙げる人がもっとも多いことが分かります。
滞納する主な理由 | %(複数回答不可) |
---|---|
保険料が高く、経済的に支払うのが困難 | 71.9% |
年金制度の将来が不安・信用できない | 8.2% |
納める保険料に比べ充分な年金額を受け取れない | 5.5% |
うっかり忘れていた、後で支払おうと思っていた | 4.0% |
厚生労働省・日本年金機構が信用できない | 3.4% |
これから保険料を納めても、加入期間が短く年金がもらえない | 2.8% |
すでに、年金を受ける資格を満たしていたから | 1.1% |
その他 | 3.1% |
◆厚生労働省公式サイト:「平成26年国民年金被保険者実態調査 結果の概要」
マイナンバーで年金の滞納がばれる?
マイナンバーですべての公的サービスが連携されると、個人情報の管理が容易になり、日本年金機構から年金滞納の指摘を受けたり、催告状や督促状の送付に繋がったりすることがあるかもしれません。
しかしながら、差し押さえ対象となる世帯所得や滞納月数の基準は決まっていますので、すべての滞納者が財産差し押さえになることはありません。
そのため、マイナンバー制度が始まったからといって急に未納金の取り立てが厳しくなることはないと予測されます。
会社が厚生年金を滞納した場合の影響
会社に勤務している人は、会社側が従業員の厚生年金保険料をまとめて納付します。
しかし、社員の給与明細書には厚生年金保険料の天引きが記載されているにも関わらず、実際には会社が年金を納めていないということもあり得ます。
社員にはペナルティなし!納付済で年金が計算される
会社が厚生年金保険料を滞納していたとしても、年金保険料の天引きを示す書類(給与明細書等)が存在する場合は、社員には何のペナルティも科せられません。
滞納期間中も「毎月、厚生年金保険料を納めた」として計算されますので、会社の滞納が原因で将来受け取る年金額が減るということはありません。
万が一のためにも給与明細書は保管しよう!
基本的には何の手続きをしなくても、会社が正しく納付したかどうかに関わらず、社員は納めた記録に従って老齢厚生年金を受け取ることができます。
ですが、万が一のことですが、年金事務所の手違いなどで会社が滞納している期間を「未納期間」という風に計算されてしまうことがあるかもしれません。
そのような場合も、給与明細書などの厚生年金料を納めたことを裏付ける証拠があるなら、年金記録を訂正してもらうことが可能です。
かならず給与明細書を残しておくようにしましょう。
また、近年の会社の状況から「もしかしたら年金を滞納しているかも」と不安に感じている人は、最寄りの年金事務所に電話をかけ、あなたの年金基礎番号を伝えて未納期間がないか確認して下さい。
未納期間が発覚した場合は、速やかに給与明細書を持って年金事務所に出かけ、年金記録を訂正してもらいましょう。
年金を滞納すると社会生活に影響が出る?
国民年金を滞納することで、財産差し押さえ以外にどのような影響が出るのでしょうか。
年金の滞納は自動車ローンには影響しない
年金の滞納は、借金返済の滞納とは異なりますので、信用情報機関に滞納の記録が残ることはありません。
そのため、クレジットカードの審査やカードローンの審査等、信用情報機関の情報を基に審査が行われる場合には、滞納の事実は何の影響も与えないのです。
もちろん、自動車ローンを組むときも、一般的には、信用情報機関の情報と本人確認書類、収入証明書類だけで審査が実施されますので、年金滞納がローン審査に悪影響を与えることはありません。
ただし、ローンを組む人が個人事業主等の場合、収入証明書類として「確定申告書」の提出を求められることがあります。
ごく稀にですが、確定申告書の「社会保険料」の欄に記された金額があまりにも少ないと、年金滞納が疑われ、年金納付記録の提出を見せるように言われることありますのでご注意ください。
年金・税金・公共料金等は非登録
年金や税金や公共料金などを未納にすると、督促や差し押さえなどの通知が来ますが、これらの支払いに遅れたとしてもお金を借りた訳ではないため信用情報には登録されません。
ただし、これらの支払いに遅れると、実際に差し押さえが行われることもありますし、膨大な延滞税が発生しますので、支払いには遅れないほうがよいことは間違いありません。
年金の滞納は会社にばれる?
本人が言わない限り、入社前に年金滞納の事実が就職先の会社にばれることはありません。
また、現在勤務中の人も、本人が周囲に言わない限り、年金滞納の事実が会社にばれることはありません。
ただし、滞納を続けて財産差し押さえとなり、年金事務所から給与差し押さえの連絡が会社に届くと、年金滞納の事実がばれることになってしまいます。
そのようなことにならないよう、就職が決まったら滞納分を支払って行くようにしてください。
社労士は年金を滞納しているとなれない?
社会保険のプロである社会保険労務士(社労士)は、社労士の国家試験に合格するならば誰でもなることはできます。
ただし、その職務内容や権限を規定する「社会保険労務士法」の第14条の7で、健康保険や厚生年金保険、国民年金保険等の保険料の滞納処分を受け、なおかつ処分を受けてから正当な理由なしに3ヶ月以上すべての保険料を支払わなかった場合は登録できないと定められていますので、社労士の資格を持っていても自己の年金滞納を放置していると社労士として働くことはできなくなってしまいます。
社労士を目指している人は、まずは自分の社会保険から見直していくようにしましょう。
◆電子政府の総合窓口イーガブ公式サイト:「社会保険労務士法」
生活保護は滞納していても受けられるのか
生活保護を受給するためには、「受給を希望する本人が申請すること」「一定以下の収入しかないこと(地域によって基準額が異なる)」、「資産が標準以下であること」の3つの条件を満たしている必要があります。
この3つには年金を滞納しているかどうかは関わってきませんので、年金を滞納していても条件さえ満たしていれば生活保護の受給は可能です。
尚、生活保護受給が決定すると、国民年金の納付が免除(法定免除)されます。
ただし、自動的に免除されるわけではありませんので、生活保護を証明する書類を市区町村役場の年金課に持って行き、かならず手続きをしておきましょう。
◆日本年金機構公式サイト:「生活保護(生活扶助)、障害基礎年金及び被用者年金の障害年金を受けている方は、国民年金保険料が「法定免除」となります」
年金の未納は審査に影響しない
年金を未納したとしても信用情報にはその事実は登録されません。
このため、クレジットカードやローンの審査には全く影響しません。
審査側は未納を知る由もない
例え年金保険料を何ヶ月延滞し、再三督促がきている状態の人であっても、審査をする側はこの未納の事実を知る由はありません。
クレジットカードや借入金の返済を期日通りに行っている限りは全く審査に影響しません。
つまり、 年金を未納にしている人でも、年金の支払いを期日通りに行っている人と全く同じ条件で審査を受けることができるのです。
年金支払資金を借りることも可能
年金の滞納がかさんでしまっている人は、銀行や消費者金融から年金支払いのための資金を借りることも可能です。
カードローンやフリーローンなどの審査では年金を払っているかどうかや、税金を払っているかどうかということは特にチェックされません。
このため、年金の支払資金はクレジットカードや借入金の支払いに問題がなければ融資によって借りることも可能です。
実際に筆者も銀行員時代に年金支払資金を融資した経験があります。
税金の未納は審査に影響する
年金の未納は審査に影響しませんが、税金の未納は審査に影響を及ぼすことがあります。
カードローンなどでは審査で影響しませんが、住宅ローンや事業資金融資では審査で問題になり悪影響を及ぼすことがあります。
納税証明書が必要な借入はできない
一部の住宅ローンや、事業資金融資においては審査の際に納税証明書の提出が必要になります。
納税証明書は当然ながら納税を行なっている人しか発行されませんので、納税証明書が必要になる住宅ローンでは借入はできません。
また、ほぼ全ての事業資金においては納税証明書は必ず必要になります。
税金を滞納している人は、開業資金や事業の運転資金などを借りることは不可能になります。
なお、納税証明書は年金を滞納していても問題なく発行されますので、年金の滞納は住宅ローンや事業資金融資においても全く問題にはなりません。
年金を滞納していると引越できない?
年金は市区町村で管理しているのではなく、日本年金機構という国の機構が管理していますので、滞納していたとしても引っ越しは可能です。
ただし、国民年金保険に加入している人は、住民票を移動させるときに市区町村役場の年金課で「被保険者住所変更届」も提出して下さい。
尚、厚生年金保険に加入している人は、会社の庶務課(事務担当部署)に転居したことを伝えるだけで、会社から年金関連の住所変更手続きを実施してもらえます。
海外移住時には住民票の海外転居届けが必要
年金を滞納したまま海外移住することは可能です。
ただし、何の手続きもせずに海外移住してしまうと、不在時に催告状や督促状が届き、財産差し押さえが執行され、口座や動産・不動産が差し押さえられる可能性があります。
かならず移住する前には、年金事務所で海外転居届を提出し、滞納分の処置も実施するようにしましょう。
もちろん、海外に移住する場合も、年金保険にそのまま加入し続ける(任意加入)ことは可能です。
任意加入するなら、海外在住期間に死亡した場合や病気等で障害が残った場合にも、遺族基礎年金や障害基礎年金の受給が可能になりますので、万が一のことを考えるなら年金登録を残しておく方が良いでしょう。
◆日本年金機構公式サイト:「海外居住で現況届を提出される方、海外へ住所を移される方、海外居住で引っ越しされる方、海外居住者で海外の口座へ年金の振り込みを希望される方」
◆日本年金機構公式サイト:「国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)」
年金が高いと感じる理由とは
国民年金保険料は、物価などを考慮して年度ごとに変わります。
平成29年4月から翌年3月は、毎月16490円。年々上がる傾向にあります。
会社員であれば、厚生年金と言う名目で給与天引きされていますし、半額は会社持ち。
しかし、いざ退職すると全額自分で支払う必要があり、負担に感じてしまいます。
無職の上に、支払いが増えるのですから、「高くて払えない」という事態も発生します。
借金がある人なら、まずはその返済を優先してしまいますので、年金は後回しになりがちです。
税金や国民健康保険料も負担に
退職して無職になると、国民年金だけでなく、他にも自分で払わなくてはならないものがでてきます。
- 国民健康保険料
- 住民税
これらは、納付書に従って各自治体に納付することになります。
住民税についても、滞納で延滞金や、最悪差し押さえに発展するのは同じです。
クレカでの支払いに注意
年金はクレジットカードでも支払うことができます。
この場合に年金を未払いとしている場合には信用情報に未払いの履歴が残ってしまうことになるため注意が必要です。
クレカ払いが遅れると審査で悪影響
年金をクレジットカードで払っているということは、年金自体は納付されています。
これは、利用者本人が払っているわけではなく、カード会社が立て替えているのです。
このカードの支払いをしなかった場合には年金を払わなかったのではなく、カードの支払いに遅れているという情報が記録されてしまいます。
クレジットカードカードの支払いは信用情報に、24ヶ月分記録されています。
この情報をクレジットヒストリーと言います。
クレジットヒストリーはクレジットカードや借入金の審査で最も重要な情報の1つです。
クレジットヒストリーに遅れが多い人は「支払いにルーズな人」と判断され審査では著しく不利になります。
また、クレジットカードの延滞が解消されるまではクレジットカードの利用は停止されるため、翌月以降の年金の支払いはできません。
さらに、延滞が61日以上続くと、「延滞」という事故情報が記録されてしまい、いわゆるブラックという状態になってしまいます。
ブラックとなってしまったら、以後5年間はあらゆる審査に通らなくなってしまいます。
クレジットカードで年金を支払っている人は、現金で納付するよりもリスクが高くなります。
唯一、年金の支払いで「支払いに遅れた」という情報が、信用情報に記録される支払方法ですので、他の支払方法を選択している人よりも、支払いに遅れないように特に注意しましょう。
国民年金の納付は国民の義務!
「実際に老後に年金を受け取れるかどうか分からないから、年金保険料を払わない」と考える人もいます。
ですが、国民年金保険料を納付するのは、国民の義務でもあります。
「年金がもらえるから払う」のではなく「義務だから払う」のです。
2年分を一括で支払えば約1ヶ月分の保険料を節約することもできますので、ぜひ振替制度を利用して延滞しないように納付して下さいね。