滞納金のすべて!計算方法や時効,減免,免除制度【国保,年金,税金】
絶対に借金はしないと決めている人でも、税金や携帯電話の料金などを滞納してしまい、思わぬ滞納金を支払うことになる可能性があります。
滞納金はどのように計算するのか、また、時効や減免制度があるのかなど、滞納金について知っておきたいことをまとめました。
滞納とは縁の無い生活を送っている人も、決して一生滞納しないとは言い切れません。
後学のためにも、ぜひご覧になって下さい。
記事の目次
滞納金とは?延滞金は何を意味する?
滞納金とは、納期までに支払わなかったお金すべてを指しています。
税金なら支払いが済んでいない全額、クレジットカードなら利用料金、カードローンや住宅ローンなら返済額など、いずれも納期限までに支払わなかったものはすべて「滞納金」と呼ばれることになります。
一方、延滞金とは、延滞したことに対する金銭的なペナルティとして請求されるお金です。
税金の場合は「延滞税」と呼ばれますし、一般的な融資に対しては「遅延損害金(本来の金利よりも高めの金利で計算される利息)」と呼ばれます。
つまり、滞納すると、滞納金に加えて延滞金を支払う可能性が生じるのです。
滞納金の支払いは督促状で!
通常の債務や税金が「滞納金」と呼ばれるようになると、債権者から新しい納付書と「督促状」が送付されます。
最初に郵送された納付書が有効期限内のときはその納付書を使って支払いを済ませることができますが、有効期限が切れているときは「督促状」と同時に送付された納付書を使って支払いましょう。
通常、督促状には滞納金の金額(当初の請求額と同額)と再納付期限に関する情報が記されています。
延滞金は滞納する日数によって計算しますので、延滞金は滞納金の支払いが完了するまでは請求されないのが一般的です。
尚、個人的にお金を貸し付けている人は、次の記事を参考にしてみて下さい。
滞納金の計算方法
支払い期限を過ぎると、借りているお金や税金が「滞納金」と呼ばれるようになります。
つまり、「滞納金」は通常の支払いの呼び方が変わっただけですので、元々の税額や返済額、利用金額と同額です。
延滞金の計算方法は滞納金の種類によって異なる
滞納金は計算する必要がありませんが、延滞金は滞納金の種類によって計算方法が異なりますので、どの程度の延滞金か知りたい人は債権者に問い合わせるのが一番です。
延滞金を計算する上で知っておきたい3つのルールを紹介します。
延滞金の計算式
延滞金の計算式は、次のようになります。
延滞した日数と延滞利率(年利)を当てはめ、計算してみましょう。
延滞金=滞納金×延滞した日数÷365(閏年は366)×延滞利率
税金は2,000円未満の延滞金は徴収しない
国税においても地方税においても、延滞金が2,000円未満のときは、延滞税は徴収されません。
そのため、軽自動車税などの比較的金額が低い税金は、1年以上滞納しても延滞税を課せられないことがあります。
遅延損害金は通常の金利に代わって適用される延滞金
カードローンなどのローンの返済が遅れると、通常の金利ではなく遅れた日数分だけ遅延損害金利率が適用されます。
例えば、年利14%のカードローンを利用している人が、期限までに10万円返済しなくてはならなかったにも関わらず、10日間遅れて返済した場合は、その10日間の利息として通常の金利(14%)ではなく遅延損害金利率(18~20%に設定されていることが多い)が適用されます。
つまり、滞納している間だけ、高利率が適用されるのです。
通常の利息に加えて遅延損害金が請求されるわけではありませんので、ご安心ください。
滞納金に時効はある?
ほとんどすべてのものには時効(消滅時効)があり、いつかは時効を迎えて、支払い義務を免除されます。
一般的な消滅時効成立の期間を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
尚、時効は「債権者が支払いを最後に請求した時点」もしくは「債務者が支払う意思を最後に見せた時点」からカウントし始めますので、債権者による請求や債務者による一時金の支払いがある度に時効成立までの期間が繰り下げられてしまいます。
税金の滞納金
税金の申告書を期限内に提出している場合は3年、申告書を期限内に提出していない場合は5年で、消滅時効が成立します。
もちろん、途中で税務署や自治体から督促状が送られてきたら、その時点で時効カウントがリセットされますので、時効成立までの期間が繰り下げられます。
また、脱税の意志がある場合(もしくは意図的に脱税していると判断される場合)は、時効成立までの期間は7年になります。
国民年金保険料の時効は2年で成立
国民年金法第102条4項で、国民年金保険料の時効は2年で成立することが定められています。
ただし、将来受け取る年金額を増やしたい場合は、納付期限を過ぎても5年以内なら追納制度を利用することができます。
保育料や介護保険料も2年で時効成立
自治体が主となって請求する保育料や介護保険料も、当初の納期限から2年で消滅時効が成立します。
もちろん、途中で督促状が送付されたり請求を促す電話がかかってきたりするときは、その時点で時効のカウントはリセットされます。
公共料金の滞納金
水道料金やガス料金などの公共料金の滞納金も、一定期間が経過すると消滅時効が成立します。
いずれも消滅時効成立までの期間は2年です。
NHK料金は5年で時効に
NHK料金の支払いは他の公共料金よりも時効成立までの期間が長く、5年を過ぎてから支払い義務が消滅します。
支払いを怠ると裁判で訴えられることもありますので、料金をきちんと支払う方が良いでしょう。
民間業者からの融資の滞納金
特に納期限を定められていない場合は、消費者金融や金融機関などからの融資は5年経てば消滅時効が成立します。
ただし、一時的にお金を支払ったり督促を受けたりすると、時効のカウントがリセットされますので、消滅時効成立までの期間が繰り下げられます。
尚、友人や親族などの知り合いからお金を借りる場合は、消滅時効成立までに10年かかります。
携帯電話料金の滞納金
携帯電話料金の支払いも、5年経てば消滅時効が成立します。
ただし、滞納して2~3ヶ月ほどで携帯電話から強制解約されてしまいますので、生活に支障が出てしまいます。
ドコモとauの強制解約までの流れについては、次の記事でまとめています。
ドコモの料金が払えない!支払いを滞納するといつ止められる?【携帯会社に聞いてみた】
auの料金を払えない!滞納するといつ止められる?【携帯会社に聞いてみた】
クレジットカードの滞納金
クレジットカードの滞納金も、5年で消滅時効が成立します。
もちろん、すんなりと時効が成立することはなく、何度も督促状が届いたり、裁判に訴えられたり、財産が差し押さえになったりしますので、時効成立を待つよりも早めに支払う方が楽だと言えるでしょう。
奨学金の滞納金
奨学金の滞納金にも時効があります。
ただし、奨学金を貸し付けてくれる財団(日本学生支援機構が一般的)は営利目的の団体ではありませんので、民間企業から融資を受けるときのように5年で時効成立となるのではなく、善意の個人から融資を受ける場合と同様、10年で時効が成立することになります。
滞納金と税金の免除・軽減
時効成立までには2~10年がかかりますので、そう簡単には支払い義務から逃れることはできません。
ですが、それぞれの減免制度を利用するならば、今すぐ滞納金を免除もしくは軽減することが可能です。
尚、いずれも滞納が長引くときには減免制度が適用されないことがありますので、できるだけ滞納する前に役所の担当部署に出向くようにして下さい。
住民税(県民税・市民税・区民税)の滞納金と減免制度
住民税を滞納すると、滞納金と延滞税が発生します。
延滞税は滞納1ヶ月後から高利率(平成29年の場合:滞納1ヶ月は年利2.7%、1ヶ月以降は年利9.0%)になりますので、できるだけ滞納せずにすぐに支払うようにしましょう。
尚、所得が一定基準以下の場合は住民税を減免してもらうことが可能ですので、所得を証明する書類を持って役所の税務課に出向きましょう。
次の記事の「住民税減額・免除の基準」を参考にしてください。
固定資産税の滞納金と減免制度
固定資産税を納期までに支払わないと、滞納金と延滞税が請求されます。
次の条件に該当する場合は固定資産税の減免を受けることができますので、滞納する前に必ず減免措置を申請するようにして下さい。
尚、固定資産税は自治体が管轄する地方税です。
詳しい制度の利用法については、お住まいの自治体に問い合わせてくださいね。
固定資産税の延滞税
平成30年1月1日から平成30年12月31日までの期間の延滞税は以下のようになっています。
- 2ヶ月以内:年2.6%
- 2ヶ月超:年8.9%
銀行カードローンで200万円借りた場合の金利が10%前後という程度ですので、2ヶ月を超える延滞税の税率は、場合によっては銀行からお金を借りた場合の利息よりも大きくなることもあるのです。
賃貸住宅として使っている不動産の土地
市街化区域農地を所有している人が、農地転出後に賃貸住宅を建てると、固定資産税が減税されることがあります。
新築住宅の住宅部分
新築住宅は、居住部分の面積が50平米~280平米で床面積の2分の1以上の物件なら、固定資産税の減額を受けることができます。
長期優良住宅の住宅部分
長期優良住宅に認定されると、固定資産税の減額を受けることができます。
一般の新築住宅は3年(3階建て以上の耐火住宅は5年)の減額措置ですが、長期優良住宅は5年(3階建て以上の耐火住宅は7年)もの減額措置を受けられますので、家を建てるときは長期優良住宅を検討してみて下さい。
長期優良住宅のその他のメリットについては、次の記事で詳しく解説しています。
相続税の滞納金と減免制度
相続税は高額になることが多いですので、担保を提供することで5~20年に分割納付することが認められます。
どうしても期限(相続してから10ヶ月)内に支払えないときは、早めに担保を提供して分納の申請を行いましょう。
尚、相続税は滞納3ヶ月目から高金利(平成29年の場合:滞納2ヶ月間は年利2.7%、3ヶ月目以降は年利9.0%)の延滞税が課せられますので、できるだけ相続後10ヶ月以内に支払うようにして下さい。
相続税の減免措置としては、次のものがあります。
未成年者控除
相続人が20歳未満の場合は、1年当たり10万円が控除されます。
障害者控除
相続人が障害者の場合は、相続人が85歳になるまで1年当たり10万円(特別障害者は20万円)が控除されます。
贈与税の滞納金と減免制度
贈与税は、贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日に申請・納税しなくてはいけない税金です。
相続税と同じく国税で、滞納3ヶ月目から高金利(平成29年の場合:滞納2ヶ月間は年利2.7%、3ヶ月目以降は年利9.0%)の延滞税が課せられますので、できるだけ期限内に支払うようにして下さい。
尚、次のケースに該当するときは、贈与金が一部非課税になります。
直系尊属による住宅取得資金
直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受けたお金が住宅取得のための資金である場合、省エネ住宅は最大1,200万円、その他の住宅は最大700万円(平成29年度)までは贈与税がかかりません。
◆国税庁公式サイト:「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
直系尊属による教育資金
直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合は、最大1,500万円まで贈与税がかかりません。
◆国税庁公式サイト:「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
直系尊属による結婚・子育て資金
直系尊属から結婚資金や子育て資金の贈与を受けた場合は、最大1,000万円(そのうち、結婚資金は300万円まで)までは贈与税がかかりません。
◆国税庁公式サイト:「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
自動車税・軽自動車税の滞納金と減免制度
自動車税や軽自動車税も、納期までに納付しないと滞納金が発生します。
いずれも地方税(自動車税は都道府県税、軽自動車税は市町村税)ですので、どうしても支払えないときは管轄の税務課に相談してみて下さい。
次の記事でも自動車税と軽自動車税について解説していますので、ぜひご覧ください。
障害者世帯が利用できる減免制度
自動車税も軽自動車税も、対象となる車両を障害者自身が運転する場合、もしくは障害者と生計を一つにする家族が障害者の移動のために車両を利用する場合に、最大45,000円まで納税が免除されます。
軽自動車税の減免制度
生活保護受給者の生活維持に車が欠かせないときは、軽自動車税が免除されることがあります。
また、災害によって使用できなくなった軽自動車も、軽自動車税免除の対象となります。
滞納金回収までの流れ
滞納金を回収するまでの流れは、税金であっても民間金融機関であってもほぼ同じです。
主に次の3段階で、滞納金回収のための最終手段である「財産の差し押さえ」が実施されます。
第一段階:督促状の送付
督促状が送付されます。
督促状には滞納金と再納付期限が記されています。
第二段階:電話や訪問、書面による催告
督促状に記されている再納期限までにお金を支払わない場合は、電話や自宅訪問、郵便などによる催告が実施されます。
消費者金融やクレジット会社などでお金を借りている場合は、契約時に自宅の固定電話番号や勤務先の電話番号を登録しますので、債権者が携帯電話に電話をかけたときに滞納者が応対しないと、自宅や勤務先に電話をされてしまうことがあります。
第三段階:財産の差し押さえ
財産差し押さえ予告書が届いてから、財産の差し押さえが実施されます。
差し押さえ予告書が届いた時点で異議を申し立てると、訴訟になり、被告人として訴えられることになります。
もちろん訴訟に負けると、滞納金や延滞金はもちろん、督促手数料や裁判費用も請求されますのでご注意ください。
滞納金詐欺が増えている!
税金も借金も、いずれも滞納せずに支払うことが一番です。
ですが、急激な収入減により、何らかの税金や借金を滞納してしまっている人が多いのも事実です。
最近、そのような世情を悪用して、滞納金を騙る詐欺が増えてきています。
滞納金の支払いを促す迷惑メール
「滞納金を○月○日までに支払わないと自宅を競売にかけます」などの嘘のメールを手当たり次第に送り、専用口座に振り込ませる詐欺が横行しています。
税金を滞納している場合も金融機関の返済を滞納している場合も、いずれも正式な納付書が自宅に届きますので、メールで滞納金の請求が行われることはありません。
「滞納金」「競売」などのキーワードが記されたメールは間違いなく詐欺ですので、開かないようにしてくださいね。
滞納金Gメンを騙る電話
また、滞納金Gメンを騙って「あなたの滞納金によって莫大な延滞金が発生しています。今すぐ滞納金を一括で○○に振り込んで下さい」といった内容の電話がかかってくることがあります。
振り込み詐欺の新手の手法ですので、絶対にひっかからないようにしてくださいね。
自己破産すると滞納金の支払いはどうなる?
自己破産しても、すべての支払いから解放されるわけではありません。
免除されない滞納金は、大きく次の2つに分けることができます。
税金
自己破産しても、税金の納付義務からは逃れることができません。
ただし、生活保護受給が認められると、住民税や軽自動車税などの納付が免除されることもあります。
次の記事もぜひご覧ください。
浪費やギャンブルで生じた借金
浪費やギャンブル、ギャンブル性の高い投資などで生じた借金も、自己破産しても帳消しにはなりません。
次の記事をぜひ読んで、ギャンブルや浪費の愚かさに気付いて下さい。
支払いが「滞納金」になる前に手を打とう!
通常の支払いが「滞納金」という名前に代わると、本来ならば支払う必要がない「延滞金」が発生してしまいます。
あなたが本当にお金を無駄にしたくないのなら、「延滞金」を支払わなくても済むように、早めに納付や返済を済ませるようにしてください。
また、どうしても支払いが困難なときは、税金の場合は該当する役所の窓口、民間金融機関の場合はそれぞれの企業のコールセンター、多重債務に悩む場合は法律事務所に、早めに相談するようにして下さいね。