借金で生活苦でも税金は免除されないの?本気で払えないときは?
税金を払うことは国民の3大義務の1つでもありますが、その税金が生活を苦しめる原因になってしまうこともあります。
生活苦でも納税の義務は免除されないのか、生活保護や自己破産時の税金事情、本気で税金が支払えないときの措置について解説します。
記事の目次
税金滞納と生活苦の無限ループ
税金は国民の負担を平等にする仕組みの1つですので、生活苦だからといって、税金を支払わなくても良いということにはなりません。
しかしながら、生活に余裕がなくなると、税金を払うことが大変になって滞納することになります。
滞納してももちろん納税義務は免除されませんので、滞納期間が長引けば長引くほど延滞金が加算されて税負担は大きくなってしまいます。
つまり、生活苦から税金滞納、税金滞納から更なる生活苦へと、逃れることが困難な無限ループにはまりこんでしまうことになるのです。
自己破産をしても納税義務は残る
生活苦だけでなく借金苦になってしまうと、自己破産などの手段を選択する人もいます。
自己破産とは、裁判所に「すべての借金について、支払いは不可能である」ということを認めてもらう法的措置です。
自己破産が決定するt、20万円以下の預貯金などの生活維持に不可欠な最低限の財産以外はすべて処分して、借金返済に充当することになります。
ただし、自己破産をしても、すべての借金や滞納金から解放されるわけではありません。
税金は「免責されない債券」
破産法253条の1項では、「租税等の請求権」は自己破産しても支払い義務が免除されないと定められています。
つまり、住民税や自動車税、固定資産税などを滞納していた場合、自己破産したとしても滞納分の支払い義務は残るのです。
もちろん、自己破産後も、税金は滞納分も新規分も請求が続きますので、放置期間が長くなればなるほど請求額が増えてしまうことになります。
住民税などを滞納したときの処分については、次の記事で詳しく解説しています。
国民年金や保育料の納付義務も残る
破産法253条1項で記されている「租税等の請求権」には、住民税や自動車税、固定資産税などのいわゆる「税金」だけが含まれるのではありません。
健康保険料や国民年金、自治体で管理している水道代、保育料、給食費なども含まれますので、税金と同じく、自己破産しても健康保険料や国民年金・水道代・保育露湯・給食費等の納付義務はなくなりません。
もちろん、滞納期間によっては延滞金も発生しますので、長く放置することは得策とは言えないでしょう。
次の記事では保育料や水道料金の滞納について詳しく解説していますので、ぜひご覧になって下さい。
ギャンブルや投資による借金も残る
破産法252条1項では、ギャンブルや浪費による借金は自己破産しても免責されないことが定められています。
生活維持のためにやむを得ず作った借金なら、自己破産が認められると返済責任から解放されますが、パチンコや多額の買い物、競馬、FX、バイナリーオプション等で作った借金は、自己破産認定後も返済義務が残るのです。
次の記事もぜひチェックしてみて下さい。
生活保護者は税金納付義務がほぼ免除
自己破産では、税金から逃れることができないことが分かっていただけたでしょうか。
次は、自己破産と同じく生活に行き詰った人が辿りつくことが多い「生活保護」について考えていきましょう。
自己破産が法的措置であるのに対し、生活保護は福祉制度の1つです。
つまり、生活保護は最低限の文化的な生活を維持するための手段ですので、税金も含めた大半の支払い義務が免除されることになるのです。
国民年金と健康保険、住民税が免除
生活保護を受給している期間中は、国民年金と健康保険、住民税が免除されます。
収入にもよりますが、いずれも年に10万円以上の金額となりますので、免除されることで生活苦から脱出しやすくなりますね。
国民年金保険料免除事由届を提出しよう!
尚、国民年金だけは、生活保護受給期間中にかならず年金事務所に「国民年金保険料免除事由届」を提出して下さい。
国民年金保険料免除事由届を出すと、国民年金を支払わなくても保険料は「免除」として取り扱われますので、将来の年金額にしっかりと反映させることができます。
一方、国民年金保険料免除事由届を出さないと「滞納」として取り扱われ、将来の年金受給額に反映されず、結果的に受け取れる年金額が減少してしまいます。
次の記事もぜひチェックしてみて下さい。
就労所得がある人は減免手続きを行う
生活保護を受けながらも、就労所得を得ている人はいます。
その場合は給料から所得税等が天引きされますので、後日、期間内に自治体の役場の税務課で所得税や住民税、医療保険等の減免手続きを行って還付を受けましょう。
税金の滞納分の支払いが猶予される
尚、生活保護を受ける前に税金を滞納していた場合は、生活保護受給期間中は滞納の支払いが猶予されることもあります。
ただし、手続き上もしくは役所側の把握ミスによって、自宅に税金滞納分の請求書が届くこともありますので、かならず請求書に記されている問い合わせ窓口に電話をかけ、生活保護受給中であることを伝えて下さい。
「勝手にお役所で手続きをするでしょ?」と放置しておくと、誤認から、財産指し押さえなどの手続きが進行してしまうこともありますよ。
生活保護受給期間が長引くと税金が時効に?
意図的に脱税するときは7年、意図的ではなく税金滞納するときは3~5年で納税義務が消滅時効になります。
本来ならば、自治体が請求する度に時効はリセットされてしまいます。
しかしながら、生活保護受給期間が長引き、その間は税金請求が行われないとすると、3~7年が過ぎて、生活保護受給前の滞納金の支払い義務も消滅してしまうことがあります。
もちろん、税金の滞納分を支払いたくないから生活保護を受給するというようなことは言語道断ですが、生活保護の期間によっては税金の滞納分を支払わなくてもよくなることがあるということは覚えておいて損はないでしょう。
税金が支払えないときは税務課で相談
税金や国民年金、健康保険などが支払えないときは、まずはお住まいの税務課に相談してみて下さい。
「相談するのも面倒だから滞納する」というのでは、問題を先送りしているだけで、何の解決にもなりません。
延納や分納が認められることもある
税務課で相談すると、支払い期間が延びたり(延納)、分割払いが認められたり(分納)することがあります。
また、税金減免の条件に合うのかについても確認してもらえますので、場合によっては税額自体が減ることもありますよ。
役所に与える心証を良くするためにも、できれば納付期限内に税務課に出向くようにしてください。
税金の時効が成立することはほぼない
生活保護を受給するようになると、税金の請求が一時的に行われないようになりますので、消滅時効が成立しやすくなります。
しかしながら、生活保護を受給していない場合は定期的に請求書(督促状)が役所から送付されますので、督促状送付の度に時効期間がリセットされ、消滅時効が成立する可能性はほぼ皆無と言えます。
「時効が成立しないかな~」と妄想する時間があるなら、積極的に税金を支払って、早めに責務を果たすようにしましょう。
納税しなかったらどうなるのか
「家族の生活が大事」「何でそんな金額を支払わなくてはいけないのか」そういった理由で、税金を納めなかった場合、どのようなデメリットが生じてくるのでしょうか。
具体的な例を挙げてみていきましょう。
強制執行が入り差し押さえられる
先に話したように納税は義務です。
「払いたくないから」で払わなくてもいいものではありません。
また税金は皆同じ金額ではありません。
前年度の収入金額に基づいて、計算されていますので、同じ収入金額があった人には同じ税金が課されています。
つまり支払える人も、当たり前にいるのです。
そのため税金を滞納した場合には、ペナルティが課せられます。
代表的なペナルティが差押えです。
差押えも1度の滞納で、される訳ではありません。
国や市町村で滞納が確認できた時点で、督促の書類や電話連絡が入ります。
そのときに状況を相談し、分納などの方法を取れればいいのですが、かたくなに連絡を取らないでいると最終的には換金できる家財や預貯金の差押えという強制執行が入りますので気を付けてください。
認可保育園や公立幼稚園の入園資格がなくなる
「税金を支払うと家計が厳しくなる」と感じている世帯の割合で。
一番多いのが子育て世代だとされています。
特にまだ子供が保育園や、幼稚園に通っていない家庭だと配偶者のみの収入と児童手当のみの収入になってしまいます。
そのため、特に派手な生活をおくらず、何をしなくても生活が苦しくなっていきます。
しかしそこで税金を納めていないと、近い将来子供が保育園や公立幼稚園に入園することすらできなくなってしまいますので注意をしましょう。
元々入りにくい保育園ですが、募集要項の項目に必ず記載してあるのが「税金の滞納がないこと」という文言です。
つまり滞納していると入園することすらままならないのです。
かといって無認可や私立幼稚園ですと、毎月の保育料が高く(補助金制度はあります)、ますます生活が困窮してしまいます。
復職しようとしても預かってくれるところがないと、働けませんし、働かないと生活は苦しくなっていく一方という悪循環が生まれてきてしまいます。
生活が苦しいときには借金をしない
生活が苦しくなってくると、その場しのぎでカードローンなどに手を出してしまう人もいます。
しかし、このようなことをしていては、ますます生活が困窮していきます。
月々の返済が増えてしまいますので、いずれは返済が不可能な状態に追い込まれるでしょう。
したがって、カードローンは返済の見込みがあるときにだけ、利用をするように心掛けてください。
返済のあてがないままに、カードローンを利用し続けると、いずれは自己破産などの結末になってしまう危険性もあります。
収入があっても困窮している場合にはどうしたらいいのか
生活保護を受けとるまでもなく、収入は確保できているが困窮しているという、家庭が多く存在します。
しかし、「税金を支払うことはできる」「しかし支払うと生活が立ち行かなくなる」そういった思いから、家族を守るためにと納税しなかった場合、先に話したように差押えなどの強制執行が入り、結局家族に迷惑をかけてしまいます。
そこで、ある程度収入がある家庭は、どうしたらいいのか見ていきましょう。
昨年分の額面で計算をされることを念頭に
税金は前年度分の手取り金額ではなく、総支給額で計算されます。
高額所得であればあるほど、納税金額は高くなっていきますので注意が必要です。
頑張って働いて額面が上がると、ついふだんは手を出せない高級なものを購入しがちですが、その税金は翌年に発生しますので、すぐには余りぜい沢をしない方がいいでしょう。
しっかりと、税金額を含めて実際の手取り収入を見た上で、生活の水準を上げてください。
納税の「義務」に苦しんでいるならば生活保障の「権利」を使おう
ある程度収入がある人で納税が厳しいのであれば分納して、生活水準の見直しを計ればいいのですが、低所得の場合は生活の水準見直しといわれても、既に限界を迎えているところもあるでしょう。
「もうこれ以上納税金額を支払うと生きていけない」という程度まで追い込まれているのであれば、生活保障の「権利」を使ってみることもいいでしょう。
雇用保険(失業保険)制度
「職がない=収入が途絶える」ということですから、失業状態で支払える税金が確保できなという場合には、急ぎ失業保険受給の手続きを行いましょう。
しかし失業保険を受給したからといって、支払うべき税金が勝手になくなる訳ではありません。
必ず自分自身で手続きをしないと、税金はそのまま発生します。
ポイントは失業保険受給申請と同時に「国民年金の免除」「住民税の減免」を行うことです。
住民税の減免は市区町村によって、受付可能なところと不可なところもありますので、併せて確認しておくといいでしょう。
万が一に不可であっても、分納の相談は可能です。
求職者支援制度
求職者支援制度とは失業保険を受給できない人向けの制度になり、職業訓練校などにいくことを条件に月10万円程度を受給できる制度のことです(詳しい条件などに関しては管轄のハローワークにて相談してください)。
この場合も国民健康保険の減免相談が可能です。
生活困窮者自立支援
生活困窮者自立支援とは分かりやすくいうと、生活保護にまでは値しないけれどもその一歩手前にある状態の人たちのための制度です。
様々な支援がありますが、例えば家賃補助(3か月上限)や、就職についての相談ができたり、資金の貸付けなどが相談できたりします。
つまり今までは様々な窓口に相談にいっていたのが、ひとつの窓口に集約できるという制度です。
そのため、失業保険などとは異なり、何か収入を得られるものではありませんが、それでも相談できるところがあるというのは、大きな支えになってくるのではないでしょうか。
失業状態であるのならば、国民健康保険の減免相談が可能です。
生活保護
もうどうしても働くことができないという場合には、生活保護受給も視野に入れておきましょう。
生活保護受給になれば基本的に納税分は免除となります。
またNHK受信料も免除になりますし、保育料なども免除です。
気になる医療費ですがこちらも無料。
賃貸家賃の更新料なども保護費から出してくれます。
しかしその状態で甘んじるのではなく、その間に収入面を確保し、できる限り早く通常の生活基準に戻せるように、努力をしていく必要があります。
借金と税金はどちらが優先なの?
ドラマや映画の影響を受けて、借金の取立てに対して間違ったイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
借金の取り立てで家まで押しかけて大声で怒鳴り散らすなどの行為は、法律で禁じられています。
借金の返済期日に遅れても、脅されることなどはないので安心してください。
もし借金の取立てなどに間違ったイメージを持っていると、税金の支払いよりも借金の返済を優先するかもしれません。
しかし、税金を支払わずに放置しておくと資産を差し押さえになる可能性もありますので気を付けてください。
納税は国民の義務であるため、当然、借金よりも税金を優先しなければなりません。
ただし、資産を差し押さえられるのは、税金を支払わずに放置した場合です。
納税の意思を示すことや、納税の相談を行うことなど前向きに納税を検討していれば、すぐに資産を差し押さえられることはありません。
そのため、税金を納めることが大変だと感じた場合は、すぐに市役所や税務署などに相談にいきましょう。
そうすれば、税金を滞納せずに借金の返済もうまくやり繰りできる可能性もあります。
借金も放置はできない?
納税を優先する必要はありますが、借金を放置することはおすすめできません。
返済が遅れると返済期日の翌日から遅延損害金が発生します。
遅延損害金は返済が遅れたペナルティで、利息制限法で定められた上限は年利20%です。
多くの金融機関が遅延損害金を上限の20%としており、支払いが遅れると借金がどんどん膨らんでしまいます。
なお、返済が遅れた翌日から遅延損害金と、通常の金利の両方がかかるケースもあるので注意しなければなりません。
金利が高く設定されている消費者金融から、お金を借りている場合は特に注意が必要です。
また、そのまま数か月も借金を返済せずに放置をしていると、個人信用情報が「ブラック」になり、新規のローンの審査に通ることが難しくなります。
最悪の場合、債権者から裁判所に訴えられ、給与の差し押さえなどをされた上に、借金の一括返済を求められます。
そのようなことになると、職場にもばれ、普通の生活をしていくことが困難になるでしょう。
そのため、税金の滞納だけでなく、借金を延滞することもやめておきましょう。
借金の返済を滞納し始めたら、早めに金融機関に相談をしてみることをおすすめします。
毎月の返済額を減らす方法は?
税金を滞納しないように借金を返済するためには、借金の返済金額を少なくすることが効果的です。
例えばカードローンの中には、借入残高10万円までは毎月2,000円と返済金額が少ないものもあります。
またクレジットカードのリボ払いでは利息分程度の支払いまで支払金額を減らすことも可能です。
また、複数の金融機関からの借り入れがある場合には、おまとめローンを使って借金を一本化し、月々の返済金額を減らすこともできるでしょう。
ただし、毎月の返済金額を減らせば、元金がほとんど減らず返済期間が長期化してしまいます。
少しでも元金を減らすためには、資金に余裕があるときに繰り上げ返済を行うことがおすすめです。
毎月1,000円多く返済するだけでも、返済総額と返済期間には大きな違いが出るので積極的に繰り上げ返済を行うようにしましょう。
節約や副業の検討も必要?
借金がある人が税金の支払いをきついと感じるのは、借金の返済が生活に重くのしかかっているからです。
根本的な解決方法は、借金を少しでも早く完済させることでしょう。
少しずつでも節約をして繰上げ返済に資金を回せば、借金の完済は確実に近づいてきます。
格安スマホに乗り換えたり、コンビニの利用を控えたりするなど節約のポイントは人によって様々でしょう。
しかし、既に十分に節約しているという人は、他の手段を検討しなければなりません。
これ以上は節約できないなら、副業で収入を増やすことも手段のひとつです。
ただし、勤務している会社で副業を禁止していないかを先に確かめる必要があります。
また、長時間の副業は過労死ラインを超える危険があるため、注意が必要です。
そこで、閉店後の清掃などのアルバイトは短時間で終わるため、体力的な負担を最小限に抑えることができるでしょう。
また、体力に余裕があるときに日雇いのアルバイトを行うこともおすすめです。
今月ピンチ!すぐお金が必要!日雇いバイト、日払い現金手渡しの方法や注意点まとめ
税金分の予算を取っておこう!
税金の納付書が自宅に郵送される場合、金額の多寡に関わらず納付期限が短いことが多いです。
例えば2.5リットルの自家用自動車を保有している場合、5月上旬~中旬に「自動車税納付書」が届き、5月末日までに45,000円(平成29年基準)を納めなくてはなりません。
生活苦のために余剰資金がない家庭の場合、急に45,000円ものお金を準備することは至難の業ですよね。
ですが、自動車税や固定資産税などは毎年支払う税金ですし、おおよその金額も予め把握することができます。
税金滞納をしないためにも、年間の税額を合計し、12に分けて、毎月その分ずつ貯めておくようにしてはいかがでしょうか。