お金がないポスドクがすべきこと3つ
◆全国大学院生協議会公式サイト:「2015年度大学院生の研究・生活実態に関するアンケート調査報告書の概要」
※調査対象者は修士課程・博士課程・ポスドク・RA・非常勤講師など大学院において正規職を得ていない人1,025名。
ポスドクとはポストドクター(博士後)の略で、博士号を保有しつつ非正規の立場で研究する人を指します。
数年単位の研究プロジェクトに参加したり、教員補助として1年ごとの任期を得たりしますので、基本的にはポスドク採用された研究室や参加している研究プロジェクトから給与を得て生活します。
ただし、研究費を出す機関から研究費を得ている場合も研究室から給与を得ている場合も、いずれにしても1~5年ほどの期間限定の職ですので、安定からはほど遠い立場・仕事と言えます。
そのため、ポスドクや大学院生、TA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)には、生活費や研究費、就職、授業料、奨学金等のお金に関する悩みが多く圧し掛かるのです。
お金がないポスドクにならないためにできることとお金がないポスドクがすべきことについてまとめてみました。
お金がないポスドクにならないために
ほとんどの研究室では、教授・助教授以外にも常勤講師などの正規ポストはすべて埋まっています。
そのため、博士号を取ったとしても、同じ研究室内で正規職に採用される可能性はかなり低いと言えます。
つまり、研究室内に留まっている限りは、ポスドク採用や非常勤講師、研究員等の1~5年の短期任用しかないことになるのです。
もちろん、ポスドクとして採用されるなら、余程劣悪な研究室でない限り給料は支給されます。
ですが、任期が短いため、任期が切れる前に就職活動や研究費取得活動をしなくてはならず、研究に集中することが困難になるのも事実です。
生活費や研究費の不安を抱えながらポスドクを続ける前に、ぜひとも知って欲しいことを3つ紹介します。
研究室内の先輩のキャリアパスは参考にならない
博士号取得者は毎年誕生しますが、教授や助教授、講師等の正規ポストは毎年新しい人が入れ替わるわけではありません。
たまたま博士号を取得したときに適切なポストが空いており、しかも、教授があなたの研究や才能を高く評価しているときのみ、講師職などの正規ポストに就くことができるのです。
あなたの研究室の先輩は、着実に安定したキャリアを積み上げているかもしれません。
ですが、あなたも同じようなキャリアパスを辿れるかどうかは、まったくなんとも言えないのです。
「うちの教室はみんな安定したポストに就いているのよね」と安易に構えているのではなく、修士課程・博士課程のときから計画的に自分だけのキャリアパスを描くようにしましょう。
研究費取得活動を学生のうちから実施する
学生が参加できる公募制研究費補助金制度は、日本科学協会が運営する「笹川科学研究助成」等のごくわずかに限られています。
しかしながら、教授や講師、ポスドクと組むことで、学生不可の研究費補助金制度に応募することは可能です。
学生のときから積極的に研究費補助金制度に応募しておくなら、自分で研究費を取得しなくてはならないポスドクになってからも、応募作業をスムーズに行うことできます。
練習の意味も込めて、学生時代には出来る限り多くのプロジェクトに参加するようにしてください。
ただし、自分に与えられる責任は果たさなくてはいけませんので、時間的にこなせる数だけに絞ることも大切です。
他の研究室・研究所も視野に入れる
学生時代からトータルで考えると、ほぼ10年近くも同じ環境にいる人も少なくないでしょう。
もちろん同じ研究室で研究することも悪いことではないのですが、今後の研究やお金の問題を考えると、他の研究室や研究所に移ってみることがプラスに働く可能性は高いといえます。
今の研究室にこだわるのではなく、博士号取得後の行き先として、民間の研究所や企業の研究室も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
ポスドクになってお金に困ったら
何らかのアルバイトをしている割合
◆全国大学院生協議会公式サイト:「2015年度大学院生の研究・生活実態に関するアンケート調査報告書の概要」
※ODはオーバードクター(博士課程修了後で博士号をまだ取得していない人、もしくは博士号を取得して特定のポストに就いていない人)、PDはポスドク。
大学院生だけでなくポスドクやオーバードクターも、大多数の人が研究以外にアルバイトを実施しています。
生活費や調査にかかる費用、奨学金返済、授業料など、研究活動を続けて行くためにはたくさんのお金がかかるからです。
とはいえ、アルバイトが忙しすぎてもっとも大切なはずの研究活動に支障が出てしまうのは困りますよね。
すでにポスドクになった人、しかもお金がなくて困っている人は何をすることができるでしょうか。
外国を含む他のラボを検討する
アメリカなどの海外では、ポスドク採用であっても日本の講師レベル以上の報酬がもらえることもあります。
充分な収入がもらえるなら、アルバイト活動をする必要もなくなりますよね。
国内の大学だけでなく外国の大学や研究所、国内外の企業も視野に入れて、活動の場を変えてみるのはいかがでしょうか。
長期間の研究プロジェクトを打ち立てる
プロジェクトが認証され研究費が支給されたとしても、最初の1年はプロジェクトの基本方針を立てて進めて行くのにかかりきりますし、最後の1年は他の助成金をもらうための活動、もしくはプロジェクトを延長して研究費の増額を申請する活動にかかりきりになることがあります。
つまり、プロジェクトの予定期間が3年であっても、実質研究に没頭できるのはわずか1年になってしまうこともあるのです。
研究費取得活動に時間が取られることを考慮して、なるべく長期間の研究プロジェクトを打ち立て、多額の研究費を引っ張ってくることが必要と言えるでしょう。
もちろん、多額の研究費が助成される制度には、応募する人・団体も多くなりますので、綿密かつ魅力ある研究をプランニングしなくてはいけません。
研究活動を一旦中断する
基礎研究も大切ですが、フィールドワークの重要性も年々高まってきています。
研究室から出たことがない人がポスドクとなっても、講師や助教授等の上位職に就任できる確率はあまり高くありません。
講師や助教授は、研究職と言うよりは、勉強を教えて研究を指導する「教職」ですので、研究しか知らない人の適職とは言い難いからです。
研究活動を一旦中断し、企業やその他の大学、研究所などで一社員・職員として働いてみるのはいかがでしょうか。
回り道をすることが、将来的に大きなプラスになることもあります。
研究室に残るときに注意すべきこと
お金がなくても、今のままの環境で研究を続けたいと考えるポスドクもいるでしょう。
もちろん、それも悪い選択肢ではありません。
ですが、ポスドクに研究する時間すら与えないブラック研究室とも呼ぶべき劣悪な環境に居るなら、いくら研究を続けていても、お金がない状況が改善されないだけでなく、研究生活自体も暗礁に乗り上げる可能性が高いです。
研究室に残るときは、研究室の健全性にも注目し、本当に研究者として残っても将来性のある場所なのか見極めるようにしてください。