具体例で知る!住宅ローンで家計が苦しくなる、ありがちなパターン
マイホームを手に入れるためには、通常住宅ローンを組みます。
住宅ローンは30年や35年など、長い年月をかけて返済していきます。
返済途中、住宅ローンが原因で家計が苦しくなってしまう世帯もあります。
その中には「返済できそうな額を見込んで借りたはずなのに、どうして返済が大変になってしまったのか?」と首をかしげる人も少なくありません。
住宅ローンで家計が苦しくなってしまう理由と防衛策について、3つの事例でご紹介します。
諸経費を考慮せず家計が苦しい
住宅ローンの毎月返済額を、購入前の家賃程度に抑えた世帯に多いのが、このパターンです。
それまで賃貸で暮らしていた場合、住宅を購入すると「固定資産税」が発生することを知らない人も多いようです。
固定資産税とは、毎年1月1日現在に土地や家を所有している人に課される税金のこと。
立地や土地の広さによって変わりますが、固定資産税の額は年間10~30万円程度と、決して小さな額ではありません。
住宅ローンの返済額を購入前の家賃程度とすることは悪いことではありません。
ただ、それに固定資産税額を上乗せしたうえで、返済していけるかの可否を判断することが必要です。
なお、マンションの場合は管理費・修繕積立金が毎月発生します。
これらの費用は、将来値上げされることも考えられます。
少し値上がりしても対応できる額でマイホームを購入しておくのがベストです。
教育費と住宅ローンの両立が厳しく、家計が苦しい
子どもの成長にともない、教育費が家計を圧迫してしまうケースです。
マイホーム購入当時は子どもがいない、もしくは小さいので教育費の割合が小さい世帯でも、子どもが大きくなることで習い事や塾、ランドセルや学習机……と出費が増えてしまいがちです。
小中高については問題がない場合でも、大学資金で家計がひっ迫する世帯が意外と多いです。
私立大学の場合、初年度は入学金と学費で一気に100万円以上が必要に。
文部科学省「私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」によると私立大学における初年の納付額は約131.6万円となっています。
それだけの額を急に用意するのは難しく、コツコツ積み立てていくのが一番でしょう。
仮に子どもが8歳なら、10年後に向けて毎月1万円貯めていけば、おおむねカバーすることができます。
コツコツ積立てていけるか心配な人は、毎月保険料を支払わなければならない学資保険に加入しておくのもいいでしょう。
大切なのは、住宅ローンを支払いながら教育費の準備ができるよう、借入額、もしくはマイホーム価格を調整していくことです。
習い事や塾は家計の「聖域」ではない点も強調したいです。
「子どもの教育費を節約するのは抵抗がある」と考える親は意外と多いもの。
子どものことを考える気持ちは理解できますが、教育費が膨らみ住宅ローンが払えなくなっては家族のためになりません。
家計の状態に合わせて習い事や塾の費用の上限を決める、学習机や学用品は必要性を考慮したうえで購入するなど、出費を抑える姿勢を持っていきましょう。
参照:私立大学等の平成28年度入学者に係る学生納付金等調査結果について|文部科学省
病気やけが……思わぬ収入減で住宅ローンと家計が苦しい
世帯主が病気やけがなどで収入が減り、家計が苦しくなってしまう事例です。
現実には、こういった事例は少ないかもしれませんが、もしそうなったときには解決の道筋をしっかり立てなければ住宅ローンの返済が危うくなってしまいます。
もしもに備えて予備知識をつけておきましょう。
まず、世帯主が失業や入院などの事態に陥っても、雇用保険か加入していれば失業時は「失業保険」が、健康保険に加入していれば入院や長期療養には最長1年6カ月受給できる「療養手当金」があります。
そのため一気に収入が途絶えてしまうことは考えにくいです。
とはいえ収入は減りますし、住宅ローンは個人の努力や節約で出費を減らすことができないので返済が苦しくなる事態も予想されます。
対策として、生活費の半年~1年分を「生活防衛費」として確保しておく方法があります。
住宅ローンの繰上返済資金やレジャー費、車の購入資金などとは別に、収入が危うくなるような事態に備える資金が「生活防衛費」です。
住宅ローンの返済を担保するならば、保障の手厚い団体信用生命に加入しておくのも有効です。
近年の団体信用生命保険には、病気やけがの内容にかかわらず、「就業不能」の状態になったら住宅ローンの返済が一部猶予されたり、返済が全額不要になったりするものもあります。
適用条件や詳細は個別に異なるのでよく確認しなければなりませんが、一定の安心を得ることができます。
子育て主婦世帯など、世帯主が働けなくなったときに家計へのダメージが大きい家庭は、たとえ保険料が上乗せされても、こういった団信の必要性が高いでしょう。
どうしても住宅ローンの支払いが難しくなりそうな場合は、支払いが滞る前に借り手の銀行に相談してみましょう。
中には、特別な事情があれば一定期間支払いを猶予してくれる金融機関もあります。
うまくいくとは限りませんが、最悪の事態に陥る前に、やってみる価値はあるはずです。
参照:
傷病手当金|全国健康保険協会
ネット専用住宅ローン 団信・全疾病保証|住信SBIネット銀行
全疾病特約付団体信用生命保険|楽天銀行
ここまで、住宅ローンの返済途中に家計が苦しくなる事例を3つご紹介しました。
ただしこれらは家計に注目した事例であり、変動金利における金利上昇は考慮していません。
変動金利を選択する場合は、金利変動リスクも考慮して住宅ローンを組みましょう。
余裕のある資金計画で「家計が苦しい」を避けよう
今回ご紹介したのは全て、購入時は無理のない返済額だったにもかかわらず、購入後の収入・支出の変化で返済が苦しくなってしまった事例でした。
住宅ローンを組むのは、収支が変化することを前提に行うといいですね。
住宅ローンに余裕がないなら、頭金を増やしたり、購入価格を見直すなどして住宅ローンを圧縮するのが理想です。
もし、どうしても「その価格の家」が「今すぐ」欲しなら、安定して住宅ローンを返済していけるよう家計を見直すべきです。
多くの人にとって一生に一度の買い物です。慎重に住宅ローンを組み、後悔しないマイホーム購入をしていきましょう。
ライフプラン応援事務所代表
横山 晴美
企業に属さない独立系FPとして、2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げる。以降、住宅相談・セミナーを専門に扱う。
住宅相談では保険見直し、教育費、退職後プランなど総合的な視点で資金計画、および返済計画を考案。
より多くの人に金融知識を届けるために、セミナー・執筆による情報発信にも力を入れている。
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