救急車を呼びたいけどお金がない!そんな時に知っておきたい予備知識
急なケガや病気に迅速に対応してくれるのが「救急車」ですよね。
ふだん救急車を利用していないと「救急車や治療の費用が払えないから・・・」と救急車の要請をためらってしまうかもしれません。
しかし、救急車を呼んだとしても費用は必要ないため、緊急事態にはためらわずに呼ぶようにしてください。
なぜ、救急車に関して費用を支払わなくて良いのか、今回はそんな救急車のお金の話を分かりやすく解説していきます。
救急車を呼んでもお金はかからない
救急車を呼ぶとお金がかかると思っている人もいるかもしれませんが、「救急車の料金は無料」です。
そのため、救急車を呼び利用したこと自体にはお金はかかりません。
ちなみに、救急車の発進にかかる費用は、およそ45,000円と言われていますが、この費用は全額税金でまかなわれており、各地方自治体が負担しています。
こうしたことから、私たちが救急車を呼んでもお金は取られないのです。
また、外国籍の人も納税の有無にかかわらず、119番に電話して救急車を呼んだ時に費用はかかりません。
救急車で運ばれた病院でお金がかかる
救急車自体にお金がかかることはありませんが、当然、その後の医療費や診察代は発生します。
このため、救急車に費用はかからなくても、病院に診察代を払う必要があるので注意しましょう。
ただし、診察代は健康保険で7割負担してくれるため、自己負担は3割でOKです。
よって、長期入院や手術などにならない限り、医療費が高額になるケースはそれほど多くはありません。
治療や入院の費用と時間外加算
搬送後の病院での治療と入院は、自己負担の診察代が発生します。
初めて行く病院での初診料だけでなく、診療時間外の時間外加算が加算されるので気を付けてください。
また、22時以降朝6時までの診察は深夜加算の請求が加わります。
特定療養費を請求された場合
搬送先の病院で「特定療養費」を請求されたときは、初診料以外にも追加で費用が必要となります。
特定療養費とは、各病院が自由に定め請求することができる料金で、100床以上の病院であれば請求できることが、厚生労働省によって定められています。
特定療養費が発生するのは、「救急車を利用する必要がない」と医師に判断されたときです。
たとえば、軽症であったり、緊急性がなかったりなど、そもそも救急車を使用する必要がないのに救急車を利用した場合に請求されることがあるのです。
医療費を払えない場合の対処法
医療費を払えない場合の対処法は、状況によって複数あります。
緊急時には、お金を持ち合わせている人の方が少ないため、病院も柔軟に対応してくれるので、安心しましょう。
現時点で持ち合わせがない場合
現時点で持ち合わせがない場合は、治療費を「後日払い」にしてくれる病院がほとんどです。
このため、搬送先でお金が足りなくても、後日に窓口で支払いをすれば大丈夫です。
また、クレジットカードを利用できる病院であれば、カード払いを選択するのもおすすめです。
治療費が高額でも、その場は一括払いで支払い、後から分割やリボで治療費を返していけば毎月の負担が少なく済みます。
その他にも、病院が家から近いときは、家族にお金を持ってきてもらうという手もあります。
医療費が高額になり払えない場合
入院や手術が必要になり「医療費が高額になり払えない!」という場合も、少なからずあります。
そのときは、以下の制度の利用や対処ができないか確かめてみましょう。
高額療養費制度
「高額療養費」は、毎月の自己負担額を超えた分の医療費が返ってくる制度です。
一旦治療費の支払いが必要になるものの、制度の申請をすれば毎月の自己負担額を超えた分は返ってくるため、医療費を抑えることが可能です。
毎月の自己負担額は年収と年齢によって決まり以下のようになっています。
◆厚生労働省保険局公式サイト:「高額医療費制度を利用される皆さまへ」
たとえば、69歳以下で年収約370万円までの人なら、ひと月の自己負担額の上限額は57,600円です。
このため、57,600円を超えた分は申請をすれば返ってきます。
仮に、1ヶ月の医療費が10万円の場合なら、「10万円-57,600円=42,400円」となり、42,400円が返還されるということですね。
高額療養費貸付制度
「高額療養費貸付制度」は、先に紹介した高額療養費制度で戻ってくるお金の約8割相当額(国民健康保険は約8割から約9割)を無利息で貸付してくれる制度です。
高額療養費制度は非常に優秀な制度なのですが、お金が戻ってくるのは申請してから早くても3ヶ月後というデメリットがあります。
その一方で、高額療養費貸付制度は健康保険協会の受付後2週間から3週間程度で指定口座に振り込みしてくれるというメリットがあるのです。
高額療養費制度の給付金が貸付金の返済に充てられ、残額が指定の口座に振り込まれます。
返済額に給付金が足りない場合は、返納通知書が届くので、期日までに納付しましょう。
このため、「高額療養費制度は入金が遅いので待っていられない!」というようなときに一時的な借り入れとして利用を検討するのがおすすめです。
傷病手当金
救急車で搬送された後、仕事を休まざるを得なくなった場合は「傷病手当金」の利用を検討してみましょう。
傷病手当金は、病気やケガが原因で仕事を休まざるを得なくなり、なおかつ給料がもらえないというときに、手当金が支給される制度です。
手当金が支給される期間は、「会社を休み始めて4日目から最長1年6ヶ月目まで」であり、手当金は「標準報酬日額」の2/3に相当する額が毎日支給されます。
標準報酬日額とは、「毎年4月から6月までの3ヶ月間の給与の平均を30日で割ったもの」です。
よって、毎年4月から6月までの3ヶ月間の給与の平均30万円であれば、「30万円÷30日=10,000円」となり、10,000円が標準報酬日額です。
傷病手当金制度の手当金は、標準報酬日額の2/3ですので、上記のケースでは「10,000円×2/3=6,666円」となり、1日約6,666円が支給されることになります。
救急車を呼ぶか迷ったときは?
急なケガや病気は救急車を呼ぶ必要があるのか、見分けがつきにくいケースがあります。
事故やケガなら判断しやすいのですが、病気の症状は判断が難しいのではないでしょうか。
救急車を呼ぶか迷ったときに、自分でできる対処法を解説します。
♯7119に電話相談する
救急車を呼ぶか迷ったときは、救急安心センター事業に電話しましょう。
電話で♯7119を押すだけで、医師、看護師などトレーニングを受けた相談員から適切なアドバイスが受けられます。
緊急性が高いと判断された場合は緊急出動につながれるので、救急車が来るのを待ちましょう。
♯7119の実施エリアは限定されていますが、地域によっては♯7119以外に専用の緊急電話相談の窓口が設置されています。
♯7119がない地域は県の医療情報ネットワークに専用の電話番号を紹介しているため、検索してください。
【豆知識】緊急時に民間救急や福祉タクシーは利用できない
インターネットには、緊急時に民間救急や介護タクシー、福祉タクシーをすすめている情報がありますが、間違った情報です。
民間救急とは、患者の転院や退院などを目的とした事業で、緊急時のケガや病気で連絡しても医療行為を受けることはできません。
介護タクシーや福祉タクシーは、車椅子利用者や要介護者の外出や移動、旅行などに利用できるタクシーと同様のシステムです。
ケガや体調の悪化のときに連絡しても、医療行為を伴う緊急出動はしてもらえません。
有料化しようとの議論はある
現在(2020年3月時点)では、救急車の出動自体は基本無料ですが「有料化しようとの議論」があります。
2015年5月に財務省の財政制度等審議会が、「軽症なら有料化すべきではないか」と財務相に提言しました。
この背景にあるのは「救急車の出動件数と軽症者の利用の増加」です。
総務省消防庁の「平成30年版 救急救助の現況」によると、救急出動件数は2017年中は過去最多の634万件を突破し、傷病で搬入された人の48.6%が軽症者だったというデータがあります。
ケガの症状が軽い人や、緊急性がないのに救急車を呼ぶ人が増加しているため、有料化して不要な救急車の出動を減らそうという動きがあります。
こうした動きがあるため、将来は救急車が有料化する可能性は否定できません。
まとめ
救急車を呼び、利用すること自体にお金がかかることはありません。
ただし、救急車を呼ぶほどのケガや病気ではないのに呼んでしまうと、病院によっては「特定療養費」を取られることがあるので注意してください。
また、救急車を呼んだ後に当然医師から診察を受けることになるため、診察代等の医療費が発生します。
とはいえ、場合によっては命がかかっていることもあるため、緊急と判断できるときは迷いなく救急車を利用するようにしましょう。
お金のことを考えるのはその後でも遅くはありません。