生活保護申請中にお金がないなら「臨時特例つなぎ資金貸付制度」
- 執筆者の情報
- 名前:馬沢結愛
年齢:30歳
性別:女性
職歴:平成18年4月より信用金庫勤務
記事の目次
生活保護は申請してから何日で受給できる?
生活保護を受けるレベルにまで生活がひっ迫しているのですから、なるべく早くお金が欲しいと考えます。
一体生活保護は申請指定から受け取りまでどの程度かかるのでしょうか。
原則として申請してから14日以内に生活保護の決定がなされますが、審査などに時間がかかった場合には30日程度かかることもあります。
もちろん申請が却下される可能性もゼロではありません。
生活保護は、ほとんどの場合申請した日よりカウントが始まります。
そのため第一回分の給付は申請日から、結果が出るまでの日にちを含めた金額が給付分です。
福祉事務所より連絡が来ますので、印鑑を持って受け取りに行ってください。
上記の連絡がない場合は、却下されたと考えて間違いはありません。
人によっては「審査など待っていられない。すぐに給付してほしい」と切羽詰まっている人もいるかもしれません。
このような人のため、給付日までの臨時生活費を地域のケースワーカーに相談できるようになっています。
もちろんこれらは、あくまで審査に通ったあとに相談できるものです。
生活保護は不正受給を目論む人も多いため、審査は慎重に行われています。
生活保護の基本
ニュースなどのメディアで取り上げられることも多い生活保護ですが、中にはあまり良いイメージを持っていない人もいるかもしれません。
そもそも生活保護とはどのような制度なのでしょうか。
ここでは生活保護の基本を押さえておいてください。
生活保護とは?
生活保護制度は、なんらかの事情で生活が困窮している人に対し、国が最低限の保護をする制度です。
国民が健康で文化的な最低限度の生活ができるよう、保証するとともに、自立を促すことを目的としています。
最低限の生活の定義
生活保護に出てくる「最低限度の生活」とは国(厚生大臣)が定めた「生活基準」を満たした最低限の暮らしをさせることをいいます。
生活保護を受給するためには、「生活に困窮していること」が原則となりますが、こればかりは人によって感覚が違います。
そのため支給額となる最低生活費は厚生労働省が地域や家族ごとに定めた、基準によって決定しているのです。
生活保護の受給条件
国が定める生活保護を受給するための条件は以下の通りです。
- 資産を持っていない人
土地や家、車などの財産を持っている人は、受給できません。
しかしこれらを全て処分し、それでも最低限の生活が難しいと判断されれば、受給できます。
また、借金があったり、まとまった貯金が手元ある場合は、申請できません。
- 働けない人
病気やケガ、精神疾患などの理由により、働きに出られない人を保護します。
ただし、働いていなくとも十分な生活費が確保できる人(年金受給者や家賃収入のある人など)は含まれません。
ただし年金を受けていても、それだけで生活できない人は、足りない分を生活保護で賄うことができます。
- 他に利用できる制度がない人
生活が困窮した時、国には他にも助成を受けられる制度があります。
たとえば母子寡婦福祉資金や求職者支援などです。
利用できそうな制度を全て確認し、条件が合わず受けられない、もしくは受けた後だけれど生活が困窮している、この場合は申請ができます。
- 家族や親せきに頼れる人がいない人
本人に働けない事情があり、困窮していたとしても、親や兄弟、親戚などから援助が可能だと判断された場合は受けられません。
しかし、もし身内がいても援助を拒否された場合はどうでしょうか。
その場合でも受けることができないのです。
一応受給担当者が交渉してはくれますが、結局は自分でやることになります。
援助を拒否された場合や、なんらかの事情で「親や兄弟、親戚の世話にはなれない」と思っているだけでは生活保護は受けられません。
頼れる身内のいない人が、保護の対象です。
生活保護の種類
一口に「生活保護」といっても、種類があることを知っていますか。
実は生活保護は月にまとまった金額をもらうだけの簡単なものではなく、細かく分けられているのです。
ここでは生活保護の種類について、簡単な表にまとめました。
扶助の種類 | 用途 |
---|---|
生活扶助 | 食費・衣類・光熱費など生活に必要な費用 |
住宅扶助 | 家賃の全部または一部を補助 |
教育扶助 | 子供が義務教育を受ける上で、必要な費用を補助 |
医療扶助 | 医療に必要な費用を補助(本人負担なし) |
介護扶助 | 介護を受けるために必要な費用を補助(本人負担なし) |
出産扶助 | 出産に必要な費用を補助(上限あり) |
生業扶助 | 就労に必要な資格の取得などにかかる費用の補助(上限あり) |
葬祭扶助 | 受給者の葬儀に必要な最低限の費用を補助。 読経は基本的になく、直葬となる場合が多い。 |
上記が全て受けられるのではなく、必要に応じて国が決定します。
例えば葬祭扶助は、遺族に葬儀が行える十分な財力があると判断された場合は、扶助されません。
生活保護の申請時に必要なもの
ここでは生活保護を申請するさいに必要なものをまとめます。
せっかく申請しようとしても、忘れ物があると審査が長引いたり、申請できなかったりする恐れがあるのでご注意ください。
- 生活保護の申請書・申告書
- 本人確認書類
- 健康保険証
- 印鑑
本人確認書類としては、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどの顔写真付きのものを用意しましょう。
生活保護の申請書・申告書はいずれも福祉事務所に置いてあります。
また上記の他に、必要に応じて以下のものが必要となります。
- 通帳
- 年金手帳
- 賃貸証明書
- 離職票
- 診断書
いずれも「困窮している」証拠となるものです。
求められたら、すぐに用意できるようにしましょう。
生活保護は通らないって本当?
生活保護は、申請したからと言ってもれなく通るものではありません。
その審査は非常に厳しいといれていますので、くわしく見ていきましょう。
却下される理由と背景事情
生活保護を申請しても、途中で受給がストップしたり、申請が却下されたりすることがあります。
その理由の多くは、
- 受給条件を確認していない
- 福祉事務所に事前相談を行っていない
ことが挙げられます。
まず生活保護には条件があり、誰もが受給できるわけではありません。
生活保護の申請を通りやすくためには、条件にあてはまるのは最低条件です。
また最初のころは福祉事務所へ相談に行っても、なかなか申請を受理してくれない場合があります。
それでもあきらめずに、何度も足を運ぶのがポイントです。
なかには条件を満たしているのに申請しない人も
生活保護の条件を満たしているのに申請しない人もいます。
なんだかもったいないような気もしますね。
そのような人には以下のような理由があります。
- 行政に縛られるのがイヤ
- 家族や親戚に知られたくない
まず生活保護を受けるにあたり、財産の状況や生活の様子を調べられます。
また援助可能かどうかを家族や兄弟に電話し聞くこともあります。
他にも酒・タバコなどの趣向品に制限がかかることもあるのです。
そのため、制限された状況で生きることに窮屈さを感じたり、家族に自分の現状を知られたりしたくない人もいます。
このような人は、資格があっても申請しないことも多いのです。
生活保護の申請をスムーズにするには誰かと一緒に行くこと
生活保護の申請は、付添人(支援者)がいるとスムーズに受理されやすいです。
自治体によっては、生活保護受給者を減らすために「水際作戦」といって、希望者の話もろくに聞かずに追い返してしまうことがあります。
生活保護を受けたくても受けらえない人の中には、水際作戦の被害に遭っている人も少なくありません。
そのため一人で行かずに、支援者と一緒に行ってもらうと係員の対応も変化することがあります。
支援者とは民生員や地元の議員、弁護士などです。
次章で紹介する法テラスで相談し、法律家に同行してもらえるようにすこともポイントです。
法テラスで相談して同行してもらうのもおすすめ
水際作戦により、生活保護の窓口で不当な扱いを受けたり、体調や精神の不調によりひとりで行けなかったりした時は法テラスで相談し、同行してもらうことがおすすめです。
この場合、日弁連が法テラスに委託している制度を利用するため、弁護士費用はかかりません。
迷ったら、相談してください。
生活保護の申請中にお金がない場合
生活保護の申請中にお金がなくなってしまい、生活保護を受取るまでに生活ができなくなってしまう場合はどうしたら良いのでしょうか。
生活保護の申請中のため、当然親族などから援助をしてもらうことはできませんし、友人・知人にお願いしてお金を借りるのも難しく厳しい状況になります。
また、資産も売却などでお金になるものはすでになく、他から借りようにも銀行や消費者金融では無職で収入がなければ申し込みすらできません。
生活保護は申請してから決定まで14日以内または特別な事情がある場合には30日以内に決定しなければならない決まりはあります。
しかしその多くは、決定までに30日程度かかってしまいます。
そのため、お金が全くない状態のまま30日を過ごす可能性もありえるのです。
生活保護を申請しているとはいえ生活はしていかなければなりません。
1か月もの長い期間をお金がないまま生活していくということはかなり厳しいのではないのでしょうか。
生活保護を申請中でも借りられる制度がある
すでに生活保護の申請を受理されており、給付開始まで生活が困難である人を対象に貸し付けを行う制度があります。
その制度を「臨時特例つなぎ資金貸付制度」といいます。
この「臨時特例つなぎ資金貸付制度」を利用すれば、生活保護の申請中であってもお金を借りることができ、生活保護が支給されるまでの生活費を補うことが可能です。
臨時特例つなぎ資金貸付制度とは
臨時特例つなぎ資金貸付制度は、各都道府県の社会福祉協議会が主体となり、生活保護などの給付金が支給されるまでの期間を支援する貸付制度です。
臨時特例つなぎ資金貸付制度はあくまでも貸付する制度ですので、借入した場合には支給が開始されたときに一括または分割で返済しなくてはなりません。
また生活保護の申請が通らなかったとしても返済しなければなりません。
しかし、銀行などが行う貸し付けではなく制度での貸付ですので、貸付とはいえ無利子で借りることができます。
そのため返済する際には借りた金額と同じ金額を返済することになります。
受給条件
臨時特例つなぎ資金貸付制度の目的はあくまでも生活保護などの申請中の資金援助としています。
そのため借りることのできる範囲や金額は限定的なものになります。
ここでは、借りられる人の条件や金額などをまとめました。
検討中の方は参考にしてください。
貸付の対象 | 下記1、2どちらの条件に該当し、かつ住居のない離職者であること
|
---|---|
貸付の上限金額 | 10万円以内 |
連帯保証人 | 不要 |
貸付利子 | 無利子 |
上記が貸し付けを受けるための条件です。
この制度の大前提はあくまでも生活保護などの公的制度の申請が受理されていることが条必要となります。
また、あくまでも給付が開始されるまでの「つなぎ」であるため、貸付上限金額は10万円までとなっています。
最低限の生活をすることができる分のみで、なおかつ支給が開始されれば返済しやすい金額といえるのです。
社会福祉協議会で手続き
臨時特例つなぎ資金貸付制度の手続きは、住んでいる市区町村の社会福祉協議会に申請します。
社会福祉協議会は行政から福祉関連の業務を委託された民間の団体であります。
そのため生活保護などの申請を行う役所の福祉課などとは違い、それぞれの地域にある福祉会館などにあるため気を付けてください。
制度の申込みや相談については、福祉会館などにある社会福祉協議会で行ってください。
生活保護申請中を証明する書類が必要
臨時特例つなぎ資金貸付制度を申込むにあたり、生活保護の申請を受理したことを証明する書類の準備が必要です。
貸付の条件となる申請が受理されていることがきちんと証明すされなければ貸付を受けることができませんので、まずは証明書を準備してください。
生活保護の申請が受理されている証明書は生活保護を申請した窓口で発行してもらえます。
臨時特例つなぎ資金貸付制度を利用したいことを伝え、申請受理の証明書を発行してもらってください。
生活保護の証明書は役所の福祉課などに行って発行してもらうことになります。
申請受理の証明書が用意できれば、あとは制度利用者本人名義の預金通帳と印鑑を持って社会福祉協議会へ行き、申込みを行います。
申込みでは、まず社会福祉協議会の職員より臨時特例つなぎ資金貸付制度の説明を受けます。
その後申請受理の証明書と本人名義の通帳を提示、窓口で渡される借入申込書と借用書に記入・押印することによって申込みが完了です。
申込み後は貸し付けを受けるだけですが、貸し付けまでには1週間程度かかります。
申込みをしてもその日の内に借りられるというわけではありませんので注意してください。
まとめ
生活保護などの申請中にお金がなくなってしまった場合は、臨時特例つなぎ資金貸付制度があります。
この制度を活用することによって生活保護が支給されるまでのお金を確保できます。
しかし、この制度はあくまでも支給されるまでの資金を補うだけの制度であり、貸し付けです。
返済の義務があるということを忘れてはなりません。
そのため、生活保護の申請が通らなかったとしても返済する義務は残ります。
臨時特例つなぎ資金貸付制度で借りる場合にはその点に注意しなければなりません。
このことをしっかりと理解し、納得して利用することができれば大変良い制度です。
申請中にお金に困ったときには利用することも有効な手段です。