もらえるはずの年金が止められる!?年金支給停止の仕組みを解説
最近ネットなどを見ていると「下流老人」や「老後資金…」などというキーワードをよく見かけます。
それは「老後の生活費」や「年金」について心配している人が多い…という事の表れだと思いますが、今回は、そんな年金について詳しく解説していきたいと思います。
特に、老後の生活費に直結する「年金支給がストップする理由」について、いくつかのパターンを考えてみたいと思います。
日本でもらえる年金は主に3種類
まず、最初に年金がストップされる要件を確認する前に、今の日本の公的年金について、簡単に触れたいと思います。
現在、我々がもらえる可能性がある年金は、以下の3種類となります。
老齢基礎年金
老後にもらえる年金の基本的な部分が、この老齢基礎年金となります。
老齢基礎年金は、国民年金や厚生年金に20歳~60歳の間加入しており、年金をきちんと納めた方に対し、65歳から支払われる事になります。
ただ、年金の未払い期間がある場合は、その期間分、年金の支払額が一部減額されて支払われる事になります。
尚、良く似た言葉に「老齢厚生年金」というものがありますが、これは老齢基礎年金とは異なり、会社に勤務をしていた人がもらえる年金で、給与や賞与の額・加入期間によって支給額が変わってきます。
障害年金
意外に該当者にならないと知られていないのが、「障害年金」です。
障害年金は、病気や怪我で仕事が出来ないような状況になった際に、生活費を賄う目的で国から支給されます。
尚、障害年金の支給額については、その障害の程度により障害等級1級~3級が決められ、その等級に応じて年金が支給されます。
ちなみに、直近の年間支給額を見てみると、1級障害で975,125円・2級障害で780,100円が支給されています。
遺族年金
三つ目は遺族年金です。
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入している人が亡くなった場合に、残された配偶者やその子供の生活を支える為に支給される年金です。
ちなみに、遺族年金が支給される条件は、被保険者(亡くなった方)の受給資格期間が25年以上あることが必要となります。
尚、気になる支給額ですが、例えば被保険者の加入期間が25年以上あり、その人が死亡した時は、配偶者に年間779,300円が支給され、第一子・第二子に各々224,300円が支給されます。
(第3子以降は、各子供に年間74,800円が支給される)
※遺族年金の詳細条件等については、下記日本年金機構の参考リンクからご確認ください。
◆日本年金機構公式サイト:「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
老齢基礎年金が支給停止になるケース
次に、先ほどご紹介した年金の支給がストップする条件について、まずは老齢基礎年金のケースから見ていきたいと思います。
60~65歳の場合
60歳以上で会社勤務を続ける場合で、厚生年金に加入する場合は、収入により老齢厚生年金の支給が全額支給停止、又は一部支給がカットされる事になります。
具体的には、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合は、老齢厚生年金は全額支給されますが、それ以上の収入の場合は、年金は一部カットされる事になります。
例えば、以下のようなケースです。
※基本月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が46万円以下の場合
支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2×12
尚、支給停止の対象は「老齢厚生年金」のみとなりますので、老齢基礎年金は減額される事はありません。
尚、以上のようなケースについては、計算が非常にややこしくなる為、以下参考リンクの「日本年金機構・在職老齢年金の支給停止の仕組み」の試算例などをご確認ください。
◆日本年金機構公式サイト:「在職老齢年金の支給停止の仕組み」
65歳以上70歳未満の場合
次に、65歳以上70歳未満の方が、会社勤務などで厚生年金に加入するケースについてです。
この場合も、基本的な考え方は同じになりますが、基準となる収入の月額や計算方法が変わってきます。
例えば、基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合は老齢厚生年金は全額支給され、基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合は、基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2 という計算式で支給額が決められます。
尚、以上で説明した「基本月額」や「標準報酬月額」についての意味については、以下の表を参考にして頂ければと思います。
基本月額 | 老齢厚生年金(対象者が60歳台前半の場合は、特別支給の老齢厚生年金の事)を12で割った額のこと。 |
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総報酬月額相当額 | 年収を12で割った額(月収)のことで、標準報酬月額と、1年間の標準賞与額(ボーナスなど)の総額を12で割った額を合計した額のこと。 |
障害年金が支給停止になるケース
次に、障害や病気などになった時に受け取る事が出来る「障害年金」についてです。
基本的に、この障害年金については、永久年金という扱いではなく、有期年金となりますので、障害の度合いによっては、年金の支給が減額されたり停止される事もあり得ます。
(※但し、70歳以上で人工透析している方は、平成23年から永久認定されるようになりました。)
収入による支給制限はある?
まず、障害があって仕事が出来ない状態から、就労可能になったケースから見ていきたいと思います。
この場合、「仕事が出来るようになった事」と「年金の支給停止額」については、直接の関係はありません。
したがって、障害がありながら働いて収入が増えた事により、年金が停止される事はありません。
この場合で関係してくるのは、障害の度合いがどれだけ「改善」又は「悪化」したか…という事が重要になってきます。
このあたりの詳しい条件については、この後詳しくお伝えします。
途中で障害のレベルが変わったときは?
先ほども簡単に触れましたが、障害年金のほとんどについては、永久年金ではなく「1年から5年」という期間で、障害年金が支給される期間が決められています。
又、障害年金を受給している場合は、定期的に「障害状態確認届」というものを提出する必要がありますが、その届けを提出した後で、「障害が改善」又は「悪化」している事が認められると、障害年金の額は変わってきます。
尚、このあたりの詳細については、以下参考リンク「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」をご覧下さい。
◆日本年金機構公式サイト:「障害厚生年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」
債務整理と年金との関係
次に年金をもらっている人が、自己破産や任意整理などの債務整理をした場合に、年金が支給停止になるのか…。
詳しく見ていきたいと思います。
自己破産した場合は年金は止められる?
一つ目は自己破産したケースです。
結論から言いいますと、年金受給中に自己破産した場合でも、年金が支給停止になる事はありません。
これは、サラリーマンなどの場合で自己破産をした時、免責決定後にもらえる給料などが差し押さえられないのと同じ事になります。
又、年金は対象者の貯蓄が支払われるという類のものではなく、国の制度として社会全体で高齢者を支える制度のものになりますので、財源は個人の財産ではない…というのも一つの理由です。
任意整理の場合は年金から返済必要?
次に、毎月の返済が伴う任意整理についてです。
この場合も通常の給与所得者と同じく、任意整理が確定してからの年金収入については、差し押さえられたり制限がかかるような事はありません。
もし、年金の支給が制限されるようなことがあれば、債権者への支払いが滞ることになってしまいますので、そのような事はあり得ません。
ただ、将来にわたって返済する金額については、毎月の年金収入をもとに弁護士などで計算されますので、家計管理をきちんとしたうえで、年金収入の中から返済していくようにする事が重要です。
家族が死亡した時は支給停止手続きを
ここまで、年金が支給停止になるようなケースを確認してきましたが、年金を受けている方が亡くなった場合についても、注意が必要です。
なぜなら、年金受給者が亡くなっているのに、きちんとした届出を出さず、老齢年金などをもらい続けている場合などは、後で遡って返還する必要も出てくるからです。
具体的には、年金をもらっている方が死亡した場合、年金事務所・又は年金相談センターに「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要になってきます。
詳しくは、下記参考リンク「年金を受けている方が亡くなったとき」をご確認ください。
◆日本年金機構公式サイト:「年金を受けている方が亡くなったとき」
まとめ
今回は、収入と年金の支給との関係・障害年金の仕組み・債務整理と年金の仕組みなどについて、いくつかの情報をお届けしましたが、参考になったでしょうか?
年金は少々ややこしい部分も多く、調べる前から毛嫌いする人も多いようですが、実はそれほど難しいものではありません。
ネットにはいくつかの解説サイトがありますし、年金センターなどではいつでも相談にのってもらえます。
現在、年金に加入中の方も既に受給されている方も、不安な点などはそのままにせず、一度関係施設などに相談に行かれる事をおすすめします。