人の名義変更をして借金返済することはできる?
「借金返済が厳しくて家族の誰かに代わってもらいたい」や、「借入した目的が本当は自分が使うものではなく、他人のために借入した」ので、借金の名義変更をしたいということがあります。
借入後に、借金の名義変更ができるのかご説明します。
- 執筆者の情報
- 名前: 芦田春馬
年齢:39歳
性別:男性
職歴: 平成13年に都市銀行に就職。その後、ノンバンクに転職
記事の目次
借入人の名義変更とは?
借入人の名義変更とは、実際に「借金の返済義務を負う借入人」を変更するための手続きになります。
Aさんが借入しているカードローンが、Bさんが借入しているカードローンに代わることです。
借金の名義変更は、正式には、「債務引き受け」と呼びます。
これまで債務者でなかった方が、他人の借金を引き継いで債務者になるので、「引き受け」と呼ぶのです。
さらに、債務引き受けには、「重畳的債務引き受け」と「免責的債務引き受け」という2つのパターンがあります。
重畳的債務引き受けは、元々の債務者Aさんを残したまま、Bさんも債務者に加わることです。
これは債務者の追加にあたります。
それに対して、免責的債務引き受けは、Aさんを債務者から外して、Bさんが債務者になることです。
Aさんが債務者に残るかどうかで、「重畳的」と「免責的」に分かれます。
今回は、「名義変更」ですので、原則、免責的債務引き受けを対象として説明します。
なお、こういった言葉があることからも解るとおり、借金の名義変更は、手続きとしてはあり得ます。
実際に銀行や、消費者金融でも、極めて稀なケースですが、借金の名義変更手続きを行うことはあります。
しかし、本当に稀なケースであり、金融機関が名義変更に応じることは、あまりありません。
借り換えはできないか?
後ほど、借金返済の名義変更について詳しくご説明しますが、もし可能なら、借金の名義変更ではなくて、借り換えをした方が、かなり簡単で、早く借金を肩代わりすることができます。
借り換えも、借金の名義変更も、結果的には同じ効果が生まれます。
「Aさんの借金を、Bさんが引き受けて、Aさんが借入人から外れる」のも、「Bさんが新規借入して、Aさんの借金を返済する」のも、どちらも、最終的にはBさんが借入人になります。
借金の名義変更をするには、「銀行の同意」を得ることが必須条件です。
銀行に債務名義を依頼しても、応諾してもらえなければ名義変更はできません。
それに対して、Bさんが新規で借入したお金で、Aさんの借金を返済するだけなら銀行の許可は必要ありません。
但し、この時、借金を引き受けることになるBさんが、銀行や消費者金融の新規借入の審査に通らないと話になりません。
お金が借入できないと、借り換えなんて出来ませんよね。
「借金を肩代わりたいけど、新規でお金が借入できない」といった時に、借金の名義変更を希望するケースが多くなります。
特に、元々、Bさんが借入したかったけど、Bさんは審査に落ちてしまって借入できなかったので、代わりにAさんが借入したという「名義貸し」のようなケースに多くなります。
代わりにAさんが借入したけど、後になって、やっぱりBさんの借金に戻して欲しいというわけですね。
今回は具体例を何度か使用しますが、借入している人をAさん、変更後の借入人をBさんとして説明します。
金融機関の同意が必要
借金返済する方の名義変更を行なうには、金融機関の同意を得る必要があります。
金融機関の同意のポイント
金融機関の立場からすれば既に貸出済みの融資に対して、借金返済する方の名義変更にメリットがなければ、応じる義務はありません。
金融機関にとってのメリットとは、借金返済を受ける安全性が高まることです。
借入人の名義を変更して、結果的に返済能力が下がるのであれば損することになります。
つまり、名義変更後の借入人の信用力≧現在の借入人の信用力の時、名義変更に応じた方が金融機関には得、もしくは損にならないので、名義変更に応じても良いことになります。
現在の借入人の返済能力が低く、親族が肩代わって返済する場合などが該当します。
一方で、名義変更後の借入人の信用力<現在の借入人の信用力の時、名義変更に応じると、金融機関は損することになります。
この時、金融機関は名義変更に応じないことになります。
その他の判断基準
基本的な判断基準は上記の通りですが、金融機関はそれ以外の点も考慮します。
例えば、名義変更を希望する申出が金融機関を「騙す」ものでないかと言う点が考えられます。
変更後の借入人は信用力が劣る、もしくは返済能力が低いにも関わらず、そのことを隠している可能性があります。
前述の通り、変更後の借入人に信用力があれば、新規で借入して、借り換えすれば、特に金融機関の同意に関係なく、借金返済の肩代わりは可能です。
それにも関わらず、債務名義の変更を希望するということは、他社の審査に通過できずに、債務名義の変更を希望してきた可能性があります。
金融機関の立場として、こういった経緯を見抜けなければ、債務名義に応じた結果、「損する」可能性があります。
仮に、現在の借入人の信用力に問題が無く、現状でも返済を継続できているのであれば、無理に名義変更に応じる必要はありません。
そのため、名義変更の申し出を受けても、基本的には「慎重」に対応することになりますので、名義変更が認められる可能性は、かなり低くなります。
名義変更できる場合と難しい場合
カードローンの契約時には、保証人も担保もなく契約者の信用だけで契約することになりますよね。
アコムのカードローンでも同じで、契約するときの利用者の信用だけで借金をしていることになります。
このようなカードローンの場合には、名義変更ができる場合と、名義変更するのが難しい場合があります。
名前が変わったのであれば大丈夫
カードローンを契約するときには、利用者の情報が変更になればすぐさま連絡するように規約で定められています。
通知する必要がある物には、住所、勤務先、年収等々年齢以外の項目はほとんどが変更した時には連絡が必要になります。
これに名前の変更も該当しますが、結婚や姓名判断などで指名を変更した時には、申請をすれば問題なく変更ができます。
申請する方法は、アコムの会員ページにログインをして「各種変更のお手続き」で変更をするか、アコム総合カードローンデスク(0120-629-215)に連絡をすればOKです。
電話連絡をした場合には、その後必要な書類が送られてきますので、必要事項を記入して返送する事になります。
変更するときには、名前が変更になったことが分かる書類を提出する必要がありますので、免許証などの名義変更をした後で申し込むのが良いですね。
ただし、結婚して苗字が変わって、そのタイミングで会社を退職し専業主婦になった場合には、それ以降のカードの取り扱いが変わってきます。
専業主婦になったという事は、本人の収入が0になったという事ですので、カードローンの利用はできなくなります。
その時の残債は返済をする必要がありますが、新しく借金をすることはできません。
残債の返済に関しては、変更の連絡をするときに相談すると良いですね。
一括で支払わなければならないという事はなく、今まで通りの返済を続けるようにすることもできます。
相続であれば比較的スムーズ
例えば、親が交通事故などで死亡したような場合で、その人の財産を配偶者や子供が引き継ぐような場合には、債務も引き継ぐことになります。
このような時には、債権者本人が死亡していますのでアコムに連絡をすれば比較的スムーズに名義の変更はできます。
アコム総合カードローンデスクに債務者の死亡を連絡し、名義変更を申し出ればその後の手続き方法を案内してもらえます。
一般的には、死亡証明書や除籍謄本と言った書類を提出することになります。
ただし、このような場合には、相続する財産を整理して相続をするかどうかの判断をするようにしましょう。
相続する債務がプラスになる遺産よりも大きい場合には、一般的には遺産の放棄をする事が多いようです。
遺産放棄は、債権者が死亡してから3ヶ月以内に家庭裁判所で遺産放棄の手続きを行う事になります。
遺産放棄をすれば、アコムから返済を求められた場合でも、遺産放棄の手続き中であることを伝えれば大丈夫です。
もし、手続きが不安な場合には、家庭裁判所の相談窓口で手続きの方法や必要書類に関して教えてもらえます。
他人への名義変更は難しい
結婚して夫や妻になる人に借金があることを初めて知らされて、しかも支払いに困っている場合などには名義人の変更を考えると思います。
もしくは、恩師やお世話になった人、兄弟などなど借金に困っている人を助けてあげたいと思う場面もありますよね。
でも、このような場合の名義変更は原則的にはできない事になります。
厳密にはできない事はないのですが、それには債務者と債権者、それに名義変更したいという人の話し合いが必要で、話し合いで合意したとしても法的手続きが必要になります。
また、アコムがこの名義変更に同意する可能性は極めて低いです。
その理由は名義変更する人の返済能力が、残債に見合わなかった場合には返済が行われない可能性が高いからです。
第三者への名義変更をするには多くの手間と時間がかかってしまうので、実際の手段としても利用するメリットはないと思います。
結婚などでの名義変更は可能
消費者金融でカードローンなどを借りている途中に、特に女性であれば結婚や離婚などをしたことで名字が変わることがあります。
この場合、消費者金融には速やかにその事実を伝え、契約者の名義変更をする必要があります。
結婚などによる名義の変更は、契約上非常に重要なことであり、変更があった場合には届け出なければならないことを利用規約にも記載されています。
もしも名義の変更があったにもかかわらず、その事実を届け出ていない場合には、消費者金融から速やかに変更することを求められます。
契約者本人自体が変わらない名義変更は、変更が可能というよりも、必ず変更しなければならない重要なことですので、忘れずに名義変更をしなくてはなりません。
変更しなければ利用停止となる可能性も
結婚などによって名義変更をしていない場合には、最悪カードローンで借入ができなくなる「利用停止」となる可能性があります。
先ほどもお話ししましたが、契約者の名義などが変わった場合には速やかに届け出をしなければならないことが利用規約に記載されています。
これを履行しないことは利用規約に違反していることになりますので、そのペナルティとして利用停止となることがあります。
また、名義の変更と共に住所も変更となる場合には、住所変更も併せて手続きしなければならず、これを怠った場合にも利用停止となる可能性があります。
消費者金融に届け出ている名義や住所は、契約者本人を特定するための重要な情報であり、書類などの送付先でもあります。
利用規約をきちんと守っているからこそ非常に便利なカードローンを利用することができますので、変更があった場合には速やかに消費者金融へ届出しなければ、便利なカードローンを利用することができなくなってしまいます。
第三者への名義変更はできない
名義変更でも、結婚などによるものではなく、第三者への名義変更はできません。
第三者への名義変更といってもピンとこない人もいるかと思います。
第三者への名義変更は、主に自分では返済ができない人が知人などの名義に変更し、代わりに返済をしてもらうために行います。
いわゆる名義貸しとも呼ばれる行為であり、逆に名義貸しをして借りていたものを本来の借主に戻すために名義変更を行いますが、こういった行為は消費者金融では応じてもらうことができません。
カードローンの契約者というのは、返済能力などを審査したうえで契約をしており、契約者が第三者へ変わることは契約当初の審査が無意味となってしまいます。
第三者への名義変更自体は法律で規制されているものではありませんが、消費者金融ではトラブル防止のためにも応じていません。
相続による名義変更には対応している
名義貸しではなく、契約者がなくなったことによって、カードローンの債務を相続人が相続する場合にも第三者への名義変更となります。
この場合には消費者金融も名義変更に応じ、相続人から返済をしてもらうようにします。
しかし、本当に相続によるものなのかということは確認することになりますので、戸籍謄本などの書類を提出するなどの手続きが必要となります。
また、相続においてはカードローンなどの負債があるために相続を放棄することもでき、相続を放棄した場合には返済の義務は負いませんので、名義変更などの手続きも必要ありません。
名義変更よりも借り換えで対応
名義貸しなどで第三者への名義変更をするよりも、名義変更を予定している人に借り換えしてもらう方が簡単で確実に返済していくことができます。
これであれば単純に名義変更を予定している人が銀行や他の消費者金融からカードローンやフリーローンなどを借り、その資金で一括返済してもらうだけとなります。
その後は借り換えした人がそのローンを返済していくだけとなりますので、その人に対して返済分を渡すなりすれば問題はありません。
しかし、借り換えしたローンで延滞などが発生してしまった場合には、借り換えをした契約者の信用情報に傷が付いてしまうことになります。
そのことが原因でトラブルとなってしまうこともありますので、借り換えによる実質的な名義貸しには十分に注意しなければなりません。
返済金を援助してもらう
第三者への名義変更、借り換えよりも簡単にできるのが「援助」です。
名義貸しをしていたものを本来の借主に返済してもらうための返済であればなかなか難しい場面もあるかとは思いますが、家族などであれば援助が最も簡単です。
理由次第では犯罪にも
金融機関に、借金返済の名義変更を希望するには、それだけの理由が必要です。
例えば、元々、Bさんが借金したかったけど、審査に通らなかったので、Aさんが代わりに借金していたため、本来の借入人に名義変更したいという理由があります。
こちらはAさんが同意して協力しているもので、名義貸しと呼ばれることもありますが、ケース①としましょう。
また、Aさんが知らない間に、勝手にBさんがAさんの名義を使用して、借金していたという場合もあります。
この時、Aさんは同意していないにも関わらず名義を使用され、被害にあっていることになります。
これをケース②としましょう。
どちらにしても、金融機関の立場からすれば、Bさんが借入するのに、金融機関を騙して借入していたことになり、金融機関は被害者になります。
①も②も、Bさんが自身で借入できなかったのが要因ですから、名義変更にも応じたくないでしょう。
ケース②の時、現在の借入人も被害者であり、身に覚えの無い借金返済義務を負っていることになります。
この時、現在の借入人であるAさんは、被害者として警察に訴えることで、借金返済義務を免除してもらえる可能性があります。
但し、Bさんは他人の名義を勝手に使用したうえ、金融機関を騙して借金した「詐欺」になり、罪になる可能性があります。
AさんとBさんが夫婦や、親族である場合などで、Bさんを訴えて、問題を大きくしたく無いという事情があると、結果的に、Aさんが引き続き借金返済義務を負い続けることになります。
同意して名義を貸したなら
一方、前述のケース①のように、元々、Aさんが同意したうえで、名義貸しした場合には、Aさんも金融機関を騙していた共犯です。
Aさんが借入して、Bさんに個人的に貸したのなら問題ありません。
しかし、Bさんが借入するのに、金融機関を騙す目的で名義を貸したのであれば、犯罪になる可能性があります。
この時、前者であれば、Aさんが自分の意思で借入して、Bさんへの貸付に使用しただけであり、紛れもなくAさんの借入ということになります。
「本来はBさんの借入」とはなりません。
後者の場合、「Bさんの借入」と言えなくはないですが、AさんとBさんが共同で銀行を騙したことになります。
Aさんも銀行を騙した落ち度があります。
前者・後者のどちらのケースでも、銀行は名義変更に協力する必要が無いことになります。
借金の手助けをしたいなら
奥さんや旦那さんと一緒に生活をしていこうと結婚した後すぐなら、なんとか2人で助け合っていきたいと思うのは普通の事だと思います。
恩師やお世話になった人や、どうしても助けてあげたいと思う人が居るのは良いことですよね。
第三者への名義変更は基本的にはできないとご紹介しましたが、借金の手助けをしたいという事であれば、他の手段があります。
お金の援助をする方法もあり
借金の返済をする金額を相手に渡して返済してもらうのも一つの手段です。
お金を出しているのは自分ですが、返済を行っているのは債務者になります。
ただ、本当に返済していることと、新たな借金をしていない事を確認することは絶対に必要です。
あなたにとって、どれだけ素晴らしい人だとしても借金の返済に困るまでお金を借りてしまっているという事は間違いのないことです。
援助をするときには、これらの事もしっかりと見守っていってあげるだけの覚悟は必要です。
自分名義で新たに借りる
助けたい人の借金を一括で返済できるように、自分名義で必要なお金を借りてその人に手渡してあげてもいいですね。
その後受け取った側の人は控除額(年間110万円)を越える金額の場合には、申告して贈与税をおさめなくてはいけません。
結局は受け取った人の自己責任になるのですが、申告をしないことは法律違反にもなりますので、これらの対応もできる様にアドバイスをしてあげると良いですね。
もし、不安がある場合には弁護士に相談をして作業を行うと費用は掛かりますが、後で問題になることはありません。
もしくは、税務署でも贈与に関する相談は受け付けていますので、地域の税務署に行って相談をすると的確な処理方法を教えてもらえます。
名義変更で困ったら
ここまではカードローンの名義変更に関する事をご紹介してきました。
ここからは、名義変更の申請が遅くなったとか、どうしても他人名義にしたいなどという場合の対処方法をご紹介します。
手続きが遅い場合は正直に相談
氏名が変わるときには、いろいろと他の事で忙しくアコムのカードローンの手続きを忘れている場合があります。
このような場合には、手続きが必要とわかった時点で正直にアコムに連絡をするようにしましょう。
連絡先は アコム総合カードローンデスクとなります。
申請を忘れていたことをしっかりと伝えて、今の状況を説明するようにします。
その時点で、返済能力が無いもしくは不足していると判断された場合には、限度額の引き下げや新たな借り入れが制限されることがあります。
ですが、嘘をついて借金を繰り返してしまうと、後で返済に困ることにもなりますし、定期的に行われる審査の時にはばれてしまいます。
嘘をついている事がばれると、アコムからあなたに対する心象も悪いものになりますし、その時点で強制解約になる可能性もあります。
他人名義にしたいなら専門家へ
今あるアコムの残債をどうしても他人名義にしたいというう場合には、その変更される名義人の同意がある場合には、弁護士などの専門家に相談すると良いですよ。
ただし、この名義変更は非常に難しいことから、弁護士から違った方法での解決方法を勧められる可能性もあります。
法律的な立場から的確な判断をしてもらえますので、そのアドバイスを冷静になって慎重に検討するようにしましょう。
まとめ
借金の借入人の名義を変更することを、「債務引き受け」と呼びます。
つまり、名義変更とは、借金返済する義務を肩代わりするになります。
金融機関から同意が得られれば、借入人の名義変更することも可能ですが、金融機関から同意を得ることは簡単ではありません。
特に、変更後の借入人が、借り換えできない位に信用力が低いのであれば、名義変更を認めてもらうことも難しくなります。
名義変更を求める経緯は、金融機関にとって「騙されていた」などのネガティブな経緯が多く、審査も厳しくなります。