個人事業主が借入したものは経費にすることができる?
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
目次
借入金は経費にならない
個人事業主の主な資金調達は銀行などからの借入によって行われており、実に多くの個人事業主が借入をしています。
この場合、資金調達をした際の借入が確定申告時に経費として落すことができるのかということが気になる人もいるかと思いますが、個人事業主の借入は経費として落すことはできません。
ですので、借入金の残高をそのまま経費として所得を少なくするということはできないということになります。
個人事業主は売上などの収入から経費を引いた金額が所得となり、所得から生命保険料控除などの控除をして残った金額に対して税金がかかります。
ですので、節税をするためには経費を多くすることが最も簡単な方法となりますが、借入金そのもので節税することはできないということです。
利息は「利子割引料」で経費となる
借入金そのものは経費とすることはできませんが、年度中に支払った利息分は「利子割引料」として経費に落すことができます。
例えば年間で100万円を返済したという場合にその内訳が元金返済部分80万円、利息支払い部分20万円だとすると利子割引料として20万円を計上することができます。
また、手形を利用して銀行などから期日前に資金調達する場合には額面金額から割引された金額を調達することができますが、この際に差し引かれる割引料も利子割引料として計上することができます。
これは個人事業主にとって借入による資金調達がほぼ必須であることから、事業に関わる支払として計上することができることとしています。
信用保証協会の保証料も経費にできる
個人事業主であっても信用保証協会を利用して銀行などから資金調達することができます。
信用保証協会とは個人でいうところの保証会社のようなものであり、信用保証協会に保証をしてもらうことで資金調達しやすくなりますので利用している個人事業主も多いです。
この際信用保証協会に支払う保証料も経費として計上することができますが、保証料を経費にする場合には注意が必要になります。
信用保証協会の保証料は保証をしてもらう期間分を融資実行時に一括で支払うことが一般的となりますが、ここで支払った一括分をそのまま経費とすることはできません。
これは長期的に必要となる経費となり、対象の年度ごとに経費処理をしなければなりません。
例えば5年間保証をしてもらうのに保証料を60万円一括で支払ったという場合には1年分の保証料は12万円となります。
ですので、毎年12万円を経費に計上することになり、未経過分の保証料は「長期前払費用」として資産に計上していなければなりません。
経費にすることができないもの
借入金に関わるものは利息や割引料、保証料しか経費とすることはできませんが、個人事業主が経費とすることができないものはこれ以外にもあります。
個人事業主が経費とすることができないものとしては以下のようなものがあります。
- 事業主が個人のために支払ったもの
- 事業に関係のないものに支払ったもの
- 家庭用および生計を一とする家族へ支払ったもの
- 交通違反などの罰金や反則金を支払ったもの
基本的に個人事業主が経費として計上することができるのは事業に関わるものを支払った場合に計上することができ、事業に関係のないものを支払ったとしても経費とすることはできません。
自宅兼事務所の住宅ローン利息は経費にできる
自宅の一角を事務所にしている個人事業主も多くおり、事務所部分が一定割合を超えなければ個人が借りることができる住宅ローンを組むことができます。
このような自宅兼事務所を住宅ローンで借りた場合に支払っている利息は利子割引料として計上することができます。
ただし計上することができるのは事務所にしている割合に応じた金額だけとなります。
例えば自宅と事務所が50%ずつの割合である場合、年間で20万円を住宅ローンの利息として支払えばその50%である10万円が経費となります。
このように自宅兼事務所としている場合にはインターネットの料金などでも事業用に使用している分を経費とすることができます。
あくまでも事業のために支払ったものだけとなりますが、公私が混同しやすい個人事業主だからこそ一定割合を計上することができます。
家族が支払った火災保険料も経費計上できる
事務所や倉庫などにかけることになる火災保険は必ずしも事業主が支払っているとは限りません。
中には配偶者や引退した親がそのまま支払っていることもありますが、このような場合の火災保険料も事業主の経費として計上することができます。
火災保険のような損害保険は誰が保険料を支払っているのかではなく事業に関係するものにかけられたものであれば経費とすることができます。
個人事業主の節税方法
借入金や事業に関係しないものは経費とすることはできませんが、やはり税金は押さえたいものです。
ですので、今度は個人事業主が経費とすることができるものを紹介していきたいと思います。
個人事業主が経費として計上することができるものは以下のようなものがあります。
- 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の掛け金
- 少額減価償却資産の特例を利用する
これらが経費として計上することができ、中小企業倒産防止共済とは取引先が倒産してしまった時などの不測の事態に直面した場合に速やかに必要な事業資金を借入できる制度です。
この掛け金は全額を経費とすることができますし、前払い分(最大40ヶ月)も払った年度に経費処理することができます。
少額減価償却資産の特例とは30万円未満の備品などを毎年の減価償却とするのではなく一括で取得した年度の経費とすることができます。
ただし、この特例を利用することができるのは青色申告をしている個人事業主でなければなりませんので誰でも利用することができるというわけではありません。
所得控除を増やして節税する
冒頭でもお話ししましたように課税対象となる金額は収入から経費を引いた所得金額からさらに各種控除で残った金額となります。
従って、節税をするためには控除を多くすることでも節税することができます。
代表的な控除は青色申告している人が利用することができる「青色申告特別控除」であり、10万円または65万円が控除されます。
また、これ以外にも控除することができるものがあり、退職金などを積み立てるために利用する「小規模企業共済」の掛け金も全額が所得控除されます。
さらに国民年金基金や個人型確定拠出年金の掛け金も全額が所得控除となりますので老後の備えをしながらも経費として計上することができます。
このように、所得控除を利用することでも節税は可能となりますので経費を多く計上するだけではなく、所得控除も上手く利用することで大幅な節税効果が見込めます。
まとめ
個人事業主が借入した金額そのものはたとえ事業の資金調達のためであっても経費として計上することはできません。
しかし、借入に関わる利子や手形の割引料、信用保証協会などへ支払った保証料は経費とすることができます。
中には借入金に関わる経費の計上を間違ったまま確定申告している人もいますので借入金に関わる経費の計上には注意が必要です。
多くの人は少しでも多く経費を多く計上して節税しようとしますが、間違った計上の仕方をしていれば節税することはできません。
節税する方法は何も経費を上乗せするだけではなく、所得控除を上手く利用することでも可能です。
これらを総合的に利用することで本当の意味で節税することができますので上手く利用するようにしましょう。
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