日掛金融とは
貸金業者にはいろんな業態があり日掛金融(日賦貸金業者)という業者があります。消費者金融がお金を借りる手段として認知されるに従って、日掛金融業者はかなり減少しました。
しかし日掛け金融業者は自営業者にとってメリットもあることから、現在でも日掛け金融、つまり日賦貸金業者は存在しています。日掛金融は個人を対象にすることができません。そのためソフト闇金が日掛け金融を行なっているケースがあるため注意が必要です。
- 執筆者の情報
- 名前:梅星 飛雄馬(55歳)
職歴:地域密着の街金を30年経営
目次
日掛金融(日賦貸金業者)とは?
日掛け金融とは正式名称日賦貸金業者と言いますが、返済期間を1日単位として貸し付けている業者のことを言います。
貸金業者と言うと消費者金融を思い浮かべる人が多いと思いますが、貸金業者の業態の中に日掛け金融業者が含まれています。
消費者金融の返済は月単位で行うことが一般的ですよね。
たまに35日返済の返済方法を導入している消費者金融もありますが、基本的に返済日は月単位の約定日に返済することになっています。
しかし日掛け金融(日賦貸金業者)の返済のサイクルは1カ月の単位ではなく、1日単位で返済しなければならず、言い換えれば返済日が毎日あるようなものです。
返済日が毎日あるため、日掛け、日賦と言われているのです。
よく電化製品や車などを購入する場合に「月賦払い」と言いますよね。まさに月賦払いとは月単位の支払いであって、それに対応する言葉として「日賦」と言うのです。
もちろん毎日返済日があったとしても金利は日割りで計算しますので、支払う利息は1日あたりの利息で計算します。
日掛金融業者(日賦貸金業者)の特徴
日掛け金融業者(日賦貸金業者)が貸付対象とできるのは従業員が5人以下の零細事業者でなければなりません。
及び貸付金を回収する場合は必ず借主の住所または営業所へ集金に行かなければなりません。
よって貸付対象となるのは飲食店やヘアーサロンなど自営業者、個人事業主です。一般のサラリーマンやパート主婦、学生など個人はお金を借りることができません。
自営業者は事業資金を銀行から融資を受けることがなかなかできません。そこで比較的審査が甘い日掛け金融業者(日賦貸金業者)から当座の資金を借入することが多いのです。
しかも自営業者は毎日日銭が入るため、毎日の売り上げから借金返済をしていくことができますね。
日掛け金融業者にとっても毎日集金することから比較的早く借金返済をしてもらうことができること、毎日借主と顔を合わせるなど借主の状況を毎日把握することができるため、審査が甘くなりやすいメリットがあります。
それに消費者金融では借りることのできない自営業者であっても簡単にお金を貸すことが可能となることから、事業資金に苦労している自営業者にとってもいつでも簡単にお金を借りることができるメリットがあるわけです。
1カ月単位の返済よりも毎日返済することができれば、早く借金を完済することができるし、毎日返済することで追加借入が可能になるなど、自営業者でもとくに零細小規模業者にとっては便利な借入システムです。
日掛け金融業者にとってもメリットがあり、お金を借りる自営業者にとってもメリットがあることから、九州や沖縄地方を中心にして現在でも日掛け金融業者からお金を借りている自営業者も少なくありません。
日掛け金融は特例廃止で減少
貸金業法が改正される前は日掛け金融業者は全国各地に多く存在していました。それは日賦貸金業者の特例があったからです。
特例によって出資法で定められた上限金利よりも高い金利で貸し付けすることができ、例え借主へ集金を行ったとしても十分に利益を出すことができます。
消費者金融は出資法の上限金利を超えて貸し付けた場合刑事罰の対象となります。
しかし日掛け金融業者は貸金業法が改正されるまでは、上限金利が年54.75%と定められていたのです。
例えば飲食店が酒屋の仕入れ代金にお金が必要だと20万円を借りた場合、消費者金融なら1日あたりの利息は98円程度ですが、日掛け金融からお金を借りた場合は300円の利息を支払わなければならないのです。
1日あたりで計算すれば98円も300円もそれほど変わらないような気がしますね。
しかし月単位で利息を換算すれば消費者金融の利息は2,958円なのに対し、日掛け金融業者の利息は9,000円と大きな開きが出てきます。
それでも日掛け金融は毎日が返済日としていたため、借主はそれほど高い金利ではないと誤解するケースが多かったと言えるでしょう。
ところが貸金業法が全面的に改正、それとともに出資法も改正され上限金利は年20.0%と日掛け金融業者にとっては6割強の金利低下です。
さらに消費者金融と同じ金利水準で貸し出ししなければなりません。
・10万円未満:金利年20.0%
・10万円以上100万円未満:金利年18.0%
・100万円以上:金利年15.0%
日掛け金融業者の特例も廃止されたことから、日賦貸金業者としてもメリットがなくなってしまいました。
徐々に日掛け金融業者は減少し、既にご説明の通り現在では九州地方や沖縄を中心に日掛け金融業者が残っている程度です。
特例廃止による利息の収益悪化
日掛け金融業者の金利が貸金業法改正直前まで年54.75%は、消費者金融の貸金業法改正直前の金利である年29.2%に比べて、金利はかなり高いものでした。
しかし毎日返済するとなると金利が多少高くても気にならなくなるものです。
例えば日掛け金融業者から10万円を借りたとしましょう。消費者金融であれば毎月返済によって1カ月当たりの利息は2,400円ですね。
日掛け金融なら1日あたりの利息は150円です。これが仮に100万円借りたとすると消費者金融なら1カ月当たりの利息は2万4,000円、日掛け金融なら1日あたりの利息は1,500円です。
自営業者は日銭が稼げて、比較的お金が自由になることから、まとめて返済するよりも毎日返済したほうが返済しやすいのです。
もちろん毎日返済することによって、元金は徐々に減少していきますので自営業者が返済するにしても無理なく返済できる仕組みだったのですね。
ところが日掛け金融の特例廃止によって上限金利は年20.0%に制限され、しかも利息制限法で貸付元本によって金利が低減されることにより、日掛け金融業者の利息の収益悪化は営業できないほどまでに追い込まれてしまったのです。
たとえ100万円を貸付たとしても、金利は年15.0%まで引き下げられるため、1日あたりの利息は410円です。
貸金業者は元金を回収しても利益にはなりません。利息を回収して初めて利益になるわけですから、集金して利息が410円ではとても人件費やガソリン代などの費用を賄うことができませんね。
日掛け金融業者から50万円借りたとすれば、1日あたりの利息はわずか205円です。誰が見ても儲かる商売ではなくなってしまいました。
日掛け金融業者の条件
日掛け金融業者(日賦貸金業者)で貸し出しできる条件は以下の全ての条件を満たさなければなりません。
・貸出先が従業員が5人以下の物品販売業、製造業、サービス業を経営していること
・返済期間は100日以上とすること
・貸付金の回収は返済期間の50/100日以上にわたって借主の住所や営業所に集金すること
・貸金業者は日掛け金融専門に貸金業を営むこと
日掛け金融業者の存在意義は零細自営業者の事業資金を円滑に融資することを前提としているため、貸付先は上記の通り零細業者でなければなりません。
及び貸付金利が出資法改正される前まではかなりの高金利であったために、返済期間を短くしてしまうと零細業者の資金繰りを圧迫させる可能性があるため、返済期間は100日以上としなければなりません。
日掛け金融の特例は借金回収のために経費がかかるという理由で設けられていたわけですから、返済期間のうち半分以上の日数は集金によって行わなければならないと定められています。
しかし日掛け金融の特例は貸金業法改正とともに廃止されていますので、上記ご説明の日掛け金融業者の条件も現在では廃止になっています。
現在の日掛金融業者は闇金?
貸金業法が改正されたのは2010年6月18日のことです。これによって日掛け金融業者の特例も廃止され高金利での貸付はできなくなってしまいました。
貸付金利は消費者金融と同じ利息制限法に基づいて定めなければならないため、日掛け金融業者としてのメリットはもはやありません。
過去の日掛け金融業者は高金利であることをメリットに感じ、特例で定められていた金利54.75%以上で貸し出しすることや、サラリーマンやパート主婦など個人に対しての貸付も行うなど違法な貸付方法が横行していました。
金利が高ければなかなか返済できないのは当然です。
返済期間が100日以上と定められていたのに、もっと早く返済しろなどと暴力的な回収の苦情も相次いだことから、日掛け金融業者の特例が廃止されてしまったのです。
特例が廃止されたというだけで日掛け金融が廃止されたわけではありませんので、現在の日掛け金融業者は貸付金利を利息制限法に基づいて行なっているのであれば違法ではありません。
しかし貸金業法が改正され、日掛け金融の特例が廃止されたのにも関わらず、法律改正前の貸付金利で貸し出ししている場合は明らかに出資法違反ですから違法な貸付です。
闇金かどうかの区別は都道府県知事や財務局長の登録を受けているかどうかで判断するものです。
登録業者である日掛け金融業者が出資法を超えた貸付を行ったからといって闇金とは言えません。
でもきちんと登録してある正規の日掛け金融業者は、出資法超えた貸付を行うことはまずありえませんので、年20.0%を超える金利で貸し付けている日掛け金融業者を闇金、またはソフト闇金と考えても良いでしょう。
違法な日掛金融から借りてしまったら
金融問題に詳しくない素人は、貸金業法が改正になって日掛け金融の特例がなくなったなど知らない場合が多いですよね。
日掛け金融業者も借主が知らないことを良いことに、いまだに年54.75%の金利で貸し出ししている業者もあるようです。
何度も繰り返すようですが日掛け金融業者の特例は廃止され、貸付金利は上限で20.0%に下げられたのです。
もし現在日掛け金融業者からお金を借り、年20.0%以上の金利で借りている場合は出資法違反として刑事罰の対象となるのです。
直ちに警察に連絡を入れるとともに、金融問題に詳しい弁護士や司法書士の法律の専門家に相談しましょう。
日掛け金融の特例廃止で増えた闇金
たとえ日掛け金融の特例が廃止になったとしても、今までの顧客はそのままいますし、消費者金融から借りれない水商売や飲食店関係者は資金繰りができません。
そこで正規の日掛け金融業者であった貸金業者は、次第に闇金へと営業携帯を変えて行くようになったのです。
日掛け金融の特例が廃止になったなんて、よほど金融関係に詳しい人でなければわからないことですね。
闇金はニュース報道などで盛んに取り上げられても、日掛け金融業者の特例廃止まで取り上げるメディアはありません。
そのため現在でも日掛け金融業者からお金を借り、金利54.75%で毎日利息を支払っている利用者も多いのです。
普通に考えれば100万円を借りて毎日利息を1,500円支払うのは、高金利じゃないかと思いますよね。30日あたりの利息は4万5,000円です。
消費者金融の30日あたりの利息1万2,328円に比べたら利息の差は歴然です。
計算すれば誰でも日掛け金融の金利は高いな、利息は高いなと思うはずですね。金利年54.75%は闇金の金利に比べればまだまだ安い方です。
闇金の金利は年利換算すれば軽く1,000%や2,000%を超えますので、年54.75%の金利なら断然安いと感じることでしょう。
日掛け金融の許可を取って営業している貸金業者は、特例が廃止になったにも関わらず高金利で利息を取っていますが、それこそ馴染みの「金融屋さん」として地元に浸透しています。
金利が高いからといってすぐに闇金とは言えませんが、出資法違反の刑事罰対象であることは間違いのないところです。
日掛け金融は借りやすく返済しやすい
いくら金利が安くても水商売や飲食店などの自営業者に貸してくれない消費者金融があっても、全く意味はありませんね。
しかし日掛け金融を利用する水商売や飲食店などの自営業者にとっては、利息が高いとか低いではなく、お金を借りることができるかできないかが問題なのです。
今日お金を借りなければ仕入れができない、今日お金を借りなければ支払いができない、となった場合に金利のことを考えるよりも、「必ず貸してくれる」ほうがはるかに有効なのですね。
それに自営業者は日銭が入ることから元金の返済も同時にできますので、毎日利息以外に元金を1万円ずつ返済していれば、30日で30万円を返済することができるのです。
日掛け金融から100万円を借りても3カ月から4カ月で返済できるなら、それでもいいんじゃないかと考えてもおかしくはないでしょう。
日掛け金融からお金を借りても違法にはならない
自営業者が日掛け金融からお金を借りても、それ自体違法ではありません。違法に問われるのは高金利で貸し付けている日掛け金融業者です。
日掛け金融の特例が廃止になったにも関わらず従来の金利年54.75%は、出資法違反で刑事罰対象になるとしても、利用者が警察に訴えることや法律の専門家に相談しない限り発覚しません。
魚心に水心ではありませんが、日掛け金融を必要としている自営業者は少なくないのです。
確かに日掛け金融は闇金のように高金利ではありますが、必要なときにいつでも資金調達ができるため、まさにギブアンドテイクの関係なのかもしれ
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