信用金庫が行う法人融資の審査基準は数字より内面
融資審査を行なう際、決算内容は融資可否の大きな判断材料となります。
しかし、信用金庫は数字以上に顧客の内面に目を向けて審査を行ないます。様々な審査項目の中で、信用金庫は何を重視して審査するのでしょうか。
- 執筆者の情報
- 名前:山本馬元(30歳)
職歴:平成21年より信用金庫勤務
申込条件は他金融機関と同じ
融資を申し込むためには申込条件を満たすことが必須です。
申込条件の例として、「反社会的勢力またはその関係の者ではないこと」、「過去に返済において遅延がないこと」などが挙げられます。
この中で特に重要な項目を説明していきます。まずは申込条件を満たすことが融資を受ける第一歩です。
窓口へ行く前に納税は必ず行うこと
申込条件の中で特に重要な項目として、「税金に滞納が無いこと」というものがあります。
もし税金に滞納があれば、間違いなく申込を行うことはできなくなってしまいます。
それどころか、金融機関からの心証が非常に悪くなってしまいます。税金を滞納するということは、融資の返済も遅れる可能性が高いという風に思われてしまいます。
その様に思われてしまったら、滞納を解消したとしても金融機関の心証を改善することは難しいでしょう。
税金は払わなければいけないものであるため、どうせ払うなら滞納しないうちに払ってしまいましょう。延滞金も追加で支払うとなったら尚更良いことはありません。
創業3期未満でも融資は受けられる
申込条件に「3期以上の決算を行っていること」という項目があります。
会社員と違い、法人は一年ごとに売上や収益のばらつきがあり、安定しないものです。そのため、3期分の内容を比較して審査を行ないます。
しかし、創業して間もない場合は3期分の比較ができません。
そんな状態でも、もし、既に決算を2回終えていれば、以下の方法で融資を申し込むことができる場合があります。
1期目、2期目は既に決算書が出来上がっているので問題ありませんが、3期目においては、2期目の決算後から現在までの試算表(月ごとの決算資料)を添付することで3期目を補うことができます。
3期分の決算がある状態より情報が不足しており不利ではありますが、可能性はゼロではありません。2期分の決算書と試算表を持参し相談してみるとよいでしょう。
赤字でも融資をする
赤字にも様々な原因があります。毎年赤字である場合もありますし、一時的な赤字という場合もあります。
一時的な赤字で、今後は黒字となる可能性が見出せれば融資審査を通す場合もあります。その場合でも、これまでの取引状況が審査に影響してきます。
信用金庫に対して様々な取引を行い誠意ある対応をしてくれる顧客と、その逆の顧客がいたとしたら、後者は不利になることは言うまでもありません。
信用金庫は日頃の信頼関係を重視し、企業の業況が下向きになっているときこそ力になってくれる金融機関といえます。
債務超過はマイナスポイント
決算における赤字については、赤字の原因や取引状況等によって融資審査が通る場合があると記載しましたが、債務超過の場合は厳しい状況となります。
債務超過とは資産より債務が多い状況です。
簡単に言うと、資産を全て売却したとしても負債が残ってしまい返済できない状態のことです。
現段階でその様な状態なら、追加で行った融資に関しても返済される見込みは低いということになってしまいます。
債務超過は一時的に起こることではないため、融資審査において大きなマイナスポイントとなってしまいます。
債務超過なら改善計画書を準備せよ
確率は低いですが、債務超過であっても融資を受けられる場合があります。
債務超過である事実は簡単に変えることはできませんが、改善計画書を作成することで融資を受けられる可能性がでてきます。
改善計画書とは、今後の収支計画を作成し、将来の決算内容を計画することです。
債務超過の解消方法は利益を出すことです。つまり1円でも多く黒字にすることで、債務超過は解消されていきます。
例えば1000万円の債務超過であった場合、毎年300万円の黒字を出せば4年間で債務超過は解消されることになります。
言葉で言うのは簡単ですが、債務超過を解消するということは非常に大変なことです。実現可能な綿密な計画書の作成が必要です。
改善計画書の作成は中小企業診断士の資格を持った者や県・市町村の企業支援を行っている課に相談するとよいでしょう。
債務超過であっても、改善計画書に沿って話を進める場合もあります。
借り換えは審査が甘い
借り換えの審査では、過去の返済実績に重点をおいて審議します。借り換えを行うということは、現在、融資を返済中という状況です。
既存融資における返済において遅延が無ければ、今後の融資においても延滞が発生する可能性は低いと判断されます。
もし決算書や試算表の内容が多少悪かったとしても、返済実績を考慮して審査を通すことはよくあります。
延滞の有無は、人間性が伺えます。延滞が有れば、いい加減で管理ができないという印象を持たれてしまいます。
逆に、延滞が無ければ、真面目でしっかりと管理ができると判断されます。
新規融資にせよ借り換え融資にせよ、延滞は無いに越したことはありません。真面目に返済することが信用力の形成に繋がります。
絶対条件は満たさなければいけない
絶対条件は、信用金庫に限らず全ての金融機関が共通して求めている条件です。なので、他の金融機関で申し込むにしても、これらの条件は満たしている必要があります。
絶対条件は以下の内容になります。
①満20歳以上である者 ②安定継続した収入がある者 ③仮差押、差押、競売、破産、民事再生等の申立がない者 ④税金の延滞がない者 ⑤信用を失墜していない者 ⑥制限行為能力者ではない者 ⑦反社会的勢力ではない者 ⑧日本国籍を有する、または永住者および特別永住者 |
いくつもの細かな条件に分かれていますが、これらは融資を受ける際、当たり前に満たしていなければいけないことで、難しい内容では無いといえます。
これらの条件が問題なくクリアできている状態は、社会的立場・信用がある、ともいえます。
絶対条件も信用金庫は緩い場合がある
上記の中で、②・④・⑤においては、条件を満たしていなくても融資審査に通る可能性が僅かながらある項目です。
②においては、収入以外に資産(借入金額以上の預金や不動産等)を所有していれば、それらを加味して融資審査を通す場合があります。
④においては、滞納している税金を全額支払い、延滞がないことを確認できれば、融資審査を通す場合があります。
⑤においては、借入の延滞がある場合のみです。④と同様に、延滞を解消し、その事実が確認できれば、融資審査を通す場合があります。
ただし、代位弁済など金融事故となってしまっていた場合は融資審査に通ることは難しいです。
信用金庫では様々な事情を考慮して融資審査を行ってくれますが、税金の滞納や借入の延滞も無いに越したことはありません。
延滞は必ず解消してから申し込め
もし、申し込みの段階で延滞をしていることが発覚したら(どの道、融資審査の段階で必ず発覚してしまう)、金融機関からの心証が非常に悪くなってしまいます。
また、悪くなった心証を元に戻すことも非常に難しくなってしまいます。お金を貸す側としても、既に借入で延滞をしている者にお金を貸したいとは思わないでしょう。
延滞をしてしまっても、僅かではありますが金融機関の心証を良くする方法をお伝えします。延滞を解消することは大前提ですが、その事実を正直に伝えることです。
もし延滞を解消したとしても、延滞していた履歴は融資審査の際に必ず発覚します。ならば、先にその事実を伝えた上で申し込むと良いのです。
悪いことも隠さず伝えるということは、その人の誠意が伝わりますし、心証も良くなります。誠意ある行動は評価してくれるでしょう。
原則、会員となる必要がある
信用金庫は組合組織であるため、借入をする為には信用金庫の会員になる必要があります。
会員になる為には、信用金庫に出資をしなければいけませんが、会員になることで様々な恩恵を受けることができます。会員になる為の資格、費用等を理解しておきましょう。
会員になるには会員資格を満たせ
信用金庫の会員になるためには、以下の会員資格のうち1つ以上満たしている必要があります。
- 信用金庫の地区内に住所又は居住を有する者
- 信用金庫の地区内に事業所を有する者
- 信用金庫の地区内において労働に従事する者
- 前3号に掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者
つまり、信用金庫の地区外の方々は会員になることができません。地域に密着した信用金庫ならではの会員資格といえるでしょう。
ふたつ目の条件
個人又は「従業員300人以内であること」「資本金が9億円以下であること」の条件を満たしている中小企業であることです。
ただし、個人事業主は「従業員300人以下」だけが条件となっています。会員になるための条件は、このふたつの条件を満たしていれば特に難しくはありません。
なお、700万円以下の少額融資の場合は、会員でなくても利用できます。
信用金庫を個人が利用する場合は、住宅ローン以外は会員になる必要はなく銀行と同じように利用できます。会員となることに抵抗がある人でも、信用金庫からの借入れはそれほど意識せず利用できます。
会員になるには一度だけ費用が必要
会員になるためには信用金庫に出資をする必要があると記載しましたが、いくら出資をすれば会員になることができるのでしょうか?
金額は5千円以上であれば、会員になることができます。
上限は、個人の場合は5万円、法人の場合は10万円が目安となっています。
費用は、積立のように毎月必要というわけではなく、申込時のみとなります。
つまり、1度だけ信用金庫に5千円以上の出資をすれば、信用金庫の会員となり、借入をすることができるようになります。
ただし、別の信用金庫で借入をする場合は、その信用金庫の会員になる必要があるので注意が必要です。
1つのデメリットと多くのメリット
会員になると借入ができること以外にも多くのメリットがあります。
しかし、その前にデメリットから理解しておきましょう。
会員になるデメリットは、信用金庫に出資した資金を現金化したい場合、時間がかかってしまうという点です。
例えば5千円の出資をすると、金5千円と記載された出資証券が発行されます(近年はペーパーレス化されている信用金庫も有り)。
出資証券を解約する場合、預金のようにその場で解約して現金にすることができず、新たに同額の出資をしてくれる者を見つけて初めて現金化することができます。
勿論、探すのは信用金庫職員ですが、1日、2日では見つからないのが現状です。場合によっては数か月以上かかることもあります。
信用金庫との取引条件を満たせ
信用金庫は組合組織であるため、融資は会員にのみ行なうことができます。融資を受けるためには会員になることが必須条件ということです。
必須条件を満たした上で、信用金庫からの心証を良くする方法があるので、有利な状態にして融資の申し込みを行いましょう。
信用金庫をメインに取引しよう
融資を有利に進める方法として、信用金庫とメインに取引を行うことです。勿論、融資を受ける信用金庫との取引です。
融資の申込の際、信用金庫では取引状況の確認を行います。その際に、普通預金や定期預金・定期積金・公共料金の引き落としなど様々な取引を行っていると心証は良くなります。
信用金庫の根本には「相互扶助」があります。お互いを助け合うという意味であり、メインに取引をしてくれているなら、信用金庫も顧客の要望に応えれるよう最善を尽くしてくれるでしょう。
日頃から様々な取引を行っていると、このような場面で役に立ちます。
職員と顔見知りになろう
融資を受ける条件や有利になる条件を列記しましたが、融資に関する受付や話し合いをするのは人と人です。信用金庫には融資の部署があります。
そして、営業店の中で融資の部署と直結している者は、内勤役席(店舗の運営等を総合的に管理している者)以上と支店長です。
これらの者と面識を持っておくと、融資を受ける際もスムーズに進む場合があります。信用金庫も融資を行なうからには相手のことをよく知らなければいけません。
決算書などの数値を見ることも大切ですが、最終的には代表者の考えや意思を尊重します。
信用金庫の職員は2~3年程で転勤があり入れ替わりが激しいですが、取引の情報や顧客の人間性は次の担当者へ引き継がれていきます。
頻繁に職員は変わっていきますが、職員との繋がりも大切にしましょう。
融資実行までの流れと重視される点
まずは一般的な融資の流れを理解しましょう。融資の基本となる部分は金融機関による違いはありません。
一連の流れで特に重要となる部分は融資審査ですが、そこを優位に進めるポイントを説明します。
申込から融資実行までの基本的な手順
融資の申込から実行までの基本的な手順は以下の通りとなります。
申込⇒審査⇒実行
融資を受ける場合、この手順は必ず踏まなければいけません。
これらの各手順で、申込においては事前申込(仮申込)があったり、審査においては事前審査や本審査がある場合もあります。
商品によって、有るものと無いものがあるので一概には言えませんが、基本的な手順だけは把握しておきましょう。
面談を重視する
融資を受ける為には融資審査に通らなければいけません。
融資審査では、申込金額や申込期間と顧客属性(個人であれば年収や勤続年数等、法人であれば決算内容や事業の状況等)を照らし合わせ、総合的に融資の可否を検証します。
この様に数字上で審査できるもの定量面と言います。
一方、申込人の人柄や意欲など、数字では評価できないものを定性面と言います。勿論どちらも同じくらい重要ですが、信用金庫は定性面をより重視しています。
例えば、申込において顧客の姿勢が非協力的であったり、横暴な態度をとっていると、定性面の評価が下がってしまいます。
定量面は年月が経てば新しい数字となり、過去の数字は、あまり重要ではなくなります。ですが、定性面は年月が経っても引き継がれていきます。
融資という長期の取引を行う上で、定性面は良いに越したことはないので、日頃から誠意ある対応を心掛けましょう。
融資を申し込む前に必要書類を確認
融資を申し込む場合、融資に関連する書類が必要となります。
例えば、これまでの業況を確認する決算書や、資金使途(資金の使い道)の根拠となる書類など様々な種類があります。
中には専門的な書類もあるので、一度に全てを準備することは難しいですが、1つでも2つでも準備ができていれば手続きはスムーズになります。必要書類を把握し、事前に準備できるものは準備してしまいましょう。
必要書類は漏れなく準備
融資相談は、資金が必要となった経緯から話していきます。資金使途確認書類(見積書等)にて、何にいくら必要なのかを確認します。
次に、融資を受けるにあたり、事業の業況を確認します。そこでは決算書や試算表が必要となります。
融資相談は流れが決まっているため、それに付随した資料を準備するとよいでしょう。
難しく考える必要はなく、もし自分が他人にお金を貸す場合、何を知りたいかと考えれば必要書類が見えてきます。
以下に、必要となる書類を列記します。
- 決算書3期分(個人事業主であれば申告書)
- 試算表(決算もしくは申告後、半年以上経過している場合)
- 商業登記簿謄本
- 印鑑証明書(法人の場合、代表者の印鑑証明書も必要)
- 納税証明書
- 実印
- 資金使途確認書
必要に応じて準備する書類
必要に応じて準備する書類は、ケースバイケースとなるので一概には言えませんが、以下の書類が考えられます。
- 許認可証
- 賃貸借契約書
- 工事明細書
許認可証は特定の事業を行う場合の証明書です。保健所・警察署・都道府県等に届け出ることにより発行され、事業の許可がなされます。
無許可で事業を行うことは違法であるため、該当する業種の場合は許認可証の確認が必要となります。
賃貸借契約書は事業所を賃貸で借りている場合に必要となります。契約書の場所で事業が行われているかを確認することができます。
工事明細は土木業や建築業等において必要となる書類で、現在以降の工事状況を把握するための資料となります。
現在、いくらの契約の工事が何件あり、工事代金がいつ頃入金になるのかが記載されています。
工事代金の入金は、今後の資金繰りに大きく影響するため、特に重要な書類といえます。
上記以外にも業種によって必要なものは他にもありますが、信用金庫の担当者と面談の上、書類を揃えていきましょう。
必ず必要な書類が揃っていれば先に手続きを進めることができ、必要に応じて準備する書類は追って提出するのでも問題ありません。まずは、融資の話を進めていくことが重要です。
これを準備すると好感度が上がる書類
上記の必要書類を準備して持参することじたいが好感度を上げますが、中でも委任状で信用金庫職員が取りに行くことができる書類を準備しておくと、更に好感度が上がります。
納税証明書になりますが、顧客から委任状の提出を受ければ、信用金庫職員が税務署に行き発行をすることができます。
しかし、納税証明書の発行の為に税務署へ行くことは時間も費用(移動費)もかかってしまいます。
顧客側で事前に準備してくれたら、これらの手間を省くことができますし、手続きに協力的と判断してくれるでしょう。
書類の有効期限の確認を忘れずに
公的書類には有効期限があります。信用金庫によって違いはありますが、一般的に3ヶ月以内もしくは6ヶ月以内としています。
上記の書類の中では「商業登記簿謄本」・「印鑑証明書」・「納税証明書」・「許認可証」・「賃貸借契約書」が該当します。
公的書類の下部(複数ページある場合は最終ページ下部)に日付が出ています。この日付は発行された日付であるため、この日から有効期限を計算しましょう。
公的書類の内容も時間が経てば変わってくる場合があります。そのため、有効期限を決めて取り扱っています。
もし、有効期限が近い書類の場合は信用金庫に相談しましょう。
事業融資は実行までに、ある程度の日にちが必要であり、その間に有効期限が切れてしまったら改めて準備しなければいけないため、二度手間になってしまいます。
事前に確認することで手続きをスムーズにしましょう。
近年の融資は保証人不要の場合がある
従来は法人のみの財務内容で融資が難しい案件でも保証人を徴求することで融資を行ってきました。
しかし、近年の融資は、保証人に頼らずに債務者単体での規模・資力から審査を行なうように変わってきました。法人であれば法人単体、個人事業主であれば事業主単体となります。
そのことで、事業規模に見合った融資を行ない、過剰融資を防ぐことが実現できます。
ですが、必ず債務者単体で審査を行ない保証人は不要というわけではなく、従来通り保証人が必要となるケースも、まだまだ多くあります。「保証人」に関する信用金庫の見解を理解していきましょう。
保証人不要は第三者がなる場合である
保証人を極力徴求しないで融資を行なう方針となりましたが、全てのケースにおいて保証人不要ということではありません。不要となる保証人は、第三者に対してです。
保証人となるのは、法人であれば役員まで、個人事業主であれば事業主の家族までというように、債務者と近い関係の者に限定されます。
従来は、全く事業に関係していない知人や遠い親戚も保証人となっていたケースがありました。
もし、業績が悪化し事業を続けられなくなると、次に支払い義務が発生する関係者は保証人です。
保証人は支払い義務があるものの、返済能力が無く自己破産をせざるを得ない状態になった事例も多くありました。これらのことを踏まえ、近年、保証人を守る法律が施行されました。
保証人を守る法律ができた
保証人の生活を守るため、平成26年2月に「経営者保証に関するガイドライン」という法律が施行されました。
簡単に説明すると、債務者が返済不能となった場合、保証人はその時の資産を上限とし、それ以上の支払い義務が発生しないという内容です。
従来は、保証人の資産に関係なく返済をせまられていたものが、保証人の生活を尊重する方針に変わりました。
保証人となる場合、保証債務に関する約定書(契約書)について説明があります。専門用語が繋がった説明文で理解し辛いですが、内容は上記の通りです。
法人が保証人不要の融資を受ける条件
法人が保証人不要で融資を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
①法人と個人の資産に一体性が無い
②財務基盤が堅固である
③適時適切な情報開示を行っている
①については、法人と経営者との間に資金の貸付等の資金流出が無いかという項目です。
法人から経営者へ資金の貸付があると、もし法人が債務手続きとなった場合に清算しなければいけません。法人と個人の資産は別々のものになっていなければいけません。
②については、業績が堅調で十分なキャッシュフロー(利益)を確保している状態であるかという項目です。
もし、キャッシュフローが不足している場合、赤字となっている可能性があります。
また、赤字から経営を立て直すために経営者の資産を導入している可能性が高く、法人と経営者の資産が一体となっていることになります。
②においては、法人のキャッシュフローのみで賄われている必要があります。
③については、金融機関に対して決算書や試算表等を定期的に開示しているかという項目です。金融機関からの正当な依頼には応えるようにしましょう。
以上の項目が満たされていると、保証人不要で法人融資を受けられることになります。
信用金庫は開業の融資に積極的
近年は銀行も開業の融資に積極的ですが、信用金庫も負けてはいません。信用金庫には、これまで培ってきた様々な実績があります。
業種も多種多様ですが、それに対応できる実績や経験が信用金庫にはあります。
開業ノウハウを学べる
信用金庫は地域密着の金融機関で、地域の発展を第一としています。地域が発展するには、新たな事業の設立、既存事業の規模拡大が重要となります。
その為、信用金庫は昔から開業の融資に積極的です。
開業のノウハウも沢山ありますが、信用金庫ならではの地域性を踏まえた相談を受けることができます。
信用金庫は永年、地域に密着して事業を行っている為、より詳しい地域性を知っています。事業を行う上で地域性を知ることは非常に重要なことです。
その地域には、どの様な世帯が多いか、これから開業する事業は需要があるか、同業者は多いかなど、様々な情報を持っています。
これらの情報は、年に1回、市町村のホームページに載っている情報を元に、最新の内容で更新されています。
そこに信用金庫が知る地域性も加わる為、より正確な情報とノウハウを学ぶことができます。
親身なアドバイスを受けられる
上記で記載した通り、信用金庫は地域の発展を第一としています。その為、開業の融資においては特に親身なアドバイスを受けることができます。
金融機関では、「融資は実行してからが大事」と言われています。融資は実行してから数年から数十年の返済が続く為、その間に様々な変化が予想されます。
事業状況が計画していたよりも更に上向きになった、事業規模を拡大できたという良い変化であれば良いですが、逆に、計画していた目標を達成できなかった、同業者が増えて煽りを受けたなど悪い変化もあります。
そこでよく用いられる分析に「SWOT分析」というものがあります。
これは、企業における「強み」・「弱み」・「機会」・「脅威」を分析するものです。人も同じですが企業においても良い点と悪い点があります。
中でも「弱み」と「脅威」について正確な分析をする必要があります。
「弱み」については経営者がよく理解していると思いますが、「脅威」については信用金庫の情報が役に立ちます。
「脅威」とは、外部から受ける影響のことですが、その地域で同業者の新規参入状況や撤退状況等が該当します。
これらの情報においても、地域密着の信用金庫は沢山の情報を持っています。
外部の機関とも繋がりがある
開業を考える上で重要となるのは、事業の将来を考えることです。
そこで必要となる資料が、事業計画書です。事業計画書とは、未来の売上や収益を予想する書類です。
事業によって、例えば不動産賃貸業の様に初めから安定した収益が出る業種があれば、飲食業の様に徐々に収益が出る業種もあります。
また、事業計画書では収益が上がることだけではなく、逆に収益が下がる可能性についても考える必要があります。
業種や地域性による傾向というものもありますが、より多くの企業を診てきた者と計画書を作成したいものです。
その様な機関が都道府県や市町村にあります。信用金庫は、これらの機関とも強い繋がりがあります。
信用金庫からの紹介を受けることもできますし、信用金庫へ相談する前に、これらの機関へ相談するのも良いでしょう。
創業には創業融資を利用すると良い
信用金庫には様々な目的に応じた融資商品があります。
商品によって資金使途(お金の使い道)や借入上限額・金利等も大きく異なります。勿論、創業の為の融資商品もあります。
創業には様々な経費もかかりますが、極力抑えられるものは抑えておきたいものです。
融資商品においては、目的に合わないものを利用してしまうと無駄な経費(利息)をかけてしまうことになります。
信用金庫職員は、様々な融資商品の中からベストなものを勧めてくれると思いますが、その様に様々な商品があるということを覚えておきましょう。
資金使途自由のローンは避けよ
信用金庫では資金使途が自由なカードローンやフリーローン(以下、カードローン等)といった商品があります。
カードローン等の資金使途は消費資金(生活資金やレジャー資金等)に限定されているものが殆どですが、中には事業資金に利用することができるものもあります。
カードローン等は申込方法がとても簡易的で、数日で融資を受けることができます。事業資金に利用できる商品であれば、そのまま創業資金として利用しても問題ありません。
しかし、利率が非常に高いことがデメリットです。
一般的な事業資金は1%前後から2%前後の利率となっているのに対し、カードローン等は3%前後から14%前後の利率となっています。
また、一番低い3%前後で融資を受けるためには、それなりの属性(年収・勤続年数・資産等)がなければ難しく、殆どの場合が10%を前後する高い利率での利用となってしまいます。
一つの方法ではありますが、非常にデメリットが大きいので、時間がかかっても低利な創業資金専用の融資を利用しましょう。
自己資金があっても融資を受けるべき
もし創業の資金があった場合、自己資金で創業するので借入する必要は無いと思われがちですが、それは自らリスクを担ぐような行為です。確かに借入をしなければ利息を払う必要が無く、経費の節約になります。
しかし、それは事業が全て順調に進んだ場合です。創業には様々なリスクが想定されます。
時には売上が伸びなかったり、利益が出ないこともあるかもしれません。
その様な時に自己資金が全く無ければ、どこかから資金を借りるか、最悪の場合は事業を継続できなくなってしまいます。
また、資金を借りようにも、事業がうまくいっていない状態では借りれないことも考えられます。
せっかく創業をするなら、万が一のことを考えて自己資金は温存しておく方が賢明といえます。
創業においては何事においても最悪のシナリオを考えておくことが重要です。
事業資金の借入に繋げることができる
創業資金の融資を受け、事業が順調にいく場合があれば、そうでない場合もあります。
事業の立ち上げを支援した信用金庫は、今後、事業が良い時も悪い時も、よきパートナーとして協力をしてくれるでしょう。
創業後に改めて融資を受ける場合、創業時から付き合いがある場合と、そうではない場合では信用金庫の対応も違います。
他金融機関で創業融資を受けたのなら、まずは、その金融機関で融資の相談を受けてくれとなるでしょう。
その点、創業から付き合いがあれば、しっかりと支援してくれるはずです。信用金庫は創業後のアフターフォローや支援もしっかりとしてくれる金融機関といえるでしょう。
定期積金は事業を助ける
利息が全くといっていいほど付かない今日、預金である定期積金をする意味や必要性はあるのでしょうか?
たとえ利息が殆ど付かないとしても、融資においては定期積金が重要になります。
どの様な点でメリットがあるのでしょうか?
税金の支払いは定期積金で
法人の場合、年に1回、法人税や消費税・所得税など様々な種類の税金を支払わなければいけません。
支払う時期が決まっているので、支払いの計画は立てやすいと言えます。毎年決まった時期に支払いがあるなら、その時期に満期となるように毎月積立を行えば良いのです。
毎月積み立てても、一括で払っても同じことと思われがちですが、定期積金をすることにより毎月の収支から確実に税金支払い資金を除くことができます。
お金は持っていると使ってしまうのが人間の心理です。積立をすることにより、確実にお金を貯めることができます。
また、万が一、税金支払いの時期に業績が悪化していたとしても税金の支払いで悩むことはありません。
因みに事業資金において、税金の滞納があると融資は確実に受けることができません。
税金が支払えず、新規の融資も受けることができなくなると事業はどんどん悪化していくことは目に見えているので、税金は確実に払えるようにしておきましょう。
金利の減免になる
商品によっては取引状況により金利の減免を受けることができるものもあります。
また、定期積金を含む様々な取引(普通預金・定期預金・財形貯蓄預金・保険等)を行っていると、メイン取引先となり、そのことが融資審査においてプラスの要素となります。
より多くの取引を行い優位な状態で臨みましょう。
信用金庫の融資は保証協会が主流
信用金庫が事業資金の融資をする場合、外部の機関である保証協会を利用するケースが主流です。保証協会を利用するメリットは、どの様なものがあるでしょうか?
保証協会を利用する理由は保全
保証協会は名前の通り、融資した融資金の保証をする機関であり保証人の代わりとなる存在です。
万が一、債務者が返済不能となった場合、代位弁済という手続きを行うことで融資金の残債は保証協会から金融機関へ払われます(商品によっては全額ではなく8割までのものもある)。
債務者は保証人を依頼しなくていいメリットがあります(その代わり保証料の支払いがある)。
信用金庫は債務者が返済不能となった場合、融資金の残債を回収することができるメリットがあります。保証協会は債務者が返済不能とならない限り保証料が全額利益となるメリットがあります。
このことにより、信用金庫は債務の保全ができる為、低利で融資を行なうことができますし、顧客も低利で融資を受けることができます。
保証協会を利用することで、それぞれにメリットがあると言えるでしょう。
信用金庫は保証協会に融通が利く
保証協会を利用する場合、信用金庫の融資審査に加え、保証協会の融資審査もあります。
保証協会も債務を保証する立場であるので融資審査は厳しいですが、信用金庫との繋がりも強い為、ケースバイケースではありますが多少の融通が利くこともあります。
たとえ赤字であっても、債務超過であっても、将来性を加味して融資審査を通す場合もあります。まずは信用金庫に相談してから方針を固めていきましょう。
プロパー融資なら保証人は今の時代も必要
保証協会を利用する場合、保証協会が保証人の代わりとなるので第三者の保証人は必要ありません。
しかし、法人融資やプロパー融資は、保証人が必要となる場合があります。保証人になる手続きについても理解を深めましょう。
保証人になる為の調書がある
保証人になる者は、資産と負債の状況、債務者との関係性などを開示する必要があります。
保証人になる為の基準は設けられていませんが、保証人とは、万が一債務者が返済不能となった時に残りの債務を返済していける資力があることを前提としています。
しかし、実務上は、そこまで資力のある者が必ず居るとは限りません。なので、資力がある保証人が居ないから借入を諦める必要はありません。
更新手続きは職員が出向くことも
借入の種類によっては、定期的に約定書(契約書)を更新するものもあります。
例えば、短期の借入である手形貸付や割引手形は、契約当初に「限定根保証約定書」を取り交わします。この約定書は5年毎、または債務者や保証人の変更があった際に更新を行います。
その際、債務者は勿論のこと、保証人においても署名・捺印が必要となります。保証人も日中は勤めに出ていたり、金融機関の営業時間内に来店することが難しいこともあります。
そんな場合は、信用金庫職員が家まで出向いてくれることもあります。面談の時間帯は要相談となりますが、柔軟に対応してくれる点も信用金庫を利用するメリットと言えるでしょう。
融資の面談では、ここを見られている
信用金庫職員と面談する際、どんな点を見られているのでしょう?
勿論、決算書や確定申告書といった数字の部分も詳しく見られますが、面談の印象という点にも重点を置いて見られています。どの様に影響するのでしょうか?
印象・態度・姿勢を重視
信用金庫は地域密着の金融機関で、人に寄り添った金融サービスの提供をモットーとしています。
その為、信頼関係という点を大切にしています。信頼関係は、人と人との繋がりから構築されていきます。
例えば、不足の資料があり準備を依頼したにも関わらず一向に連絡が無かったり準備をしていないということはマイナスになります。
他にも何度か電話等で連絡をしているにも関わらず返事をしないということもマイナスになってしまいます。
逆に、これらのことに誠意を持って対応すれば、信頼関係は築かれていくでしょう。
信頼関係を重視する信用金庫と良い関係性を築き、再び融資が必要となった時に活かしましょう。
決算内容が印象で覆されることもある
融資審査において不変なものは、数字です。決算書や確定申告書の数字は変えることはできません。
ですが、赤字だから融資を受けられない、債務超過だから融資を受けられないということではありません。
赤字でも債務超過でも企業は事業を続けることができます。企業が事業を続けられなくなるのは、資金が回らなくなった時です。
つまり、人間で言うところの血液が循環しなくなった時です。赤字や債務超過は、経営努力により解消できる可能性はあります。信用金庫は、その可能性を重視します。
もし業績が悪化しているなら、再生計画書や改善計画書を作成し誠意を持って相談することで、も前向きな検討につながる場合もあるので、厳しい状況の時こそ誠意ある対応をしましょう。
信用金庫の融資審査は甘い
信用金庫は銀行に比べて融資審査が甘いと言えます。
もし赤字や債務超過の場合、このままの現状が続けば、いずれ事業は続けられなくなります。
ですが、それを覆すことができるほどの計画や見込みがあるなら話は別です。その為には、より実現可能な計画が必要です。
その計画を立てる為には、専門家に内容を見てもらう必要があります。
都道府県や市町村にある部署に赴き相談してみましょう。その計画書を持参し信用金庫に相談へ行くことは非常に効果的です。
何故なら、信用金庫へ相談する前に、自分で経営を立て直す行動を起こしているからです。信用金庫の担当者にもよりますが、とても前向きな行動と言えるでしょう。
外部保証が無理ならプロパー融資で
事業資金の場合、保証協会を利用するケースが主流ですが、その保証協会の審査が通らなかった場合、プロパー融資を検討してみましょう。
プロパー融資は外部からの保証がないので、金融機関もある程度のリスクを負います。リスクを負ってまで融資を行なってもらう為には、ある程度の信頼関係や実績が必要です。
また、もし信頼関係や実績が無かったとしても誠意ある行動で将来を見据えて融資してくれる場合もあります。プロパー融資の検討を依頼してみましょう。
預金・融資取引も審査に加味される
融資審査では決算の数字以外に、信用金庫との取引状況も加味されます。融資の申込を受けたら、まずは取引状況を確認されます。
様々な取引を行っているに越したことはありませんし、メインに利用していれば好印象です。審査においても、これらの取引状況はプラスの材料となります。
員外貸出なら700万円まで融資可能
借入をする場合、原則、会員にならなければいけないと記載しましたが、会員ではなくても700万円までは借入をすることができます。これを「員外貸出」といいます。
700万円はトータルの借入額で計算されるため、総借入額が700万円以上となる場合は会員にならなければいけません。
員外貸出は印象が良くない
員外貸出で700万円までは融資を受けることができますが、信用金庫職員からの印象は良くないといえます。
借入は会員のみ行う事ができるという「原則」があるからです。信用金庫は相互扶助という「お互いを助け合う関係」が根本にあります。
交換条件ではありませんが、融資をする代わりに会員となってもらうことは、お互いの希望に副えている状態といえます。
どちらかというと、審査が通りづらい
会員であるか否かが審査に大きな影響があるわけではないですが、会員の方が心証は良くなります。
融資の申込書には、信用金庫の会員であるか否かを記載する欄があります。会員であれば、それだけ信用金庫と深く繋がりがあると取れます。
融資申込と同時であっても、会員になった方が様々な面で良いといえるでしょう。
総与信額により審査部署が変わる
融資を受ける場合、必ず融資審査があります。
本部には融資審査を行なう専門の部署もありますが、本部の判断ではなく営業店の判断で融資を行なう場合もあります。
どのような場合に審査部署が変わっていくのでしょうか。
審査は店長決裁と本部決裁がある
金融機関には本店および支店(まとめて営業店という)があり、その上に、営業店をまとめる本部があります。
融資審査の可否について、支店では支店長が、本部では審査部及び役員が行っています。
支店長の権限で審査を通すものを「支店長決裁」、審査部以上の権限で審査を通すものを「本部決裁」といいます。
ドラマや現実のニュースでも支店長が横領を行ったという事件は、支店長決裁で融資を行ない、本部が把握する前に事に至るというケースが多いです。
しかし、支店長の決裁でも、翌日には本部で把握されることになるので、横領も行えないような牽制体制は整っております。
総与信額が増えれば決裁区分が変わる
支店長決裁で審査を通すことができる総与信額と、本部決裁で審査を通すことができる総与信額は異なっております。
例えば、総与信額が3,000万円以内であれば支店長決裁、3,000万円超であれば本部決裁というようになっていますが、金額に関しては各信用金庫によって異なります。
また、上記の例では3,000万円を越すと本部決裁となりますが、本部の中にもいくつかの段階が区切られています。
例えば1億円超であれば「審査部」に加えて「理事」の決裁、3億円超であれば「審査部」・「理事」に加えて「専務」の決裁、5億円超では「常務会」の決裁というように分かれています。
総与信額が増えれば、万が一、返済が行き詰った際、信用金庫にも大きな損失が出てしまう可能性が出てきます。
あらゆる状況を想定し審査を行なう必要があるため、金額ごとに決裁区分が分かれていることになります。
審査を通す秘訣は決算内容と信用力
融資審査では、どの金融機関でも決算内容の確認を行います。決算書は数字のみで構成された企業の1年間の成績表と言えます。
なので、決算書の数字が良いに越したことはありません。決算内容に加えて、信用金庫は信用力も重視します。
信用力とは、代表者の事業に対する姿勢であったり考えなど、決算書で読み取れないものです。
もし決算内容が芳しくなかったとしても、信用力を加味した上で融資審査を行ないます。日頃の取引状況や、面談状況などが大きく影響するといえるでしょう。
また、信用金庫は会員を対象に年に数回の懇親会を開きます。その場には、支店長や役員も参加するため、その際に役員と面識を持っておくことで良い印象を与えることでしょう。
運転資金と設備資金は限度額が異なる
事業に関する借入は、「事業資金」という呼び方をします。
更に、事業資金には「運転資金」と「設備資金」があります。
運転資金は、事業を運営していく上で必要な形の無い費用です。例えば、仕入資金、諸経費(通信費や人件費、租税公課など)等です。
設備資金は、事業を運営していく上で必要な形のある「物の費用」です。例えば、営業車両や器具等です。運転資金と設備資金では借りる目的が大きく異なります。
また、借りることができる金額の目安も異なってきます。運転資金と設備資金の借入ができる目安について比較していきましょう。
運転資金は年間経費の2~3割が目安
運転資金は年間にかかる経費の2~3割が借入できる目安となります。
例えば年間にかかる経費が100万円だった場合、20~30万円前後が運転資金として借りることができる目安ということになります。
運転資金は資金使途(資金の使い道)が確定していない借入であるため、2~3割が妥当とされています。
これが一般的な考えですが、一時的に運転資金を多く必要とすることが見込まれる場合は、2~3割という目安にとらわれる必要はありません。
資金が必要な明細等を準備すれば、その金額に沿って借入金額を柔軟に対応してくれる場合があります。目安はありますが、信用金庫では必ずではありません。
設備資金は借り入れ限度の目安が無い
設備資金は借入限度の目安がありません。というのも、設備資金で購入するものは直接利益を生むためのものであるからです。
運転資金のように、諸経費の2~3割という考えでいくと、とても足りない状態になってしまいます。
重要なことは、設備を投入することにより、どれだけの利益を生み出すことができるかです。これまでの経験や実績を元に話し合いを行い、融資金額を決めていきます。
会員はすぐにやめられる?
信用金庫から借りた事業資金を完済したなど、何らかの理由で会員をやめたいと考えることもあるでしょう。若しくは、単純に出資した資金を返してほしいということも、あるかも知れません。
しかし、出資した資金はすぐに返ってきませんので注意をしましょう。信用金庫の会員から脱退する方法はふたつあり、ひとつ目は「自由脱退」です。
信用金庫に対して脱退請求をする方法で、誰かに自分が出資した持分を全部譲渡(買い取ってもらい)して脱退することになります。
すぐに譲渡する相手が見つかれば、出資した資金は全額戻ってきます。
しかし、譲渡する相手が見つからなくても、ずっと脱退できないわけではありませんので安心してください。譲渡する相手が見つからない場合は、信用金庫が譲り受けることで脱退が完了します。
ただし、信用金庫が譲り受けられるのは、脱退請求した日から6か月以上経過した後の事業年度末(総会などの承認が必要)になりますので注意をしましょう。
脱退の申込みをする時期によっては、かなり時間がかかるため注意が必要です。
ふたつ目は、「法定脱退」です。信用金庫の営業区外に転居する、会員が死亡する、破産手続を開始するなどのケースが該当します。
法定脱退の場合は、出資金が戻ってくるのは脱退した年度の翌事業年度となっています。
なお、信用金庫からの借入金の返済が終わっていない状態で法定脱退となっても、少額融資などは気にする必要がありません。
さらに会員資格をなくしたときには、基本的には一括返済をして法定脱退となります。ただし、窓口に相談をすることによって、融通を利かせてくれることもあります。
金融庁の方針は信用金庫の根本と同じ
従来までの金融庁の方針は、業績の良い企業に資金供給(融資)をせよというものでした。
しかし近年では、企業の業況が下向きになっているときこそ融資を行ない、業況を良くして欲しいという方針になりました。
金融機関は金融庁の方針に沿って事業を行っています。金融庁の方針は、これまでの方針とは180度間逆な内容となりました。
勿論、どんな企業に対しても融資をしてくれというわけではなく、企業の強みや弱み将来性などを加味した上で融資を行なう判断をしてほしいというものです。
表面には現れない企業の内面の部分を評価してほしいということは、信用金庫が昔から行っていたことです。
これを事業性評価といいますが、今後は信用金庫の強みが活かされる時代に入ってきているともいえます。
条件変更していても融資を受けられる
融資を受けている途中で返済が厳しくなった場合、返済額の軽減等を行うことができますが、このことを条件変更といいます。
条件変更は1年、2年という期間を区切って行われますが、期間が終了しても改めて条件変更を行い、当初の返済にはなかなか戻せない状況になる企業が大多数です。
そんな場合、新規で融資を行なうことはほぼ不可能でした。しかし、その考えは過去のものとなりました。
金融庁の方針が、決算の数字だけではなく企業の内面を評価することに重点を置いたため、条件変更を行っていても将来立て直すことができると見込まれた場合、融資を行なうことが可能となりました。
とは言え、金融庁からの支援や保証があるわけではないので、信用金庫も慎重に入念に吟味しなければいけないことは従来と変わりありません。
事業性評価とは
事業性評価とは、事業の強みや弱みを元に将来性を評価することです。評価方法はSWOT分析(スウォット分析)という方法で行われます。
SWOTの内容はS(強み)、W(弱み)、O(機会)、T(脅威)であり、良い点と悪い点を把握した上で将来性を分析していきます。まずは自身の事業内容を再確認することが重要です。
実は昔から事業性評価は行われていた
機械化が進む今日においても、信用金庫は顧客と面談し話し合うことを重視してきました。その背景には、地域に密着した経営方針が関係していると考えられます。
特に融資においては、顧客の悩みに耳を傾け、親身に解決の方法を一緒に考えるということを行ってきました。
金融庁の方針である事業性評価と同じことを信用金庫は昔から行っており、それが信用金庫の体質となっております。
数字ではなくSWOT分析のように内面を分析することを得意とする信用金庫は、事業の支援においても的確なアドバイスを行うことができる金融機関といえるでしょう。
まとめ
融資は型にはまったものはなく、1件1件異なるものです。十人十色という言葉があるように、企業も1社1社異なります。
信用金庫は、企業の特徴を見極め、何が必要なのかということを分析する能力が高いといえます。
更に、顧客に寄り添った柔軟な対応を心掛けている信用金庫は、とても頼れる存在ではないでしょうか。困った時こそ力になってくれる金融機関といえます。
信用金庫の根本には「相互扶助」という言葉があります。相互扶助とは、お互いを助け合うという意味です。
信用金庫をよく利用すれば、いざ自分が困った時に信用金庫は助けてくれるでしょう。
タグ:その他金融業者