借入金の時価を算定する割引率とは?

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借入金の時価という概念をご存知でしょうか?

今借りているお金には将来支払う利息が発生するため、今の借入金の時価は、現在の簿価(借入金残高)とは異なるという考え方です。

この際に、所定の割引率で、現在の価値に引き直した借入金の価値を借入金現在価値とか借入金の時価といいます。

自社の借入金の時価がどのくらいなのかを理解しておいて損はありません。

考え方が少々難しいですが、この記事では、借入金の現在の価値という考え方について解説します。

執筆者の情報
名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当

借入金には時価がある

借入金にも時価という概念があります。

現金は現在価値で貸借対照表に表記されているにも関わらず、借入金だけは、将来支払う予定の利息が加味された将来価値で評価されているのはおかしいという考えのもとに、2015年に借入金を時価評価することが金融商品会計に関する実務指針で示されています。

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将来のキャッシュアウトを現在価値に

借入金は将来にわたって利息を支払うものです。

このため、将来支払う予定の利息であるキャッシュアウトを加味した金額を借入金の期末残高であると考えれば、現在一括返済した場合の金額は、将来のキャッシュアウトが加味された借入金の簿価とは異なるはずです。

この、将来のキャッシュアウト(出ていくお金)を控除し、借入金を現在一括返済した場合の金額が借入金の時価という考え方となるのです。

今の100万円と将来の価値は異なる

そもそも割引現在価値とはどのような考え方なのでしょうか?

例えば、現在100万円の預金があったとします。

この預金を金利5%で運用した場合には、100万円は1年後105万円になります。

この100万円を、将来の105万円に対する割引現在価値といいます。

現在の100万円と将来の100万円の価値は異なるため、将来の価値が計上された数字を現在の価値に引き直すことを割引現在価値といいます。

この場合、1年後の価値である105万円÷1.05=割引現在価値100万円という考えになるのです。

借入金の時価算定の必要性

では、なぜ借入金を現在価値に割り引いて時価評価する必要があるのでしょうか?

預金等はみな現在価値

預金は利息ということを加味すれば、将来価値と現在価値は異なることになります。

さきほどの事例でいえば、金利5%の100万円の預金があったとすると、1年後の将来価値を貸借対照表に計上するのであれば、105万円と計上されてしかるべきです。

しかし、貸借対照表へ計上されているのは現在価値が計上されています。

そもそも、預金を将来価値で計上する場合には、預金が存在限り延々と利息を生み出すため、何年後の将来価値まで計上すべきなのかも曖昧です。

いずれにしろ、預金などの資産は現在価値で計上されています。

借入金も現在価値で評価すべき

それでは借入金がどのように貸借対照表に計上されているのかをおさらいしてみましょう。

借入金が100万円あった場合には、借入金の返済期間の間ずっと利息を払っていかなければなりません。

つまり、この100万円には将来払う予定の金利も含まれています。

なぜなら、今この100万円を返済した場合には将来支払う予定の利息を支払う必要がないからです。

例えば、当初契約通り返済を行い、翌期から完済時まで10万円の利息を払わなければならない場合には、この100万円の現在価値は簿価100万円-支払予定の利息10万円=90万円と見ることができるのです。

預金などの資産が将来生み出す利益を加味していない現在価値で表記されている一方、借入金などの負債に関しては将来支払う予定のお金も加味された将来価値であるということは、全く整合性が取れません。

このため、借入金を現在価値で評価する必要があるのです。

借入金時価評価の本来の目的

借入金を時価評価するための本来の目的は、投資家への注意喚起という側面が大きいといえます。

企業の業況が悪化した場合には、銀行評価が低下して金利が上昇します。

このため、借入金の現在価値を将来支払う予定の利息分を加味するとともに、現在の信用リスクを加味して金利が上昇した局面を考慮することで、より正確な借入金の実態を反映させることができるという考えです。

ただし、これは上場企業に限ってのことであり、基本的に中小企業にはほとんど関係のない理由です。

また、投資家が借入金の時価を本当に知りたがっているのかという疑問も多く耳にします。

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借入金の割引率とは?

それでは、現在価値を評価するにあたって必要になる割引率とはどのように求めることができるのでしょうか?

将来にかかる利息を割引く

割引率とは、将来払う必要がある利息を加味して現在の価値に引き直すための利率です。

このため、将来払う利息を決定する利率である借入金の金利を用いて割引く方法が最も簡素な方法です。

信用リスクも加味する

債務者が、債権を履行できなくなるリスクのことを指します。

銀行は、取引先の財務状況を審査して、企業ごとの信用リスクを判定しています。

リスクが高まれば、銀行の自社に対する貸出金利も上昇する可能性があるため、割引率を算定する際には、金利に信用リスクも考慮するというのが、本来の考え方です。

ただし、経営者自ら借入金と現在価値に直す場合には、自社の信用リスクなど知る由もないため、一般的には、借入金の金利を割引率とすることが一般的です。

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借入金の時価算出事例

それでは、借入金の時価を求めてみましょう。

借入金には返済期限というものが決まっています。

したがって、現在価値に引き直すには、借入金の期間も重要になるため注意しましょう。

以下、金利2%、借入額期末残高300万円の借入金の現在価値を求めてみます。

期間3年の場合

300万円 ÷(1.02)の3乗 = 2,826,967円

簡単に言えば、借入金残高を金利プラス100%で3回割ることによって現在の価値を求めることができます。

期間5年の場合

300万円 ÷(1.02)の5乗 = 2,717,192円

こちらも期間3年と年数が異なるだけで同様の考えになります。

借入期間が長いと現在価値は小さい

上記事例でもわかるように、借入期間が長ければ割引く回数が多くなるため、現在価値は小さくなります。

3年後の300万円よりも、5年後の300万円のほうが支払う利息が多くなる分、現在一括返済した際の価値は小さくなるのです。

金利が高いと現在価値は小さい

借入額300万円、期間3年、金利5%の現在価値を求めてみましょう。

300万円 ÷(1.05)の3乗 = 2,591,513円

金利が上昇すると将来支払う予定の利息が大きくなるため、一括返済した場合に支払う予定の利息が大きい分、節約できる利息が大きくなり現在の価値は小さくなります。

このように金利が上昇しても現在価値は小さくなるのです。

借入期間が長い、金利が高いというと企業経営は一般的に、金利が低く借入期間が短い借入金よりも財務内容がポジティブに評価されないのですが、このような借入金を現在価値に引き直した場合には、借入金の額が小さくなるのは、違和感があるかと思いますが、現在価値の概念に基づくと金利が高く、期間が長いほど時価評価した際の借入金の額は小さくなるのです。

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まとめ

借入金の額面金額には将来支払う予定の利息も加味されています。

また、将来会社の業況が悪化して金利が上昇した際のリスクも加味されています。

このように、借入金には将来支払う予定の金利や、将来自社のリスクが高まり金利が上昇するリスクも含まれます。

将来的な利息の支払いや金利上昇のリスクは、今一括返済を行ってしまえば、負担する必要はないわけです。

この将来の支払いやリスクを現在の価値に割り引いた金額を現在価値とか借入金の時価といいます。

この現在価値は、投資家への情報開示の意味と、預金等の資産が現在価値で表示されているこことの整合性をとる意味合いが大きいといえ、経営分析的にはそれほど意味はありません。

しかし、借入金の時価と、簿価との差額は、将来支払う予定の利息や、将来金利上昇によって負担する可能性のある利息といえます。

時価と簿価の差額を知り、将来の財務的なリスクに備え、早めの完済を検討するなどと言ってことに活用できるでしょう。

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