内部留保から経営者が借入金を行うことは着服か?

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会社の利益の分の貯蓄である内部留保が昨今なにかと話題です。

「企業が内部留保をため込んでおり、設備投資に回らないから日本が不景気だ」などとよく耳にする事例です。

これだけ企業にお金があるのですから、内部留保を個人の目的に使ってしまうということも事例としてはあるようですが、経営者が会社からの借入金という名目で企業の内部留保を使用してしますことは、横領となり、犯罪行為に当たるのでしょうか?

この記事では、内部留保と経営者の借入金の関係について解説していきます。

執筆者の情報
名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当

内部留保とは

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内部留保とは、企業の営業活動で得た利益から、税金を支払い、株主の配当を支払った後の剰余金を示します。

日本企業は多くの内部留保をため込んでいるといわれていますが、その実態はどのようなものなのでしょうか?

まずは、日本企業の内部留保の実態について簡単に説明していきます。

日本企業は400兆円の内部留保!

財務省の法人企業統計によると、2016年末の日本企業の内部留保は406兆円と発表されています。

2012年の内部留保が300兆円でしたので、この4年間で、日本企業の内部留保は100兆円も増加したことになります。

従業員の給料へ利益分を還元せず、企業内部に儲けを貯蓄するという批判が多くありましたが、2016年末は従業員の給与水準も下げ止まりを見せています。

内部留保=現金ではない

内部留保400兆円と聞くと、日本企業は400兆円もの貯蓄を総額で保有しているように思えてしまいます。

しかし、実際には、内部留保=現金というわけではありません。
では、内部留保とはどのようなお金なのでしょうか?

企業は決算が終わると、利益から法人税を支払います。

その後、株主へ配当を支払います。

これらの支払いを終えても余ったお金を「利益剰余金」という勘定科目で資本金に組み入れます。

この利益剰余金という勘定科目が一般的に言われている企業の内部留保に当たるのです。

企業が利益剰余金をそのまま現金でとっておいたとしたら、確かに、利益剰余金=現金=内部留保となりますが、実際に、企業が儲かったお金をそのまますべて貯蓄で残しているわけではありません。

利益剰余金から、設備投資を行ない、事業規模を拡大するのが一般的な企業活動です。

したがって、利益剰余金400兆円の内訳は、現金と固定資産となっているのです。

「会社がこんなに儲かっているのに、企業がお金をため込んで従業員に還元しない」という批判は、投資に回しているお金もあることを鑑みれば、半分は当たりで半分は間違いといえるでしょう。

実質的には170兆円程度

では、実際に、企業は利益剰余金からどの程度のお金を預金として手元に留保させているのでしょうか?

2015年の企業の現金預金の総額は約261兆円程度といわれています。

一般的に言われている内部留保のうちの6割程度は投資に回さずに預金として手元にもっていることがわかります。

もちろん、このうちのすべてが利益から生じたものではなく、必要な運転資金や借入金による預金も混ざっていますので、実際に、利益剰余金から預金として手元に保有している金額は、利益剰余金の半分程度であると考えることができます。

ただし、従業員からしてみれば、もう少し従業員に還元しろと考えるのもやむを得ないのかなとも考えられます。

これだけ、内部留保を蓄えているのですから、ここから、借入金として自己目的にお金を使用してしまう経営者がいたら、従業員が批判的な目線を向けるのも少し理解もできます。

では、経営者が会社の内部留保を借入金として借用した場合には横領に当たるのでしょうか?

役員貸付金は着服か?

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企業の内部留保を役員貸付金として経営者に貸し出す会計処理する行為は犯罪行為に当たるのでしょうか?

役員貸付金には経営上の意味があって行われているケースが多いため、一概に犯罪と解釈するのは短絡的かもしれません。

役員貸付金には意味がある

役員貸付金は会社経営を行ううえで、合理的かつ便利に行われている会計処理で、中小企業では役員貸付金をうまく活用して、リスク管理や税金対策を行っている事例が数多くあります。

役員貸付金には以下の3つのメリットがあります。

①期初に報酬を定めるリスクを回避できる

②経営者個人の所得税を節税できる

③会社の危機の際に経営者から返済名目で資金援助を受けられる

①経営者などの役員の給料である役員報酬は、会社の決算期が始まってから3か月以内に決定しなければなりません。

これは、毎年巨額に利益を安定的に上げている大手企業でもない限り、中小企業にとっては大きなリスクです。

期初3か月という、今後の営業日数の多くがまだ残されている間に経営者の給料を「昨年同様これくらいは儲かるだろう」という予測のもとに決めてしまっても、残りの営業日数の間に会社の経営が大きく傾くことも、中小企業の場合には珍しいことではありません。

高額の役員報酬を期初のうちに設定してしまい、期末になったら赤字となってしまえば、株主に迷惑をかけますし、銀行評価も悪化します。

そこで、経営者は期初の決定する役員報酬を少なめに設定しておき、期末になり、利益が出た時点で、会社からの借入金という形で、実質上の報酬という形で会社から現金を受け取るというケースが中小企業ではよくあります。

②経営者個人も、役員報酬として多額の給料を受け取ってしまえば、そこに対して発生する所得税も決して少ないものではありません。

しかし、借入金には税金が発生しないため、借入金として会社から受け取った分に関しては非課税で実質上の給料を受け取ることができるというメリットがあります。

③役員借入金はたとえ経営者と会社の関係であっても、借入金である以上は会社に返済を行っていかなければなりません。

そこで、一度借りたお金を経営者は会社が危機の際に「借入金返済」という形で会社を援助することもあります。

このように、中小企業においては経営者と社長個人が借入金と貸付金という勘定科目も用いて持ちつ持たれつでうまく資金をやり取りしているという側面があるのです。

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会計処理をしている以上着服ではない

このように、役員貸付金は中小企業の決算書では非常に多くみられる会計処理です。

反対に、経営危機の時には、役員が会社に個人のお金を貸し付ける役員借入金という処理も珍しいことではありません。

いくら経営者が会社の内部留保を借り入れたとしても、それをしっかりと「役員貸付金」として会計処理がなされている以上は着服ではありませんし、犯罪行為にもあたりません。

むしろよくあることであるといえるでしょう。

しかし、この会計はあくまでも中小企業などの小規模事業者によくみられる処理です。

株主と経営者が分離しているような大きな企業でこの処理が行われることはほとんどないのではないでしょうか?

着服になる事例

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では、「経営者が会社の内部留保からお金を借りる行為」として、着服になる事例としてどのようなものがあるのでしょうか?

会計処理をせず現金が消えた

会社の金庫や通帳から経営者がお金を引き出して、なんの会計処理もしなかった場合には、現金だけが足りないことになりますので、これは横領に該当する事例であると考えられます。

不正会計による着服

偽造した領収書などを経理担当者に提出し、会社のお金を経費として払い出すなどの事例も横領に当たると考えられます。

経営者や、従業員が会社のお金を横領する事例としては最も多いパターンではないでしょうか?

利益相反に当たると役員解任も

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上記のような事例で理由や合理性のない事情によって会社のお金を経営者が不当に個人目的に流用してしまった場合には、利益相反行為に当たる可能性があります。

利益相反行為に関しては、株主総会(取締役会設置会社にあっては 取締役会)の決議を経なければならないと会社法に定められています。

株主総会または取締役会の承認を経ないでなされた行為については 取締役の解任事由になるため、経営者を更迭される可能性があります。

ただし、一般的に経営者が会社のお金を私的に借り入れるようなケースは、中小企業が行うケースがほとんどです。

中小企業においては、株主は経営者、取締役も経営者ファミリーというケースがほとんどですので、株主総会や取締役会の決議によって経営者が解任されるということは実際はほとんどないでしょう。

また、経営者は会社の経営が傾いた場合には、会社の倒産の責任はすべて経営者が負うことになります。

このため、中小企業の経営者が会社のお金を私的に借り入れる場合にはリスクを負っているとも言えます。

まとめ

日本企業の内部留保は確かにここ数年急激増加傾向にあります。

しかし、すべてを現金で持っているわけではなく、利益剰余金のうち半分程度は設備投資を行ない、固定資産や企業の買収に回っています。

また、会社経営者の中には企業の内部留保を役員貸付金として、私用の使っている事例もあるにはあるかと思いますが、役員貸付金は中小企業においては様々な理由で合理的に利用されている会計科目でもあります。

一概に、横領などと判断してしまうのは軽率であるかも知れません。

会社を背負う経営者は個人のお金と会社のお金をうまくやり取りして、税務管理、リスク管理を行っています。

ただし、もしも会計処理をせずに会社のお金を流用してしまった場合には経営者といえども横領になってしまい、経営者をクビになってしまうケースもあります。

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