マル経融資条件と審査落ちしない方法を徹底解説
事業資金を借りたいと考えている社長さんは、マル経融資をご存知でしょうか?
事業資金は何も銀行からしか借りることができないわけではありません。
国の融資機関である日本政策金融公庫でも事業資金の融資を受けることができます。
その中でも、マル経融資は特に低金利の融資として知られています。
資金繰りに頭を悩ませている社長さんは、銀行融資だけでなく、日本政策金融公庫の融資、特に金利のメリットが大きいマル経融資についても理解を深めておいて損はありません。
この記事では、マル経融資の概要と、マル経融資の審査について徹底解説を行います。
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
目次
マル経融資とは
そもそもマル経融資とは、どのような融資制度なのでしょうか?
また、日本政策金融公庫の他の融資制度とはどのように異なるのでしょうか?
日本政策金融公庫の融資制度
マル経融資とは、日本政策金融公庫の融資制度の1つです。
日本政策金融公庫は、基本的に無担保・無保証で融資を行っています。
銀行が中小企業向け融資を行う際に使用することが多い、信用保証協会は企業ごとに保証限度額○○万円と保証限度額が決められています。
このため、複数の金融機関に申込を行っても、使用する保証協会は同じですので、信用保証協会の保証限度額を使い切ってしまった時点で、どこの銀行や信用金庫であろうと融資を受けることが難しくなります。
しかし、日本政策金融公庫の融資は無保証ですので、信用保証協会とは関係ありません。
このため、銀行や信用保証協会とは別枠で融資を受けることができるというメリットが日本政策金融公庫の融資には存在します。
この中でも、マル経融資は最も金利が優遇された融資であるといえます。
もちろん、無担保・無保証です。
日本政策金融公庫のメリットを以下にまとめました。
①無担保・無保証
②銀行や信用金庫が使用する信用保証協会の保証限度額とは別枠で融資を受けられる
③公的融資機関であるため金利が低い
商工会議所の推薦が必要
マル経融資は日本政策金融公庫の融資制度の中でも特に金利が優遇された借入です。
通常、日本政策金融公庫の窓口に行けば、様々な融資制度への申込を行うことができます。
しかし、マル経融資はいきなり日本政策金融公庫の窓口にいっても申し込むことは不可能です。
必ず、商工会議所の推薦を得なければなりません。
マル経融資の申込の流れは以下のようになっています。
①事業者が商工会・商工会議所の経営相談員に経営指導を受ける
②事業者が経営相談員に推薦依頼を上げる
③商工会・商工会議所の審査会が審査を行う
④商工会・商工会議所が日本政策金融公庫へ推薦を上げる
⑤日本政策金融公庫が審査を行う
⑥事業者へ融資を行う
つまり、申込の窓口は日本政策金融公庫ではなく、商工会議所になります。
また、経営指導を受けるといっても、1回指導を受けるだけでは指導を受けたことになりません。
原則6か月以上指導を受ける必要があり、日本政策金融公庫だけでなく、商工会議所の審査会の審査も受ける必要があるためマル系融資には時間がかかります。
マル系融資の概要
マル系融資の融資限度額や、金利などはあらかじめ決められたパッケージ商品となっています。
融資制度の概要は以下の通りです。
特に融資対象者については、他の融資制度と異なるため、よく理解しておきましょう。
融資金額
融資金額は2,000万円までとなっています。
少し少額な気もしますが、小規模事業者を融資対象としている制度であるため、実際には数百万円の融資となることが多いようです。
金利
金利は2017年11月現在で1.11%です。
地方自治体の制度資金では、1%半ばから2%半ばの金利であることが一般的ですので、金利的なメリットはかなり大きいといえます。
また、金利は金利情勢によって変動があるため、今後金利は変動する可能性があります。
融資期間
マル経融資の融資期間は、
- 運転資金7年
- 設備資金10年
となっています。
融資期間についても、地方自治体の制度資金と同程度の期間が設定されているといえ、平均的な期間でしょう。
必要書類
マル経融資の申込に必要な書類は以下の通りです。
- 直近3期分の決算書または確定申告書(決算後6ヶ月以上経過の場合は最近の残高試算表)
- 法人税・事業税・法人住民税の領収書または納税証明書
- 商業登記簿謄本(法人の場合)
- 見積書・カタログ等(設備資金の申込の場合)
これらの書類は必ず必要になる書類で、審査の際には日本政策金融公庫指定の書式の事業概況書類などを別に提出する必要があります。
書類については銀行で融資を受ける際と大きくは変わりません。
マル経融資の融資対象および条件
マル経融資を利用するためには商工会議所や商工会の推薦が必要となる以外にも、満たさなくてはならない条件があります。
<融資の対象>
事業規模 | 商業・サービス業 (常時使用従業員5名以下) 製造業・その他の業種 (常時使用従業員20名以下) ※法人役員、家族従業員、パートタイマーは除く |
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営業年数 | 最低1年以上、同一会議所または商工会の地区内で事業を営んでいる |
納 税 | 期日が到来している所得税、法人税、事業税、住民税、消費税などの税金を完納している |
業 種 | 日本政策金融公庫の対象業種 |
経営指導 | 原則として6ヶ月以上、商工会議所または商工会の経営指導を受けている |
次に、借りることができる条件や金利などの条件を紹介していきます。
<融資の条件>
融資限度額 | 2,000万円 |
---|---|
返済期間(うち据置期間) | 運転資金:7年以内(1年以内) 設備資金:10年以内(2年以内) |
利率(年) | 【特利F】1.11% (平成30年2月9日現在) |
担保・保証人 | 不 要 |
震災関連のマル経概要
東日本大震災や熊本地震に関連の概要について紹介していきます。
<東日本大震災関連>
利用対象者 | 被害証明書等を受け、商工会議所等が策定する小規模事業者再建支援方針に沿って事業を行う商工業者であって、岩手県、宮城県または福島県内に事業所を有し、事業活動を行う方 |
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融資限度額 | 通常の融資額(2,000万円) +別枠1,000万円 |
利 率 | 当初3年間:特利F-0.9% (別枠の1,000万円以内) 4年目以降:特利F |
<熊本地震関連>
利用対象者 | 被害証明書等を受け、商工会議所等が策定する小規模事業者再建支援方針に沿って事業を行う商工業者であって、次のいずれかに該当する方
|
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融資限度額 | 通常の融資額(2,000万円) +別枠1,000万円 |
利 率 |
|
利子補給の支援制度もある
マル経融資には負担する利子に対して市などが補給してくれる制度があります。
例えば、青森市の場合には平成26年4月1日以降にマル経融資を受けた方について、1回目から12回目までの支払利子(融資額1,000万円以内の額に係わる利子を上限)を補給しています。
通常でも低金利なマル経融資なのですが、地域によってはこのような制度でさらに有利に資金調達することができます。
マル系融資の審査
マル経融資の審査概要は以下の通りです。
基本的には、他の融資制度と同じように、決算書の内容から、成長性、安全性、必要資金か否かなどの審査を行いますが、マル経融資独特の審査基準も存在します。
商工会議所の推薦が絶対条件
マル経融資は商工会議所の推薦が絶対に必要になります。
原則6か月以上の経営指導を受けて、経営改善に真剣に取り組んでおり、返済に問題がないと判断されれば推薦を得ることができます。
経営指導と聞くと、堅苦しいイメージを持つ方も少なくないかと思いますが、経営指導は全く難しくありません。
2か月に1回程度、経営指導員が会社を訪問し「業況はどうですか?」などと尋ねる程度のものです。
原則6か月ですが、早い場合には4か月程度で推薦をくれる場合もあるようです。
業績と今後の予測
日本政策金融公庫にも審査は存在します。
業況と今後の予測を記述して提出し、返済に問題がないと判断されれば審査には通過できます。
基本的に、商工会議所の審査会で1度審査を経ているため、日本政策金融公庫の審査自体はそれほど厳しいものではないようです。
推薦があればハードルは低い
マル経融資がなぜ金利が他の融資制度と比較して低いかといえば、他の融資制度との金利差分は国から税金で毎年下りてきているためです。
年間40億円ほどマル経融資の利息補助の予算が下りてきているといわれています。
このため、商工会議所も日本政策金融公庫もこの40億円を使い切ってしまわないと翌年から予算が削られてしまう可能性が高くなります。
したがって、商工会議所にはマル経融資のノルマが存在するといわれています。
つまり、商工会議所にとってもマル経融資は融資したい商品なのです。
よほど業況がめちゃくちゃで返済するための利益がないという会社はともかくとして、毎月の返済ができる程度の資金繰りができている会社であれば、実態としてマル経融資の推薦を受けることはそれほど難しくないといえます。
また、日本政策金融公庫も商工会議所の推薦さえあれば、マル経融資の融資に応じてくれる可能性は非常に高いといえます。
マル経融資の審査に落ちる原因
マル経融資の審査に落ちてしまう原因にはさまざまな要因がありますが、まずは商工会議所や商工会の推薦を受けることができるのかが重要となります。
商工会議所や商工会の推薦は、経営指導を受けたうえで返済能力があるのか、つまり指導を受けたことで経営が改善してきているのかということが重要です。
また、実際の審査は日本政策金融公庫が行いますので、経営状況や計画書などの提出書類を詳細に作成し、それをきちんと説明することができるのかということも重要となります。
マル経融資の審査に通ることができなかった人の多くは計画書などの数値に対する根拠資料の準備不足や説明不足によるものです。
特に経費に係わる部分は審査で厳しくチェックされる部分なのですが、この部分を曖昧な数値で作成している事業者が多いです。
マル経融資を受ける中小企業や個人事業主は、経営改善を行っていますので事業内容はそれほどよくありません。
それを制度融資で支援することが目的ですので、返済能力があり、且つ計画がしっかりと立てられている人でなければ審査に落ちてしまいます。
面談時の印象が悪くても審査に落ちる
融資を申し込む場合には商工会議所や商工会、日本政策金融公庫の担当者と面談をすることになります。
ここでは資金使途に対する必要性や計画書などを事細かく聞かれることになります。
ここで必要となる金額の妥当性をきちんと伝えることができなかったり、計画書などの詳細を説明することができなければ担当者の印象は悪くなります。
支援を目的としている制度において、事業者の印象が悪ければ融資をしたいと思いませんし、きちんとした計画や現状を把握していない事業者には融資することはできません。
審査をする人も人間ですので、こういった印象も審査に影響が出てしまうということを覚えておかなければなりません。
マル経融資の審査に通るための方法
マル経融資の審査に落ちてしまう原因を解説したところで、今度は審査に通るための方法について解説していきます。
審査に通る方法を簡単に言いますと、審査に落ちてしまうような原因を作ることなく書類の作成や面談をすることです。
ですので、提出する書類は根拠のある数値などを詳細に記載し、根拠となった資料も合わせて提出するようにしましょう。
提出の書類は少ない方が楽なのですが、根拠を示すことができなければ融資を受けることはできませんので、こういった書類は必ず提出するようにしなければなりません。
さらに、書類だけでは詳細に説明することができませんので、補足などは言葉で説明します。
言葉でも説明することでより詳細に伝えることができますし、きちんと計画などを把握していると担当者に印象付けることができます。
担当者に熱意を伝えて応援してもらう
事業者の印象を最も良くするためには、事業に対する熱意を担当者に伝えることです。
事業への熱意は立てた計画をしっかりと遂行していくためには必要不可欠なものであり、こういった事業者は返済に対する意識も高いです。
このようなことは担当者もわかっていることですので、熱意のある事業者には積極的に融資を行います。
また、熱意のある事業者であれば経営指導を受けている段階で事業が改善していることも多いですので、このようなことも合わせて担当者に伝えることができれば、比較的簡単に推薦や融資を受けることができるはずです。
マル経融資利用の流れ
マル経融資とは、申込めばすぐに審査が行われ、誰でも利用できるわけではありません。
所定の条件をクリアした事業者でないとマル経融資を利用することはできません。
また、その条件をクリアするためにはそれなりに時間もかかります。
ただし、時間さえかければそれほど条件をクリアすること自体は難しくないでしょう。
以下、マル経融資を利用するための条件について詳しく解説していきます。
まずは商工会議所へ相談
マル経融資とは、日本政策金融公庫が中小事業者に対して行う融資です。
しかし、マル経融資は日本政策金融公庫へ申し込みを行っても申し込みは受け付けてもらうことはできません。
マル経融資の申し込みの窓口は地域の商工会議所や商工会になります。
マル経融資は、商工会議所経由でないとお金を借りることができない特殊なローンです。
そのため、マル経融資の借入を検討している事業者の方はまずは商工会議所や商工会へ相談に行くようにしましょう。
経営相談員の経営指導を受ける
マル経融資を受けるには、商工会議所の経営指導員の経営指導を受ける必要があります。
そのため、商工会議所へ相談に行ったところで、すぐにマル経営融資を借りることができるわけではありませんし、必ずマル経融資を借りることができるわけではありません。
経営指導を受け、商工会議所から推薦状をもらうということが融資の条件になります。
経営指導の内容は?
「経営指導」と聞くと、難しい課題や、ハードルの高い経営改善を求められるのでは?と考えてしまう人も多いのではないでしょうか?
しかし、商工会議所の経営指導の内容は、全くもって難しいことはありません。
1ヶ月〜2ヶ月に1度程度会社へ訪問する、経営指導員と会社の業況などについて話しをしていく程度の内容が経営指導になります。
具体的な数値目標を示される銀行などの経営改善などとは全く異なるため、気軽に経営指導を受けることができます。
6ヶ月の指導期間が必要
そして、マル経融資のための推薦状をもらうためには原則的に6ヶ月以上の経営指導を受ける必要があります。
そのため、マル経融資は「お金が必要」というタイミングで借りることは難しい融資なのです。
場合によっては4ヶ月程度で推薦が得られることもあるようですが、いずれにせよすぐにお金を借りるということはできません。
商工会議所から推薦を受ける
商工会議所の経営指導員から必要な指導を受けた後は、商工会議所から推薦を得ることができます。
この推薦が日本政策金融公庫へ上がると、晴れてマル経融資を借りることができるようになるのです。
日本政策金融公庫が融資
繰り返しになりますが、マル経融資は窓口になるのは商工会議所ですが、融資をするのは日本政策金融公庫です。
①商工会議所へ申し込み
②商工会議所の経営指導員の経営指導を原則6ヶ月以上受ける
③商工会議所から推薦を得る
④日本政策金融公庫から融資を受ける
という流れでお金を借りることができるのがマル経融資です。
推薦を受ける条件は厳しい?
通常の事業資金の審査では、決算書の内容からその会社の安全性や成長性などを判断してお金を貸しても大丈夫な企業かどうかを判断します。
しかし、マル経融資だけは審査のプロセスが全く異なる融資です。
マル経融資の審査の材料は商工会議所からの推薦を得ることができるかどうかです。
そのため、お金を借りることができるかどうかは、商工会議所の推薦に左右されるのです。
商工会議所の推薦を得ることは難しいのでしょうか?
結論的に言えば全く難しくありません。
そもそも経営指導の内容自体が難しいものではありませんので、所定の期間経営指導を受けている事業者であればかなり高い確率で推薦を得ることができます。
ある意味、誰でも借りることができると言っても過言ではないのがマル経融資なのです。
マル経融資の金利はどのくらい低い?
マル経融資は金利が低いと聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
実際にマル経融資の金利は他のローンと比較して低いと言えるでしょう。
マル経融資はあらかじめ金利や融資限度額や返済期間が決められたパッケージ商品です。
マル経融資はパッケージ商品としては非常に金利が低く、優良企業が銀行からプロパー資金を借りた時並の低い金利で融資を受けることが可能です。
金利的にメリットが非常に大きなローンですので、運転資金を借りておきたいという事業者の方は利用を検討すべきローンであることは間違いありません。
また、マル経融資は日本政策金融公庫の融資ですので保証料もかからないという特徴もあります。
金利は1.11%
マル経融資の金利は2018年8月現在で1.11%となっています。
まずはマル経融資の商品概要をチェックしていきましょう。
融資限度額:2,000万円
返済期間:運転資金7年、設備資金10年
金利:1.11%
担保保証人不要
仮にマル経融資を200万円借りて、5年間で返済していった場合の利息負担額は総額で56,400円です。
5年間200万円も借りて利息負担は総額でたったの56,400円ですので、利息の負担は非常に少ないと言えるでしょう。
1.11%は他のローンと比較して低い
1.11%は他のローンと比較しても低い金利だと言えるでしょう。
日本政策金融公庫の普通貸付の金利は2.06%~2.65%です。
その他の日本政策金融公庫の資金の金利も1%半ばから2%台というのがほとんどですので、マル経融資の1.11%という金利は他の日本政策金融公庫の融資と比較して圧倒的に低い金利ということは間違いありません。
制度資金よりも低い金利になる
中小企業が低金利で借りることができる融資として、銀行と自治体と信用保証協会が連携して商品内容を決めている制度資金があります。
制度資金も金利が低いですが、マル経融資は制度資金よりも金利的なメリットは大きいと言えます。
例えば東京都のポピュラーな制度資金である小口資金は1.9%~2.5%です。
売上減少企業に対して行う経営セーフは1.5%~2.2%となっているため、マル経融資は制度資金を借りるよりも金利が低いというメリットがあります。
保証料もかからない
銀行から信用保証協会の保証をつけて融資を受ける場合には、信用保証協会へ保証料を支払う必要があります。
しかし、マル経融資は日本政策金融公庫の融資ですので、保証料もかかりません。
金利が低いことに加えて、保証料も発生しないため、この点からもマル経融資は事業者の負担が非常に少ない有効な資金調達の方法であると言えるでしょう。
商工会議所の開業前の融資
商工会議所のメインコンテンツであるマル経融資は開業前の融資には対応していませんが、一部の商工会議所では開業前の融資制度の取り扱いがあります。
東京商工会議所の融資制度
日本最大の商工会議所である東京商工会議所は開業前の融資を行っています。
創業支援融資保証制度という融資制度で、東京商工会議所や信用保証協会と連携して商品設計を行っており、融資をするのは民間銀行や信用金庫になります。
商品概要は以下の通りです。
- 融資限度額:500万円
- 借入期間:運転資金7年以内、設備資金10年以内
- 金利:1.5%~2.3%(借入期間や保証形態によって異なる)
- 条件:創業前の個人(創業後は創業から5年未満)、創業ゼミナールか、創業創業計画審査会の合格者
この融資は創業ゼミナールと創業計画審査会の合格者という点がキモになります。
この2点について以下で解説して行きます。
創業ゼミナール
東京商工会議所が主催する創業ゼミナールを受講し、修了証をもらうことでこの融資制度を受ける資格を得ることができます。
講義は全10回程度で、基本的には全ての講義に出席することが求められます。
なお、この修了証の期限は1年しかないので、開業するための資金を借りたい人は、1年以内に融資制度に申し込む必要があります。
本気で開業する気がないと、1年経過してしまうと再び講義を受けなくてはなりません。
本気の開業を決めている人だけが創業ゼミナールを受講するようにしましょう。
創業計画審査会
経営指導員の指導を受けながら創業計画書を作成し、その計画書をもとに経営指導員が創業計画審査会というところの審査を受け、無事審査に通過すると「認定書」をもらうことができます。
この認定書を得ることでも、融資制度を利用することができます。
このような融資制度はどこの商工会議所でも取り扱いがあるわけではありません。
東京商工会議所や大阪商工会議所のような大きな商工会議所では取り扱いがありますが、小さな商工会議所や商工会では取り扱いがない場合が多いです。
詳しくは、所轄の商工会議所へ問い合わせてみてください。
開業資金であれば商工会議所以外でも
このように、商工会議所で開業前の融資を受ける場合には、それなりに面倒な手続きを得なければなりませんし、時間もかかります。
このような手間をかけるくらいであれば、日本政策金融公庫や民間金融機関の創業融資制度を活用したほうが簡単にお金を借りることができます。
また、国や地方自治体の補助制度の活用も視野に入れましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
日本政策金融公庫は開業資金に強みを持っています。
特に日本政策金融公庫の新創業融資制度は、無担保無保証で最大3000万円(運転資金 1500万円)まで融資を行っています。
創業前の仕事が創業後の業種と同じであることや、10分の1以上の自己資金を持っていることなどの条件はありますが、金利が0.86%~2.85%の低利で融資を受けることができます。
借入には合理的な創業計画書の作成などが必要になりますが、相談に行けば作成の補助も行ってくれますし、この点の支援は商工会議所でも行ってくれます。
無理に商工会議所の融資制度を利用しなくても日本政策金融公庫の新創業融資制度の利用で十分に対応可能であると筆者は思います。
地方自治体の開業資金融資
また、地方自治体の制度資金にも開業資金という融資制度があります。
例えば東京都の開業資金は融資限度額2500万円、金利が1.7%〜2.3%、返済期間は10年以内(運転資金7年以内)という設計になっています。
こちらの制度も金利的にはメリットのある融資ですし、銀行に相談に行けば親身に創業計画の支援を行ってくれます。
補助金の活用も
中小企業庁は毎年創業補助金を行っていますし、地方自治体では創業者に対して毎年様々な補助を行っています。
借入には返済の義務が生じますが、補助金は返済する必要がありません。
借入によって、開業後の資金繰りを圧迫するよりも、返済義務のない補助金の活用をまずは検討したほうがよいと筆者は思います。
まずはどのような補助金があるのかを、自治体の商工課などに問い合わせを行ってみましょう。
都内なら東京都制度融資もおすすめ
都内に事業所を置く個人事業主や法人であれば、東京都制度融資の利用もおすすめです。
東京都制度融資とは、中小企業や個人事業主、新規開業者など、一般的に銀行からの融資を受けにくい人に対して、融資をサポートしている制度です。
中小企業や個人事業主が、単独で金融機関に融資の相談に行っても信用能力が低いため、申込を拒否されたり審査に落ちたりしますが、東京都制度融資を利用すれば東京都から保証料などを補助してもらえるため審査にとおりやすくなるのです。
東京都と東京信用保証協会、金融機関で実施する融資制度
東京都制度融資の場合、あなたが融資を受けられるように東京都と東京信用保証協会、金融機関が共同でサポートしてくれます。
先ほど述べたように、東京都は保証料や金利などの費用を補助してくれ、東京信用保証協会はあなたが万が一支払できなくなったときに代位弁済を行ってくれるのです。
東京都と東京信用保証協会のサポートがあるおかげで、金融機関も通常では行わない融資を許可してくれます。
東京信用保証協会の仕組み
東京信用保証協会は、企業や個人事業主の保証人になることで経営をサポートする法人です。
万が一、金融機関に返済ができなくなった場合、東京信用保証協会に保証人になってもらっていれば、一時的に借金を肩代わり(代位弁済)してもらえます。
東京信用保証協会は公的な法人なので、銀行などの金融機関からの信用も厚いため、東京信用保証協会に保証人になってもらうだけで審査に格段にとおりやすくなるのです。
ただし、信用保証協会に保証人になってもらう場合には、一定額の保証料を支払わなければなりません。
東京都制度融資の場合、融資の種類によっては保証料を一部補助してもらえるものもあるので、申込前に確認しておきましょう。
制度融資の種類
東京都制度融資には企業や事業の規模にあわせて、利用できる制度が複数あります。
マル経融資を利用するような小規模企業や、事業主が利用できる融資は以下の3種類です。
小口支援特例 | 小規模企業の小口融資 |
---|---|
短期つなぎ特例 | 制度融資を利用している事業主向けつなぎ資金 |
小規模企業融資 | 従業員30人以下の小規模企業向け融資 |
また、中小企業向けの制度融資も以下の通り複数あります。
事業一般融資 | 資本金や従業員数が一定以下の中小企業が利用できる融資 |
---|---|
極度枠設定融資 | 極度枠内であれば審査なしで利用ができる融資 |
組合向け融資 | 組合員向けの融資 |
事業一般融資の中にも、受注対応特例やつなぎ資金特例など短期的な貸付に対応しているものもあります。
ニーズに合った制度融資があるかを確認してから利用しましょう。
東京制度融資の融資条件
東京都制度融資の条件もマル経融資の条件と似ており、東京都内に在籍していることなど複数の条件があります。
- 事業所が都内で保証対象の業種であること
- 税金の納付が完了していること
- 許認可が必要な業種は許認可や登録をしていること
- 暴力団との関係を現在から将来まで持たないこと
また、マル経融資で必要になった書類とほぼ同じ書類の準備と、印鑑証明書と創業計画書(業歴1年未満の場合)が必要です。
中小企業として扱われる範囲
東京都制度融資を受けられる法人は中小企業と個人事業主と決まっていますが、中小企業と認められる範囲は業種によって異なりますので、以下を参考にしてください。
業種 | 資本金 | 従業員数 |
---|---|---|
製造業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業、飲食業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
医療法人 | (条件なし) | 300人以下 |
また、風俗業やギャンブル関連、金融関連の業種の他に、農林水産業や宗教法人も制度融資の対象外であるため気を付けましょう。
申請方法
東京都制度融資の申請は東京都が指定している金融機関で行います。
対応している金融機関は、メガバンクや地銀など82か所ありますので自分が取引をしている金融機関が該当しているか確認してください。
審査や推薦の流れはマル経融資と似ているので、商工会議所の会員であれば指導員に相談をしてみると良いでしょう。
商工会議所の融資の仕組みは?
この記事を読むまで商工会議所(商工会)が融資商品を取扱いしていることについて、知らなかった人もいるでしょう。
そこで、商工会議所の融資制度について仕組みや他の金融機関などとの関係性を確認していきましょう。
銀行や日本政策金融公庫との関係は?
商工会議所は地域の発展を目的として、中小企業に有利な情報を提供する公共機関です。
また、制度融資(せいどゆうし)といって銀行や日本政策金融公庫の融資を推薦したり、融資の窓口となったりします。
勘違いしやすいですが、融資する貸手は日本政策金融公庫や銀行であり、商工会議所が直接融資するわけではないことを覚えておきましょう。
経営者は商工会に加入するべきか?
商工会議所が窓口となる融資制度は、銀行融資に比べて条件が良い傾向があります。
制度融資に関しては商工会議所の会員ではなくても利用できるものがありますが、マル経融資のように、原則として商工会議所の会員でなければ利用できない商品もあります。
商工会議所の会員になることは、会費の支払いや手続きの手間などを考慮して避けている事業主も多いと思います。
しかし、商工会議所の会員になることで申告のアドバイスや、補助金などの有益な情報提供を受けられますし、会費も年額1万円程度で済みますので入会を検討することも良いでしょう。
商工会議所の融資審査に通るコツは?
商工会議所のマル経融資は銀行融資より条件が良いため、優先的に利用したい商品です。
そこで、マル経融資の審査に通るポイントをまとめましたので参考にしてください。
必要書類を把握!決算書は3期分準備しよう
マル経融資の経営指導を受けるには、決算書(確定申告書)、事業計画書、試算表など業況を確認する資料が必要です。
マル経融資の申込要項に決算書は2期分用意することとされていますが、業況を分かりやすく伝えるために3期分を用意するのが望ましいでしょう。
また、登記簿謄本や納税証明などの各証明書類も必要となりますので、不備がないように十分に確認しておきましょう。
他の借入金をできるだけ返済する
既存の借り入れが多すぎるとマル経融資の審査が不利になります。
したがって、繰上げ返済をしたり借り入れを一本化したりして借入本数と残高を減らしておくことが好ましいです。
また審査では返済状況を通帳で確認されますので、返済の遅れが絶対にないように注意しましょう。
業績の悪化は一過性?慢性赤字?
マル経融資は赤字の会社でも利用できる可能性があります。
なぜならば、そもそも経営が不安定な中小企業向けの融資商品だからです。
ただし、同じ赤字でも慢性的なものより、一時的なものである方が審査担当の印象が良くなります。
したがって、経営者は赤字が一過性である理由と、その対策方法について伝えられるように準備しておきましょう。
経営指導員が推薦状を書きやすい資料作りを
マル経融資は、商工会議所から経営指導を受けた会社に対して、日本政策金融公庫が融資します。
当然、日本政策金融公庫での審査もあるのですが、商工会議所の推薦状があることで、日本政策金融公庫は融資をしやすくなります。
したがって、マル経融資を受けるには商工会議所の指導員が、いかに推薦状を書きやすくするかがポイントといえるでしょう。
借り手としては書類を完備することはもちろんのこと、指導員に対して丁寧な姿勢や分かりやすい伝え方を意識しましょう。
今すぐ資金調達したい!間に合う?
経営指導は原則として6か月の期間がかかります。
過去に商工会議所のセミナーや、指導を受けていれば期間が短くなることもありますが、6か月はかかると思った方が無難でしょう。
したがって、緊急に必要な資金は保証協会付き融資など、別商品で対応することをおすすめします。
なお、商工会議所をとおすことで、推薦状をもらって保証協会の利息を給付してもらえる場合があります。
急いでいる場合は、市町村が定めている利子補給制度の利用も検討してみましょう。
なお、給付制度は市町村によって異なりますので、商工会に相談をしてみましょう。
まとめ
マル経融資とは、商工会議所の推薦を得た事業者だけに特別の低金利で日本政策金融公庫が融資を行う制度です。
金利が他の融資制度よりも圧倒的に低いという点が大きな魅力ですが、商工会議所の推薦を得るためには、原則6か月以上の経営指導を商工会議所の経営指導員から受ける必要があります。
そのため、急な売上の減少や取引先との資金ギャップを埋めるための資金として利用することは不可能です。
そもそも、従業員20名以上の小規模事業者だけが融資の対象ですので、借りることができる金額は数百万円が限度というのが実態のようです。
少額融資かつ融資までに半年程度の時間がかかるという点で、運転資金としての利用場面はそれほど多くなさそうです。
むしろ、売上規模拡大のための設備投資の計画がある事業者は、投資半年くらい前に商工会議所へ相談に行き、マル経融資を受けるために経営指導を受けるという方法の方が利用場面は多いかもしれません。
いずれにせよマル経融資の金利は他の融資と比較してかなりの低金利となっていますので、ぜひ活用したいところです。
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