商工ローンとは事業向けの貸金業者
商工ローンとは、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫などの金融機関以外の消費者金融が事業者向けに行う融資の総称です。
商工ローンには、
- 銀行からお金を借りることができない事業者でも融資を受けることができる
- 融資までのスピードが圧倒的に早い
という特徴があり、使い方によっては銀行の事業資金融資よりも便利に使用できます。
しかし、商工ローンには多くの問題もあるため、利用の前にはしっかりとリスクを理解しておく必要があります。
この記事では、商工ローンの概要と注意点などについて解説していきます。
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
この記事はこんな人におすすめ
- 事業資金を検討している経営者
- 商工ローン
目次
サラ金と商工ローンの違いとは?
消費者金融と聞くとサラ金と連想する人が多いかと思います。
消費者金融が行っているサラ金と商工ローンは、具体的にどのような違いがあるのか気になります。
そこで、サラ金と商工ローンの違いはどのような点なのか見て行きましょう。
双方ノンバンクの貸金業者
サラ金も商工ローンも銀行ではない民間会社が融資を行う業種である貸金業者という点では同じです。
貸金業者は金融庁への登録業務ですので、サラ金もノンバンクも金融庁の監督のもと、法令順守で業務を行っています。
貸金業者は、銀行の様に個人や法人のお金を預かる業務を行わない金融機関という扱いであるため、ノンバンク系金融機関と呼ばれています。
「商工ローン」と聞くと違法性があるイメージが多いようですが、金融庁に登録されている金融機関であるため、商工ローンは違法ではありません。
事業向けの貸金業者
商工ローンは貸金業者が行う事業向けの融資です。
消費者金融が法人や個人事業主に、事業融資としてお金を貸すことを商工ローンと言います。
有名な消費者金融であるアイフルやプロミスなども事業向けの融資を扱っているため、このようなローンも商工ローンと言えるでしょう。
サラ金や商工ローンという言葉の違いは「個人にお金を貸すか、事業者へお金を貸すのか」の違いしかありません。
取扱っている金融商品が全く同じであっても、個人向けであればサラ金、事業者向けであれば商工ローンと呼ばれています。
事業者が銀行や信販会社、日本政策金融公庫融資以外で行う資金調達方法は、基本的には商工ローンであることがほとんどです。
最近はビジネスローンという
年々、消費者金融をサラ金と呼ばなくなってきたように、商工ローンも徐々に使われない言葉となってきました。
一時期、商工ローンをめぐるさまざまな問題があり、あまりイメージがよくないことから、最近では、貸金業者は商工ローンという言葉を使いたがりません。
このため最近は商工ローンではなく、貸金業者は商品名をビジネスローンなど別の名称で呼びます。
アイフルやビジネクストなどは、ビジネスローンという名称の商品を展開していますが、これは少し前の商工ローンと商品の内容は同じです。
ビジネスローンも個人事業主や法人が、運転資金などを目的にして事業性資金として借入れができ、事業計画書の提示など銀行融資で必要な項目を省きながら融資をしてくれます。
また、追加融資の審査も短期間で行ってもらえ、消費者金融によってはカードローンタイプの商品も用意しているのです。
商工ローンと比較して特別変わった点はないため、すでに商工ローンを利用したことがある人は同じ感覚で捉えてください。
闇金に注意
アイフルやプロミスのような超有名な消費者金融であれば問題はありませんが、中には名前も聞いたことがないような商工ローンも存在します。
名前を聞いたことがないような商工ローンと取引を行う前には、必ず金融庁ホームページで当該業者が金融庁登録の貸金業者かどうかのチェックを怠らないようにしましょう。
金融庁ホームページの登録貸金業者検索サービスで名前がヒットしない業者は闇金であると考え、絶対に取引してはいけません。
また、闇金や悪徳業者に引っかからないためにも、安易に広告やダイレクトメールに対して反応しないようにしてください。
商工ローン事件とは?
1990年代後半に、商工ローンの印象が一気に悪くなったとある事件が起こりました。
この事件がきっかけとなり、全国のノンバンクが商工ローンからビジネスローンに名称変更しています。
ここでは、商工ローンの印象が悪くなった商工ローン事件について解説します。
日栄による脅迫的取り立て事件
1990年代後半まで、中小企業へ積極的に融資を行っている商工ローン会社に日栄という企業がありました。
この日栄の社員が1999年に恐喝に近い取立てを中小企業に行ったとして、社員の1人が逮捕、また日栄の会社自体は行政処分が行われた事件が発生したのです。
このときにマスコミによって、日栄の社員が「お金がないのなら、腎臓や目玉を打って金を作れ!」などの激しい取立てが報道され、全国的なニュースになるほどの話題になりました。
日栄自体は東証一部に上場する勢いで成長していましたが、この事件をきっかけに急激に売上を落としてしまい、2009年には会社更生手続きを取っています。
これを機に名称はビジネスローンも使われるように
この日栄による脅迫取立て事件などの問題を、週刊誌などが商工ローン問題として大々的に取り上げたため、商工ローンのイメージは一気に悪くなってしまいました。
2000年以降、商工ローンを取扱っていた他の会社も風評被害を受けてしまったため、名称変更が進みビジネスローンと言う名前が用いられるようになったのです。
商工ローンが危険と認識されるようになった
商工ローンは激しい取立てをするとして危険な認識をされたとともに、利息制限法を超えた高金利、いわゆるグレーゾーン金利で融資を行っている点も、危険と思われる原因として取り上げられています。
グレーゾーン金利は明確に法律で違反しているわけではありませんが、銀行などが取扱っている他のローン商品よりも高額であったため、商工ローンが危険であるというイメージがさらに助長されたのです。
現在では危険性はほぼない
これまで商工ローンについてイメージが悪くなったきっかけを説明してきましたが、現在では法改正が進み、危険な取り立てや法外な利息を請求されることはなくなりました。
2010年に改正された貸金業法では、脅迫に近い激しい取立てを行うことを禁止していますし、直接職場や自宅にローンや借金の取り立てをすることも違法となりました。
これから、商工ローンやビジネスローンを利用する場合であっても、日栄のような激しい取立てにあうことはないので安心してください。
2007年にはグレーゾーン金利が撤廃される
商工ローンの事件で恐喝以外にもうひとつのポイントとなった「グレーゾーン金利」に関しても、2007年に法改正が行われたため2010年以降に完全撤廃されました。
したがって法人向け、個人向け問わず、20%を超える金利は全て違法金利となり、グレーゾーン金利で経営を行う会社はなくなりました。
ただし、15~20%の金利は法人が利用するローンとしてはかなり高金利であるため、銀行からの融資以上に計画的な利用と返済が求められるので気を付けてください。
商工ローンの金利は高い
商工ローンの金利はかなり高い設定となっています。
商工ローンは消費者金融の事業向け融資ですので、消費者金融の個人向けカードローンと同様に商工ローンの金利も高く設定されています。
金利は法定上限金利
商工ローンの金利は、法定上限金利ギリギリであると考えておきましょう。
利息制限法という法律によって、お金を貸し出す際の金利は以下のように上限が決まっています。
- 10万円未満:20.0%
- 10万円以上100万円未満:18.0%
- 100万円以上:15.0%
このためほとんどの商工ローンの金利が、15~18%と設定されています。
ちなみに、上記金利を超える金利を適用しているローンは闇金ですので、絶対に取引を行わないようにしてください。
ただし、借入金額が100万円を超える高額になれば15%以下の金利が適用される可能性もあるため、ビジネスローンの商品サイトなどを確認してどのような金利設定になっているか確認してください。
以前はグレーゾーン金利も
商工ローンはグレーゾーン金利での貸付を行っていたことでも、一時期社会問題となりました。
以前は利息制限法の他に、出資法という法律でも29.2%の上限金利が規定されており、多くの消費者金融では、この29.2%の金利を上限として融資を行っていました。
利息制限法上の上限金利と出資法上の上限金利の間の金利帯を法律のグレーゾーンという意味からグレーゾーン金利と呼ばれていました。
今では、貸金業法改正によって、出資法の上限金利が撤廃され、上限金利は利息制限法に統一されてグレーゾーン金利はなくなりましたが、以前は、グレーゾーン金利で融資を行うほど、商工ローンは金利が高かったのです。
ちなみに商工ローンからグレーゾーン金利でお金を借りていた人は、完済日から10年以内であれば払いすぎた利息である過払い金を取り戻すことができます。
詳しくは弁護士や司法書士へ相談してみてください。
過去の商工ローン事件
これまでに日栄の脅迫的な取立てにより、多くの被害者が生まれてしまったと紹介しましたが、過去に商工ローンで事件になったのは日栄だけではありません。
商工ローンを取り扱っている会社に商工ファンド(後にSFCG)も、日栄と同じように違法な取り立てがニュースになりました。
商工ファンドの問題は違法取立てだけではなく、リーマンショックで経営不振に陥ったときに粉飾決算などの違法な経営が発覚した点も、世間から悪いイメージが付いてしまった一因です。
利息負担は確実に収益を圧迫
商工ローンの金利は高いため、利息負担は確実に会社の収益を圧迫します。
商工ローンで100万円借りた場合には15%の金利が適用されることが多いですが、1年借りただけでも利息負担は15万円です。
銀行で100万円借りても地方自治体の制度資金の場合には2%程度ですので、利息負担は年間2万円で済みます。
支払利息は費用ですので、商工ローンから融資を受けた場合には15万円の費用負担となってしまい、確実に銀行ローンよりも収益を悪化させるというデメリットがあります。
商工ローンの審査は甘い?
商工ローンの審査は銀行よりもかなり甘くなっています。
これは金利が高いことや、審査の基準が銀行とは全く異なることを理由としています。
商工ローンの審査が甘いと呼ばれている仕組みを詳しく解説します。
銀行で借入不可の企業も借入可能
商工ローンは業況が悪化して銀行からの借入不可能な企業でも、融資を受けることができる場合があります。
銀行の事業資金融資では、3期連続の営業赤字かつ債務超過に陥っている会社はほぼ融資を受けることはできません。
このような会社はこれ以上事業を継続しても業況は改善せず、借金を増やすだけになってしまうと銀行は見做すため、銀行は融資に応じないのです。
しかし、商工ローンではこのような銀行が融資に応じない決算内容となっている会社でも融資を受けることができる場合もあります。
金利が圧倒的に高い
商工ローンの審査が甘い理由の1つとして金利が圧倒的に高いという理由を挙げることができます。
商工ローンの金利は15%~18%程度ですので、銀行よりもより多くのリスクを負うことができるのです。
銀行の事業資金融資は企業の発展にその融資がつながるかという点も審査の観点となっています。
したがって融資を行っても業況が回復する見込みが立たないような企業は融資には応じてもらえないことが多いのです。
しかし、商工ローンの審査においては、企業の将来などはほとんど考慮されません。
お金が返済されるかどうか、利息をどれだけとれるかどうかだけです。
銀行融資では通常提出が必要となる「事業計画書」などの書類も、商工ローンの審査では必要ないため、将来性などはあまり考えられていないことが分かります。
このため、銀行では融資をしても再建不可能と判断できるような企業でも、商工ローンでは融資に応じることもあるのです。
担保や保証人に依存する
銀行が貸したお金を回収できるかどうかの判断は、会社の収益から返済していけるかどうかです。
このため、返済できるだけの利益が望めない場合には融資を受けることができません。
しかし、商工ローンは担保や保証人によって回収ができればよいと考えています。
会社本体では返済する見込みが立たなくても、有力な連帯保証人が保証をすれば融資に応じてくれる可能性がありますし、資産価値の高い担保を提供すれば融資に応じてくれるのです。
銀行の融資が「返済できるかどうか」に主眼を置くのに対して、商工ローンは「回収できるかどうか」に主眼を置いています。
このため、連帯保証人であれ、担保であれ返済不能に陥った際に回収が見込めるものがあれば融資には応じてくれます。
商工ローンの連帯保証人についても以前社会問題となったため、最近では連帯保証人ではなく、担保を要求するローンが多くなっています。
連帯保証人は借金の返済を拒否できない
商工ローンは即日融資可能?
商工ローンの中には申し込みしたその日に融資に応じてくれるローンもあります。
即日融資に対応していない商工ローンでも、銀行よりもかなり融資までの時間が早くなっています。
最短即日融資の業者も存在
商工ローンの中には最短即日融資の業者もありますし、時間のかかるところでも3営業日程度で融資に応じてくれます。
銀行の事業資金融資にかかる時間は早くて1週間、通常2週間程度の時間がかかってしまいますので、融資までの時間が商工ローンはかなり早いといえます。
この点は、急な資金繰りへの対応などに商工ローンが便利に活用できる点です。
また、個人向けカードローンのように、ローンカードが発行され、ATMから自由に借入可能な商工ローンも数多く存在します。
審査の価値観が銀行と全く異なる
銀行の審査に時間がかかるのは、企業の内容そのものの審査を行っているためです。
業況はどうか、資金繰りはどうか、経営改善する見込みはあるかどうかなどについてしっかりと審査を行っています。
あくまでも返済は本業による収益から行うのが銀行ローンであるためです。
しかし、商工ローンの審査は回収できるかどうかだけです。
有力な連帯保証人や担保があれば回収可能と判断し、すぐに融資に応じてくれるのです。
商工ローンの保証人問題
商工ローンでの連帯保証人が以前大きな社会問題となり、実際に何件も訴訟が起きています。
他人に連帯保証人をお願いするときや、他人の会社の連帯保証人になるときにはくれぐれも注意しましょう。
第3者保証
銀行から融資を受けるときには、今は会社と関係のない人を連帯保証人とすることはほとんどありません。
会社と直接関係のない人を保証人とすることを第3者保証といいますが、銀行では第3者保証について自主規制を行っています。
第3者保証には以下の問題点があるためです。
- 連帯保証人が他人の高額借金を返済する義務を負う
- 連帯保証人が保証人の義務を知らずに保証契約を行い、ある日突然借金を負わされる
このようなことが社会問題となったため、銀行では第3者保証の取り扱いはありません。
しかし、商工ローンでは、会社に返済能力がなくても、会社が有力な連帯保証人を探してくれば融資に応じています。
そもそも商工ローンに申し込みにくる会社は、銀行から融資を断られている会社が多いですので、会社本体が返済できないことは商工ローンも織り込み済みです。
利息は会社に支払わせて、元金は保証人から回収すれば良いとの考えで融資に応じています。
このため、連帯保証人は会社が倒産すると、莫大な商工ローンの返済義務を負うことになってしまうのです。
商工ローンを借りている会社の中には、倒産したら連帯保証人に迷惑をかけるため、借金に借金を重ねて、自転車操業でなんとか会社を維持しているようなこともあります。
今は連帯保証人の返済能力を当てにして融資をする時代ではありませんが、商工ローンの中にはいまだにこのような融資を行っている会社も存在するため、十分な注意が必要です。
根保証契約
商工ローンは保証契約の中身にも注意する必要があります。
保証には個別保証と根保証があります。
通常、1,000万円のローンについて連帯保証人となったら、1,000万円を完済すれば保証義務も終了すると考えている人がほとんどです。
このように、1つの借入に対してのみ保証を行うことを個別保証といいます。
しかし、根保証は1つの借入に対して保証を行うものではありません。
根保証は借入額ではなく、「借入限度額」に対して保証を行うものです。
つまり、借入限度額1,000万円の根保証契約を締結したら、限度額1,000万円の連帯保証人となるのです。
例えば、限度額のうち500万円借りた場合には500万円の保証義務がありますし、この500万円を返済して、1,000万円借りた場合には1,000万円の保証義務が発生します。
根保証契約がある限りはずっと限度額の範囲内で保証義務が発生してしまうのが根保証契約の怖いところです。
商工ローンでは、連帯保証人が理解しないままに根保証契約を締結させてしまい、保証人が保証していると自覚のない借金にも保証義務が生じてしまったという事例が少なくありません。
連帯保証人となるときや、他人に連帯保証人をお願いするときには、個別保証なのか連帯保証なのかをよく注意してください。
中には悪意をもって根保証契約を締結させようとする商工ローンも存在します。
商工ローンで借りるメリット
商工ローンには銀行融資にはない以下の6つのメリットがあります。
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融資までのスピードが早い
商工ローン最大のメリットに、融資までのスピードが速いという点にあります。
融資まで早いローンでは最短即日融資という商品もありますし、そうでない商品でも最短3営業日程度で融資を受けることができます。
融資まで2週間程度かかる銀行融資と比較して、この点は明らかなメリットです。
取引先からの入金が突然数日後になってしまい、数日間だけお金がすぐに必要などというような急な資金繰りに商工ローンは大きな助けになります。
銀行融資とは別枠
銀行も日本政策金融公庫も「この会社への融資は○○万円まで」と融資限度額を決めています。
商工ローンは銀行や日本政策金融公庫の融資とは別枠ですので、これらの融資限度額を使い切ってしまっても商工ローンであれば融資を受けることができる可能性があります。
また、追加融資の相談にも積極的に応じてもらえるため、借入直後に追加の借入が必要になった場合も安心です。
税金滞納でも融資可能
ほとんどの銀行の事業者ローンでは、税金を滞納している事業者は融資を受けることができません。
しかし、商工ローンでは税金を滞納している事業者でも融資を受けることができるため、税金支払資金として商工ローンを利用することにもメリットがあります。
用意する書類が少ない
銀行融資で用意する書類は、決算書や資金繰り表や登記簿謄本や場合によっては、取引先からの入金通帳など数多くの書類が必要になります。
しかし、商工ローンで用意する書類は、決算書と登記簿謄本と所定の事業概況を記入する用紙だけというのが一般的です。
銀行から事業資金の融資を受けるときには、書類集めだけでもかなりの手間になりますが、商工ローンではこのような書類を集める手間はそれほどかかりません。
銀行審査よりも甘い
商工ローンは銀行との審査基準とは異なる基準で審査を行います。
銀行の事業資金融資は、会社の収益の中から貸したお金を返済していけるかどうかが、大きな融資判断のポイントとなります。
しかし、商工ローンは貸したお金を回収できるかどうかだけを判断基準としているため、銀行から融資を断られた会社でも、会社の資産や売掛金や在庫や保証人などで回収可能と判断できれば、融資に応じてもらえることもあります。
土地や保証人の信用で借入可能
商工ローンは、会社が債務超過であったり売上回復の見込みがなくても、資産価値のある不動産を担保としたり、返済能力のある人を連帯保証人とすることができれば融資を受けることができます。
企業の業況に対して審査を行う銀行ではお金を借りることができない会社でも、商工ローンであれば担保や保証人の信用によって融資を受けることができる可能性があります。
総量規制対象外
個人が消費者金融から融資を受ける場合には年収の3分の1を超える借入ができません。
これを総量規制といいますが、個人事業主は税金対策のために所得を低くしている人が多いため、このような人は消費者金融から少ない金額しか借りることができません。
例えば、年収100万円の個人事業主が消費者金融から個人向けで借りることができる金額は、わずか33万円までの少額しか借りることができないのです。
しかし、商工ローンは総量規制対象外ですので、所得の低い個人事業主でも個人名義で多くの金額を借りることができる場合があります。
商工ローンのリスク
審査が甘い・融資までのスピードが早いというメリットがある商工ローンですが、商工ローンを借りること自体、リスクも非常に大きいといえます。
商工ローンのリスクについてしっかりと理解してから利用しましょう。
返済に関するリスク
商工ローンの金利は非常に高いですので、お金に困っているからといって簡単な気持ちで商工ローンを利用しても、完済に至るまでは非常に大変です。
これまで紹介してきたように、金利負担に関しては銀行融資よりも商工ローンの方が大きいのは言うまでもありません。
しかし、銀行の審査では返済不可能と判断されているからこそ、商工ローンへ申し込みしている会社や事業主がほとんどですので、そもそも返済が不可能な事業者が高額な利息を負担したうえで返済を行っていかなければならないため、完済まで至るにはかなり大変です。
商工ローンには、返済がそもそも困難になるというリスクがあります。
連帯保証人や担保へのリスク
商工ローンは連帯保証人の返済能力や担保の資産価値に対して融資を行うケースが非常に多いローンです。
もしも自社が返済できなくなったときには、連帯保証人に返済義務が生じて、連帯保証人の生活や資産を壊してしまうリスクもありますし、担保となっている不動産を失ってしまうリスクも存在します。
銀行の貸しはがしに関するリスク
商工ローンからお金を借りているということが銀行に発覚すると、自社に対する銀行の評価はかなり悪化します。
銀行は商工ローンを利用している企業については、資金繰りに悪化して、最後の手段をとったと判断する傾向にあります。
実際に、銀行融資を受けられない企業が商工ローンを利用すると、商工ローンの返済に窮して最後は倒産するというケースがバブル崩壊時には相次いだためです。
銀行は、倒産する前になんとか貸しているお金を回収したいと考えるため、「貸しているお金を早く返してください」と交渉してくることもあります。
このようなことを貸しはがしといいますが、商工ローンからお金を借りたことが銀行に発覚してしまうと、銀行から新規の融資を受けることができなくなるのはもちろん、貸しはがしに会うリスクも高くなってしまいます。
商工ローンに手を出す前に
商工ローンは、審査に通過しやすく、融資までのスピードが早いという特徴があり、場合によっては活用することができますが、金利が高く、銀行評価も下落するため、安易に手をだすべきものではありません。
商工ローンに手を出す前に、他の資金調達方法も検討しましょう。
ただし、以下でご紹介する方法は、商工ローンとは異なり融資までには時間がかかる方法です。
他の資金調達方法は?
商工ローンに手を出す前に、他の資金調達方法を考えてみましょう。
加盟している中小企業団体や政策金融機関に相談することで、臨時の資金繰りを手当てしてくれる場合もあります。
銀行や信用金庫などのメインバンクから事業資金を借りることができないとしても、中小企業には、お金を借りる方法はたくさんあります。
商工ローンに手を出す前に、加盟団体も含めて他の資金調達方法が本当にないかどうかよく検討するようにしてください。
日本政策金融公庫に相談してみる
銀行でお金を借りることができなくても、税金で成り立っている政府系金融機関である、日本政策金融公庫の融資制度であれば資金調達を行うことができる場合があります。
日本政策金融公庫の金融商品は、現在の事業内容と同時に事業計画書の内容が重要になります。
日本政策金融公庫は支店の数が少なく、「近くに窓口がない」という人も少なくないかもしれません。
しかし、日本政策金融公庫は地元の商工会議所を窓口として利用することも可能ですので、日本政策金融公庫から融資を受けたい場合には、近くの商工会議所へ相談するのもよいでしょう。
銀行に相談する
資金調達に困っている場合には、やはりメインバンクに相談するのがよいでしょう。
銀行は金融庁のルールを守った絶対に安全な業者ですし、事業資金借入を他の金融機関から行なってしまったら、メインバンクの心象はよくないため、資金繰りに困ったら、1度はメインバンクに相談するようにした方が長期的に見て得策でしょう。
長期資金の借入は難しくても、つなぎ融資程度の短期資金であれば融資に応じてくれる場合もありますし、個人事業者向けにはカードローンのような高金利スピード融資の商品を用意している銀行もあるので、何かしらの対応をしてくれることも少なくありません。
また、農協や信金は組合員に対して親切に資金繰りの対応をしてくれることもあるので、信金や農協の組合員の方は、そちらの方に相談するのもよいと思います。
補助金・助成金を知る
補助金や助成金を受けることができる場合もあるので、お金を借りる前には、そちらの利用も検討しましょう。
資金繰りが苦しいことに対して補助や助成を行う商品はありませんが、何かの投資を行う場合には、補助金などを活用することができる場合もあります。
銀行などが窓口になっていることもありますので、設備投資や事業承継などをする場合には、「何か受給できる補助金がないか」ということを銀行や顧問税理士などへ相談してみましょう。
手形割引・ファクタリングを利用する
急な資金繰りには手形割引やファクタリングという方法も活用することができますよ。
これらは売掛金などの売上再建を活用して資金調達を行う方法です。
手形割引とは、会社が掛売金の対価として得た受取手形などを担保に銀行からお金を借りる方法です。
通常、受取手形の期日というのは数ヶ月先になります。
手形割引を利用することで、期日前に受取手形を現金化することができます。
ファクタリングとは、売掛金などの売上債権を売却する方法です。
手形割引が売上債権を担保に銀行などからお金を借りる方法であることに対して、ファクタリングは売上債権を売却する方法ですので借金ではありません。
ただし、ファクタリングには手数料が必要になり、通常この手数料率は手形割引よりも高くなります。
また、手数料率は、どの業者を利用するかによって異なりますので、ファクタリングの賢い利用者は、良い業者を選ぶことができる中小企業経営者です。
業者の選定はしっかりと行わないと、悪徳業者の中には破格の手数料を設定する業者も存在しますので十分に注意しましょう。
手形割引とファクタリングについては、以下で詳しく解説します。
満期前の手形があるなら手形割引
商品を他社に卸すときに、約束手形を活用しているのであれば、手形割引を利用して満期前に手形分の金額を借入れできます。
手形割引を受付けている金融機関には、銀行と手形割引専門業者があり、それぞれで特徴が異なるため、比較しながら確認していきます。
手形割引とは
手形割引とは、所有している受取手形を銀行に買い取ってもらい、一定の割引手数料を差し引いた金額を受取ることができる資金調達方法です。
担保として受取手形を預けるため、銀行融資や商工ローンと同じく融資と同じ扱いとなるため、手形を発行した振出人が倒産などで手形の支払いができない場合には、代わりに返済をしなければなりません。
また、振出人が手形の支払い能力に不安が残る場合には、銀行などが手形割引に応じてもらえない可能性もあります。
一般的には、手形割引時に支払う手数料は銀行の方が少額で、手形割引業者の方が高額になる傾向にありますが、審査スピードや割引金額の上限などの条件は手形割引業者の方が良いです。
手形割引の申込みの流れ
手形割引の申し込みの流れは基本的に、銀行融資や商工ローンと同じようになっています。
- 銀行、手形割引業者に申し込みを行う
- 金融機関から審査を受ける
- 審査通過後、割引の実行が行われる
手形割引の審査も基本的には、申し込みをした会社や事業主の返済能力の確認が行われるため、経営状況が良くなく返済能力に不安が残る場合には、審査が長引く可能性が高いです。
ただし、手形割引業者は銀行よりも、受取手形を発行した会社の支払い能力が重要視されるため、振出人の支払い能力があれば審査に通る可能性が上がります。
売掛債権があるならファクタリング
ローン審査に通らない場合、売掛債権を現金化する「ファクタリング」という方法も検討しましょう。
本来なら支払期限まで待たなければ現金化することができない売掛債権ですが、ファクタリングを利用すればすぐに現金化することができ、資金繰りを円滑にすることができます。
資金の借入ではありませんので、赤字であっても利用することができるというのもローンとの大きな違いです。
ファクタリングとは
ファクタリングとは、自分が所有している売掛金などの売上債権をファクタリング業者に買取してもらうことで、短期間で現金を手に入れられる資金調達方法です。
これまで紹介してきた商工ローンや手形割引と違い、ファクタリングは売上債権を買い取りしてもらう資金調達法のため、金融機関に対して返済をする必要はありません。
また、借入ではないため、現金が直接手に入る資金調達法として、キャッシュフローの改善にも役立ちます。
ただし、ファクタリングの手数料は1~30%と幅が広く、基本的には継続して利用をすると融資よりも費用がかさむため、急な資金繰りに対応するための短期的な資金調達方法としての利用をおすすめします。
ファクタリングの申込みの流れ
ファクタリングの申し込みの流れも、融資と同じで申込後に審査を行い、通過すれば売上債権の現金化が行われます。
ただし、ファクタリング審査は割引手形と同様に申し込みした会社ではなく、売掛金の支払いを行う会社の経営能力が重要視されます。
これは、ファクタリングは売上債権を買い取ってもらう契約で、売上債権の支払いが行われなかったとしても、ファクタリング利用者に返済の義務がないからです。
したがって、ファクタリング利用者の経営状態があまり良くない状態でも審査に通る可能性がありますが、逆に売上債権の取引先の経営が悪い場合には審査落ちをする可能性があります。
ファクタリングのトライ
ファクタリングを行う業者の1つに、株式会社SKOが運営する「ファクタリングのトライ」があります。
全国どこからでも24時間365日申し込むことができ、最短即日での現金化が可能です。
手数料は最低5%に設定されており、これはファクタリング業界の中でもトップレベルに低い値です。
取引先に連絡が行くこともありませんので安心して利用できます。
商工ローンに関するみんなの口コミ
商工ローンに関する口コミを検索してみると、今でもローンに対して悪い印象を持っている人が多くいることがわかります。
サラ金もしくは商工ローン。
払えなくなれば身ぐるみ剥がして持って行く。
生命までも…
— 🇯🇵蒼空🇯🇵 (@gJJOt63Gcw43irb) 2018年7月4日
不況が続く中で銀行は相変わらずの貸し渋り。特に中小企業のつなぎ融資なんて門前払いや。その点、商工ローンはたいした審査もせず、簡単に数百万単位で融資してくれる。そら流行るやろ。
— おまえは其処で乾いてぬけ (@changchenyue) 2013年3月31日
ただし、ビジネスローンに関してもノンバンクが商工ローンから名前を変えているものも多いため、利用してみて意外と高金利なことにおどろいている人もいます。
え?
ビジネスローン??
いやそれ、サラ金と金利変わんねーじゃん。
アコムと変わらんぞ、それ。#ガイアの夜明け
— ヨツモト リョウヘイ(トプセラ主宰) (@Playtopseller) 2018年1月16日
ビジネスローンや商工ローンの実体についてしっかりと把握して、自社が利用すべきかどうかの判断が大切です。
まとめ
商工ローンは賢く利用しないと、その時だけ資金繰りが楽になっても後が大変なことになります。
銀行から融資を受けられないという理由で資金繰りに窮して、商工ローンを利用するのはおすすめできません。
融資によって、経営が改善できるというよほどの確信があればよいのですが、そうでない場合には会社の借金をさらに大きくしてしまうだけになりますし、銀行から貸しはがしにあう可能性もあります。
さらに、連帯保証人に大きな迷惑をかける可能性もあります。
場合によっては傷の小さなうちに会社をたたむというのも1つの選択肢です。
しかし、商工ローンには融資までのスピードが早いという大きなメリットも存在します。
取引先からの入金が急に遅れてしまい、数日だけ資金を借りたいというような場合にはかなり重宝するのは事実ですので、このような場合には商工ローンは強い味方となります。
商工ローンはメリットとデメリットがはっきりとした借入ですので、メリットだけを享受できるように賢く利用してください。
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