借入金の税務調査ポイントは?赤字でも税務署に疑われる?
税務調査はもうかっている黒字の大企業だけでなく、赤字の中小企業にも入る可能性があります。
それは、ほとんどの中小企業の問題として、経理がどんぶり勘定となっている可能性があるからです。
そこで、中小企業が税務調査で指摘を受けやすい役員借入金についてまとめましたので、経営者は税務調査対策の参考にしてください。
目次
赤字でも税務調査が入る?
先ほど話しした通り、赤字の中小企業でも税務調査が入る可能性はあります。
そこで中小企業において最も指摘を受けやすい役員借入金と役員報酬のバランスについて、これから話しします。
短期借入金と役員報酬のバランス
役員借入金は会社が社長から借りたお金であり、すぐ返済する予定があれば短期借入金となります。
この短期借入金の返済額が、役員報酬の金額より大きくなると注意が必要です。
それは、会社にとって社長へ渡すお金より、社長からもらうお金の方が多くなるため、非正規な方法で社長にお金が流している可能性を税務署が疑うからです。
もちろん社長が元々お金をたくさん持っているのなら問題ありません。
ただしそうでなければ、会社の売上げを計上せずに社長の懐に入れているか、事業用の経費を社長の生活費に充てているかのどちらかの可能性があります。
また、社長が他の所得を隠している可能性もあるでしょう。
このように役員借入金の返済と役員報酬のバランスひとつで、税務署に疑われる可能性がありますので、これから話しする注意点を覚えてきましょう。
調査官からあらぬ誤解を受けないために
税務調査から脱税の疑いをもたれないためにも、会社のお金と社長のお金の移動履歴はなるべく残すようにしましょう。
それは先ほど話ししたバランスのずれは、脱税していなければ本来発生するものではなく、社長が資金移動の記録を残さずどんぶり勘定をすることで発生する傾向があるからです。
したがって、お金の移動をしっかり通帳に残して、できれば1か月に一度でも役員借入金をできる限り清算するようにしましょう。
借入金の税務調査ポイント
役員借入金は、役員報酬とのバランスが税務調査で指摘されるという話をしましたが、役員借入金の資金使途についても注意が必要です。
それは、運転資金や設備資金といった資金目的がはっきりしている銀行借入金と違い、役員借入金の資金目的はあやふやであるため税務調査で指摘されやすいからです。
したがって、これから話しする方法で、税務署に資金使途をはっきり言えるようにしておきましょう。
借入金の資金の使途はなにか
役員借入金は社長の立替えが積み重なってできるケースが多いため、資金使途を明確にすることは難しいかもしれません。
ただし、役員借入金の資金使途をあやふやにすると、貸手である社長の課税所得とみなされかねません。
したがって役員借入金の資金使途は、外注費○○円の立替えだとか、会社の赤字の××円の補塡といったように明確にするようにしましょう。
借入先とはどのような関係か
税務調査対策として、役員借入金の借入先についても明確にする必要があります。
特に、借入先が銀行や外部の第三者ではなく、役員や同族会社である場合は注意が必要です。
それは、資金移動先が身内であるため、税務署から利益調整や所得隠しをしているのではないかと疑われるためです。
この対策としては、あらかじめ会社と社長とで借用書を交わすことがベストですが、現実的に難しいと考えられます。
したがって、先ほど話しした資金使途に使った金額と、役員借入金の残高の整合性については最低限説明できるようにしましょう。
シンジケートローンの各種手数料
シンジケートローンとは、複数の銀行が出し合って融資するローンのことです。
会社が払うシンジケートローンの手数料も、税務調査に指摘されやすいので注意が必要です。
それは、手数料を払う銀行がシンジケートローンのメイン銀行かサブ銀行であるかどうかや、融資の種類によって手数料の全額を経費にできない可能性があるからです。
したがって、シンジケートローンを利用するときは、手数料の仕分について必ず専門家に確認するようにしましょう。
役員借入金についておさえよう
役員借入金は中小企業にとって税務調査で指摘されやすいという話をしました。
そこで、役員借入金がどういったものなのかについて、今一度確認してみましょう。
財務数値の悪化とみられる?
役員借入金の増加している会社は、財務数値が悪化しているとみなされる可能性があります。
それは、会社の経費は原則として会社の現金から支払うものであり、社長から借入しないといけない状況はそもそも会社のお金がないからです。
役員借入金が一時的なものであり、すぐに返済できる場合は問題ありません。
しかし、役員借入金が増え続けるということは、会社本業でもうかっていないと銀行に判断されるほか、先ほど話しした税務調査の指摘材料となりかねませんので注意しましょう。
相続税の課税財産の対策をしよう
役員借入金が増え続けると、相続税が発生する可能性もあります。
それは、役員借入金は社長にとっての資産であるため、金額が大きくなると社長が亡くなったときに相続税が発生するからです。
会社が税務調査と追徴課税を避けられたとしても、社長の死亡時に相続税として税金を支払いかねません。
そこで、これから話しする役員借入金を減らす方法を覚えておきましょう。
役員借入金の解消方法は?
役員借入金は、社長の相続財産となるためできる限り減らしておくことが望ましいです。
ただし、先ほど話しした通り、役員借入金が増える会社はそもそももうかっていない傾向がありますので役員借入金を返済するお金がないと考えられます。
そこで役員借入金を免除する方法を紹介します。
役員借入金の免除方法
役員借入金の免除とは、社長が会社に貸し付けている債権を放棄することです。
言い換えれば、社長が貸付金という相続財産をなくすのです。
ただし、この方法は会社にとって債務免除益という利益になるため、それを相殺できる赤字がなければ法人税がかかってしまいます。
したがって、まずは会社の資金繰りから返済する方法を検討してみましょう。
資金繰りの中から返済をしよう
役員借入金を減らす一番の方法は、会社の現金から返済することです。
具体的には、過去に社長に立て替えてもらった借入金を会社の利益で返済することです。
また、税務署に返済したという履歴を残すためにも、返済資金は会社から社長の通帳へ銀行振込するようにしましょう。
資本金へ振替する方法もある
会社の資金繰りで役員借入金を返済できない会社は、役員借入金を資本金へ振り替えする方法を覚えておきましょう。
それは中小企業の場合、役員借入金は実質的に社長が出資したものとみなして会社の資本金に振り替えることが可能だからです。
会社は役員借入金を資本金に振り替えることで、過去の赤字の累積である債務超過と相殺できることができます。
この方法によって社長の相続財産を減らすことが可能となります。
まとめ
中小企業にとって役員借入金は税務調査の指摘事項となりやすい項目です。
また、社長に脱税の悪意がなかったとしても、調査での言い方次第では税務署に悪意があるとみなされかねません。
したがって、経営者は今回の話と顧問税理士の意見を踏まえてしっかり対策をしておくことをおすすめします。
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