「銀行にコネがあると融資してもらえる」は昔の話!
- 執筆者の情報
- 名前:馬沢結愛(30歳)
職歴:平成18年4月より信用金庫勤務
記事の目次
コネで融資を受けることはできない
銀行員に家族や親戚がいるまたは支店長などに、知り合いがいると簡単に融資をしてもらえるというような、噂を耳にしたことがあるという人はいると思います。
実際にこのようなことがあれば資金繰りが大変で、すぐにでも資金調達しなければならないときに、コネ(口利き)によって審査することなく必要な分を、いくらでも銀行から借りることができるとなれば、どんなに楽なことかと思います。
特に現在のような不景気であればなおさら、コネなどによって融資してもらいたいと思う経営者は多いと思いますが、このようなことが本当にできるのでしょうか。
できるのであれば実際に融資してもらいたい所ですが、残念ながらコネや口利きによって銀行から融資を受けることはできません。
銀行から融資をしてもらうためには強力なコネ(政治家など)があったとしても必ず会社の状況を審査した上で融資をしますので、審査がなく融資をしてもらうことや、会社の規模に合わない金額の融資はしていません。
昔はコネで融資をしていた
「火のない所に煙は立たない」というように、コネがあると融資をしてもらえるという噂があるということは、今はコネで融資をしていないと言っても昔は融資をしていたのではと思う所ですが、昔であれば本当にコネで融資が行われていました。
あったというよりも当然のようにコネで融資をしていたという方が、正しい表現となるほど当たり前のように融資をしていた時代がありました。
しかし、大手の銀行によって行われていたコネの融資が、多額の回収不能に陥ってしまったことを受けてコネの融資をしないようにした結果、現在では全くコネを使った融資は行われておりません。
逆に取引してもらえない可能性も
銀行で全くコネを使った融資をしていないときに、コネを使った場合には逆に融資を断ることや取引をしてもらえないということになってしまう可能性があります。
もちろんコネはないよりもある方がいいことは確かですが、飽くまでも紹介程度にしか使うことができないということであれば、最初のイメージとしてはいいかもしれませんが、それ以上の期待をすることはやめましょう。
むしろそこから融資をするように促すようなことがあれば、銀行は一気に不信感を抱きます。
そもそもいくら不景気で銀行は貸すことを渋ると言っても、健全な会社であればコネなど使うことなく融資を受けることができます。
コネを使うことを考えるということであれば、それだけ会社が不安定なのではと思ってしまいます。
ですので、コネを使うことによって融資を受けられなくなるだけでなく、その後の取引ができなくなってしまうかもしれないということに注意が必要です。
飽くまでも信用で融資している
銀行が融資をするのは、その会社の「信用」を基に融資をしています。
何よりも重視する「信用」ですが、会社の「信用」となると様々な要因を総合して「信用」となりますので、一言で「信用」と言ってもその中にはいろんな意味があります。
信用の中で1番重要となるものが、その会社の「決算書」です。
決算書は過去の実績をまとめたものですので、決算書を見るとその会社がどのような事業活動からどれだけの売上や利益を出しているかが分かります。
決算書を1期見ることによって直近の事業成績が分かり、2期~3期分を見ることによって事業の安定性を見ることができますので、会社の信用を示すためには最も重要なものと言います。
ですので、きちんと利益が出ているか、借入が多すぎないか、資産はどの程度保有しているかなどで審査に有利となるか不利となるかが分かれます。
事業計画は過去の実績から見ても根拠のあるものを出す
銀行の審査では決算書の他にも重要な書類がありますが、その中のひとつに「事業計画書」があります。
事業計画書は今後の事業はどのように推移していくのかを表したものですので、長期の融資を受けるためには必ず必要となります。
経営者としてはこれから展開していく事業のことを考えて根拠を基に作成しますが、事業計画書が完璧であれば信用があるということにはなりません。
事業計画書はこれから起こること(未来のこと)を示すものですが、銀行がそれをうのみにすることはなく、決算書の内容から本当に計画されたことができる体力やもしもできなかった場合には建て直すことができるのかまで審査をします。
飽くまでもこれから起こることを予想して作成されている計画書ですので、失敗したので返済ができませんとなってはいけないので、過去の実績も踏まえた上で、計画を立てなければ融資をしてもらうことはできません。
銀行との信用を築くには?
銀行とのコネを利用しても融資を受けられるわけではありませんが、銀行と信用を築くことは非常に大切です。
銀行との信用を築くことで審査時に、「この会社の経営者はしっかりしている」「融資をしてもきっちり返済してくれそうだ」と好印象を与えられます。
ただし、銀行との信用を築きたいからと言っても、賄賂(わいろ)などの不正な取引をしてはいけません。
もしも、賄賂を贈っていることが発覚すると、送った側、受取った側どちらも処罰されてしまいます。
それでは、銀行と信用関係を築くためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
ここでは、具体的な信用の築き方について解説します。
メインバンクを決めて積極的に利用する
企業を経営していて銀行を利用するときには、複数の銀行を併用して利用することが多いですが、利用する金融機関を1社に絞りメインバンクに設定することで、銀行との信用関係を築きやすくなります。
メインバンクに設定することで、自社の経営状況や将来の経営方針などを逐一報告する必要が出てくるため、信用を築くためのきっかけが自然と増えます。
融資を受けやすくするために信用を築きたければ、融資を希望する銀行をメインバンクにすることは重要です。
メインバンクってなに?
メインバンクとは、個人企業問わずに幾つかある銀行の中から、1社を中心に取引を積極的に行うことを指します。
取り分けてメインバンクの契約を結ぶわけではありませんが、最も取引が多い会社をメインバンクと呼ぶようにしています。
銀行からの融資の金額が多いだけではなく、預金や振込などの取引を積極的に行っていたり、会社の経営の相談を受けたりすることで、メインバンクとして信頼関係を築きます。
メインバンクを設定することの重要性
メインバンクを設定することは、会社経営を行う上で非常に重要と言えます。
メインバンクである銀行とは、融資を行うときに安定した資金の借入を行いやすいです。
メインバンクになる過程で、預金や取引、様々な融資を通じて銀行側はあなたの企業の情報を把握しています。
したがって、新規に取引を行う企業よりも、細かい調査や審査を行わずに融資に踏み切りやすいです。
融資の申込みをする企業としても、融資のたびに企業の説明を行う資料や書類の提出を行う必要がなく、新規の銀行に融資を依頼するよりもスムーズに手続が進むため、コスト削減や審査時間の短縮が行えるのが魅力です。
また、メインバンクとして取引が進むことで、銀行の担当員からの経営に対するアドバイスや相談を受けられるといったメリットもあるので、メインバンクを設定することは非常に重要と言えます。
コネではなく長期的な付き合いを
コネを使っての融資ができない現在では、とにかく銀行との信頼関係を深くすることが重要となります。
銀行との信頼関係を深くするのに最も大事なことが、長期的な付き合いをすることです。
長期的な付き合いをすることによって、その会社がどのような事業内容でどのような所と取引をしており、決算内容があまり良くないときでもきちんと返済などをしていた実績を銀行が分かるようになってきます。
会社の中身や経営者の人柄などを銀行が熟知するまで信頼関係を深くすると、多少会社が苦しくなったとしても銀行は助けてくれます。
よく考えるとコネと似たようなことのように思えますが、第三者からのコネなどではなく会社が長年積み上げてきた実績を基に融資などをしてくれますので、コネよりもはるかに効果のある方法となります。
銀行への協力や取引の数でも後に有利になる
銀行と長期的な付き合いをしていくということは、その間に銀行から勧められて融資を受けるということもあります。
銀行も融資の成績が伸びないことや足りないといった場合に融資を勧めてきますが、本来であれば借りなくても、十分にやっていけるほど会社に余裕があれば借りたくないと思うことがほとんどです。
しかし、余裕があるときほど融資を受けることによって、過去に完済したという実績を作ることができます。
このことを返済実績(完済実績)と言いますが、返済実績があると審査が有利になります。
それに加えて給与の振込などの、取引の数を多くできれば、さらに審査に有利となります。本来ではする必要のない融資であったとしても、実績を作っておけばいざというときの融資に活用が可能です。
銀行との信頼関係を深くすることとは、これらのような取引をしてその銀行をメインとして利用しているということを示すことが大切です。
まとめ
コネを使っての融資は飽くまでも噂であるということを認識し、コネによって融資は受けられないだけでなく、取引さえもしてもらえない危険性があるということには注意が必要です。
銀行が融資をするのはその会社の信用がある場合でのみでありますので、会社を安定させることはもちろんですが、銀行との信頼関係を日頃から深めていくことによって信用を作ることが重要となってきます。
金利が低い銀行を渡り歩くことも大事な戦略ではありますが、銀行との信頼関係がなければ苦しいときに助けてもらえなくなってしまうことになりかねません。
融資を受けるための近道は、コネなどの下手な小細工をするのではなく少しずつ信用と信頼関係を作り出していくことでありますので、どこかひとつメインとなる銀行を決めておくことが必要です。