会社からお金を借りる方法「従業員貸付制度・社内貸付金制度」とは
急にお金が必要になった。
そんな時にまず頭に浮かぶのは、おそらく銀行や消費者金融といった金融機関でしょう。
しかし、お金を貸してくれるのは、金融機関だけではありません。
会社からお金を借りることもできるのです。
すべての会社が貸付を行っているわけではありませんが、会社ならば難しい審査もなく、無利子で借りることだってできます。
今回は会社からお金を借りる方法について徹底解説していきます。
お金が必要になったときに備えて、しっかりと頭に入れておくようにしてくださいね。
この記事はこんな人におすすめ
- 従業員貸付制度について詳しく知りたい
- 従業員貸付制度の借入条件について知りたい
- 給料の前払いについて詳しく知りたい
- 給料の前払いの申込条件について知りたい
- 執筆者の情報
- 名前:梅星 飛雄馬(55歳)
職歴:地域密着の街金を30年経営
目次
会社からお金を借りれるの?
最近、民間企業でも従業員に対してお金を貸す会社が増えていると言います。
これは特別会社が利益を出す目的で、従業員に貸し付けているわけではありません。
仕事の効率を図っての、対応策の1つなのです。
返済期日がもう目の前に来ているのに、給与支給日がまだ先で、返済が間に合わないなど、変な借金を抱えてしまうと従業員は仕事に身が入りません。
となれば当然、借金が気になって、仕事の効率は悪くなってしまいます。
それれを考慮して、直接、従業員と特別面談を行い、下記のようなことをヒアリングしている会社もあるほどです。
- 預金がどのくらいあるのか
- 借金がいくらあるのか
そこで会社は従業員が抱えている借金を肩代わりして消費者金融に返済し、かなりの低金利で借り換えさせる方法で、相対的に仕事の効率化を図っているというわけです。
消費者金融カードローンの借入金利は標準で年18.0%と、銀行カードローンの年15.0%前後に比べると高金利になってきます。
消費者金融からの借入は生活のためと言うよりも、パチンコや競馬などのギャンブルで負けたなど、遊興費によってできた穴を埋めるために借りる人が多いですよね。
「そんな自分の自業自得で招いたことなんて放っておけ!」
そう考える人も多いことでしょう。
しかし、借金返済のことばかりを考えて重大なミスをしてしまったのでは、会社は大損害を受けてしまう可能性が出てきます。
これでは会社にっとっても、心配事が増えてしまうばかりです。
放っておくよりも、ちゃんとケアするから、「仕事にしっかりと身を入れてくれ」という意図があるわけですね。
また病気やケガ、 配偶者の出産など、緊急的にお金を必要とする従業員にも、お金を貸し出す制度を、社員の福利厚生の一環として設けている会社が多くなっています。
会社からお金を借りるとなると、この福利厚生を目的に設置された、従業員貸付制度(契約者貸付制度)が一般的でしょう。
それでは従業員貸付制度とは、どのような制度なのかを説明していくことにします。
福利厚生!従業員貸付制度とは
従業員メリットの高い従業員貸付制度(契約者貸付制度)は、全ての会社で用意されているわけではありません。
労働基準法等の法律や、労使協定で定められているわけではないので、必ずしも従業員貸付制度を設置しなければならないわけではないからです。
あくまでも会社側が組織活性化という企業メリットを目的に、従業員側に提供する福利厚生サービスですから、代表者の意向によって設置の可否が決定されます
また、従業員貸付制度は給料の前借りとは違います。
従業員が金銭トラブルに巻き込まれることを、避けるために用意された制度です。
よって、従業員貸付制度が用意されているからといって、理由を問わずお金を貸してもらえるわけではありません。
主には下記のような金銭トラブルに見舞われたことが、該当条件とされています。
- 明らかに多重債務に陥っている
- 自分および家族の病気や事故による入院費用を必要としている
- 住宅購入資金を必要としている
- 身内の不幸で葬式費用を必要としている
- 被災による家屋の修理費や修繕費用を必要としている
従業員貸付制度は金の悩みを抱える、従業員の救済を目的とした福利厚生の一環です。
そのため、やむを得ない事情で、急にお金が必要になった時以外は、利用することはできません。
この該当条件については、会社によって違いがあるため、従業員貸付制度が用意されている会社に勤務している場合は、事前に確認してみるといいでしょう。
また従業員貸付制度は、下記の勤務先で用意されているケースが目立ちます。
- 比較的大企業で労働組合の活動が活発な会社
- 自治体職員などが勤務する職場
従業員貸付制度は、従業員が急にお金が必要になっても安心して働くことができる、その結果会社は収益を伸ばすことができる、まさに両者にとって有益な制度であることに違いはありません。
近年は会社の健康経営が注目されています。
会社が従業員の健康増進・維持に、積極的に取り組むことにより、下記のような効果が期待できるからです。
- 会社の生産性向上
- 業務効率化に繋がる
- 企業のイメージアップに繋がる
よって、健康経営サービスとなる、従業員貸付制度を用意する会社が増えてきています。
制度を用いる場合は労使協定に定める、貸付金は給与と相殺できないなど、労働基準法によって、様々な決まりがあるため、社会保険労務士等の専門家の力が必要になります。
健康経営や人事戦力が目的だからといって、容易に始められるものではありません。
しかし、導入する会社が増えてきていることは事実です。
ハローワークで求人票を見ると福利厚生の内容に従業員貸付制度あり、など書いてある場合があるので、転職を考えている人は参考にすると良いでしょう。
借入金額や金利はどのくらい?
従業員貸付制度はそれを定めた法律があるわけではありません。
借入金額の上限額や金利についての設定は、会社の任意となっています。
よって、借入できる額の決め方も、下記のように様々です。
- 借入限度額は100万円まで
- 借入限度額は30万円まで
- 借入限度額は2,000万円まで
- 自己都合退職金まで
- 給与支給額の3か月分まで
具体的に借入したい金額が決まっている場合は、いくらまでの借入が可能か、担当部署や上司に相談してみるといいでしょう。
また、借入金額と共に気になるのが借入金利ですが、低金利なのが一般的です。
金利は年2.0%から4.0%と低金利で、下記のように、金融機関からの借入と比べれば、確実に好条件で借入することができます。
ローン商品名 | 金利目安(年率) |
銀行カードローン | 1.5%~14.5% |
消費者金融カードローン | 3.0%~18.0% |
銀行多目的ローン | 6.0%前後 |
銀行フリーローン | 2.0%~14.5% |
大手消費者金融のカードローンだけでなく、低金利と言われる銀行系カードローンと比較しても、金利に10.0%もの差が見られます。
となれば発生する手数料に当たる、支払利息にも大きな差が生まれるというわけです。
なお利用者が従業員に限定される従業員貸付制度では、利用手数料の算出に利用される金利は、いくらに設定しても貸金業法に抵触することはありません。
貸金業法第2条によって雇用者が従業員に対して貸付を行う行為は貸金業から除外されているからです。
ただし貸付上限金利は出資法の上限金利である年20.0%を超えることは、いくら貸金業者でなくても出資法違反に問われる場合があります。
会社が従業員へ貸付する場合は利息制限法に準ずるのが安全です。
あなたが勤めている会社で従業員に対する貸付制度があるのかは、経理課や総務課などに聞いてみるか、労働組合があるなら組合事務所に聞いてみるのも良い方法です。
金銭消費貸借契約書は必要
いくら福利厚生の一環で社内の貸付だとしても、金銭消費貸借契約書は必ず締結しなければなりません。
ある時払いの催促なしや、出世払いでは、従業員が利益を得ているとみなされる可能性があります。
税務署の立ち入り調査で契約書なしの貸付が見つかってしまうと、従業員は贈与税を請求されることになるでしょう。
お金の動きを明確にするためにも、金銭消費貸借契約書は欠かせません。
もちろん利息相当額も支払わなければ、利息分だけ従業員が利益を得ていると思われ、課税対象となってしまいます。
お金を借りる従業員としても、何も書かずにお金を借りるのは心配ですよね。
小さな会社の場合、社長との口約束で貸付が行われることもあるようですが、両者が後々トラブルに見舞われないためにも、金銭消費貸借契約書は必ず作成するようにしてください。
社員なら誰でも借りれるの ?
従業員貸付制度で気になるのが、利用対象者です。
実は、会社に勤めている従業員なら、誰でも利用できるわけではありません。
会社の社内規定や就業規則によって借入基準は違いますが、下記2ついずれかが条件になってくるでしょう。
- 正社員
- 社会保険への加入対象者
また、勤続年数も大きく影響し、借入資格が得られる勤続年数が決められているだけでなく、勤続年数の長さに応じて、下記のように借入金額に差を持たせている会社も少なくありません。
勤続年数 | 借入上限額 |
5年以上 | 30万円 |
10年以上 | 50万円 |
15年以上 | 70万円 |
20年以上 | 100万円 |
借入資格に対する基準は、様々なものが挙げられますが、まずは勤務形態がどうなのかが、利用対象者となるかどうかの前提条件となってくるでしょう。
勤務形態によって利用できない人も
今説明したように、従業員貸付制度を確実い利用できるのは、勤続年数をクリアした正社員のみです。
これは勤務形態が勤続年数に、直接関係してくることが影響してのことでしょう。
よって、勤務形態が利用資格に影響してくることは間違いありません。
契約社員や派遣社員は契約期間が満了してしまうと、再契約されない可能性があります。
またパート従業員やアルバイト従業員も、長年にわたって雇用契約を結ぶことはなかなか難しい面がありますよね。
パート雇用でも社会保険対象となる採用条件であれば、可能性がないわけではありませんが、パート雇用で従業員貸付制度が利用できる会社はないでしょう。
勤続年数は少なくても3年以上、できれば5年以上欲しいところです。
借入する金額によっては、返済期間が長くなってしまう場合があります。
返済途中で会社を辞められたのでは、取り立てすることが難しくなってしまいます。
信用情報機関に加入しているわけでもありませんので、金融事故として登録することもできません。
正社員や準社員なら身元保証人がいることから、従業員貸付制度の対象者としている会社が多いのも頷ける話ですね。
勤続年数によって借入金額が増える
一般的に従業員貸付制度は、勤続年数が長ければ長いほど、借り入れできる金額が増えます。
これは先に説明した通りです。
つまり会社からの借入は、退職金を担保に借り入れするのと似ています。
勤続5年なら30万円、勤続10年だと100万円までのように、勤続年数に比例して借入上限額を決めている会社が多いのが実情のようです。
従業員貸付制度は申し込んだ後、会社役員による社内審査が行われます。
借入条件に配当するだけでなく、社内での経験が審査条件に含まれるのです。
これは大企業、中小企業問わず、変わりはないでしょう。
よって、勤続年数が短いと、借入できる金額が少なくなることが予想できます。
会社からお金を借りる場合は、いくらくらいまで借りることができるのか、事前に担当部署と相談しておきましょう。
借入には連帯保証人が必要
借入する金額によっては、連帯保証人が必要となる場合があります。
給料と同額の金額なら必要ありませんが、高額借入となる場合には、連帯保証人を求められるケースもあるようです。
会社の同僚が連帯保証人になる社内保証ならいいですが、家族の誰かを連帯保証人にしなければならない場合は、内緒で会社から借りることができません。
なお労働組合が間に入ってくれれば、民間の保証会社と契約することで、連帯保証人の代わりにすることが可能です。
また社内保証人となった場合は、借入者が完済するまで注意が必要になります。
社内保証人が完済前に、転職することもあるでしょう。
しかし、転職したとしても、連帯保証人としての義務が免除されたわけではありません。
借入者が返済不能に陥った場合は、会社から一括請求される可能性が考えられます。
従業員貸付制度での借入の場合、同僚に社内保証人を頼まれることがありますが、この点をよく考慮して、社内保証人になるかどうかは、慎重に考えるようにしてください。
申込みからどのくらいで融資してもらえるの?
従業員貸付制度で気になる点の1つが、融資までに必要になる日数です。
至急、お金が必要になり、申し込む人にとっては、特に気になるところでしょう。
従業員貸付制度の融資タイミングは、2週間から3週間が一般的です。
また、融資までに必要になる日数は、会社規模が大きくなるほど、長期化する傾向が見られます。
中小企業であれば即日融資できるところもありますし、1週間程度で融資実行されるのが多いようです。
しかし、大企業となれば、融資までに1ヵ月もの期間が必要になるケースもあると言われています。
これは融資実行の承認を得るまでの決裁ルートが、大きい会社ほど複雑になるのが原因です。
気になる人は、事前に従業員貸付制度で融資を受けたことがある人や、担当部署に聞いてみるといいでしょう。
返済回数は決まっているの?
従業員貸付制度の返済回数は、会社によって異なります。
ですが福利厚生として従業員に提供しているので、従業員の生活の妨げになるような、返済額を求めてくることはありません。
生活に支障が出ない範囲内で、毎月の給料から天引きされるのが普通です。
返済期限は1年から5年で設定されているところが多く、借入額や経済状態に応じて決定されます。
どうしても12回以内に返済しなければならない場合は、毎月の支払額を抑えてもらった分だけ、ボーナスから返済するようにすれば、毎月の生活に支障が出ることが少なくなるでしょう。
しかし、いくら低金利だと言っても、返済期間が長引くほど、支払う利息は大きくなります。
返済期限を決める際には、この点も十分に考慮するようにしてください。
それでは引き続き、従業員貸付制度の返済方法の注意点について、説明していくことにします。
退職時には一括返済を請求される
従業員貸付制度の借入が完済していない状態で、退職や転職をすると、借入残高の一括返済が求められます。
借入残高や都合退職金によっては、無理なく返済することができるでしょうが、そうでない場合には注意が必要です。
中には融通をきかせてくれる会社もあるようですが、基本的にはそんな会社はないと考えておいた方がいいでしょう。
近い将来、都合退職する可能性は十分に考えられます。
それを見越して退職時期を考えるなどの工夫が必要になってきますね。
返済が遅れた場合のリスクは?
従業員貸付制度で一番気を付けてもらいたいのが、返済遅れで被るリスクです。
金融機関からの借入ではないため、電話や郵便物による督促はありませんが、確実に社内評価を下げることになります。
会社が一番嫌うのは金銭トラブルです。
返済遅れで金銭面にルーズであるというレッテルが貼られると、確実に評価はダメージを受け、将来の出世にも響くことになるでしょう。
そうならないためにも、金融機関からの借入より、更に気を使った返済を心がけるようにしてください。
資金使途に制限はあるのか
従業員貸付制度の借入は、借入資格のある従業員だから申し込めばOKというものではありません。
先に説明したとおり、従業員貸付制度は福利厚生の一環として設けられています。
その目的は従業員を金銭トラブルから救済することにあるため、使い道自由に利用できるわけではありません。
「遊興費に使う資金がないから、会社から借りたい。」
このような理由では、申し込んだとしても社内審査を通過することはないでしょう。
従業員貸付制度は急な出費等で、どうしても資金が必要な場合に利用する制度です。
資金使途は会社によって、明確に指定されています。
その条件に該当しない場合は、申し込んだとしても借入することはできません。
使途目的は限定される
先に説明した通り、基本的に会社から借りれる制度を利用する人は、病気やケガの治療費や出産や子供の教育資金のために借りています。
つまり、従業員貸付制度での借入は、資金目的が限定されているというわけです。
会社が設定した使途目的以外で、借入を申し込むと、金銭に対してルーズだという評価が下されることにもなりかねません。
その上、借入もできないわけですから、申し込んだ従業員にとっては、何1ついいことはないのです。
評価査定に響かない程度の理由がなければ、社内貸付制度を利用するのはやめておいた方が無難でしょう。
ブラックでも借りることができる?
金融機関からお金を借りる際、審査NGとなる原因の1つが、個人信用情報でブラックリスト扱いになっていることです。
ブラックであれば、金融機関が融資に応じてくれることはないでしょう。
しかし、会社は従業員がブラックかどうかを、調べる術がありません。
勤務先が銀行や消費者金融、 クレジットカード会社など信用情報機関に加入している会社でなければ、信用情報機関から個人信用情報を開示請求することができないからです。
したがって、ブラックでも真面目に働いているなら、従業員貸付制度でお金を借りることに支障はありません。
また同様に総量規制を超えて借金をしていても、会社はその事実を把握できませんし、会社からの借入は総量規制適用外です。
他社借入が多いとしても、借入することは可能でしょう。
会社からの借入のデメリットは
会社からの借入のデメリットとしてまず考えられるのは、お金を借りたという事実が、社内の噂になってしまうことですね。
経理課から情報が漏れたのか、総務課から情報が漏れたのか、いずれにせよ個人情報が漏れてしまうことは考慮しておくべきでしょう。
しかし、会社からの借入で考えられるデメリットは、それだけではありません。
ここでは会社から桶値を借りる際に、予測できるデメリットについて説明していきます。
周囲に借金がバレるデメリット
会社から借金をするときには上司や、経理担当者に相談することになるでしょう。
お金に困っていることは、誰でも知られたくないものです。
従業員貸付制度を利用したいと申請したことが、どこから漏れるか不安になりますよね。
事実、絶対に漏れないとは言い切れません。
もし会社に口の軽い上司や経理担当者であれば、従業員貸付制度を申請する前に銀行カードローンなどの利用を検討することをおすすめします。
即日借りられないデメリット
会社からお金を借りるには、社内審査を通すことになります。
社内審査はカードローンとは異なり審査に時間が掛かり、最短でも数日から1週間です。
先にも説明した通り、会社規模が大きくなるほど、決裁ルートが複雑になるため、融資実行までの期間は長くなってきます。
即日融資を希望するときは、消費者金融業者からのカードローンを検討しましょう。
信頼関係を損なうデメリット
会社からお金を借りられるということは、会社から信用されている証拠と言えるでしょう。
しかし、注意してもらいたのが返済遅れです
もしお金を返さないでいると、会社からの信用度が下がります。
今後の仕事にも影響するかもしれないので、きちんと返済できる金額を借りようにしましょう。
一括返済を求められるデメリット
お金を借りていても、会社を辞めることはできます。
しかし、会社からお金を借りている最中に退職をすることになったときは、基本的に一括請求されるのが一般的です。
残高が大きいと一括請求された場合、日常生活にも影響するリスクがあります。
退職金から引かれることもあり、退職金をあてにしていると、後で大変なことになるので注意してください。
会社でお金を貸すことは合法なの?
勤務している会社が銀行や消費者金融、クレジットカード会社などの金融機関ならいざ知らず、そもそもお金を貸すことを生業としていない会社が、無登録でお金を貸すことは合法なのでしょうか。
貸金業法では金銭の貸付、または金銭貸借の仲介を生業として行っている場合は、貸金業者と言います。
貸金業者は都道府県知事や、財務局長の許可を得なければなりません。
許可を得ることなく貸付業務を行ってしまうと、闇金と同じように無登録業者になってしまうのです。
しかし法律によって会社が従業員に対して、貸付するものは貸金業者には含まれません。
よって会社でお金を貸すこと自体は何ら問題がなく、闇金とみなされることはないのです。
給料の前払いという方法
ここまで会社からお金を借りることができる、従業員貸付制度について説明してきましたが、ここからは給与の前払いについて説明していくことにします。
給与の前払いとはその名の通り、給与支払い日より前倒しで、給与支払いを受ける方法です。
急な出費などの理由から、お金が至急必要になった時などに、重宝する資金調達手段と言えるでしょう。
業種や雇用形態によっては、週単位で給与の支給日を迎える、週払いに対応していますが、一般の会社では、このような給与日運用に対応しているところはなく、月に一度、1ヵ月単位で給与が支給されるのが普通です。
よって、この給与の前払いは、普通の会社に勤務する人にとって、メリットのあるサービスですが、会社にとっては業務負担を大きくするだけのサービスでしかありません。
しかし、近年は給与の前払いに対応している会社が増加しています。
その理由は、給与の前払いに対応することで、生み出されるメリットに、注目が集まっているからです。
それでは、この給与の前払いが、会社に対してどのようなメリットを生み出すのかを、詳しく説明していくことにしましょう。
前払いのシステムについて
今話した通り、近年、会社経営者から給料前払いが注目される背景には、雇用面で数多くのメリットが生み出される点が挙げられます。
このメリットを狙って、給与の前払いを検討する会社は多くなってきましたが、ここでネックとなるのが、先にも話した業務負担の増加です。
経理担当者が給与の前払いが申請されるたび、前払い可能な額を、1人1人のの勤怠状況から算出しなければなりません。
申請時点で前払いできる給与を計算することが、容易でないことは簡単に想像がつきますよね。
そこで給与の前払いを導入する際、会社が利用しているのが給与前払いサービスです。
その給与前払いサービスは、下記2つのタイプが挙げられます。
- システム提供型
- アウトソーシング型
もちろん、給与前払いサービスのシステム提供を受けるには、サービス料が発生しますが、業務担当者を増員するよりは、安価で済ますことが可能です。
これが給与前払いサービスの利用数が増加し続けている、一番の理由と言えるでしょう。
それでは、会社がこのサービス料を支払ってまで、得ようとしているメリットを挙げ、その内容を見ていくことにします。
求人応募者の増加
給与前払いサービスは、会社にとっては負担となるだけのサービスですが、従業員にとっては大変魅力的なものとなってきます。
よって、導入することで、会社の福利厚生サービスを充実することができ、求人応募者の数も増加する可能性が見込めるでしょう。
実際に給与の前払いは、下記の大手企業で導入されていることが公表されています。
- 日本マクドナルド株式会社
- 株式会社すかいらーく
- 株式会社モンテローザ
- 京王プラザホテル
- キリンシティ株式会社
- 株式会社コロワイド
- アリさんマークの引越社
応募者数が増加することで、優秀な人材を獲得できる機会がアップするという、メリットも期待できますよね。
求人情報に「給与前払いサービスあり」と記載すれば、ある会社とない会社とでは、応募者数に影響があることは間違いないでしょう。
離職率の低下
会社が抱える問題の1つに離職率の高さが挙げられます。
離職率が高ければベテランの割合が低くなり、労働者の質はいつまで経っても挙げることができません。
その離職率を下げるための方法として、近年注目されているのが、福利厚生サービスの整備です。
いかに充実した福利厚生サービスが整備されているかは、従業員の満足度に大きく影響してきます。
よって、給与前払いサービスの導入により、労働者の離職率引き下げに、効果が期待できるのは言うまでもありませんよね。
業務意識・効率の向上
質の高い労働者でも、何かしら悩み事を抱えながら生活しているものです。
その悩みで一番考えられるのが金銭トラブルですが、給料前払サービスが利用できれば、早急にトラブルを解決することもできます。
悩みを抱えたままでは、業務意識の下がり、自ずと業務効率は低下してしまうものです。
その悩みを早期解決することで、業務意識を上げ、業務効率をアップできるメリットは、会社にとって必要不可欠なものとなってくるでしょう。
採用事務コストの削減
以外に大きな出費となるのが採用事務コストです。
採用をかける際は、下記のように様々なコストが発生します。
- 求人サイトの掲載料
- その他媒体への広告費用
- 採用選考にかかわる人事担当者等の人件費
しかし、応募者数が増加し、離職率が低下すれば、十分な労働者数を確保することができ、自ずと採用頻度が少なくなってきます。
これによって人事への負担と、採用事務コストを削減することが可能です。
前払いと前借りの違い
おそらく「前払い」という言葉より、「前借り」という言葉の方が、しっくりくるという人は多いことでしょう。
しかし、この2つの言葉を使う際に、把握しておいてもらいたいのは、この2つの言葉は全く違う意味を持つという点です。
中には同じ言葉だと思っている人もいるでしょうが、これは大きな勘違いです。
前払いはすでに労働を行い、それに対する対価を、給料日前に支払ってもらうことを指します。
これに対して前借りは、これから行う労働に対して、その対価を事前に支払ってもらうことを指すのです。
この2つの言葉は似てはいますが、全く違う意味を持ちます。
勘違いのないように、よく覚えておきましょう。
給料の前払いをする義務はない
給料の前払いを導入している会社が増加していることは事実ですが、それでも未導入の割合の方がいまだに多いのが実情です。
そこで経営者として理解しておかなければならないのが、給料の前払いを求められた場合、それに応じる義務があるのかという点でしょう。
企業側としては賃金は、毎月決められた日に、給与支払いという形で支給するのが一般的です。
よって、このシステムを盾に取れば、イレギュラーな支払いには、対応する義務はないということになってきますよね。
賃金の支払い方法については、就業規則で規定されているので、そう考えるのは当然のことでしょう。
しかし、従業員の状況次第では、経営者は給料の前払いに、対応しなければならない場合があるのです。
その状況に該当する条件を理解しておかなければ、労働基準法に反することとなり、罰則の対象となってしまいます。
それでは、給料の前払いに対応する義務が生じるケースについて、説明しておくことにしましょう。
応じなければならない場合
労働基準法第25条には、下記のような非常時においては、給料日前であっても、給料を払うように定めています。
- 出産時
- 結婚時
- 病気療養時
- 災害等の被災時
つまり、従業員が非常時の場合に限って、給料の前払いに対応する義務が定められているというわけです。
給料の前払いに対応していない会社でも、対応しなければならないケースがあるということは、しっかりと把握しておくようにしてください。
申請方法と手順は?
給料の前払いを申請するにはどうすればいいのでしょうか。
申請方法や手続きは会社によって違ってきますが、まずは直属の上司に相談してみることをおすすめします。
直属の上司に認可する権限があるわけではありませんが、申請に必要な手順等をレクチャーしてもらうことが可能です。
その後は上司の指示に従って、手続きを進めていけばいいでしょう。
条件や注意点を会社と確認する
給与の前払いは金銭が絡むことになるので、下記のような支払条件を、しっかりと確認しておくことをおすすめします。
- いつからいつまでの日払い給与分が、前払いの対象となるのか
- 前払い後の今月、および来月の給料がいくらになるのか
- 手数料の有無
- 前払い給料の受取日はいつになるのか
また、給料の前払いを申請する際には、下記の点はよく理解しておく必要があります。
- 1月分の給与全額が受け取れるわけではない
- 申請後すぐに前払い分を受け取れるわけではない
- 非常時以外は前払いは認められない
- 前払い給料の受取日はいつになるのか
場合によっては、給料の前払いを受けても、問題解決できない場合もあるでしょう。
給料の前払いで支給される額は、既に労働が完了しているものの対価分です。
よって、申し込むタイミングによっては、些少の前借りしかできないケースも出てくるでしょう。
これは給料の前払いを利用する際に、一番重要なポイントとなってきます。
給料の前払いを申し込んだが、何の意味もなかったということにならないよう、十分注意するようにしてください。
入金までの日程
気になる入金までの日程ですが、給料の前払いが認められればすぐに処理され、銀行口座へ入金されます。
しかし、会社が給料前払いサービスを利用しているかどうかで、支払いまでの日程は大きく違ってきます。
会社が直接支払うケースでは、申請が認可されるまでに日数が必要になりますが、給料前払いサービス会社を利用していれば、そのサービス会社への申請となり、即日入金が可能です。
給料の前払いを導入している会社に勤務している人は、給料前払いサービス会社の利用の有無を確認しておくことをおすすめします。
給料前払いサービス提供会社
先にも話しましたが、給料の前払いを導入している会社では、業務負担の軽減のため、サービス提供会社のサービス導入を、実施しているところが増加しています。
独自の勤怠管理システムに、従業員の勤怠データをリンクして、即時に前払い処理が行われるため、即日入金も可能という処理スピードが速い点が大きな特徴です。
このシステム提供型サービスのシステム利用料は、サービス会社によって異なり、月額利用料を設定しているところもあれば、下記のように高額費用を必要とするところもあります。
- 初期費用:300万円(端末本体)
- 導入費用:5万円
- メンテナンス費用:10,000万円/月
また、申請時に従業員が利用料として、費用が発生するところも見られます。
以上のように、給料前払いサービス会社を利用する際は、サービス内容だけでなく、使用料や従業員の負担費用にも注意する必要があるでしょう。
自社で給料の前払いに対応する場合は、業務負担が増大するため、業務担当者の増員が必要になります。
その際の費用と比較して、サービス会社の選択をする必要もあるでしょう。
現在は実に多くの給料前払いサービス会社が登場しているので、必ず比較検討し、自分の会社にメリットの高いところを選ぶようにしてください。
給料前払いのメリット・デメリット
給料前払いは会社と従業員という立場によって、メリットとデメリットは違ってきます。
メリットについては、既にここまでの説明ですでに、理解してもらえたことでしょう。
そこで、ここではデメリットについて説明することにします。
まずは会社側のデメリットは何と言っても、給料前払いを導入することで、増える負担でしょう。
自社独自で行うにしても、業務負担が増えるため、担当事務員を雇う必要があります。
給料前払いサービス会社に依頼するにしても、その費用が発生しますし、丸投げできるわけではありませんから、管理面での業務負担は避けられません。
よって、給料の前払いに対応するためには、このデメリットを考慮した上で、導入メリットにメリットに経営者自身が魅力を認められるかが焦点となってくるでしょう。
また、従業員側のデメリットは、下記の2点です。
- 次回の給料が減る可能性がある
- 受け取る前払い給料が十分なものでない可能性がある
給料の前払いで一時しのぎができたとしても、本来の給料日に支給される額は、前払い分が差し引かれた額です。
その額で生活していくことが可能かどうかを、十分に検討する必要があります。
また申請時期によっては、受け取れる額が少額である可能性が考えられます。
完了した労働に対する対価分の支給となるので、給料の締め日から日数が立っていなければ、数万円しか受け取れなかったということもあるのです。
給料の前払いは、給料が満額支給されるではありません。
この点をよく理解して、給与計算をしてから、申し込む必要がありますね
会社からお金を借りられなかった人は?
会社に貸付金制度があっても勤続年数が短くて借りられなかった場合や、そもそも会社に貸付金制度がないといった場合には、どこからお金を借りればいいのでしょうか。
会社からお金を借りられなかった人は、利用する手段について紹介していきます。
親や身内から借りる
緊急事態に一番頼れるのは「親」や、「兄弟」などかも知れません。
親や兄弟であれば、金融機関のように返済が遅れても督促されることもなく、遅延損害金が発生することもありません。
また「返さなくてもいいよ」と言ってもらえるかも知れません。
頼れる親や兄弟がいる人は、金融機関よりも先に相談してみるといいかも知れません。
ただし、親といえどもお金を借りる場合には「きちんと返す」ことを約束して、できる限り返済するように心がけましょう。
カードローンで借りる
会社も親からも貸してもらえない場合は、金融機関に頼るしかありません。
金融機関から借りる場合には「銀行」か「消費者金融」か、また「カードローン」か「目的別ローン」など色々な方法があります。
銀行は低金利で貸してもらえて安心感がありますが、融資までに時間がかかります。
一方で消費者金融は基本的に「即日融資」してもらえるので、とにかく早く借りたい場合に巣おすすめです。
ただし、消費者金融は金利がかなり高いです。
銀行との金利を比較してみましょう。
金利 | |
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三菱UFJ銀行「バンクイック」 | 年1.8%~14.6% |
みずほ銀行カードローン | 年2.0%~14.0%※ |
プロミス | 年4.5%~17.8% |
アイフル | 年3.0%~18.0% |
※ みずほ銀行住宅ローンを利用すればみずほ銀行カードローンは金利が年0.5%引き下げられます。引き下げ適用後の金利は年1.5%~13.5%です。
少額融資の場合は上限金利が適用されるため、上限金利が18%前後の消費者金融と比較すると銀行カードローンは14%台が多いので、4%近く金利に差があります。
急ぎで必要でないならば、銀行カードローンで借りることをおすすめします。
また、ある程度目的が決まっていて、追加融資が必要でないならば銀行の「フリーローン」や「目的ローン」を利用するとさらに低金利で借りられます。
三井住友銀行のフリーローン(無担保型)は、年5.975%で借りることができます。
一度まとまった金額を借りるだけでいいという人、また急ぎではない場合は、カードローンよりもフリーローンや目的ローンなどを利用するようにしましょう。
まとめ
今回は会社からお金を借りる方法について説明してきました。
会社によって多少ルールは違いますが、金融機関から借入するよりは、好条件で借入できる点が一番の魅力です。
従業員貸付制度や給料の前払いは、会社の福利厚生サービスを充実させる上で、現在、注目を集めている制度ですから、今後は導入する会社の増加が期待できます。
まずは自分の会社が導入しているのかを確認し、いざという時には有効利用できるようにしておくことをおすすめします。
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