企業にとってバランスの良い借入~安全性を重視~

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決定

事業を行っている方にとって借入は非常に重要です。

たくさん借りられれば良いということではなく、それぞれの企業の状況に応じて「バランスの良い」借入を利用することが大切です。このバランスについてご説明いたしましょう。

執筆者の情報
名前: 芦田春馬(39歳)
職歴: 銀行と消費者金融,計15年勤務

過剰な借入はバランスが崩れる

借入の利用方法が悪いと会社の命取りになってしまう危険があります。

どうしても資金繰りに不安を感じる事業主の方は、資金調達の金額や上限額に意識が向いてしまい、どのように借りるのかということをあまり考えていなかったりします。

借入は多く借りることができればそれで良いというものではありません。

実際には、借りた後に、返済を行っていくことがもっと大切です。

借りた後に失敗しないためには、その企業にとって借りても問題ない金額の範囲内であったり、返済能力から考えて過剰とならない水準に抑える必要があります。

そうは言っても、どの程度が適正なのかは解りにくいですよね。

企業の状況に応じて、借りて良い適正金額や、借入の方法について検討するうえで、大切な判断基準についてご説明したいと思います。

売上高から判断する借入可能金額

企業にとってどの程度の借入を行って良いのかを、企業の規模感から考えてみましょう。

借入可能額を簡易的に判断する方法として、売上高から推測する方法があります。

その例として「借入月商比率」という指標をご説明いたします。

月商とは、1ヶ月あたりの売上高を指しており、年間売上高÷12ヶ月で計算します。

そして、借入月商比率は、現在の借入残高が月商に対して何倍あるかを算定するものとなります(具体的には、借入残高÷月商)。

業種や、資金使途にもよるのですが、この月商比は5ヶ月未満であることが望ましく、高くても8~9ヶ月程度である必要があります。

この水準を超えてしまうと、年間の収入(利益ではなく売上高)に対して、借入残高が多すぎると考えられます。

事業規模(売上高)に対して、過剰な借入は返済が困難となってしまう可能性があります。

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利益とバランスのとれた借入額

前述の借入月商比率とも近いですが、次に売上高ではなく、利益から適正水準を考えてみましょう。

売上高は事業規模を表していますが、利益は返済能力を表していると言えます。

つまり、実際に返済に充当できる金額から、どの程度借入できるのかを考えるものと言えます。

通常、借入金額の適正水準(上限)は、年間の返済能力の10倍以内であると言われています。

ここで言う返済能力には、「当期純利益(税金支払後に残る利益)+減価償却費(キャッシュアウトしない費用)」を使用します。

当期純利益が100、減価償却費が20の場合の返済能力は120(100+20)であり、適正水準(上限)の借入額は1,200(120×10)となります。

そして、この10倍以内というのは、あくまで上限であって、この範囲内で、低い方が企業としての安全性は高まることになります。

また、返済能力から判断する指標として、「債務償還年数」と呼ばれるものがあり、債務償還年数=借入残高÷(当期純利益+減価償却費)で計算することが出来ます。

借入残高がこの10倍を超えてしまうと、融資を行う銀行側でも、姿勢が厳しくなってしまうことがあります。

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短期借入金と長期借入金のバランス

次に、借入の短期・長期のバランスを検討したいと思います。

なお、短期とは通常1年以内の返済期間のものを指し、長期借入金とは、数年以上の返済期間となる借入を指します。

そのため、同じ借入残高であっても、短期借入であれば1年以内に全額を返済する必要があるため返済金額は、長期借入に比べて多くなります。

つまり、短期借入金の方が、企業の資金繰りにはマイナスの影響を与える可能性が高くなります。

そして、一般的には、短期借入金は返済までの期間が短くなる一方で、金利は低く、長期借入金は返済ペースが緩やかで資金繰りに余裕がある反面、短期借入金と比べて金利が高くなる傾向にあります。

短期借入と長期借入のバランスを考えるにあたっては、借入期間による特徴を把握しておく必要があります。

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短期借入は一時的な資金使途に適する

短期借入に適する資金使途としては、半期ごとの賞与支払や、納税資金、特定の売上を回収するまでのつなぎ資金としての借入といったものが考えられます。

こういった資金使途は、本来、短期的な事業活動のなかで生まれる収益・売上高を原資として、返済すべき借入となります。

例えば、賞与資金は、半期ごとに行われるものであり、その原資は6ヶ月間で蓄積するべきものと考えられます。

そうでなければ、次の賞与で、まだ返済が終わっておらず、さらに追加の借入を行うと、徐々に借入金残高が増えてしまうことになります。

数年で効果が出る投資には長期借入

逆に、設備投資(工場設備など)で、投資後の効果が数年に渡って現れるものであれば、長期資金での借入が適していると考えられます。

対象となる設備の効果として生まれる利益から、その効果が続く期間内で返済を行っていくことが望まれます。

こういった短期と、長期借入金の適正な使い分けが誤っている(バランスが崩れている)と、借入金額自体は過剰でなくても、資金繰りを悪化させてしまう可能性があります。

先ほどのような工場設備のような資金を、短期資金で調達してしまうと、設備の効果(利益)が生まれていないのに、返済を求められてしまい、返済原資に窮する可能性があります。

また、常時発生している運転資金(回収と支払いの期間的なギャップ)についても、利益が現預金として蓄積していけば徐々に借入への依存は減少していくかもしれませんが、極めて短期的な借入(手形貸付など)で、全てを賄ってしまうと、収益の蓄積が図れる前に、過大な返済が必要となってしまうことがあります。

通常、短期的な運転資金(手形貸付など)は、返済期限で、延長を繰り返して、実際には長期的に借入していることが多くなります。

しかし、借入の延長可否は銀行にも決定権があるため、急な方針変更で返済を求められるなど、企業としては不安定な状況に立たされる可能性があります。

現預金残高と借入金のバランス

現預金と借入金のバランスについて考えてみましょう。こちらでは、主に短期借入金の残高に応じた現預金を保有することを推奨するものとなります。

短期借入金とは、1年以内の返済期限で借入したものだけでなく、長期借入のうち、1年以内に返済が必要な部分も短期借入として勘案する必要があります。

企業の短期的な安全性を表す指標として、流動比率というものがあります。

流動比率=流動資産÷流動負債で計算することができ、この比率は200%以上となることが理想で、最低でも100%を切ってはいけません。

100%以内の場合、短期で支払う必要があるものを、短期的に現金化可能な資産で賄えないということになり、資金繰り上の安全性が劣ることになります。

企業としての資金繰り上の安全性を確保する観点から、流動比率が最低でも100%を切らないように、現預金残高を維持しておく必要があります。

なお、当然ながら、流動資産に含まれる売上債権や、棚卸資産のなかに、実際には回収見込みがない不良債権や、不良資産が含まれているなら、その部分は除いたうえで、流動比率を計算する必要があります。

安全性分析とは

安全性分析とは

安全性分析とは、貸借対照表上に記載されている数字を駆使して、企業の経営状態が安定しているかを判断する分析方法になります。

企業の資本と負債の関係性から安定した経営が行えているか、もしくは倒産の危機にひんしているかを判断します。

短期的な判断と長期的な判断

短期的な判断と長期的な判断

会社の資本や負債の中には、短期的に出入りする流動的なものや、長期的に保管するものに分けることができます。

この短期と長期の異なる性質の資本を区別して比較することで、短期的な判断と長期的な判断に分けることができます。

短期的に見て安全だと判断する指標

短期的な判断に使う勘定科目に、流動資産と流動負債があります。

流動資産は1年以内に現金化することができる資産を指し、流動負債は短期的に返済の可能な借入金のことを指します。

この流動資産と流動負債を使って、短期的な安全性分析の判断指標にします。

流動比率

安全性分析で最も多く使う指標が流動比率です。

流動比率は流動資産を流動負債で割ることで、流動資産の占める割合を求めます。

この割合が100を超えると、短期的に支払いがある負債をすべて返済できることになるため支払い能力がある証明になります。

一般的には、流動比率が150%以上あれば、ある程度安全な企業の証明となります。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

当座比率

流動資産の中には、倉庫の在庫の商品や備品などの換金性の低い資産も含まれます。

もしこのような換金性の低い資産が多く割合を占めている場合、流動比率の指標があてにならない可能性があります。

そこで流動資産の中から、換金性の低い資産を除いた「当座資産」を流動資産の代わりに利用することで、さらに正確な指標を出すことができます。

この指標を当座比率と言います。

当座比率=当座資産÷流動負債×100

長期的に見て安全だと判断する指標

流動資産とは逆に、土地や車両などの1年以上の長期で保有、又は使用する資産のことを固定資産と呼びます。

また1年以上先に返済が必要な借入金などの負債を固定負債と呼びます。

これらの固定の資本を利用して長期的な安全性を判断する指標に利用します。

固定比率

固定資産は、維持することで利益を回収することが難しいものが多いです。

そこで、できる限り負債を使わずに、企業の純資産(自己資本)で賄うことが理想とされています。

そこで、固定資産を自己資本で割ることで、どの程度自己資本で賄われているかを示すことができます。

これを固定比率と呼びます。

固定比率は100を下回ると自己資本で賄えているため、100を下回っているかがひとつの目安になります。

固定比率=固定資産÷自己資本×100

固定長期適合率

固定資産は高額なものが多く、銀行からの長期的な借入金(固定負債)の投資で賄われることが多いです。

そこで、固定負債を自己資本で固定資産を賄えているかを示す指標を、固定長期適合率と呼びます。

固定比率と同じく、100を下回るほど安全性が高い照明になります。

固定長期適合率=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100

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そのほかの安全性の指標

紹介した指標以外にも、幾つかの安全性の指標があります。

様々な角度の指標を出すことで、企業の経営を見つめることができるので是非おさえてみてください。

なお、これらの指標は1期だけを見ても企業の安全性が分かりませんので、最低でも3期分は把握しておきましょう。

金融機関はある程度の期間において、これらの数字に問題がないかを見た上で融資をしているのです。

経営安全率

経営安全率とは、売上げが何%下がることで企業の利益が赤字になるかを示す指標になります。

経営安全率が高ければ、売上げが多少落ちても経営が不安定になりにくいことを示します。

経常利益÷限界利益×100=経営安全率

借入金安全率

借入金安全比率は、自己資本の中で借入金がどの程度の割合を占めているかを示す指標になります。

この比率が低いほど借入金が少なく、安全性が高くなります。

借入金安全率=借入金÷自己資本×100

債務償還可能年数

債務償還可能年数は、銀行からの借入をするときに注意される指標になります。

企業の今の負債を売上げで返済するには何年かかるかを示すものになります。

(有利子負債残高-所要運転資金)÷キャッシュフロー=債務償還可能年数

自己資本比率

自己資本比率は金融機関などの借入のときに、特に重要視される指標になります。

資本を調達するとき、負債などの他社からの借入が多く占めると会社の経営が不安定と周りから思われてしまいます。

そこで自己資本と他社資本を比べて、自己資本の割合が多ければ、安定した企業と判断されます。

自己資本比率=自己資本÷(自己資本+他社資本)×100

借入金の返済余力を判断する

借入金の返済余力を判断する

金融機関から借入をするときに、注意されることが借入金の返済余力があるかどうかです。

銀行は決算書から指標を出して、返済余力をチェックします。

これから、決算書や貸借対照表から返済余力を導き出す指標を紹介します。

借入金月商倍率

借入金月商倍率は借入金が月間の売上げの何倍であるかを示す指標になります。

この数値が3倍以内に収まると、健全な会社運営とされています。

返済余力を判断する上で最も簡単な指標になります。

借入金月商倍率=借入金÷(売上高÷12)

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自己資本有利子負債比率

負債の中で利子がかかるものを有利子負債と呼びます。

銀行からの借入や社債などが有利子負債の代表的な例です。

自己資本有利子負債比率とは、有利子負債が自己資本で賄えているかを示す指標になります。

自己資本で有利子負債が賄えている場合は、100を下回るため100以下であれば健全な会社であると判断されます。

自己資本有利子負債比率=有利子負債÷自己資本×100

債務償還年数

債務償還年数は、有利子負債を税引き後利益と減価償却費を足した金額で返済に何年かかるかを示す指標になります。

債務償還年数が5年以内であれば返済能力が高いと判断されます。

債務償還年数=有利子負債÷(税引き後利益+減価償却費)

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まとめ

借入金は会社を成長させるきっかけにもなりますし、逆に資金繰りを悪化させ、企業を破綻させる原因にもなり得ます。

借入は、企業の状況(資金使途や、財務状況など)から勘案して、バランス良く利用することが大切です。

バランスを判断する方法を身に付けておきましょう。

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