銀行の借入金の返済期間は長いほうがよい?短いほうがよい?

銀行からお金を借りる際には、返済期間については任意で自分が好きな期間を設定することができます。

また、自社が借りる商品によっても返済期間は決められています。

借入金の返済期間はどのような基準で設定すべきでしょうか?

執筆者の情報
名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当

銀行借入の種類

銀行借入には大きくわけて以下の4つの種類があります。商品によって、設定できる返済期間が異なります。

手形貸付

手形貸付とは、基本的に借りたお金を期日に一括で返済する資金です。

返済期間が1年以下の場合に適用される融資で、ある一定期日に入金が確定しており、その期日までの資金を銀行に手当をしてほしいという場合に使用することが一般的です。

証書貸付

証書貸付とは、契約書に定められた期日までに完済できるように、毎月分割で返済を行っていく方法です。

個人の方が借りる住宅ローンや自動車ローンで使用される融資方法ですので、個人の人がローンを想像するときに最も連想するのが証書貸付ではないでしょうか?

証書貸付は返済期間が1年超の場合に使用されます。

返済期間の限度に決まりはありませんが、運転資金は5年~10年以内、設備資金は15年以内というように、商品ごとに返済期間の限度が決まっているのが一般的です。

手形割引

手形割引とは、会社が保有する期日前の受取手形を期日前に銀行に資金化してもらう融資です。

3か月先が手形期日であれば、3か月分の利息を支払い、3か月間だけ融資を受けるという借入方法で、手形の期日を超える期間の借入はできません。

手形自体、一般的に1年以内の期日を設定するものですので手形を担保とする手形割引も短期資金となります。

手形割引は手形期日=返済期間となりますので、借入金の中で唯一自社で返済期間を設定することができない融資であるといえます。

当座貸越

当座貸越とは、あらかじめ「いくらまで融資を受けることができる」という枠を作成し、その後はほぼ審査なしで枠の範囲内で自由にお金を借りることができるという借入です。

銀行の事業性融資は時間がかかり、申込から融資実行までは早くても1週間程度の時間が必要になります。

このため、あらかじめ当座貸越枠を作成しておくと、急に資金繰りが大変になっても、すぐにお金を借りることができ、安心です。

個人のカードローンを想像していただければわかりやすいかと思います。

当座貸越は、契約期限というものが決められており、1年ごとに更新する商品もあれば、3年ごとの更新という商品もあります。

決算内容に問題がなければ永久的に継続できるという点が特徴で、少し意味合いが異なりますが、当座貸越も長期資金であるといえるかも知れません。

当座貸越の毎月返済は利息の支払いのみというのが基本です。元金の返済は自社で自由に行いたいときに行うことができます。

返済に対する自由度が高いという点が当座貸越の特徴です。

設備資金は長く運転資金は短い

証書貸付は自動車や不動産や工場設備などを購入するための設備資金と、会社の運転のための資金である運転資金に分かれています。

設備資金は比較的長めの期間の借入を行うことができ、運転資金は比較的短めの期間の設定となっています。

設備資金は元金据置期間が使用できる

設備資金は、元金の返済を一定期間据え置く、据え置き期間というもの設定することができます。

例えば、工場設備を購入するための資金を借りたとしても、当該設備が購入後すぐに収益を上げるようになるわけではありません。

普通は、その設備の試運転期間や、従業員の研修期間を設けるものです。

設備資金は基本的にその設備から生み出す収益から返済していくものです。そのため、設備導入からその設備による収益が生み出されるまでの一定期間は元金の返済を据え置くことができます。

設備購入から1年後から収益が上がる見込みであれば1年間の元金返済据置期間を設定することが可能です。

しかし、あまりにも長い期間を据置くことはできません。

設備資金は当該資産の償却期間内

設備資金の返済期間として適用される基準は当該設備用年数以内です。

耐用年数15年の機械設備であれば15年以内までしか返済期間を設定することはできません。

先ほど述べたように、設備資金は当該設備が生み出す収益から返済を行っていくものであるため、設備の耐用年数が終了して、機械設備として使用できる年限以上の期間を返済期間とすることはできません。

とは言え、一般的にどのような設備も耐用年数以上に使用できるため、必ずしも耐用年数=機械設備の寿命というわけではありませんが、返済期間は耐用年数に合わせて設定することが一般的です。

信用保証協会では設備資金の返済期間は最長20年というように設定されていますし、地方自治体の制度資金も15年~20年を返済期間の限度として定めていることが一般的です。

プロパー融資の場合には銀行ごとの個別の判断になります。

運転資金は商品ごとに設定

運転資金は本来では長期資金で融資するものではありません。

仕入れが毎月100万円、経費が50万円の会社であれば会社を回していくために必要な運転資金は月間150万円ということになります。

売上の入金が2か月後であるならば、この会社の手元には300万円の資金があれば足りることになります。

そのため、売上金の入金があったら一括で返済を行い、足りない分だけまた短期で借入を行うというのが本来理想とされています。

しかし、現実は運転資金も長期で融資されてきます。

返済期間は5年以内というのが一般的ですが、東日本大震災の不景気から、最長10年までという商品も登場しています。

返済期間が長いほうが資金繰りは楽

設備資金は建前上は当該設備が生み出す収益から返済を行っていくという建前です。

設備導入前に十分な収益計画なくして設備導入を決める経営者はあまりいませんし、銀行も合理性のある収益計画なくして設備資金の融資には応じません。

例えば当該設備の導入によって、毎月30万円の収益増加を見込んでいるのであれば、返済金を30万円以下に抑えればよいだけですので、資金繰りはそれほど気にしなくてよいでしょう。

思ったよりも収益が上がらない場合は別ですが。

長期資金を借りるにあたって資金繰りを考えなければならないのは運転資金です。

上記の事例で、毎月必要な運転資金150万円×2か月分=300万円を銀行の融資によって借りた場合を考えてみましょう。

この場合、300万円が手元にある時には、資金繰りは苦労しなくて済みます。

しかし、借りたお金が手元になくなってしまった場合のこともしっかりと考えなければなります。

毎月の返済金が毎月の資金繰りにのしかかるためです。

返済期間を短くしようと2年で借りた場合の毎月返済額は125,000円です。

つまり、この会社は毎月の経常運転資金150万円に返済金の125,000円が乗ることになり、162.5万円の資金が毎月運転のために必要になってしまいます。

毎月の売上が162.5万円以上確保できれば利益は出せないまでも会社を回していくことはできます。

しかし、162.5万円未満の売上しかない場合には資金ショートしてしまいます。

毎月、必要な運転資金はいくらで、そこにいくらの返済まで耐えることができるのかを計算したうえで、返済期間を逆算することが重要です。

仮に、300万円を返済期間5年で借りた場合には毎月返済額は5万円となります。

当たり前ですが、借金は早く終わったほうがよいのですが、毎月の資金繰りと勘案して返済期間を設定するようにしましょう。

返済期間は当該商品に設定された最長融資期間の範囲内であれば自分で任意の期間を定めることができますので、期間の設定は資金繰り表を作成したうえで慎重に行いましょう。

返済期間が長いと利息負担が大きくなる

返済期間が長いと、毎月の返済額が少なくなり、資金繰りが楽になるというメリットがありますが、結果的に利息の負担額が大きくなるというデメリットも発生します。

借入金の返済のうち、元金の返済に充てる部分は負債の減少で費用ではありません。

しかし、発生する利息は営業外費用として経常利益を圧迫することになります。

300万円を金利2%で2年で借りた場合の利息負担額は合計で62,492円です。

一方、300万円を同金利で5年借りた場合の利息負担額は合計で152,480円にもなります。

合計2年間で約6万円経常利益を圧迫するのがよいのか、資金繰りを楽にしたうえで経常利益を圧迫するのがよいのか、やはり、自社の資金繰りを慎重に考えてから決定するようにしましょう。

短期資金は一括返済

短期資金は借りたお金を期日に一括返済する融資方法です。

先ほど、本来、短期資金こそ運転資金として利用すべきだという考えが理想であったと述べましたが、今は運転資金も長期化するトレンドとなっています。

短期資金を利用するケースとして、建設業の引当資金やつなぎ資金に利用されることが多くなっています。

建設業は工事完了後でないと、工事代金の全額が振り込まれません。そのため、工事中に発生する経費を借りて、工事代金入金予定日を返済期日として一括返済する方法が一般的です。

不動産開発業者も、土地の仕入れ代金を手形で借りて、売却予定日に手形を一括返済するというように使用されます。

つなぎ資金とは、短期間の資金繰りをまさに「つなぐ」ための資金です。

数週間後の取引先の入金までに運転資金がないような場合に、入金予定日を手形期日として融資を受ける場合に使用される方法です。

このように、今は手形貸付は工事代金や販売代金が入金となる期日までを借入期間として一括で返済する場合に使用される融資です。

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短コロとは?

昔は手形貸付を運転資金として融資を行う金融機関が多くありました。手形期日になると一括返済するのではなく、利息だけ払ってまた期間を延長するという融資です。

元金は減りませんが、毎月の返済が発生しないため、企業にとっては資本金のような意味合いを持ち、疑似資本ともよばれます。

短期間で手形をコロコロ転がすため。短コロとよばれます。

今はほとんど取り扱いがありませんが、金融庁の方針転換によって、今後は短コロも増えていく可能性があります。

まとめ

銀行の借入金の返済期間の設定はある程度、借りている側で任意の期間を設定することができます。

期間の設定は「早く借金を終わらせたい」とか「利息の負担を少なくしたい」という安易な考えではなく、自社の資金繰り表を作成し、いくらの返済であれば自社の資金繰りが安定的に回していけるようになるのかが重要です。

期間ありきで設定するのではなく、資金繰りに耐えうる返済額から期間を逆算する方法のほうがよいでしょう。

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