銀行借入に減価償却は影響するの?

銀行融資を申込む際に気になってくるのが決算内容。

できるならば審査印象が良い黒字決算で審査に申し込みたいものです。

大幅な黒字ならば何も問題はありませんが、「あとチョッとで黒字なのに」というギリギリの決算になることは少なくないでしょう。

そんな時に経営者がよくやるのが減価償却費の見送りです。

これは銀行融資に関係なく経営者がよくやる手で、減価償却費を計上すると赤字になるので黒字決算にするために見送ったという話は珍しいものではありません。

しかし、この減価償却費の見送りは、銀行借入の際には決して上手いやり方とは言えないのです。

今回はこの減価償却費が銀行借入に与える影響について詳しく説明していきましょう。

執筆者の情報
名前:馬井実
年齢:49歳
性別:男性
職歴:1992年~2008年まで地方銀行で貸付業務に従事

減価償却とは

減価償却とは

経営者の方ならば当然承知のことでしょうが、念の為にまずは減価償却について説明することにしましょう。

企業は経営を営んでいく上で必要な設備に対して投資を行います。

これを設備投資というのですが、その設備には安価なものから高額なものまで様々なものがあり、減価償却は主に高額な設備投資が対象になってきます。

必要な設備は業種や職種によって様々ですが、下記のような土地以外の有形設備がそれに当たります。

・建物
・機械
・車両

しかし、これらの購入には高額な費用がかかるため、会社の財務状況によって購入方法が下記のように変わってきます。

・リース
・購入

一番よく利用されるのがリース契約です。

リースの場合は購入ではなく、リース会社からの賃貸借という形になるので、毎月リース料を支払います。

このリース料は会計上で借入費として毎月経費として計上されます。

しかし、購入した場合は会社の固定資産となるため一旦資産として計上した上で、その金額を法律で決められた耐用年数に従って、定額法、もしくは定率法のどちらかで経費計上していくことになります。

・定額法 毎年同額を経費とする計上方法
・定率法 当初は経費計上額が大きく、次第とその額が少なくなっていく計上方法

耐用年数が5年ならば購入金額を分割して、毎期の経費として計上するのです。

これが減価償却です。

減価償却は決算計上しなければならないの?

減価償却は決算計上しなければならないの?

そこで問題となってくるのが減価償却の強制力の有無です。

冒頭でも申しましたが、決算書の数字操作のために減価償却費を計上しない経営者は珍しくありません。

となれば減価償却の計上には強制力はないのでしょうか?

結論から言えばYESです。

減価償却費は決算書に計上しなくても何の問題もありません。

本来ならば計上しなければならない経費を計上せずに、黒字決算とすれば普通に考えると粉飾決算をしたことになります。

しかし、何のおとがめもないのは、減価償却費を必ず計上しなければならないという法律が
ないからです。

企業会計原則として計上することが規定されているのですが、それを取り締まる規定や罰則はまったく制定されていません。

つまり減価償却費の見送りは倫理的には問題ありますが、法律上では何の問題もないのです。

よって、減価償却費の決算計上は経営者の判断に任されているのが現状となっています。

融資審査に減価償却費計上の有無は影響するの?

融資審査に減価償却費計上の有無は影響するの?

銀行融資で1番重要視されるのは決算書内容と言われています。

特に赤字決済が審査時に大きなマイナスとなってくることは経営者ならば周知のことです。

となれば経営者が審査を優位に進めるために減価償却費を計上せず、黒字の決算書を作成しようと考えるのもうなずける話です。

何といっても違法行為には当たらないため、経営者は何の後ろめたさも感じる必要がないので容易にやってのけるでしょう。

しかし、銀行は減価償却費の計上を見送った決算書をどう見ているのでしょうか?

せっかく粉飾決算まがいのことをしても、効果がないなら何の意味もありません。

そこでこの点について詳しく説明していきます。

銀行が見ているのは返済原資

まず理解しておいて欲しいのが、銀行が融資審査で重要視するのは返済能力の有無です。

その有無を判断するために重要視しているのが返済原資です。

返済原資とは税引き後当期利益に減価償却費を加算したもので、下記の算出にも用いられています。

・貸出限度額
・債務償還年数

貸出限度額

貸出限度額は銀行が企業に融資できる限度額を算出する際に用いられ、下記の計算式によって求められます。

(税引き後当期利益+減価償却費) × 10年

銀行が妥当だと考える融資の返済期間は10年とされています。

よって、これを超えるような希望融資額は過大融資と判断し、この貸出限度額を元に審査結果によって、融資額が決定されます。

債務償還年数

債務償還年数は現状の企業が上げている利益水準で、借入金をどれくらいの年数で完済できるかを算出したもので、下記の計算式によって求められます。

借入総額 ÷ (税引き後当期利益+減価償却費)

債務償還年数は貸出限度額とともに重要な審査ポイントとされており、企業体力とともに希望融資額の妥当性を判断します。

以上のように重要な審査ポイントとされている項目には、減価償却費が必ず関わっています。

しかも、決算時に減価償却費を計上して多少の赤字決算となっても、重要な審査ポイントとされる債務償還年数と貸出限度額の算出時にはプラスされるため、結果的には計上した方が審査を優位に進める可能性が高いのです。

となれば減価償却費の計上を見送った決算書は、銀行にとって企業実態の見えない意味のないものとしか言いようがありませんね。

減価償却計上するしない、どっちが得?

それでは減価償却費の決算計上が審査においていかに重要かを理解してもらったところで、減価償却費の見送り決算が融資を優位に進める材料となるのかどうかを説明しましょう。

これは結論から言うと、マイナスとしかなりません。

融資審査において黒字決算であることに越したことはないのですが、赤字決算だったからといって即、審査NGとなるわけではありません。

審査NGとなる確率が高いのは赤字決算が2期以上続いた場合です。

単期の赤字決済なら事業計画書等で黒字転換できることを証明すれば、審査通過となることが大半です。

多少の数字操作で黒字決算にしたとしても、融資には大した影響はありません。

それどころか減価償却費を見送った決算書であることがバレる方が審査には大きな影響を及ぼすことになります。

前にも申しましたが減価償却費を計上しない決算書は、罪には問われないものの粉飾決算であることに違いはありません。

よって銀行の経営者に対する信用度が下がるだけでなく、他にも何か誤魔化しているのではと疑われる理由を作ることにもなります。

となれば減価償却をするしないはどちらが得かは簡単に想像がつきますよね。

減価償却費の過小計上はすぐにバレる

先ほどの粉飾決算というのは少々オーバーなようにも思えますが、減価償却費の見送りや過小計上は決して銀行へいい印象を抱かせないことは事実です。

しかも、その決算操作は必ずと言っていいほどバレてしまいます。

減価償却費の過小計上は税務署に提出する申告書を見れば一発で分かってしまうのです。

税務申告書中の別表16には、この減価償却不足額がシッカリと記載されています。

金融機関に務める方ならばそんなことは先刻承知です。

ここを見れば過小計上の実態が確認できると知っているので、確認されれば一発でバレてしまいます。

この程度の粉飾は銀行も黙認しているという話も耳にします。

しかし、黙認されていたとしても経営状態が悪くなれば突然、それを理由に融資を断ってきたり、全額回収に踏み切る可能性も考えられるのです。

「以前は大丈夫だったのに!」といっても銀行には通用しません。

こういった危険性もあることを踏まえて、意味のない減価償却費の見送りや過小計上は控えることをおススメします。

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減価償却費は企業評価を上げるお得な科目

減価償却費は企業評価を上げるお得な科目

減価償却費の見送りや過小計上がいかに意味のないことかをお分かりいただいたところで、最後に耳よりな情報をお知らせしましょう。

実はこの減価償却費は会社評価を上げるのに役立つお得な科目なのです。

今回説明した貸出限度額と債務償還年数の結果は審査の時だけでなく、銀行が企業に行っている格付けでも大きな判断材料となってきます。

これらの数値を上げるには税引き後当期利益額を上げるか、減価償却費を上げるかのどちらかです。

当期利益額を上げるには多大な経営努力が必要になりますが、減価償却費を上げることはそれほど困難なことではありません。

ということは敢えて減価償却費を誤魔化すこと自体、企業評価を下げることにしかならないわけです。

事実、たった30万円ほどの少額固定資産を何の科目で経費計上するかによって返済原資額は変わってくるため、格付け評価の点数が大きく変わってくることもあります。

つまり、これら少額固定資産を減価償却費で計上すれば返済原資は上昇しますが、機材費や消耗品などほかの科目で計上してしまっては返済原資は変わらず、格付け評価には何の影響もありません。

そんな無益な会計処理をしないためにも、減価償却費は企業評価を上げるお得な会計科目であることをシッカリと理解しておきましょう。

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