失敗しない銀行融資のタイミング
銀行からお金を借りようと思ったときに誰しも必ずお金を借りることができるわけではありません。
銀行から融資を受けられるかどうかは申込を行うタイミングも非常に重要です。
銀行から融資を受けやすいタイミング、受けにくいタイミングはどのような時でしょうか?
銀行から事業資金融資を受ける際のタイミングについて解説します。
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
目次
銀行融資にはタイミングも重要
銀行から融資を受ける際には、タイミングによって、融資を受けることができるかどうか、いくら借りることができるのか、必要な書類は何かなどが大きく異なります。
事業者の業況は変化する
個人が銀行から融資を受ける場合には、勤務先が変わらない限りタイミングはそれほど重要ではありません。
給料はそれほど大きく短期間の間に変わりませんし、個人信用情報も短期間の間に良化することも悪化することもないからです。
しかし、会社経営は山あり谷ありで、去年は大きな利益を出した会社が1年後には大赤字に転落することなど日常茶飯事です。
刻一刻変化するのが経営環境ですので、融資にもタイミングが重要になってきます。
銀行融資の3つのタイミング
銀行融資を左右するタイミングとしては以下の3つのタイミングを上げることができます。
創業前と創業時
事業を始めようとする際にお金を借りる融資制度を創業資金といいます。
創業資金は創業前と創業後1年以内の間に借りることができる資金であることが一般的です。
創業前と創業後1年以内ではどちらのタイミングのほうが融資を受けやすいのでしょうか?
①創業前に審査材料となるのは、自身のビジネスモデルと、経営者としての将来性です。
過去の実績をもとに審査を行うわけではありません。
創業前にお金を借りようとする場合には、ビジネスモデルを具体化した創業計画書という書類の提出が必要になります。
創業計画書には以下の項目を記載します。
- 今後の売上と仕入れの見込みと利益の見込み
- 必要資金の明細
- 具体的な販売先と仕入れ先の見込み
これら3つのことをできる限り根拠づけして、記載できれば融資の可能性は非常に高くなります。
また、創業前にしていた仕事が創業と同業種であることが審査の際はかなりプラスになります。
このように、創業前には計画がしっかりとしていれば融資を受けやすくなります。
また、銀行にとっても融資先が減少していく中で、新たな融資先である創業資金は取り扱いたいという意図が強い融資です。このため、創業前の創業資金には銀行は積極的です。
②創業後
創業後1年以内は創業資金を借りることができますが、この際には創業してから申込を行う前数か月分の経営実績の提出が求められます。
試算表や確定申告書の提出が求められます。ここで、融資を行っても返済の見込みが立たないような、売上が全くない会社のような場合には融資を受けるのは難しくなってしまいます。
実績が良好であれば審査には問題ないですが、そもそも融資に申し込んでいる時点で資金に余裕がないことが想定されますので、経営状況は良好とはいえないのが創業後1年以内の融資です。
このため、創業後のほうが創業資金の借入は難しくなることが多いといえます。
そもそも実績という数字に対して審査が行わる創業後よりも計画に基づいて審査が行われる創業前のほうが、見込みで審査が行われるため審査にはプラス材料のほうが多いといえます。
悲観的な創業計画書を作成する人はいないためです。
創業資金を借りるのであれば創業前のタイミングのほうがよいでしょう。
決算直後と決算後数か月
審査の際には申込時に決算書を提出しなければなりません。
この際、直近の決算から半年以上経過したタイミングで融資に申し込むと、決算書翌月から直近月までの売上と仕入れの実績を記録した試算表の提出が求められます。
毎日会計ソフトに会社の収支を記録していたり、毎月会計士に収支を提出している事業者であれば提出は容易です。しかし、自分で確定申告を行っている人は試算表など作成していない人も少なくありません。
このような場合には、決算後半年以上経過しての融資の申込は試算表を作成してからの申込をなり、試算表作成の手続きが煩雑です。
融資の手間を節約するという意味では前回決算から半年以内のタイミングのほうがよいでしょう。
赤字と黒字
当然ですが、審査の際には事業の業況が非常に重要になります。
利益が出ている企業であれば返済にも懸念が少なくなりますので、審査にも通過しやすくなります。
逆に赤字であれば返済への懸念が多きくなるため審査には通過しにくくなります。
来月には黒字化できるとか、来期には黒字化するという見込みがある場合には、黒字に転じてから申込を行ったほうがよいことは間違いありません。
しかし、お金がないからこそお金を借りたいと考えるものです。赤字の際にはどのようなタイミングが重要になるのでしょうか?
赤字の際に融資を申し込むタイミングとしは以下の2点に注意が必要です。
①3期連続営業赤字になる前に融資に申し込む
②債務超過になる前に融資に申し込む
銀行融資の常識としては3期連続営業赤字の会社は再生の見込みがないと判断して融資を行いません。
また、債務超過の会社は倒産寸前とみなして融資を行いません。
①②どちらかであれば融資を受けることができる可能性はあります。
例えば債務超過であっても利益さえ出ていれば債務超過はやがて解消できますし、赤字であっても自己資本があれば自己資本の中から返済可能と判断できるためです。
しかし、①と②両方の会社は融資を受けることはとても困難です。
このため赤字が続いている場合には、3期連続赤字になる前に申し込むことと、繰越損失が決算書に記録されている会社は資本金がマイナスになる前に融資に申し込むことが重要になります。
借入の種類でタイミングは異なる
どのような資金を借りるかによっても、融資を受けることができるタイミングは異なります。
運転資金のタイミング
運転資金を借りるタイミングは審査通過次第です。
審査にかかる時間は1週間から3週間程度です。
銀行融資の審査にはそれなりに時間がかかりますので、資金が必要になる前に申込を行うことが重要です。
とくに、建設業が受注した工事の必要経費の融資を受ける工事引当融資では、工事開始前に融資を受ける必要があります。そうでなければ工事に必要な経費を払えないためです。
このような場合には、工事の受注が決まってから速やかに申込を行うようにしましょう。
また、仕事が増えたことによって経費がふえた場合には運転資金も増えてしまいます。このような資金を増加運転資金といいます。
増加運転資金を借りる場合にも、仕事を受注したら速やかに融資の申し込みを行ったほうがよいでしょう。
設備資金のタイミング
設備投資のお金を借りる場合には、当該設備を購入するタイミングに合わせて融資が行われることが一般的です。
不動産を購入するのであれば当該不動産の売買時です。
土地を買って、その上に建物を建てるのであれば、土地を買うタイミングで不動産会社へ資金を払い、建物の工事契約時に一部を払い、工事の進捗状況に合わせて残りの何割かを払い、工事完成後に残り全額を支払うのが一般的です。
通常は支払いの都度必要なお金だけを分けて融資が行われることが一般的です。
融資申込の注意点
融資にはタイミングが重要ですが、融資を申し込む際には以下の点に注意してください。
本当にお金がなくなる前に申込を
会社にお金が無くなって、明日支払わなければ会社が倒産してしまうというような段階になってもすぐには銀行はお金を貸してくれません。
必要になる1か月前には申込を行っておきましょう。そのため、今月ではなく、来月の資金繰りはどうなりそうかを予測したうえで融資を申し込むことが重要です。
3期連続赤字の場合には融資を受けることが難しくなるように、本当に会社が大変な状況になってからでは銀行は助けてくれません。
大変になる1歩か2歩手前で融資に申し込むということがタイミングとしては重要になります。
税金の滞納後は融資が難しくなる
会社が順調でない企業は税金を滞納しているケースが多いです。
しかし、こうなってしまうと融資を受けるのはかなり大変になってしまいます。一般的に事業資金の審査では、申込時に税金の納税証明書が必要になります。
当然ですが納税証明書は税金を納めていないと発行されません。納税証明書が発行できないと融資には応じてもらえない場合が大多数ですので、税金を滞納する前に融資に申し込むということが重要です。
銀行は、税金を支払うための融資には応じます。しかし、滞納した税金を支払うための融資には応じていません。
税金を払うのが無理そうだという見通しがあるのであれば、納税の期日よりも前に融資を受け、借りたお金から税金を支払うことが重要です。
同じく税金を支払うためにお金を借りるのだとしても、滞納前と滞納後では融資を受けることができるかどうかかなり大きく異なります。
まとめ
事業資金の融資を銀行から受ける際にはタイミングがかなり重要になります。
創業資金を借りたいのであれば、創業後に順調でない限りは創業前のほうが融資を受けやすくなります。
また、3期連続営業赤字は融資を受けるのはかなり難しくなるため、3期連続赤字に転落する前の状況で申込を行う必要があります。
銀行融資には時間がかかるため、すぐにお金が必要になってもなかなか融資を受けることはできません。
重要なのは、本当にお金がなくなる一歩前に融資の申し込みを行うということです。会社経営はいつも順調ではないということは銀行もわかっています。
このため、経営者として危機を見通し、来るべき危機に備えておくという視点こそが融資申込の際にはとても重要になります。
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