カードローンの利用は住宅ローン審査に影響する?借金と返済比率の関係
「カードローンを使っていると、住宅ローン審査に通らない?」こう感じる人も多いでしょう。
銀行員ライターであり、住宅ローン審査もしている私はこのように考えます。
「カードローン利用は住宅ローン審査のハードルになる可能性はあるけれど、ケースによっては審査にプラスされることもある」
「でも返済が遅れたり、返済比率がオーバーしたりすると審査落ちする可能性が高い」
この記事を読めば次にようなことが分かります。
- カードローンを利用していると住宅ローンの借り入れはできないのか?
- カードローン利用中でも住宅ローン審査に通る人の条件
カードローン利用中で、住宅ローンを検討している人などはぜひ参考にしてください。
カードローンの借入利用があると住宅ローンは組めないのか
カードローンの借入利用があると住宅ローン審査は厳しくなる、これは間違いなくそう言えます。利用残高があれば、住宅ローンを申し込んでいる場合には、銀行員から「何に使ったのか?」など聞かれることもあります。
これは、銀行員がカードローン利用を非難しているわけではなく、住宅ローン審査をなんとか通したいからで、審査でネガティブにとらわれないような理由を探っているのです。
つまり逆に言えば、住宅ローン申し込み中の人で、銀行員からカードローン利用について聞かれたなら、まだ審査に望みがあるとも考えられるのです。このように、カードローン利用があるというだけで、住宅ローンは絶対に組めないわけではなく、人によって結果は違うのです。
次項でこの点について、もう少し掘り下げて解説します。
借金があっても返済比率によっては問題なし
まず問題になるのが、カードローン利用残高があることで返済比率に影響するということですが、カードローンなどの借金があっても返済比率によっては問題なしというケースもあります。
以下、この点について銀行住宅ローンの審査で返済比率と審査通過の可能性を、分かりやすく天気予報をイメージしながら分類して説明します。
カードローンを含む全借入の年間返済額が年収に対しどのくらいの比率か?
20%以内なら「警報、注意報などの問題なし
安心していいレベル。
理想として住宅ローン審査で返済比率の心配は少ない。
30%台なら「注意報」
いろいろチェックが必要になる。
個人信用情報など、マイナス要素が足を引っ張ると審査落ちになるリスクを抱える。
40%を超えると「警戒警報」
審査のハードルは高くなる。
条件付き(保証人を加える、あるいは実家を担保に入れるなど)で審査が通ることはあるが、審査通過の可能性は低い。
カードローンの利用が原因で住宅ローンに落ちる人
いっぽうで、カードローンの利用が原因で住宅ローン審査に落ちる人もいるので、いくつかの例を紹介します。
約定返済の遅延・滞納がある
カードローンでは約定返済(やくじょうへんさい・毎月10日など決められた返済のこと)で、預金口座の残高不足などで返済ができなかった場合を「遅延・滞納(延滞とも)」と言います。
約定返済の遅延・滞納があると、借金の返済がキチンとできない人と判断され住宅ローンで審査落ちする大きな原因の1つになっています。
約定返済の遅延・滞納についても、住宅ローン審査では銀行員から理由を聞かれる場合があります。「返済日を勘違いして、次の日だと思っていた」などなら、これは「勘違い・失念」としてネガティブにはとらえられない場合はあります。
とはいえこのケースでも、返済日を忘れるような人には住宅ローンを融資できないと判断される可能性もあり、一概に大丈夫とは言えないのですが、約定返済の遅延・滞納でも1年間に一度だけなどの頻度なら問題とならないこともあります。
借り過ぎ(返済比率とは別の視点で)
借入金額より「どこから何のために借りたのか?」を見て、「借り過ぎ」と判断されると住宅ローン審査に落ちてしまうこともあります。
これは返済比率という数値とは違う視点で「借り過ぎ」と見られてしまうケースです。カードローンを含めていくら借りたか?よりも「どこから借りたか?」「どうして借りたのか?」を住宅ローン審査では重視するのです。
少し古い表現になりますが、銀行ではお金を借りている状態を、その原因・理由から呼び方で区別しています。
銀行が考える「お金を借りること」の区別
借入 (融資とも) | 住宅ローンやマイカーローンなど生活に必要で、それを手に入れるためにお金を借りるのはごく普通のことなので「借入」と呼ぶ |
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借財 (しゃくざい) | 飲食、遊興、ギャンブルなど自分の享楽を得るためにお金を借りること |
このように、お金を借りること自体は同じでも区別をしています。例えばマイカーローンなら車を手に入れること、そのためにローンを借りるのは誰でもごく普通にすることとして、借金とはみなされません。
したがってマイカーローンの利用残高があっても「借り過ぎ」とは見られません(返済比率では加算されます)。
いっぽうカードローンの利用残高があっても、生活費の補填などであれば問題はないのですが、ギャンブルのために使っているなどは借金として「借り過ぎ」であると判断され、住宅ローン審査で落ちてしまう可能性が高くなります。
クレジットカードのリボ払いは問題にはならない
同様にクレジットカードでもショッピングの一括払いやリボ払いはそれほど問題になりません(マイカーローン同様、必要なものを購入する費用として一時的に借りているだけだから)。
しかし、クレジットカードのキャッシングはカードローンと同じく、その使用目的が問題視されることもあります。
ちなみに住宅ローンでは、カードローンの利用やキャッシング残高などを住宅ローン申込書に記入(申込みフォームなら入力)する際に、「お借入状況」として自己申告するのが一般的です。
このとき、万が一審査落ちを恐れて住宅ローン申込書にカードローンやキャッシング利用を記入しなかったとしても、あとから審査でバレてしまう可能性が高いので、住宅ローン申し込みでは正直に借入状況は申告するようにしてください。(「審査でバレる」点については後半で詳細に説明)
返済比率は自分で計算できる
ここまで何度か返済比率について触れましたが、この返済比率は自分で計算して把握することができます。
銀行の住宅ローン審査などでは専用の審査システムソフトなどが精緻に計算してくれますが、私が銀行に入社した数十年前の頃は、銀行員が自分で電卓を使い計算していましたし、今もおおまかな返済比率を掴むため自分で計算することも多いので、ここでその計算式を紹介します。
銀行員が使っている、返済能力の計算方法
「借入返済額 (年間)」 | ・住宅ローン:借入中の人は返済明細などの年間返済額(毎月+ボーナス増額) ・これから借りる住宅ローンは年4%(注1)で試算する ・マイカーローンや教育ローンなど毎回返済があるローンも、返済明細で年間返済を計算する ・カードローンやキャッシングは、1年間に返済する金額を計算する |
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「年収」 | ・サラリーマン:源泉徴収票などの給与年収を分母にする 手取りではなく「支給額(税金や各種控除が惹かれる前の金額)」を年収とみなすのが一般的 ・個人事業主:「申告(納税)所得」の3年平均を年収(注2)とするのが一般的 ・会社経営者など:役員報酬の3年平均などを年収とみなす |
(注1)
住宅ローンは返済が何十年と長期であり将来的に金利がどうなるか予想できないので、金利を4%程度の高めに設定して試算するのが住宅ローン審査では一般的です。
このようにあえて高めの金利などで保守的に計算することを「金利でストレスをかける」などとも表現します。
なお4%以外に、設定される金利は銀行などにより異なり、またその数値は審査の内情を示すことになるため公表はされていません。
(注2)
個人事業主では売上や業況が一定ではないため、3年間の平均を数値にするのが基本です。これは住宅ローン審査に限らず、銀行の融資審査全般に共通する考え方です。そのため住宅ローンの申込書や、マイカーローン・カードローンの申込みフォームなどで個人事業主の人は3年分の所得金額(または3年間の平均額)を記入するような形式になっています。
また会社経営者の人も、年収が一定では無いとして3年平均で計算する場合が多いです。
各種申込みなどを自分で確認する場合、ネット経由では個人情報の入力などをしないと先に進まないフォームもあるので、取扱いには注意してください。
では、実際にモデルケースを使って計算してみましょう。
- 30代の男性サラリーマン
- 年収:400万円(源泉徴収の「支給額」)
- 借入:
①マイカーローン(年間返済12万円)
②カードローン(年間返済24万円)
③借入申込した住宅ローン・借入3千万円・35年返済・金利4%試算で(年間返済額約160万円・銀行HPシミュレーションで試算※)
⇒【借入返済額196万円】÷【年収400万円】×100=【返済比率49%】
このケースですと収入のおよそ半分が返済になってしまうので、住宅ローン審査に通るのは難しいでしょう。もちろん実際は個別の審査による判断で、一概にダメと断言はできません。また連帯債務などで借りる選択肢もあります。
借り入れしていなくても落ちるケースあり
勤務先に出入りする銀行で勧誘され、カードローンを作ったが利用していない場合などでも、返済比率に加算され、借り入れしていなくても住宅ローン審査に落ちてしまうケースもあるので注意が必要です。
これは私の勤務する銀行の例ですが「カードローンを持っているが現在使用していなくても、2年以上全く利用がなければ、限度額の1割を借入として加算する」という基準になっています。
(例:限度額50万円のカードローンは2年間全く利用しなくても限度の1割:5万円は返済比率にプラスされる)
なぜかというと、カードローンは使おうと思えばすぐに利用でき、現在利用残高がなくても当日限度いっぱいまで利用することも可能なので、返済比率で計算するという考えに基づくものです。
こうした計算の結果、返済比率の点から住宅ローンの審査に落ちてしまう可能性もあります。金融機関によって、考え方や計算方法などは異なりますが、使っていないカードローンには注意が必要だということは、ぜひ覚えておいてください。
住宅ローンを組んだ後にカードローンを利用した方が安心?
そこで住宅ローンを借りたあとなら、カードローンを利用しても安心といえますが、そこにも注意すべき点はいくつかあります。
注意点1.カードローン審査が通るか?分からない
まずカードローンを作りたくても、住宅ローンという大きな借り入れをした後なので、ここでも返済比率がネックになってしまい、今度はカードローンの審査に通るか分からないという点に注意が必要です。
とはいえ住宅ローンは「家を手に入れるために必要な借り入れなのでほかの借金と別格」として、返済比率で特別扱い(返済比率の計算から除外するなど)してくれる場合もあります。
私の勤務する銀行のカードローンも、返済比率で住宅ローンは柔軟に考えます(ただし数値をどう考えるか?等はお話できませんが)。
ここは金融機関や消費者金融の公式サイトで調べるか、直接聞いてみてもいいでしょう。
注意点2.他の銀行に申し込むと疑われる?
住宅ローンを利用している銀行以外の銀行に、カードローンを申し込むと疑われることもあります。意外なのですが、住宅ローンを利用している銀行にカードローンを申し込むと「あの人はお金に困っているのではないか?」と銀行に疑われて、住宅ローン取引に悪影響になるのでは?と心配する人が少なからずいます。
しかし、住宅ローン取引をしている人がカードローンを申し込んだだけで、即座に「金に困っているのか?」などと疑うようなことはまずありません。
それよりむしろ、他の銀行に申し込めばそちらの銀行では「住宅ローン取引がある銀行でカードローンを作れないからでは?」と、私なら逆に心配してしまいます。この点も注意してたほうが良いでしょう。
同じ銀行のカードローンと住宅ローンならどう影響する?
上記した点も含め、同じ銀行のカードローンならプラスに影響・あるいは影響なしで、いずれにしてもマイナスになることはありません。なぜかというと、住宅ローンを利用している銀行なら、カードローンの残高や利用履歴をいつでもチェックできるからです。
銀行自体も、カードローンは高金利で収益源となる商品であり推進したいので、銀行員の方から「住宅ローンとご一緒にカードローンもどうですか?」と、まるでファストフードの注文窓口のような勧誘をすることもよくあります。
「住宅ローン利用者専用カードローン」といった限定商品を取り扱っている銀行もあるくらいです。
参考元:
住宅ローン利用者専用カードローン | 借りる | JAバンク神奈川
とはいえカードローン返済が延滞すれば、マイナスにみられることはいうまでもありません。銀行員は「カードローンを勧誘しても延滞していいとは言わない」ので注意が必要です。
住宅ローンとカードローンの併用でも審査に通った事例
ここで銀行員としての私の経験の中から、住宅ローンとカードローンの併用でも審査に通った事例を紹介します。
- Aさん
- 男性
- 年収400万円のサラリーマン
- 35歳で結婚しているが子供なし
Aさんは独身時代から消費者金融のカードローンを利用していました。主な使い道は生活費の不足や買い物代金で、幸い返済が遅れたことはありませんでした。
このAさんが住宅ローンを申し込んだのですが、返済比率が高めになりこのカードローンがネックになり審査が難航しました。しかしAさんは自宅をぜひ手に入れたいと、なんとかならないかと相談を受けました。
最終的にこのカードローンを全額完済して、カードローンも解約することを条件に住宅ローン審査は通る見通しとなりました。
こういったケースでは「解約はあとでやっときますから」といったことでは済まされず、住宅ローンの融資が実行される前にカードローンを完済した計算書などのエビデンスと、解約したことの証明などを提出することで、住宅ローンを借りることができます。
そこでAさんは、奥さんの貯蓄も含め、これから自宅に色々お金が必要になる上にカードローン返済に当てるお金はなかったのですが、幸い奥さんの実家から援助を受けることができ、カードローンを完済して住宅ローンも借りることができたのです。
ちなみに、奥さんや奥さんの実家に対してAさんは頭が上がらなくなったのではないか?など心配にもなりましたが、そこはご夫婦の問題であり、ひとまずハッピーエンド?となったケースです。
カードローンと住宅ローンの併用に関するQ&A
ここからカードローンと住宅ローンの併用に関する疑問をQ&A形式で解説します。
カードローンの利用は住宅ローン審査時にバレます。嘘をついたり隠したりしてもバレるので、申し込みでは正直に申告することをおすすめします。
住宅ローンの審査では、個人信用情報をチェックしますが、この個人信用情報を見ればカードローンやその他のローン、借金などほとんど把握することができます。ちなみに個人信用情報は本人が申請すれば自分の情報を見ることができます。
銀行の住宅ローン審査では、申込時に本人の同意を得たうえで個人信用情報を調べますが、その内容は本人が申請して入手するものと同じです。
要はどのような情報がどこに記載されているか?情報の内容をどう読み解くか?の違いだけですが、私は銀行員なので個人信用情報を見ればカードローンを利用しているかどうか?すぐに分かります(どうやって見るか?は教えられませんのですみません)。
これは上述したとおりで、住宅ローンを組んでいてもカードローンは利用できます。
カードローン審査では、住宅ローンを利用している銀行であれば、それほどマイナスにならないことも説明したとおりです。
むしろ住宅ローンを借りることができる人とは、数千万円という借金を返せると、住宅ローンを融資した銀行が証明しているようなものとも言えるからです。
だめです。住宅ローンのオーバーローンでカードローンを完済しても大丈夫じゃありません。絶対にやってはいけません!
オーバーローンとは、住宅ローンを借りたがお金が余ってしまった(工事代金が想定より安く済んだ、あるいは予定した工事を取りやめたなど)状態のことです。意図せずオーバーローンになってしまっても、そのこと自体はそれほど問題にはなりません。ただ、そのことを隠して流用したことが分かると、ペナルティが大きくなります。
また同様に、最初から意図してオーバーローンになるように住宅ローンを借りて、そのお金でカードローンを返すようなことは絶対にいけません。これは結果的に余った場合も同じで、余ったお金でカードローンを完済しては絶対にダメです。
仮に、後になってその事実が判明したら、最悪の場合には「最初からオーバーローンにしてカードローンなど借金の『おまとめ』を狙っていた」とみなされて、住宅ローン全額返済を求められる可能性すらあります。
ちなみにごく一部の事業者ですが、このように「住宅ローンを使って借金をおまとめしましょう!」と提案している会社があると聞いたことがあります。しかしながら、言うまでもなくこれは住宅ローンの資金使途違反になるので、絶対にやってはいけないことです。
まとめ
カードローン利用と住宅ローン審査の関係について解説しました。カードローンは豊かな生活に役立てることもでき、決して悪いものではないと銀行員の私は考えています。
ただ、返済比率などの面で住宅ローン審査にマイナス影響してしまうこともあるなど、注意点も忘れずにいれば、豊かなマネーライフのサポートとなるでしょう。この記事が参考になれば幸いです。
- 【執筆者】加藤隆二
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勤続30年、現在も銀行員として金融機関に勤務中。住宅ローン、カードローン、事業融資など借入全般の業務に従事。深い知識を生かし多数メディアで情報を発信中。【保有資格】FP2級個人資産相談業務、証券外務員資格、生保・損保代理店資格、その他に銀行業務検定資格を複数保有
【メッセージ】現場一筋の銀行員で、お客様からの相談に乗り、一緒に悩み、考え、アドバイスをした経験では誰にも負けない自信があります。特に「お金を借りる」「お金を返す(返せない)」悩み事には真剣に話を聞き、真摯に答えてきました。今はライターとして、お金を借りる悩みに答え、参考になる情報を発信しています。
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