事業資金の借り換え、知っておかないと損をするポイント
企業や事業所は業績を成長維持するため、様々な事業展開を行います。
その際に必要となるのが事業資金です。
しかし、新規の融資が受けられるとしても、新規借り入れの返済額がプラスされると、返済額は大きくなってしまいます。
そこで検討してもらいたいのが事業資金の借り換えです。
- 執筆者の情報
- 名前:馬井実
年齢:49歳
性別:男性
職歴:1992年~2008年まで地方銀行で貸付業務に従事
目次
借り換えとは?
借り換えは簡単に言ってしまうと、現在の借り入れ残金を別の金融機関からの新規借り入れで一括返済することです。
主に、同じ金融機関の中でより金利の低い商品に変更する場合や、別金融機関から有利な条件を提示されて変更する場合があります。
借り換えを検討することをおすすめしたい人は下記のいずれかに該当する人です。
- 現在の返済残額をどうにか削減したい
- 既存の借り入れにプラスして新規借り入れが必要
- 現在の借入先よりも有利な条件の借入れがしたい
これらの条件に該当する人は、借り換えを検討してみることをおすすめします。
借り換え先にはどこがある?
借り換え先として考えられるのは下記のとおりです。
- 銀行
- 日本政策金融公庫
- 地方自治体(信用保証協会保証付き)
- カードローン
そこでこれら借り換え先にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、借り換えを行うときのポイントを見ていきましょう。
事業資金を確実に成功させるポイント
事業資金の借入を行う場合は、事業実績が重要であることは言うまでもありません。
しかし、業況をすぐに変えることはできませんから、融資を申し込むときに注意すべきポイントは別の部分になります。
金融機関にとって重要なことは、貸したお金がきちんと返ってくるかどうかです。
個人であれば主に給料で返済能力を把握することができますが、事業資金となるとそうはいきません。
どのような目的で資金が必要であり、目的を達成することでどれくらいの利益を得ることができるかを明確に伝えられることが重要です。
資金不足で困っているからという理由だけでは融資を受けることはできません。
新しい設備を導入することで売り上げが好転することなどを、融資担当者が納得できるように説明できるようにしましょう。
返済総額が減額できるメリット
借り換えのメリットのひとつは、かつて高金利の時に借り入れを行ったものを、低金利の借り入れにできる点です。
600万円を10%の金利、5年60回返済で借り入れしており、返済回(月)数が残り30回残っていたとしましょう。(*今回は計算がしやすいように元利均等返済とします)
このときの返済残高は金利を含め、下記のようになります。
600万円 ÷ 60回 × 30回 × 110% = 330万円
つまり、残り元金300万円に30万円の利息がついてくるわけです。
借り換え後のシュミレーション
そこで元金の300万円を6%の金利、5年60回返済で借り換えしたとすると、返済総額は下記のようになります。
300万円 × 106% = 318万円
以前よりも低金利で借り換えすることで利息は大幅に下がり、12万円の利息削減が可能となります。
しかも、返済回数が30回から60回と倍になるので、下記のように毎月の返済額も削減できるのです。
- 既存の月額返済額 11万円
- 借り換えの月額返済額 5.3万円
新規借り入れをしても毎月の返済額が上がらない
また、借り換えのメリットは低金利への乗り換えだけではありません。
既存の借り入れとは別に、新規借り入れが必要となった際にもそのメリットを発揮します。
600万円を5年60回返済で借り入れしており、返済残が30回、毎月10万円の返済をしているとしましょう。(*今回は計算がしやすいように利息は考慮していません)
そこに新たに300万円の借り入れを5年60回返済で行った場合、毎月の返済額は下記のようになります。
300万円 ÷ 60回 = 5万円
となると、既存の返済が終わるまでは、毎月下記2つの返済を行うことになってしまうのです。
既存の月額返済額 10万円
新規の月額返済額 5万円
毎月の返済額合計 15万円
これでは借り入れできたはいいが、毎月の返済額が上がったことで、この先の経営を圧迫する原因にもなりかねません。
もしも新規借り入れが必要だとしても、既存の返済が残っていると安易に借り入れをすることなんてできないでしょう。
借り換え後のシュミレーション
しかし、借り換えならば600万円借り入れして、既存の借入残金300万円の一括返済ができます。
よって、返済は借り換え分の600万円だけにまとめることができ、毎月の返済額は下記のようになるので、返済月額を上げることなく新規借り入れができます。
600万円 ÷ 60回 =10万円
これならば現状維持で新規借り入れができることになるので、将来の経営圧迫を心配する必要もありません。
以上のように新規借り入れが必要であろうがなかろうが、借り換えは毎月の返済負担という面で大きなメリットがある借入方法と言えるでしょう。
事業資金の借り換えは総量規制の対象外
個人向けローンでは、総量規制と呼ばれる法律が関係してくるため、自分の年収に対して3分の1以上の借入はできません。
この総量規制は事業性資金の借入や借り換えにも、適用されるのか気になるという質問も多くあります。
結論から先に言うと、総量規制は借り換えや事業性資金の借入には適用されません。
総量規制は貸金業法という法律に含まれる規則ですが、同じ貸金業法内に総量規制の対象外となる条件も明記されています。
この総量規制の対象外となる条件に、「事業性の借入」と「借入者が一方的に有利になるローン(借り換え)」と書かれているのです。
したがって、会社や事業の年商や利益に関係なく、借り換えを目的にしたローンは利用可能となります。
おまとめローンと比べてどちらがお得?
個人向けローンには、借り換えなどに活用できるローンとしておまとめローンが販売されています。
しかし、個人事業主がおまとめローンを利用する場合には、借り換えとおまとめローンどちらを利用すれば良いか悩みどころです。
基本的には事業用資金で借り換えを希望している人は、おまとめローンではなく借り換えを行った方が良いでしょう。
おまとめローンは個人向けローンであるため、適用される金利が法定金利ギリギリであることが多く、一般的に事業性資金として借入れする金利よりも高くなります。
また、おまとめローンの借入限度額は500~1000万円と少額で、事業資金の借り換えとしては金額が足りず利用できない可能性もあります。
お得に借り換えを行いたい場合には、おまとめローンではなく金利の低い借り換え先を探すことがおすすめです。
借り換えで重要なのは金利!
借り換えがもたらすメリットは理解できたと思いますが、このメリットを生み出すのが金利です。
借り換えた後のの金利が借り換え前の金利と比べていくら低くなるのか、それによってどれくらい返済額を削減できるのかが借り換え時の重要なポイントとなります。
既存の借り入れよりもどれだけ低金利で借り入れできるのかで、受けられるメリットの大きさも変わってくるというわけです。
様々な金融機関の金利を比較して、少しでも金利の低い借り換え先を見つけるようにしましょう。
返済期間にも注意
返済期間は短いほど金利は低く、長ければ高くなる性質があります。
これも実際に例を挙げて比較してみましょう。
- 600万円 金利5% 5年60回 返済総額630万円 返済額/月10.5万円
- 600万円 金利9% 10年120回 返済総額654万円 返済額/月5.45万円
単に毎月の返済額を減らすことが第一の目的なら話は別ですが、返済の総額を減らしたいと考えるなら、金利がいくらかに注目しましょう。
こういった数字のマジックに引っかからないためにも、借り換えによる返済のシュミレーションを入念にしておきましょう。
借り換えができるかの判断基準
借り換えの審査時に一番重要視されるのは、「確実に借り入れた額を返済できるかどうか?」という点です。
しかも、新規借り入れを含む借り換えとなれば、借入総額は決して小さな金額ではありません。
よって、借り換えのときの審査は特に慎重に行われます。そこでまず重要になってくるのが財務内容です。
財務内容を示す損益計算書と貸借対照表から見て、財務内容に問題があるようなら商談はその時点でアウトとなり、借り換えは失敗に終わります。
また、この財務内容がOKとなっても、交渉時には事業計画書がとても重要で、事業計画書の内容によっては借り換えできない可能性もあります。
事業計画書は借り入れ後の事業の展望を計算して記し事業プランです。
借り換えの審査基準については借り換え先によって違ってきますが、新規借り入れを含む借り入れを行う場合、どのようなところを見ているのか銀行を例に挙げてみていきましょう。
銀行によって審査基準は違ってきますが、借り換え先を銀行に絞った場合に一般的には下記ポイントが重要視されます。
- 財務内容が健全か、健全でなくても好転する材料はあるか?
- 借入希望額が使用用途に見合ったものかどうか、その借入希望額が財務内容および、事業内容など現状に妥当な金額か?
- 返済見通しに問題はないか?
- 担保、保証人は用意されているか?
この事業計画書がシッカリしており、融資を申し込んだ銀行からの信用を勝ち取ることができれば、審査で大きく有利になります。
書類の審査以外に面談による審査も行われるため、信用の置ける企業や事業主であることが伝わるように準備してください。
借り換えを円滑に進めるためのポイント
借り換えを円滑に進めるためには、借り換え先の金利や借り入れ条件などを事前に把握しておく必要があります。
そもそも、金融機関によっては借り換え目的での融資を認めていない場合や、借り換えとしての利用を快く思っていない場合があるのです。
また、事業資金の借り換えをしたとしても、借り換え後の方が金利や借入限度額の条件が悪く、借り換えを行ったせいで返済状況がさらに悪くなる危険性まであるため、借り換え前に条件の確認を行ってください。
借り換え時には諸費用が発生
借り換え時には借り換え後の返済額や金利ばかりに目が行きますが、忘れてはならないのが借入時に発生する諸費用です。
借り換え時に発生する諸費用の内訳は下記のとおりです。
- 印紙代
- 保証料
- 事務手数料
- 繰り上げ返済手数料
- 登記費用
これらの諸経費は合計すれば数十万円となる場合もあるので、決して無視することのできない金額と言えるでしょう。
それぞれの諸費用の金額目安やどのような費用であるか解説します。
1.印紙代
借り換えの手続きをする場合には様々な書類を締結しなければなりませんが、金銭が絡む契約書類には必ず印紙代が必要です。
借り換え時に必要になるのが金銭消費貸借契約書で、俗にいう借入契約書に当たります。
金銭貸借契約書にかかる印紙代は、下記のように契約書に記入している借入額によって違うので注意してください。
- 500万円超えから1,000万円以下→1万円
- 1,000万円超えから5,000万円以下→2万円
- 5,000万円超えから1億円以下→6万円
多くの場合では、借り換え時に必要になってくる印紙代は1~2万円となるでしょう。
2.保証料
銀行から融資を受ける場合、返済できなくなった場合に代理弁済してくれる保証付きの借り入れを行うのが一般的で、借り手はこの保証料を自分で支払うことになります。
よって、借り換え時にもこの保証料が新たに発生するのです。
保証料の支払い方法には下記の2つがあり、一般的には外枠方式になります。
- 内枠方式:保証料を返済額に含めて支払う
- 外枠方式:融資を受ける際に一括で支払う
この保証料は借入額によって違ってきますが、1,000万円の借り入れで返済期間が5年の場合で4~5万円くらいです。
ただし、保証料は一括返済などで返済期間が短縮された場合には、一括返済した日から当初予定していた借入期限日までの未経過分が返還されるため、一度ローンの契約書を確認してください。
3.事務手数料
事務手数料は借入をするときに必要な手数料で、当然、借り換え時にも発生します。
事務手数料の支払い方法は下記のとおりです。
- 定率法:融資額に対して一定の割合で算出
- 定額法:一律で算出
定率法の場合は借入額の1~2%、定額法の場合は3万円から、多くて30万円程度と借入金額に応じて様々です。
4.繰り上げ返済手数料
既存の借り入れがある借り換えの場合、その返済残金を一括返済することになりますが、このときには手数料が発生します。
この手数料を繰り上げ返済手数料と言い、銀行の場合で3~4万円程度の実費が必要です。
ただし、銀行によって「残高」や「借入時からの経過期間」によっても手数料の金額が違いますので、一括返済する際は一度銀行に確認しましょう。
5.登記費用
借入時に土地等を担保にして抵当権を付けている場合、登記費用が必要です。
抵当権には下記の2つがあり、担保としての捉え方が違っています。
- 抵当権:特定の債権で返済が済めば解除される
- 根抵当権:特定の債権でなく極限額と期間が定められている
抵当権だと借り入れの度に、新たに抵当権を結び直す必要があります。
しかし根抵当権を定めて極限枠と期間の条件内であれば、抵当権を解除することなく何度も利用できるので登記費用が節約できるというメリットがあります。
よって、事業資金としての借り入れを幾度となく行う場合は、根抵当権を利用した方がメリットは高いため、根抵当権を利用している事業者も少なくありません。
しかし、抵当権を利用している場合の借り換えでは一度抵当権を外して、新たに抵当権を設定する必要が出てくるため、その都度、費用が発生するというデメリットもあるので注意してください。
その際にかかる費用内訳は下記のとおりです。
- 司法書士に対する報酬
- 登録免許税
■司法書士に対する報酬
抵当権設定は司法書士に依頼することになり、抵当権抹消に1~2万円、抵当権設定に3~4万円、占めて4~6万円の費用が必要です。
そして、手続きにかかる交通費等の諸費用数千円程度も併せて請求されることになります。
■登録免許税
抵当権設定時には登録免許税が発生し、借り換えする事業主が支払わなければなりません。
抵当権抹消は1筆[土地]または1棟[建物]の不動産に対して1,000円、抵当権設定に新たに融資される額に1000分の4をかけた額が必要になります。
以上のように借り換え時には、条件にもよりますが実に多くの諸費用が必要です。
よって、借り換え時には「借り換えで発生する返済総額+諸費用」で実際にメリットを生むのかどうかも確認してください。
借り換えは実質的なリスケジュール
リスケジュールはリスケと呼ばれ、既存の返済額の減額、もしくは返済期間を延長してもらうことを指します。
金利を引き下げ、もしくは返済期間を延ばしてもらい、毎月の返済額の減額を行う方法です。
返済額の減額をするという点では借り換えと変わりませんが、金融機関の捉え方はまったく違ってきます。
リスケのデメリット
借り換えと違って、リスケジュールは返済中に基本的な条件変更を行ったとして信用格付けが低下するのです。
当初決めていた条件で返済が不可能となった際の対応措置ですから、これは仕方のないことと言えるでしょう。
個人向けローンで考えると、「今月ピンチだから借りたお金の返済を先延ばしにして」と言っているようなものであるため、お金を貸した人から信用が下がっても仕方ありません。
ここで問題となってくるのが増額融資を必要としない借り換えです。
金利8%、5年60回返済で600万円の借り入れをしており、その返済残が2年24回だったとしましょう。
この場合の返済残額は240万円となります。
そしてこの240万円を、金利6%、5年60回返済で借り換えしたとすれば、金利が減ったことで返済総額の減額と、返済期間が延びたことで毎月の返済額の減額を手に入れることができます。
これは何ら問題のない、単なる借り換えですが、これがリスケジュールと判断されることも少なからずあるのです。
そうならないためにも、増額融資を伴わない借り換えをするときは、担当者と意見の食い違いのないよう、くれぐれも気を付けましょう。
カードローンで借り換え
カードローンと聞くと個人向けローンをイメージしてしまいますが、法人向けのカードローン商品も存在します。
このような法人向けのカードローンは別名ビジネスローンと呼ばれ、消費者金融や信販会社などが多く扱っている金融商品の1つです。
ビジネスローンのメリットは何と言っても、審査基準が銀行よりも甘めであることでしょう。
銀行とビジネスローンの審査基準には雲泥の差がある場合も少なくありません。
しかし、今回紹介した借り換え先と比べれば、下記のようなデメリットが多いのも事実です。
- 金利が高い
- 返済総額が多くなることも少なくない
- 多重債務に陥る危険性が高い
- 借入限度額の設定が低い
よって、借り換え本来が生むメリットを考えれば、ビジネスローンが適しているとは言えないため、借り換えの候補先として妥当なのは、下記の3つとなります。
- 銀行
- 日本政策金融公庫
- 地方自治体(信用保証協会保証付き)
そこで次の章では、この3つで借り換えを行うときの注意点について詳しく説明します。
地方自治体(信用保証協会保証付き)で借り換え
これは別名、制度融資と呼ばれており、信用保証協会の保証受けて銀行が融資を実行する制度です(各地方自治体が銀行に預けた預託金をもととなっている)。
金利は各自治体で差はありますが、2%以内のものが多いので事業主には大きなメリットと言えるでしょう。
逆に制度融資のデメリットですが、審査が厳しく、申し込みから融資までの期間が長いという点が挙げられます。
特に制度融資の場合、面談先が自治体、信用保証協会、銀行と3つになるので、後述する日本政策金融公庫よりもさらに手間がかかることも問題点と言えるでしょう。
地方自治体(信用保証協会保証付き)で借り換えを検討するケース
- 銀行からプロパー融資を受けている
- 信用保証協会保証付き借り入れがあるが、追加融資が必要になった
しかし、信用保証協会保証付き借り入れで、既存の銀行融資を返済することは基本的に「旧債振替」によって禁止されています。
しかも、既存の銀行融資には、プロパー融資だけでなく、信用保証協会保証付き融資も含まれているので、信用保証協会保証付き融資を利用した借り換えはできないのが実情です。
ですが、信用保証協会保証付き借り入れでの借り換えが絶対にできないというわけではありません。
その理由は旧債振替には、救済処置があるからです。
それでは旧債振替とは一体どのようなものなのかを説明しましょう。
旧債振替とは?
信用保証協会は、事業主の資金調達を円滑に進めることを目的に信用保証を行っています。
よって、既存の債権回収を目的に借り入れをすることを禁止しており、それに違反した場合には、保証している債務に対して履行責任を負わないとしています。
これが旧債振替です。
つまり、信用保証協会保証付き融資を既存の借り入れ返済に使用することはできないので、借り換えはできないというわけです。
しかし、信用保証協会保証付き融資で借り換えを行うことによって、事業の経営にプラスが生じるという理由で事業主が申請し、認められれば借り換えは可能です。
ですがこれは既存の借り入れが信用保証協会保証付き融資であることが前提とされます。
既存の借り入れがプロパー融資である場合、新規融資で返済を行うことは、信用保証協会法1条に記載された「中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的として設立されたものである」に抵触することになるからです。
しかし、どういった解釈なのかはよく理解できませんが、これは同一銀行に限った話で、他行のプロパー融資の返済はできます。
よって、既存のプロパー融資を受けているところ以外の銀行なら、信用保証協会保証付き融資で借り換えはできるのです。
ということで、信用保証協会保証付き融資を利用しての借り換えは、信用保証協会の認可がある場合に限って、下記のケースで利用できます。
- 銀行からプロパー融資を受けているが、借り換え先は他行を利用
- 信用保証協会保証付き借り入れがある
信用保証協会保証付き融資での借り換え例
現在は信用保証協会保証付き借り入れを一本化することで、月々の返済額の軽減を図り、資金繰りの円滑化を目的として信用保証協会では借り換え保証制度が準備されています。
それが円滑化借換保証制度です。
信用保証協会保証付き融資の残金がある事業主が対象となります。
よって、現在は基本的に借り換えには利用できない信用保証協会保証付き融資も、簡単に借り換え利用できる制度が用意されているのです。
そこで、どのような借り換え制度が用意されているのかを、今回は埼玉県信用保証協会が行っている借り換え保証を例に挙げて見ていきましょう。
資金使途 | 運転資金・設備資金に使用でき、新規運用だけでなく既往借入金の返済にも利用可能 |
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保証限度額 | 2億8,000万円(中小企業組合は4憶8,000円) |
貸付利率 | 金融機関の諸低利率 |
返済方法 | 原則、元金均等月賦返済 |
担保 | 必要に応じる |
保証人 | 原則、代表者のみで連帯保証も同じ |
信用保証料率 | 年0.45~1.90%以内 |
中小企業金融安定化特別保証付借入金の融資を受けている事業主は制度上、利用することはできません。
しかし、円滑化借換保証制度を利用すれば面倒な手続きも必要なく、信用保証協会保証付き融資を利用して借り換えができるというわけです。
銀行で借り換え
個人でなく事業者が融資を受ける場合、一番、短期間、かつ好条件で借り入れできる金融機関が銀行です。
しかし、いくら銀行の金利が低いと言っても、低金利を誇る公的融資の金利と比べれば高金利となる可能性があります。
よって、銀行で借り換えを検討するのは、既存の借り入れ先が銀行である事業者に限られます。
銀行から借り入れする方法は下記の2つになりますが、特にプロパー融資は条件が厳しいことで有名です。
- プロパー融資(銀行から直接借りること)
- 信用保証協会保証付き融資
信用保証協会保証付き融資に関しては上述しましたので、ここではプロパー融資に限っての借り換えについて言及します。
プロパー融資は銀行が100%自己判断、および自己責任によって資金を貸し出すことになるので、審査は厳しいものとなるでしょう。
また、銀行が融資できる額には限界があります。
事業が好調な企業ほど新たな運転資金の融資を受けられなければ資金繰りができなくなります。
しかし、運転資金の融資を全て同じ銀行に頼ってしまうと、貸倒れになったときに銀行が受けるダメージは計り知れないものになるでしょう。
それもあって、事業主が複数の融資を受けるには、融資先を分散するのが一般的な手段とされています。
経営状態が良ければ銀行側から追加融資等の提案があり、借り換えできるケースもあるでしょうが、これはほんのひと握りの事業所だけです。
よって、基本的に同一銀行でのプロパー融資の借り換えは難しいと考えておいた方が良いでしょう。
借り換えなら他行への乗り換えが可能性大
実は、プロパー融資の借り換えで一番可能性が高いのが他行への乗り換えです。
民間機関である銀行は利益追従が目的のため、常に新規の顧客開拓を行っています。
付き合いのない銀行から、メインバンクを変えてくれとか、融資や借り換えの提案がされる話は珍しいものではありません。
したがって、どうしても銀行で借り換えをしたいのならば、他行への乗り換えが最善の策と言えるでしょう。
他行での借り換えの注意点
低金利の他行で借り換えることは基本的に何の問題もありません。
他行への借り換えを検討するときには、返済総額の軽減だけでなく、返済残高が少なくなってから借り入れを特定銀行に一本化して、銀行取引の集約を狙う方も少なくありません。
よって、他行から良い条件で借り換え提案があった際は、大きなチャンスと言えるでしょう。
しかし、考慮しなければならないのは、取引先銀行の減少です。
先ほども申しましたが、一行で借り入れできる金額には上限があるので、将来を考えれば融資が受けられる銀行は多数持っておくべきなのです。
となれば借り入れ先の一行集約は、管理がしやすく合理的な策と考えがちですが、自ら取引先銀行を減らしてしまうことは、将来的にデメリットを生ずることにもつながる恐れがあります。
しかも、いくら良い条件で借り換えを提案してきても、それはあくまで新規取引を狙った破格なものですから、今後も同条件で融資が受けられるとは限りません。
それに今後、新たな融資を受けてくれるかどうかも分からないのです。
融資を受けてくれるかどうかは、銀行がどれだけその事業所の財務内容を把握しているかが大きなポイントとなってきます。
したがって、それを把握している取引銀行を減らすのは幾何のメリットがあったとしても、最終的には大きなデメリットとなってくる可能性が大きいのが実情です。
取引先銀行によほど不満を持っている場合は別ですが、他行への乗り換えで借り換えを行うのはあまり得策とは言えないでしょう。
もし、それでも他行から借り換えを提案され、また既に取引している銀行に複数の債務があれば、比較的金利の高い債務1本を借り換えして取引振りを観察してみるとよいでしょう。
半年から1年程度取引をしてみると銀行の実態が見えてきます。
日本政策金融公庫で借り換え
日本政策金融公庫は公的機関ですから、事業主にとっても馴染みの深い金融機関でしょう。
ここのメリットは何と言っても、融資条件がいいことです。
銀行と違い、営利目的ではなく、あくまで中小企業を中心とする事業の発展や継続を目的としているため、担保や保証、財務内容に多少の問題があっても、将来性を考慮して融資に応じてくれます。
しかも、何と言っても金利が安いのが魅力です。
借り換え時には大きなメリットを生むことは間違いありません。
しかし、日本政策金融公庫は将来性を重んじて融資してくれるところですから、シッカリした事業計画や返済計画を立てていなければ、審査に通過することはできません。
このため、申し込みから融資までの期間が長くなるというデメリットもあります。
すぐに融資してほしいという事業主には不向きな借り換え先となってくるでしょう。
日本政策金融公庫の金利は無担保・無保証でも2%強というのが一般的ですから、わざわざ金利が高くなるとわかっていて銀行に借り換えしようというケースは考えられません。
したがって民間金融機関の銀行等から日本政策金融公庫へ借り換えたいと考えると思いますが、残念なことに民間金融機関から日本政策金融公庫への借り換えはできません。
金利差が大きいことが影響して日本政策金融公庫での借り入れが続出し、民間金融機関への民業圧迫に当たると考えられるため、借り換えができないようになりました。
一部、事業再生のため、条件を満たせば借り換えは可能とされていますが、これも一握りの事業所に限られてくるので、一般の利用は不可能と考えた方がいいでしょう。
また日本政策金融公庫よりも金利情景の良い、信用保証協会保証付き融資からの借り換えもまずありえません。
したがって日本政策金融公庫を利用した借り換えは、既存の借り入れが日本政策金融公庫である場合のみに限定されます。
日本政策金融公庫で借り換えする際の注意点
日本政策金融公庫での借り換えは、既存の借り入れがあり、新たな借り入れを伴う場合に限定されます。
したがって、既存の返済額の削減目的に借り換えすることはできません。
日本政策金融公庫の金利を考えれば、返済額の削減で借り換えを検討する事業主もいないでしょうから、この点は何ら問題ないでしょう。
しかし、借り換えを申請するときには注意が必要です。
仮に借り換え申請をして、それが否認された場合に大きなデメリットを被ることになるからです。
そのデメリットとして、以降の融資が通りにくくなったり、最悪の場合、一括返済を求められたりするケースがあります。
一般的に日本政策金融公庫で借り換えを申請して、それが認可されるのは返済残金が当初借入額の半分以下になったくらいとされています。
確実と言われているのが、返済残金が3分の1以下となった時点です。
申込み時期についてはくれぐれも注意するようにしましょう。
また、既存の返済状況も大きく関係していきます。
返済状況に遅延や滞納がある場合は、借り換え時の審査で大きなマイナス要因となってしまいます。
返済に1ヵ月の遅延があれば、1年内の借り換えは無理になってくると考えておいた方が良いでしょう。
とにもかくにも、健康な返済状況は事業主の信用を上げ、その逆だと下げることになってしまいます。
いくら公的機関とは言え、信用失くして融資を認めてくれるわけはありません。
その点をよく考慮して、月々の返済はキチンとするよう日頃から心掛けるようにしましょう。
余裕があるときは繰り上げ償還でお得に返済しよう
繰り上げ償還とは、予定よりも早く借入金を返済してしまうこと指します。
繰り上げ償還をすることで、利息分の支払いを減らすことができるので返済総額を減らすことができます。
資金に余裕があるときは積極的に繰り上げ償還を行ってください。
ただし、繰り上げ償還を行ったせいで資金がなくなり、すぐに借入を行わなければなくなったので本末転倒です。
しっかりと資金計画を立てた上で、繰り上げ償還を行いましょう。
その他、資金調達に使える方法は?
最後にこの記事では詳しく触れなかった資金調達方法を紹介していきます。資金不足に陥ってしまったときの解決策として活用してください。
もし売掛金がある企業ならば、ファクタリングという手段があります。
ファクタリングとは、売掛金を金融機関に買い取ってもらうという資金調達方法です。
即日での取引も可能ですのですぐに現金が必要なケースにも対応できます。
また、クラウドファンディングを利用することもおすすめです。
一口にクラウドファンディングと言っても、商品購入型や寄付型など様々な方法があります。
これから行おうと考えている事業に対する世間の反応を知る機会にもなるので、使い方によっては大きなメリットとなるでしょう。
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