山口銀行のファクタリングは中小企業には向いているの?
山口銀行は様々な資金調達手段が用意されているのが特徴の地方銀行ですが、その中でも近年注目されているのがファクタリングによる資金調達です。
地元密着型の銀行ですから、馴染みの深い中小企業の経営者の方はさぞかし多いことでしょう。
そこで今回は山口銀行のファクタリングの特徴を見ていきながら、山口銀行のファクタリングは中小企業の経営者の方に向いているサービスなのかを検証していきます。
山口銀行ってどんな銀行?
それではまずは会社概要から山口銀行がどのような銀行なのかを見ていくことにしましょう。
山口銀行の会社概要は下記のとおりです。
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山口銀行は山口フィナンシャルグループ傘下で、山口県をはじめとして県下12市で指定金融機関として指定を受けている県内随一の地方銀行です。
設立は1944年ですが、創業は1878年と古いことからも、山口の方から長き間利用されている地域密着型の信頼度の高い銀行と言えるでしょう。
山口銀行のファクタリングとは?
山口銀行が扱っているファクタリングサービスは下記の2つがあり、利用目的によって選択することができます。
- 通常ファクタリング
- 一括ファクタリング
それでは早速これら2つのファクタリングがどのような取引内容になるのかについて説明していくことにしましょう。
通常ファクタリング
山口銀行のファクタリングで資金調達をする際に選ぶのがこの通常ファクタリングになります。
商品名は「売掛債権流動化」という名称となっています。
その山口銀行の売掛債権流動化という通常ファクタリングの特徴は4社間ファクタリングである点です。
通常、民間のファクタリング業者では下記いずれかの取引となりますが、山口銀行の場合は多くの民間銀行で見られるSPC(特別目的会社)と下記の3社での取引となります。
- 申込者(債権者)
- 申込者の取引先(債務者)
- 山口銀行
それでは実際にどのような取引が行われているのか、このファクタリング取引の流れを見ていきながら説明していくことにします。
通常ファクタリング取引の流れ
山口銀行のファクタリングで資金調達する際の取引の流れは下記のとおりです。
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この取引において皆さんが気になってくるのがSPCという特別目的会社の存在でしょう。
SPCは特定の業務や管理だけを行う会社で、今回のファクタリングでは下記のような業務を行っています。
- 売上債権の劣後比率の算出、および買取金額の決定
- 売上債権の管理
- 申込者への買取代金の支払い
- 売上債権の回収
SPCは山口銀行が設立した子会社で、山口不銀行はファクタリング業務をSPCに振り分けることで業務の混雑化を回避しているというわけです。
他の会社に利益を持っていかれることになりますが、連結決算では収益が減ることはないので、山口銀行にとっては何の損を生むことはありません。
流れだけみれば民間のファクタリング業者による3社間ファクタリングよりも多少スキームが複雑になっていますが、利用者はSPCが入った4社間ファクタリングであることでデメリットを被ることはありません。
通常の3社間ファクタリングと変わらないと考えてもらっていいでしょう。
ですが山口銀行のファクタリングではこういった取引が行われていることは頭に入れておくようにしてください。
一括ファクタリング
今説明した通常ファクタリングが資金調達を目的としたものに対して、この一括ファクタリングは事務効率化を目的としています。
よって、この一括ファクタリングを利用して申込者が資金調達を行うことはできません。
この点はしっかりと理解しておきましょう。
山口銀行の一括ファクタリングでは下記3社間の契約に基づき、申込者が仕入れ先等で発生する買掛金を山口銀行が一括買取することで事務効率化を図れます。
通常、仕入れ先等の取引先で買掛金が発生すれば、社内では下記のような業務が発生します。
- 支払いまでの買掛金管理
- 支払手形の発行
- 銀行とへの支払い依頼
しかし、山口銀行の一括ファクタリングを利用すれば、これら業務すべてを山口銀行に丸投げすることができます。
一括ファクタリングのメリット
支払先に発生した買掛金を山口銀行が買い取ることで、支払いまでに発生するすべての業務を山口銀行に一任でき、大幅に事務作業の合理化を実現することができます。
しかも事務作業の軽減による人件費と労力の軽減だけでなく、支払手形の発行にかかる印紙代等が必要なくなるので事務作業の合理化だけでなく、コスト削減効果も期待できる点も見逃せません。
そして忘れてはならないのが仕入れ先等の買掛金が発生する取引先にもメリットがある点です。
申込者はこの一括ファクタリングで資金調達することはできませんが、仕入れ先となる取引先は山口銀行が買い取った売上債権をもとにファクタリングで資金調達することも可能です。
このメリットを訴えれば、取引先が一括ファクタリングに同意してくれる可能性も高くなってくるでしょう。
それでは一括ファクタリング取引の流れを見ていきながら、その取引内容を確認しておきましょう。
一括ファクタリング取引の流れ
一括ファクタリング取引の流れは下記のとおりです。
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取引の流れとしては資金調達のためのファクタリングよりもスキームは明瞭です。
取引先(債権者)がファクタリングによる資金調達をしなければ、4と5の取引は発生せず、3から6へ流れることになります。
山口銀行のファクタリング利用時の注意点
山口銀行のファクタリングの特徴について理解してもらったところで、次は資金調達を目的に通常ファクタリングをする際の注意点について説明します。
通常ファクタリング利用時の注意点は下記の3つです。
- 2社間ファクタリングに対応していない
- 少額ファクタリングに対応していない可能性が・・・
- 審査が厳しく、時間がかかる
この3点はファクタリング申込時に重要なポイントとなってくるので、しっかりと理解しておくようにしてください。
それでは早速、これら3つを詳しく見ていくことにしましょう。
2社間ファクタリングに対応していない
山口銀行のファクタリングで資金調達する際にまず考えなくてはならないのが、ファクタリングすることが取引先にバレてしまうという点です。
基本的には3社間ファクタリングとなるので、2社間ファクタリングのように、取引先に知られることなくファクタリングを利用することはできません。
近年は政府主導でファクタリング等での売上債権流動化による資金調達の推進が推し進められているので、資金繰りに奔走することの多い中小企業の経営者の中には理解がある方も多いことでしょう。
しかし、取引先によっては「ファクタリングによる資金調達=資金難」と取るケースがないわけではなく、知られることによって今後の取引に支障が出てしまう可能性も懸念されます。
よって、申し込む際にはその売上債権をもつ取引先がどう捉えるのかを、よく熟考する必要があるでしょう。
その結果、支障ありと判断するならば、山口銀行でのファクタリングはおすすめできません。
2社間ファクタリングが可能な、民間のファクタリング業者を利用するようにしてください。
少額ファクタリングに対応していない可能性が・・・
山口銀行のHP等にはファクタリングの利用条件の詳細が公表されていません。
しかし、様々な声を聞いてみると山口銀行のファクタリングで資金調達する際には、かなりまとまった売上債権が必要となってくるようです。
山口銀行が明言しているわけではないので、確実な情報だと公言できるわけではありませんが、数十万円、もしくは数百万円のファクタリングには対応していないという声が多いのが事実です。
中には1,000万円以上の数ロットまとめた売上債権からしか対応しないという情報も見られたので、月商が1,000万円以下、または数百万円の中小企業には向かないファクタリングの可能性が高いと推察できます。
山口銀行がメインバンクであれば対応も変わってくる可能性も考えられますが、基本的には高額ファクタリングが条件となると考えておいた方が無難かもしれません。
しかし、これはあくまで利用者の声なので、検討時にはまず山口銀行に直接相談してみるようにしてください。
審査が厳しく、時間がかかる
銀行のファクタリング審査は民間のファクタリング業者よりも厳しいのが通説です。
これは紛れもない事実なのですが、山口銀行もこの通説から漏れていないのが実情で、下記のような会社は審査落ちする可能性が高くなってきます。
- 資金力が乏しい個人事業主
- 資金力が乏しい零細企業
- 資金難の中小企業
民間ファクタリング業者は申込者よりも売上債権先を重要視する傾向があるので、申込者の会社が上記のようなケースでも、売上債権先に問題がなければ審査通過するケースが多く見られます。
しかし、銀行の場合は売上債権先よりも、申込者の経営状態が重要視される傾向があります。
しかも山口銀行は高額ファクタリングとなるため、審査はさらに厳しくなることが推測されます。
また審査が厳しいということは、着金期日までにかかる日数も長くなることを意味します。
利用時にはこの点を念頭に置き、本当に山口銀行でいいのか検討する必要があるでしょう。
他の資金調達法を検討するのもおすすめ!
ここまで説明してきた内容を考慮すれば中小企業の経営者にとって、山口銀行のファクタリング利用は少々ハードルが高い感は否めません。
そこで検討してもらいたいのが同じように売上債権を利用した、山口銀行が用意している資金調達手段です。
山口銀行では資金調達手段として多くの金融商品が販売されていますが、その中には売上債権を担保にして融資を受けることができる「動産・債権担保融資」があります。
提供する売上債権額が山口銀行のファクタリング利用条件に合わない場合は、動産・債権担保融資を利用してみるのも1つの手です。
返済期間中は担保としている売上債権の状況を定期的に報告しなければならない面倒さはありますが、銀行が財務状況を把握することで関係性が深まり、通常の融資も受けやすくなるメリットも出てきます。
近年は売上債権を担保とした融資商品は信用保証協会の保証付き融資が一般的となったことから、銀行審査も厳しいものではなくなってきています。
また、中小企業の資金調達手段として挙げられる資金流動化の中でも、政府がもっとも力を入れていることからも、中小企業の経営者の方にとって今後はさらに利用しやすい資金調達手段となると期待が寄せられています。
この商品の利用条件もファクタリングと同様に公表されていませんが、まずは山口銀行に確認して利用できる条件であるのかを検討してみるようにしてください。