銀行借入時に試算表を提出する際の注意点

銀行から融資を受けるための審査の際に、銀行から「試算表を出してください」と突然言われることがあります。

当初銀行から依頼された書類はすべて提出しているのに、後になって試算表を出せと言われたらドキっとする人も多いのではないでしょうか?

試算表とは、前回決算から、先月末または先々月末までの会社の決算の途中経過です。

つまり、試算表を見れば決算以降の会社の業績を知ることができます。

銀行が試算表を要求する理由は、できる限り直近の業績を知りたい場合もありますし、本当に会社に対してなんらかの疑義を持っているケースもあります。

試算表の提出を要求させるケースとしてはどのようなパターンがあるのでしょうか?

この記事では、銀行から試算表の提出を要求される理由とその対処法について徹底解説していきます。

試算表を要求する4つの理由

銀行が試算表の提出を要求する理由として、主に以下の4つの理由をあげることができます。

できる限り直近の業績を把握したいというケースのほかに、会社の決算の真偽について疑われているケースまた、経営者の資質を問われている場合もあります。

決算月から離れている

通常、前回の決算から融資申込が半年以上離れている場合、銀行は試算表の提出を求めてきます。

前回決算から半年以上経過していれば会社の状況が良くも悪くも変わっている可能性があり、審査の際に銀行はできる限り最新の状況を知りたいと考えるためです。

今期の赤字が疑われている

前回決算では黒字であったが、明らかに入金等が減っているとか、地域の中であまり良い噂がないとか、すでに融資をしている貸付金の返済に遅れているといったような場合には、今期は業況が大きく落ち込んでいる可能性を疑われます。

このため、最新の動向を知るために試算表を銀行が要求してくることがあります。

粉飾が疑われている

売上を過大に計上する、経費を過小に申告するなどの粉飾決算によって利益が出ているように見せかけていると銀行に判断された場合にも試算表の提出を要求されることがあります。

通常、粉飾決算というものは期末の決算時に行われるもので、試算表というのは単純に売上の伝票や領収書を仕分した結果にすぎません。

このため、粉飾決算を行なっている企業は、人の恣意的な手が加わらない試算表の方が実態を表しているために、銀行が粉飾を疑った場合にも試算表の提出を求められることが少なくありません。

経営者の資質が問われている

試算表は会計事務所に経理を依頼している会社であれば会計事務所に依頼すればすぐに提出できますし、毎日会計ソフトで経理を行なっている会社でもすぐに印刷することができます。

また、試算表はタイムリーに会社の収支を把握することができるため、日々会社の業況を管理している経営者にとっては「今儲かっているか、先期と比較してどのくらい伸びているのか」などを視覚的感覚的に判断する重要な指標です。

このような試算表を銀行が「できるだけ早く提出してください」と依頼した時に、すぐに出せない場合には、経営者は「日頃から会社の収支に対する意識が薄い」と判断されてしまうこともあります。

銀行の審査にとって必ずしも試算表が必要でなくても、経営者の数字に対する意識を確認する目的で試算表の提出を求められることがあります。

試算表で赤字になっていたら

前回決算では黒字であったにもかかわらず、試算表では赤字になっている場合には銀行には「取引先の景気が悪い」「原材料費が高騰した」などの言い訳を用意する必要があるのでしょうか?

いろいろ言い訳を用意するよりも、数字として出てしまっているのですから正直に話した方がよいでしょう。

正直に理由を説明

会社経営は必ずいつも儲かるわけではありません。

よい時もあれば悪い時もあります。

このため、赤字になっているということは必ずしも悪いことではありません。

試算表で赤字になっている場合には正直に理由を説明した方がよいでしょう。

無駄な言い訳はしない

銀行は赤字になったからといってすぐに融資取引を中止するわけではありません。

むしろ業況が悪化した企業を金融面で支援するのも銀行の重要な役目の1つです。

このため、試算表で赤字になっていたら正直にその旨を話し、金融的な支援が必要であればそれを求めましょう。

さらに、経営改善について悩んでいるのであれば、素直にその悩みも話し、経営相談も行うことができます。

このような時こそ銀行との信頼関係は醸成されていくものですので、できる限り素直に正直に打ち明けた方がよいでしょう。

粉飾をしている場合

粉飾を疑われて試算表提出を要求された場合には非常に焦るのではないでしょうか?

この場合でもバレる嘘をついても仕方がありません。

正直に銀行に話しましょう。

また、銀行は中小企業が軽微な粉飾決算を行なっていることは織り込み済みです。

このため、粉飾がバレたからと言って必ずしも取引停止とか、借りているお金の期限の利益を切られてしまうとは限りません。

正直に説明

軽微な粉飾であれば、正直に伝えた方がよいでしょう。

次からは、さらに正確な数字を計上するなどと伝えておいた方が無難です。

また、過大な粉飾は取引停止などのリスクもありますが、やはり正直に申告して謝った方が無難です。

すでに数字に出しており、銀行に見破られているため、嘘をわかる言い訳を並べた方が銀行の印象はさらに悪化してしまいます。

銀行も一定の粉飾は織り込み済み

銀行も中小企業が決算書をよく見せるため、多少の粉飾を行なっていることはある程度想定内です。

このため、決算書の実態を見極める「企業審査」という審査を定期的に行っているのです。

また、仮に粉飾を行なったことがバレてしまっても、多くの銀行が融資金の返済に遅れがない限りは不問にしているのが実態です。

しかし、返済に遅れがちの企業が粉飾をしていることがバレた場合には、ある日突然期限の利益を喪失し「借りているお金を全額一度に返済してください」という手続きになってしまうリスクがある点は理解しておきましょう。

当たり前ですが、そもそも粉飾は行なってはいけません。

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試算表の提出は可及的速やかに

銀行がどのような理由で試算表の提出を要求したにせよ、銀行から提出の依頼を受けた試算表などの書類はできる限り速やかに提出しましょう。

資料の提出については、銀行が数字以外の部分で企業を評価するための1つの指標となるものです。

自社の評価を無駄に下げないためにも資料の提出には協力しましょう。

経営者の定性評価に影響

銀行が企業を評価する際には決算書などの数字から評価を行う「定量評価」と数字からは見えない経営者の資質や従業員のスキルや付加価値や事業の将来性などを評価する「定性評価」という評価があります。

試算表の提出を要求することそのものが企業の定性評価につながる可能性があります。

数字を管理できているか

先ほど述べたように、試算表とは会社の業況をタイムリーに表すものです。

この資料がすぐに出てこないということは経営者が業況をタイムリーに把握していないということで、定性評価の経営者の資質の評価が低くなる可能性があります。

一方、すぐに銀行へ提出できるということは、日常的に会社の業況を経営者が把握しているということですので、定性評価は低い評価にはなりません。

銀行の依頼には協力的か

定性評価の項目の中には「銀行が依頼する資料などの提出には協力的で速やかに提出することができるか」という内容があります。

このため、銀行が試算表の提出を要求した際にすぐに提出できないと、この評価が下がることがあり、定性評価も低いものとなってしまうことがあります。

これまで、定性評価は数字から判断する定量評価よりも圧倒的にウェイトが低くなっていましたが、今は金融庁が「定性評価を重視する」というような方針を打ち出したことから、次第に定性評価のウェイトが高くなっています。

このため、試算表の提出が遅れると定性評価が下がり、銀行内部で企業の格付けが下落し、自社に適用される金利が高くなってしまうという可能性が十分にあります。

些細なことで企業の格付けを落とすことがないよう、試算表などの資料の提出は可及的速やかに行なった方がよいのです。

まとめ

銀行が試算表の提出を企業に求めるケースは様々です。

基本的には前回決算から6ヶ月以上の間隔が空いて融資を申し込む場合には試算表の提出を求められますので、あらかじめ用意しておいた方がよいでしょう。

また、赤字や粉飾を疑われて試算表の提出を求められることもありますが、このような場合には不要な言い訳はせずに正直に話すしかありません。

なお、試算表などの資料を迅速に提出することができるかどうかは、企業の数字以外の評価である定性評価へ直結するため、できる限り迅速に気持ちよく提出するようにしましょう。

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