短期借入金と長期借入金の違いとは
金融機関からの借入は、大きく分けると下記の2つに分類できます。
- 短期借入金
- 長期借入金
会社経営に携わる人ならば、十分に理解していることでしょうが、個人の場合にはあまり意識することもなく、両者の違いすら理解していない人が少なくありません。
そこで今回は、この両者の違いについて、分かりやすく説明していきます。
この記事はこんな人におすすめ
- 短期借入金と長期借入金のメリットとデメリットを知りたい
- どちらの借入が自分に向いているのかを知りたい
- 金融機関の融資審査を通過するためのポイントを知りたい
- 返済途中の条件変更が可能なのかを知りたい
- 執筆者の情報
- 名前:手塚 龍馬(36歳)
職歴:過去7年,地銀の貸付業務担当
記事の目次
短期借入金とは
それではまずは、短期借入金について、その概要を分かりやすく説明していくことにします。
短期借入金とは、1年以内に返済期日が到来する借入金です。
原則として返済は一括で、利息は融資を受ける際に前払いし、手形貸付という貸付方法で融資が行われます。
個人の場合にはあまり見られない融資方法ですが、事業者や法人の場合には頻繁に用いられている融資方法です。
特に運転資金の調達に奔走することの多い中小企業では、この短期借入金で運転資金を賄うところが多く見られます。
また、建設業の運転資金や、不動産開発業者の土地購入資金など、一括で仕入れを行い、工事の完了や不動産の売却などで一括で入金となる場合の短期資金のギャップを埋めるための資金を融通するための資金です。
ワンイヤールール
融資の返済期間は長期間にわたるものと、短期間のものの2つに分類できます。
このうち、1年以内で返済が完了するものが短期借入金と呼ばれます。
これに対して住宅購入資金や設備投資資金のように、長期分割で返済する借入金が長期借入金です。
長期借入金は1年を超える返済期限を設けた借入金を指し、証書貸付によって貸付を行われることが一般的です。
このように、返済が1年以内か1年を超えるのかによって、短期借入金か長期借入金かを決定することをワンイヤールールと呼びます。
短期借入金か長期借入金かを判断する、最も簡単な方法ですから、覚えておくといいでしょう。
短期借入金の返済方法
繰り返しとなりますが、短期借入金の返済方法は原則として一括返済で、利息は前払いとなりす。
1,000万円を金利2%で1年間借りた場合の利息は下記の通りです。
1,000万円×2%=20万円
よって、この20万円が事前に融資金から差し引かれ、980万円が口座に入金されることになります。
そして手形の期日に1,000万円を一括で銀行に返済するのが、基本的な短期借入金の返済方法です。
しかし、建設業などでは、売上金の入金が工事の進捗に応じて、分割で振り込まれてくる場合もあります。
1,200万円の工事を請け負った場合の返済方法は下記の通りです。
- 進捗度30%で400万円
- 進捗度80%で600万円
- 完成時に200万円
この返済方法には下記のようなメリットが挙げられます。
- 銀行の貸し倒れリスクが少なくなる
- 業者利が負担する利息が少なくなる
そのため、入金の都度、手形金額の1部を返済していく、手形の内入れという返済方法が用いられることも少なくありません。
この場合、利息は借入時に一括で支払っているため、過払い分の利息は戻ってくることになります。
そして、この利息のことを戻し利息と呼びます。
試しに1,000万円の手形借入(金利2%、期間1年)を、下記のように内入れした際の戻し利息を計算してみることにしましょう。
- 100日経過した時に150万円
- 200日経過時に700万円
- 完済時に残金すべて
①150万円×2%÷365日×(365日-100日)=21,781円
100日経過後の未経過日数は265日で、借入時に265日分だけ利息を払いすぎていたことになりますので、払いすぎていた分の利息が内入れ時に戻ってきます。
②700万円×2%÷365日×(365日-200日)=63,288円
200日経過後の未経過日数は165日ですので、払いすぎていた利息である63,288円が戻ってくることになります。
③完済時に残金すべて
この場合には払いすぎていた利息はありませんので、残金である150万円を返済して完済となります。
法人クレジットカードで短期借入
どうしても喫緊でお金が必要な時には、法人クレジットカードを使って、キャッシングという方法もあります。
キャッシング枠がついているクレジットカードをもっていれば、ATMから枠内の金額をキャッシングすることが可能です。
ただし、借入ができるのは個人事業主か法人経営者のみで従業員は借入できないので、この点は勘違いのないように覚えておきましょう。
また、この借入手段で注意して欲しいのは借入金利です。
借入金利が15%~18%程度と法定金利ギリギリの金利での貸付ですから、あまりおすすめできません。
下記のような非常事態だけに利用するようにしてください。
- 支払い期日が目の前に迫っている
- 融資してくれる金融機関がない
そもそも法人クレジットカードでキャッシング枠を設けているカード自体、非常に少ないです。
返済方法は一括返済かリボ払いを選択することができます。
1年以内に完済してしまえばこの方法も、ある意味では短期借入金と言えますが、どちらかと言えば法人向けカードローンに代わる用途であると言った方が適格でしょう。
短期借入金と長期借入金の違い
借入には借入期間によって、下記のいずれかに分類できます。
- 1年以内→短期借入金
- 1年超え→長期借入金
借入の際には、短期借入金と長期借入金の双方のメリットとデメリットをよく理解して、自社に最も合った借入を選択する必要があるでしょう。
ここではその際の判断基準としてもらえるよう、それぞれのメリット・デメリットについて見ていくことにします。
短期借入金のメリットとデメリット
短期借入金の主なメリットは下記の通りです。
- 長期借入金よりも借入金利が低い
- 長期借入金よりも比較的審査が厳しくない
- 利息返済のみで期日延長することも可能
金利は借入期間が大きく影響してきます。
借入期間が長くなるほど高金利となるのが一般的です。
よって、短期借入金はお金を借りる期間が短いため、トータルの利息負担が少なくすませられるというメリットが出てきます。
短期間に多額の運転資金が発生し、売上が一括で振り込まれてくる建設業や、不動産開発のために不動産が売却できるまでに多額の土地購入資金が必要になる不動産開発業者などには最も適した借入金であると言えるでしょう。
また短期間で回収可能なことから、銀行の貸し倒れリスクが低くなります。
その上、返済原資が売掛金となるため、明確な売掛金の存在が確認されれば、赤字経営の会社への融資が実行されることも珍しくないのです。
こういった事情から、審査は比較的厳しくないことも、大きなメリットと言えるでしょう。
これに対してデメリットとなるのは、何と言っても返済額が大きくなる点です。
一括返済となるため、突発的な経営不振によって、返済が財務状況に大きなダメージを与えることも考えられます。
長期借入金のメリットとデメリット
長期借入金の主なメリットは下記の通りです。
- 安定した資金を得ることができる
- 返済負担が少ない
- 計画的な返済を行うことができる
長期借入金のメリットは毎月の返済額をできる限り少なくして、多額の資金の融資を受けることができるという点です。
どのような会社にも毎月決まって恒常的に発生する費用というものはありますので、そのための運転資金であれば業種に関わらず長期借入金を借りることは可能です。
また、設備資金のように高額かつ短期間で投資のリターンを得ることができないような資金を借りる際にも、長期借入金が必要になります。
設備を強化して会社の規模や経営基盤を安定させるような際にも、有効な資金となってくるでしょう。
またこれに対して、主なデメリットとして挙げられるのが下記の2つです。
- 利息負担が大きくなる
- 審査が厳しい
長期借入金は返済が長期化するため、トータルの利息負担が大きくなってしまいます。
基本的に長期借入金は高額借入となるため、返済の長期化は仕方のないことですが、短期借入金と比べれば、確実にデメリットとなってくるでしょう。
また返済原資が会社利益となるため、融資により確実に増益できるかが、審査合否のポイントとです。
よって、審査難易度は短期借入金よりも、確実に厳しくなってきます。
将来的な収益性に問題アリと判断されれば、審査通過はあり得ません。
中小企業には長期借入金の方が向いている?
基本的には運転資金の借入は、短期借入金となります。
しかし、業種にもよりますが、規模の小さい会社や、創業間もない会社が運転資金を借りるのであれば、長期借入金の方が向いているでしょう。
規模の小さい会社は借りたお金を、買掛金を支払いながら、1年以内に一括で返済することは容易ではありません。
長期的に分割返済していく方が、財務内容は安定するでしょう。
また、販路拡大が必須となる創業前や創業間もない会社にも、長期借入の方がおすすめです。
一括で当面の運転資金を借りておいて、財務内容に影響を与えることなく、販路や業務を拡大していくことができます。
もちろん、創業から不動産開発を行いたいというような場合には、短期借入金の方が向いていますが、そうでない場合は長期借入金の方が断然おすすめです。
長期か短期かどちらの資金が向いているのかは会社の規模よりも、業種やプロジェクトの質に依る部分が大きくなってくるでしょう。
これらの判断は銀行も相談にのってくれますので、自社にはどのような資金が合っているかは銀行とじっくりと相談した上で決めるようにしてください。
決算書(貸借対照表[B/S])上での表示場所
それでは短期借入金と長期借入金の会計処理について、簡単に説明しておくことにしましょう。
長期借入金と短期借入金の、勘定科目は負債の部にその通り記載されます。
しかし、度リラの借入金であるかによって、分類は下記の通り違ってきます。
- 短期借入金→流動負債
- 長期借入金→固定負債
そして、ここで注意して欲しいのが、「1年以内返済長期借入金」という科目です。
この1年以内返済長期借入金とは、長期借入金のうち、1年内に返済されたものを指します。
1憶円を5年間の返済で借入したとしましょう。
この場合、帳簿上は長期借入金として記帳しますが、貸借対照表においては、先ほど説明したワンイヤールール沿って、1年以内に返済する額面を1年以内返済長期借入金として、固定負債から流動負債に振り替えるのです。
よって、1年目の貸借対照表では、下記のように記載されることになります。
資産 | 流動負債 |
---|---|
1年以内返済長期借入金 | |
2,000万円 | |
固定負債 | |
長期借入金 | |
8,000万円 |
1年間の返済額である2,000万円が、1年以内返済長期借入金として、流動負債に振り替えられていますよね。
「1年以内返済長期借入金ってなに?」となる人が多いので、覚えておくようにしてください。
短期借入金が期日に返済できない
短期借入金は手形の期日までに借入金を全額返済するという契約です。
しかし、何かの事情で期日までに短期借入金が返済できない場合にはどのようになってしまうのでしょうか?
個人にしろ、経営者にしろ、債務返済の遅れは確実に信用の低下を招きます。
そうならないためにも、その際の最善策はしっかりと押さえておくべきでしょう。
そこで、ここではその最善策について説明していくことにします。
返済に間に合わない時は
工事代金の入金が遅れている、不動産が思うように売れなかったなど、短期借入金を返済できないケースは山ほど想定できます。
しかも常に資金調達を必要とする、資金力に乏しい中小企業の借入が多いため、実際に窮するケースは珍しくありません。
その際に一番最初にしてもらいたいのが、借入先となる金融機関への相談です。
銀行も鬼ではありませんので、やむを得ない事情で返済に間に合わない時には相談に乗ってくれます。
事情がはっきりしている場合には金融機関もしっかりと対策を講じてくれますので、それほど心配することはありません。
むしろ返済ができなことが分かっているのに、その状況を金融機関に伏せ、返済できないことの方が問題です。
信用を無くすこととなり、金融機関の対応も厳しいものになってくるでしょう。
しかし、事前に相談し、やむなしと判断されれば、下記のような対応で返済期日の延長を行ってくれる可能性があります。
- 期日の延長(手形の書替)
- 長期借入金への切り替え
工事代金の入金が遅れているなどの取引先都合による返済不能の場合には、銀行は取引先からの売上金が入金となるまで返済期間を延長してくれます。
3ヵ月先になるのであれば、現在の手形を3ヶ月先の手形へと切り替えるといった具合です。
これを手形の書替と言います。
書替時には当然、新しい手形の返済期日までの利息が新たに必要になりますが、返済に窮する側にとってはメリットの高い回避手段と言えるでしょう。
また取引先の倒産などの理由から売上の回収がどれだけ待っても見込めない場合には、短期借入金を長期借入金へと切り替える方法もあります。
しかし、先に説明した通り、長期借入金の審査は甘くはありません。
自社が長期借入金へと切り替える救済手続きによって、再建の見込みがあると判断されなければ、長期借入金への借り換えはできないでしょう。
例えば売上の大多数を倒産してしまった取引先に頼っているといった場合には、救済しても再建の見込みが立ちません。
このような場合には応じてもらえない可能性が高いことは、理解しておくようにしてください。
また個人の場合には、短期借入金を利用するケースはほとんど見られません。
しかし、住宅ローンのつなぎ資金を、住宅ローン借入先以外から、借入している場合は注意が必要です。
一般的には住宅ローン借入先となる銀行に、つなぎ資金の額面に応じた約束手形を提出し、住宅ローン融資時に相殺する形が取られます。
住宅ローンとつなぎ資金の貸付をセットで行っている銀行ならば問題はありませんが、つなぎ資金だけをノンバンク等で借入している場合は、住宅完成時期が延びることで、銀行融資が遅れ、返済の当てがつかないケースも出てきます。
また支払いに充てるつもりの資金を、急な出費で転用しなければならないこともあるでしょう。
この場合にはつなぎ資金の借入先に、事情を話して、必ず相談するようにしてください。
どんな延滞ペナルティーがある?
期日到来後も返済を行わなかった場合には、ペナルティとして延滞利息が発生します。
延滞利息は延滞した日数分だけの利息が発生します。
いずれにせよ期日に遅れる場合には、理由と状況を銀行に連絡することだけを徹底することが必須です。
連絡がない場合、銀行は当該企業の資産を差し押さえる等の法的手続きを取るしかなくなります。
やむを得ない事情であれば銀行は書替に応じてくれる可能性がありますので、まずは相談して、数日の遅れくらいであれば承知してくれるケースが大半です。
次の融資は通らない?
手形貸付の性質上、やむを得ない事情で売上金の回収等ができず、返済が遅れてしまうことは、決して珍しいことではありません。
この場合、気になってくるのが、次の融資申込への影響です。
返済に遅れた理由がやむを得ない事情であれば、延滞したとしても完済すれば、次の審査に大きな影響はありません。
しかし、主要取引先の倒産などで、会社の売上規模が大きく変化するような場合には、次の融資には影響することになるでしょう。
手形貸付の場合には、どうして延滞したのかが、次の審査に影響を及ぼすことになるのです。
他の金融機関から借りて期日までに返済するのは?
返済できないからといって、他の金融機関から借りて返済するのは、いい方法とは言えません。
銀行への信頼、そして財務的にもおすすめできないからです。
他の銀行からお金を借りたという事実自体、短期借入金を借りている銀行にとっては心象がよくありません。
また、法人クレジットカードからのキャッシングなどで返済金を用意すれば、利息負担は大きくなりますし、そちらの返済負担もいずれ重くのしかかります。
基本的には短期借入金の返済ができないということがあらかじめわかっている場合には、まずは銀行に相談して、手形の書替などの相談したほうが無難です。
銀行等の金融機関に申し込む前に
短期借入金の審査は、長期借入金の時のように厳しくはありません。
だからと言って、簡単に融資が受けられるわけではないのです。
資金使途を明確にし、確実に返済できることを、金融機関い認めさせる必要があります。
よって、申込を行う前には、金融機関に明確な説明ができ、相手を納得させられるように、事前準備が必要になります。
ここではその事前準備のポイントについて、説明していくことにしましょう。
借入目的と用途を明確にする
運転資金や設備投資資金等、短期借入金の目的を明確にすることが重要です。
何にいくら必要になるのかを、できる限り詳細に明示しておくことが必要になります。
金融機関は基本的に必要もない資金の貸付は行いません。
返済期限が1年以内に到来する短期貸付金であればなおさらです。
本当に必要な資金がいくらなのか、金融機関が理解しやすいようにしておきましょう。
設備資金が必要であれば設備の見積もりなども用意しましょう。
過去実績(去年のこの工事ではこのくらいの運転資金がかかったなど)もあった方が説得力は強くなります。
返済計画(売上の見積もり)を明示
短期借入金とは基本的に「○○円の運転資金で■■ヵ月かけて行う事業で、△△円の売上が見込める。」だから「○○円の資金を■■の期間貸してほしい」という場合に使用する資金です。
具体的には、下記のような資金使途が挙げられます。
- 建設業が工事を行うための運転資金
- 不動産開発業者が開発にかかる経費や土地購代金
- 学習塾が冬期講習などを行う期間の人件費などの経費
そのため、返済できるだけの売上が見込めるという証拠が重要になります。
建設業であれば工事請負契約書、不動産開発業者であれば近隣の不動産の売却状況など、学習塾であれば昨年度の実績や本年度の申込状況などです。
金融機関にとってその証拠の信用度が高ければ高いほど、審査に通過しやすくなりますし、金利も低くなります。
バブル期などは公共事業の契約書など、信憑性が高い書類があれば、翌日融資となることも珍しくないほどでした。
短期借入金は短期間の間に確実に売上が見込めると銀行が判断するからこそ、融資に応じてくれる借入手段です。
この点をよく理解して、金融機関を納得させられるだけの、書類作成を行うようにしてください。
利用する長期借入金の種類
短期借入金の場合、その資金使途は下記のように限定されます。
- 給与所得者の場合→住宅ローンのつなぎ資金
- 事業主・法人の場合→運転資金
しかし、長期借入金の場合は、資金使途が多岐に渡ります。
ここでは下記2つに分類し、それぞれにどのような長期借入金があるのかを紹介していくことにしましょう。
- 給与所得者の場合
- 事業主・法人の場合
給与所得者の場合
個人ローンのほとんどが長期借入金です。
下記のように個人が利用する、ローン商品はどれもが長期借入金に当たります。
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住宅ローンや自動車ローンなど、毎月の給料の範囲内で1年超の期間をかけて分割で返済していくローンはすべて長期借入金です。
給与所得者は借りたお金を一気に返済することなどできません。
むしろ一度には用意できない金額だからこそ、お金を借りるのです。
あくまでも毎月コツコツと返済していきます。
そのため、個人のローンはほとんど証書貸付で長期借入金が利用されます。
事業主・法人の場合
事業主や法人の場合の事業性資金としての長期借入金の資金使途は下記の2つです。
- 設備資金
- 運転資金
会社の設備資金もたいていは長期借入金です。
前述したように工場や設備機械は1年間だけでなく、長期間にわたって利益を生むことが予想されるものです。
今後数年間または数十年間のを掛けて、投資設備が生み出す利益から返済を行います。
投資設備に当たるものは、それ自体が高額であるため、短期間での返済が難しいことから、長期借入金の利用となるのです。
運転資金に関しては、その資金が今後長期間の利益もたらすものである場合には長期借入金で対応し、1年以内の利益しか生まないのであれば短期借入金になります。
前述したような建設業の特定の工事のための先払いの経費などは短期貸付金です。
また、農協からしか融資を受けることができませんが、農業にかかる運転資金も農協は基本的に短期で行います。
農業の経費はすべて1年以内の収穫によって還元されるため「1年間にかかる経費によって生み出される経費は1年の売上から」という考えが大前提です。
一方、運転資金を注入したことによって、今後数年間の収益が確保されるような場合には長、期借入金で運転資金を融資します。
一時的な売上の減少によって資金が足りない場合の運転資金などは、そこで資金投入することによって以後数年間利益が確保できると見込めるため長期で運転資金を融資するのです。
運転資金に関しては、その融資金から生み出される利益がどの程度の期間の利益を生み出すのかという考え方のもとに決定します。
審査基準
先にも説明した通り、長期借入金は短期借入金よりも、確実に審査が厳しくなってきます。
短期借入金の場合、審査通過の最重要ポイントとなるのは、返済原資となる売掛金が十分なものであるかどうかです。
しかも、予測期間が1年以内と短いため、判断も付きやすくなってきます。
これが長期借入金よりも、審査が厳しくないと言われる理由です。
それでは短期借入金よりも審査が厳しい長期借入金の審査は、どのように行われるのでしょうか?
ここでは審査合否のポイントとなる、長期借入金の審査基準について見ていくことにしましょう。
完済可能な年齢か
前述したように、長期借入金は商品ごとに設定された、下記ポイントさえクリアすれば、返済期間は借主が自由に設定することができます。
- 返済期間
- 完済年齢
長めの期間が設定できる住宅ローンであれば、75歳までというのが限度です。
この年齢を超える期間は設定できませんが、たいていのサラリーマンは60歳で定年を迎えます。
そのため、60歳を超える返済となる場合は、退職後に返済していくだけの原資が確保できるかどうかが重要な判断材料になります。
退職金で一括返済するか、年金から返済していけると判断されなければ融資を受けることはできません。
そして、個人ローンで注意してもらいたいのが下記の2つです。
- 支払可能見込額
- 返済比率
個人のローンでは、借入条件をクリアしていても、上記2つが影響して審査落ちとなるケースも珍しくありません。
個別クレジットに分類される借入の場合、クレジットの支払いが多くなることで、返済不能に陥ることのないように、支払見込可能額の算定がクレジット業者に義務付けられています。
人事院が設定した年間の標準生計費を年収から差し引き、どれだけの余力があるかが算出されます。
これが支払可能見込額です。
そして年間のクレジット総支払額が、支払可能見込額を超える場合には、一部の例外を除き、借入することはできません。
また住宅ローンの場合には、年間返済額を年収の何%以内に収めることを規定した返済負担率という決まりがあります。
返済負担率が30%の住宅ローンを年収400万円の人が組もうとする場合には、年間返済額を120万円までに収めるようにローンを組む必要があるわけです。
返済負担率に関しては、銀行によって違いが見られますが、規定された返済負担率を超える借入はできません。
このように返済期間と完済年齢をクリアしても、借入できないケースがあることは、しっかりと頭に入れておきましょう。
長期的な返済原資があるか
長期借入金は申込時の情報をもとに、長期間返済を行っていけるかどうかが判断されます。
そのため、今と過去の情報が非常に重要です。
事業性資金であれば、過去の実績から鑑みて、完済できるだけの収益性があるかが、ポイントになってくるでしょう。
過去数年間の業績が悪く、今も回復の兆しが見られないようであれば、まず審査を通過することはありません。
資金投入で確実に業績回復できるという、明確な根拠がない限り、融資を受けることはできないでしょう。
しかし、○○万円くらいの利益が出る会社であるにも関わらず、一過性の事情によって、収益が出ていない場合は話が別です。
そう判断されれば、今後は返済できるだけの業績回復が見込めると判断されて、融資が行われる可能性は高いでしょう。
また個人の場合であれば、年収の大きさよりも、勤続年数が大きく影響してきます。
勤続年数が長ければ長いほど、安定して収入を得ていると判断されるからです。
住宅ローンのように高額借入で、長期返済となるようなローンの申込条件には、勤続年数が規定されていますよね。
これは申込者に長期的に返済可能な原資があるかを、判断するためです。
規定された勤続年数に満たない場合は、長期的に返済可能な原資がないと判断されるというわけですね。
返済途中の条件変更
借入金は契約条件に則った返済が求められます。
しかし、返済途中で下記のような理由で、条件変更が余儀なくされるケースも珍しくはありません。
- 返済途中で返済が苦しくなったため返済期間の延長
- 返済途中で一部または全額を返済
このような場合には、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
ここではその手続きの流れについて説明します。
条件変更で返済をさらに長期化
返済が苦しくなった時には、先に説明したように、当初締結した返済期日をさらに延長して、毎月の返済額を軽減するという条件変更手続きを行うことができます。
期限を延長することで毎月の返済は楽になりますが、利息の負担が増えるため注意が必要です。
また、一定期間だけ返済を猶予してほしいという人のために、一定期間だけ元金返済を据え置き、その間利息の返済だけ行っていくという返済方法も選択できます。
個人であれば住宅購入時のつなぎ資金、事業主や法人であればリスケジュールが挙げられるでしょう。
いずれにせよ、当初の条件を変更し、返済を楽にする方法を銀行は条件緩和と呼びます。
しかし、よく理解しておいてもらいたいのは、これら条件緩和債権は銀行にとって、不良債権一歩手前という扱いになるということです。
そのため、銀行内での信用は失墜し、条件緩和中は当該銀行から融資を受けることは難しくなります。
また、1つの借入れについての条件変更は、基本的に1度しか行うことができません。
条件緩和することで完済できることが、前提となるので注意してください。
一部または全部の内入れ
突然の入金などによって、残っているお金の1部または全部を返済する借入主も少なくありません。
このように返済期限を縮めたり、毎月返済額を軽くするために、前倒しで返済する場合も、厳密には条件変更手続きになります。
こちらの条件変更は銀行にとって条件を緩和したわけではないため、信用力はむしろ増します。
しかし、前倒しの返済の場合には、手数料が発生するケースが多いので注意が必要です。
前倒しの返済には手数料がかかるところが多いですが、住宅ローンの手数料は何度でも無料という銀行も最近は増えてきています。
この返済方法を利用するのは個人ローンに多く見られますが、手数料は数万円単位というのが一般的です。
個人ローンを利用する場合には、将来を見据えて、手数料負担の少ない金融機関を選択することをおすすめします。
まとめ
短期借入金とは1年以内という非常に短い期間に返済期日が到来する借入です。
基本的には会社全体の運転資金へ融資するというよりは、会社の中の1つのプロジジェクトに対して必要な運転資金を融資するという意味合いで使用されます。
そのため、プロジェクトにかかる経費やプロジェクトの売上がいくらかという材料が審査の際に重要な要素となります。
プロジェクトに対して融資を受けたいのであれば、短期借入金を利用し、会社全体の運転資金や設備資金への融資を受けたいのであれば長期借入金を選択するのが一般的です。
この点は銀行が判断し、正しい方向へ導いてくれますので、まずは銀行へ相談してみましょう。
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