貸金業法(旧)の43条は廃止~消費者金融の衰退と過払い金

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現在の貸金業法43条は「みなし貸金業者」を定めたものですが、貸金業法が改正される前の旧貸金業規制法43条は「みなし弁済」の有効性を明確化したものです。貸金業者が利息制限法を超えた金利で貸付を行うことができた最大の要因が旧貸金業法43条なのです。

しかし旧貸金業法43条は最高裁によって否定され消費者金融の衰退と過払い金請求の多発の両方をもたらす結果となりました。なぜ貸金業者はグレーゾーン金利での貸付が認められたのか、その理由と顛末についてご説明します。

執筆者の情報
名前:梅星 飛雄馬(55歳)
職歴:地域密着の街金を30年経営

旧貸金業法43条「みなし弁済」はグレーゾーン金利を正当化したもの

消費者金融やクレジットカード会社(以降、貸金業者と呼ぶ)のキャッシング金利が利息制限法を超えた金利で貸し付けることができたのは、旧貸金業法43条に「みなし弁済」の規定が明示されていたからです。

金融関係の法律は難しく、なぜグレーゾーン金利での貸付が有効だったのか金融問題に詳しくない一般の人にとってはおそらく疑問だったことでしょう。

多くの誤解としてよく見られたのが、利息制限法を超えた金利で貸し付けしても行政処分のみだけで刑事罰対象とならないから、出資法の金利で貸金業者はお金を貸していた、というものです。

決して間違った解釈ではありませんが的を射ていません。

正しく言えば、グレーゾーン金利での貸付は旧貸金業法43条によって担保され、当時の金融庁のガイドラインや日本貸金業協会の監督指針においても、利息制限法を超えた金利での貸付は有効であり違法ではなかったために、多くの貸金業者がグレーゾーン金利での貸付を行なっていたのです。

つまり旧貸金業法43条を遵守することによって、貸金業者のグレーゾーン金利は違法ではなく合法の金利だったことを知っておく必要があります。

貸金業者はえげつなく儲けようと思って高い金利でお金を貸していた、というのは全くの誤解です。

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旧貸金業法43条とは

旧貸金業法の43条の条文は貸金業者が利息制限法の上限金利を超えた利息を受け取ったとしても、一定の要件を満たせば借主の弁済は有効な利息の弁済とみなすものです。

旧貸金業法43条の条文をそのまま掲示してもなかなか理解することは難しいですね。そこで要点のみをあげながら有効な利息の弁済とはどのような条件だったのかご説明します。

・17条書面を交付していること
・18条書面を交付していること
・借主が任意に弁済していること

以上3つの条件を満たして初めて利息制限法を超えたグレーゾーン金利での貸付を認めていたのです。

17条書面や18条書面、任意に弁済、と言われても一体何のことだと思うことでしょうが、ここは我慢して読み続けていきましょう。

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みなし弁済とは

みなし弁済とは貸金業者が利息制限法を超えた金利で利息を受け取っても、旧貸金業法43条によって有効な弁済と認めたものです。

本来であれば利息制限法を超えた金利で受け取った利息は無効であり、借主に返還するか元金に充当するなどしなければなりません。

多くもらいすぎた利息を元金に充当していくことによって、徐々に借入残高が減少しているにもかかわらず、グレーゾーン金利での利息をそのままとり続けていくと最後には借入残高が消滅する時期がやってきます。

借入残高がなくなっても、引き続き元金を含めた利息の返済を続けていけばその金額はすべて過払い金として積みあがって行きます、

しかし旧貸金業法43条のみなし弁済によって、グレーゾーン金利での貸付は有効となるため、過払い金は発生することもなく、借主は延々と高い利息を支払い続けていかなければならなかったのです。

法律の専門家のなかには消費者金融と政界との癒着や、消費者金融業界の影響力によってみなし弁済規定が設けられたとやぶにらみしている人もいます。

確かに旧貸金業法は議員立法によって直ちに公布されたものでしたが、同時に出資法の上限金利を3年ごとに引き下げる内容も含まれたことをわざと説明していないことが多いです。

いくらみなし弁済が有効でも出資法の上限金利が引き下げられていくのでは、貸金業者にとって何のメリットもありません。

将来的には現在の出資法の上限金利年20.0%になることも盛り込まれていたのです。

したがって直ちに旧貸金業法43条が貸金業者に有利であったとは言えませんね。

貸金業法17条書面とは

貸金業法の17条書面とは契約締結時に借主に交付しなければならない書面について定めたものです。

①貸金業者の商号、名称または氏名及び住所
②契約年月日
③貸付金額
④貸付利率
⑤返済方式
⑥返済期間並びに返済回数
⑦遅延損害金についての内容
⑧その他内閣府令で定める内容

またいわゆるカードローン契約の場合は以下の項目も契約書に書いてある必要があります。

・契約極度額

以上の項目は貸金業者からお金を借りる場合に必ず契約書に盛り込まれる内容で、それほど難しい内容ではありません。

個人間融資における借用書にも利用されるものですから、17条書面は借用書のことだと考えておけば良いでしょう。
電子政府の総合窓口e-GOV 貸金業法

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貸金業法18条書面とは

貸金業法の18条書面とは簡単に言えば領収書のことです。

借主から返済を受けたら領収書を発行するのは当然のことで、返済金額について利息がいくら、元金充当額がいくら、そして借入残高がいくらという内容です。

ただし領収書に記載する項目が法律によって定められており、ひとつでも欠けた場合は18条書面と認められません。

①貸金業者の商号、名称または氏名及び住所
②契約年月日
③貸付金額
④受領金額並びに内訳
⑤受領年月日
⑥その他内閣府令で定める内容

借主が銀行振込などによって返済した場合は、借主からの請求があった際に適応すればよく、並びに借主の許可を得ることで明細についてはパソコン画面で確認させる方法でも良いことになっています。

ただし旧貸金業法43条のみなし弁済を有効にするためには、返済方法が例え銀行振込だったとしても借主に対して遅滞なく書面を交付する(電磁的方法でも良い)ことが条件です。

任意に支払うとは

任意に支払うとは借主の自由意志に基づいて支払うことを意味し、貸金業者から無理やり返済を迫られて支払うことではありません。

しかしながら当時の契約書には「期限の利益喪失約款」が定められており、運用方法が返済期日に1日でも遅れると期限の利益を失うと定めてあったわけです。

現在の運用方法は返済期日から2カ月を超えた時点で期限の利益を失うように定めてある場合がほとんどです。

さて期限の利益を失うとどうなるのか、それは借金の一括返済です。

ドラマ風に言うならば、「昨日返済期日だったんだけれども、返済していないよね。もう期限の利益はないから利息も含めて一括返済してくれないか」と借主に迫るわけです。

貸金業者が借主に迫って返済を求めて、果たしてその返済が「任意」と呼べるのかです。

任意性がなければ旧貸金業法43条のみなし弁済は有効にはなりません。

旧貸金業法43条を否定した最高裁判決

法律知識や金融知識を持っていない借主は任意に支払っているかなんて考えも及びつきませんよね。

そうなると17条書面と18条書面さえあれば、貸金業者は堂々とグレーゾーン金利での利息を受け取ることができるわけです。

しかし旧貸金業法43条を否定した判決が、2006年1月13日に最高裁小法廷で下されたのです。

判決の内容を要約すると、期限の利益喪失約款が借主の返済を強要し、1日でも遅れたら一括返済しなければならない状況下において任意に支払っているとは言えない、との判断です。

借主が任意に支払っていなければみなし弁済は無効であり、利息制限法を超えて支払った利息は借主に返還すべきであると決定づけられたのです。

貸金業者にとって期限の利益喪失約款はなくてはならない条文であり、貸金業法が改正された現在でも期限の利益喪失約款は有効です。

しかし当時はみなし弁済を受けるためには期限の利益喪失約款がアダとなってしまったのです。

過払い金請求が全国で多発したのはそれからで、過払い金請求によって疲弊した消費者金融が衰退したのもすべてがみなし弁済が否定されてしまったためなのです。

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